RING
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※pass付きにする程でもない(当社比)描写有。ご注意ください。
42
ルナが折れた肋骨をスタンドで繋ぎ終わった頃合いで、それまで黙っていたブチャラティが彼女を見た。
「大丈夫か?」
「ええ。もう平気よ。」
そうルナが答えるやいなや、ブチャラティは彼女の手首を掴み、ぐいぐい引っ張って歩き出した。
「ブローノ?」
返事のないまま彼は列車のそばまでルナを連れて来ると、スティッキィ・フィンガーズで開けた空間の中に強引に引きずり込んだ。
「どうしたの?」
亜空間、とでも言うのかしら、ここって。などと思いながら尋ねる。
「どうしたのじゃあない!なぜあんな無謀なことを!下手すると怪我じゃあ済まなかったぞ、何を考えてるんだ!」
と、ブチャラティは溜まっていた怒りを吐き出すように怒鳴った。
「はあ?あなたに無謀なんて言われたくないわよ!そもそも走ってる列車から飛び降りる方が悪いんでしょう。こっちだって心臓が止まりそうだったんだからっ。」
さすがにカチンときて言い返す。
「俺のことはいい!危ない真似はするなと言っただろう、ミスタの命を救うだけにしろと・・・!」
「そうしてたわよ?でもそこに、誰かさんのせいでプロシュートが飛ばされて来たんじゃない。落ちたのはブローノかもしれなかったんだから、助けるのは当然でしょ!」
「敵と二人だけで話をするなど、警戒心がないにも程がある!君はあの男を信用しすぎだ!」
「だって、プロシュートは悪い人じゃあないもの。あなたこそ、どうして彼に対してあんなに険悪モード全開なの?せっかく手を組む話が出来たのに。」
するとブチャラティは、形のいい両の眉をさらに寄せて、
「・・・ルナの言う<話>は、抱き合わなきゃあ出来ないのか。」
と、吐き捨てるように言った。
「抱き合う?」
いきなり話の矛先が変わって、彼女は思わずきき返す。しかしすぐに、それが列車を降りた時のことを指していると気づき、ぎょっとして言った。
「だ、抱き合ってなんかないわよ!さっきのあれはー、ただ、私を下に降ろしてくれただけじゃない!」
カッコ良さに一瞬クラッときたことは内緒にしておこう。うん、その方がいい気がする、絶対。
なんとなく後ろ暗い気分で冷や汗を流したルナの耳に、押し殺したような低い声が響く。
「・・・全然わかってないな、君は。」
何を?と、きき返せそうとした口を、ブチャラティのそれがふさぐ。
「ー!やっ・・・まだ、話のー・・・!」
話の途中なのに!こんなのズルい!
そう言いたくて、たくましい胸を押し返そうとするけど、当然、力でかなうわけもなく。
ブチャラティは、ルナの腰と首の後ろをきつく拘束してキスしていた。
いつもの甘やかなキスと違って、行き場のない感情をぶつけるかのような荒々しいキス。角度を変えながら、何度も何度も。
「んっ・・・」
苦しさと気持ち良さで、ルナは思わず声をもらす。そのタイミングを逃さずに厚い舌がぬるりと侵入してくる。柔らかく温かな感触が、浅く深く、彼女の口内を侵食していく。
理由がわからないまま責められ逃げ腰になるルナを、ブチャラティは許さないというように捕らえて離さない。彼女の舌を絡めとり、口内をなぞり、音を立てて貪る。
ーー初めてかもしれない。
彼がここまでー、感情に任せたキスを私にするのは。
「やっ、あ・・・だめ・・・」
くちゅっ、と卑猥な水音が耳の内側から響いて脳が痺れる。強引で情熱的な口づけに押し出されるように、ルナの左右の目尻から生理的な涙があふれる。
ーー苦しい。力が入らない。酸素不足で頭がクラクラする。身体が熱い。
長い長いキスの後、ようやく離れた唇と唇の間には金色の糸がつながる。紫色の薄闇の中でキラリと光るそれを、ブチャラティの舌がペロリとすくい取った。
もう、限界ーー・・・
「おっと!」
カクンと膝から力の抜けたルナの身体を、ブチャラティが支える。そのまま、肩で息をする彼女を優しく抱きしめて髪に顔を埋める。
「も・・・ブローノのばか、きらい・・・」
「俺は愛してる。」
「・・・」
「あまり俺を妬かせるな、gattina mia.」
大きくて温かい胸から、とくんとくん、と、心臓の音が聞こえる。少し速いけれど安定したリズムが憎らしい。私の心臓はうるさいくらいドキドキしているというのに。
「・・・やきもち妬くの?あなたが?」
「あたりまえだろ。イタリアの男はー、とりわけ南部の男は嫉妬深いんだぜ。」
ブチャラティは溜め息をつくと、ルナの顎に長い指を絡めて上向かせる。碧い瞳からゾクリとする色香が漂い、その奥で暗い炎がゆらめいていた。
「君がああやって他の男に触られるのを見ると、俺は嫉妬で気が狂いそうになる・・・君は、俺ひとりの運命の女神であればいい。俺だけを見てろ、ルナ。他の男などこの目に映すな・・・!」
かすれた声で告げてブチャラティは、もう一度ルナにキスした。すべてを奪うように激しく、わずかな吐息も逃さない細やかさでーーー、まるで、彼女の中に自分を刻み込もうとするかのように。
・・・覚えておこう。
ブローノは怒らせたらーー、怖い。
身体を満たす想いの熱さに目眩がしそうになりながら、ルナは思う。
でも、こんなふうに感情的なる姿は、他では見たことがないなあ・・・
「・・・残念だがこの先はお預けだ、今は。」
ブチャラティはふっと笑うと、ルナの額に唇を押し当てながら、
「これぐらいで音をあげられちゃあ困るんだがな・・・続きをする時は、覚悟しておけよ、ルナ。」
「〜〜〜!」
ルナは自分の顔が一気に真っ赤になるのがわかる。文句を言いたいけど言葉が見つからず、口をパクパクさせる彼女を、予想通りという顔でブチャラティは笑う。そして彼は、彼女の手を握ると、外に出るためにジッパーに手をかけた。
42.5
「兄貴っ!奴らを見逃すんですかっ!?オレまったくワケがわからねえんですけど!聞いてます!?兄貴っ!?」
「ったくうるせぇな・・・耳許ででかい声を出すんじゃあねえ。後で説明してやる。」
ペッシを適当にあしらいながら、プロシュートは携帯を持ち、記憶している番号を押す。
「ー首尾は?」
普段と変わらない、沈着な重々しい声が耳に届く。スーツの内ポケットからジタンカポラルを取り出して一本くわえ、火を点けながら、
「失敗だ。」
ひとこと言って、深く吸い込んだ煙を吐き出した。
「それで?」
「メローネとギアッチョに連絡してくれ、話があるからアジトに戻れと。俺とペッシは現在ローマまで約20キロの地点にいる。アシを見つけ次第、俺たちもそっちへ向かう。」
「・・・どういうことだ。」
電話の向こうの空気が変わる。
夕陽がさびれた街道を朱色に染め上げながら、プロシュートの影を黒々と引き伸ばしている。それは血濡れで死んでいく自分の姿を思い起こさせた。たとえば、胃袋の中から大量のカミソリを吐き出しながら。
プロシュートは目を閉じる。
ーーしょうがねえ。
これは賭けだ。負けたら死ぬ。
それがわかっていて、俺は賭けたんだ。
口の端に煙草をくわえた唇から、自嘲の笑みがこぼれる。
「ちょっと面白い土産話があるぜ、リゾット。」
42
ルナが折れた肋骨をスタンドで繋ぎ終わった頃合いで、それまで黙っていたブチャラティが彼女を見た。
「大丈夫か?」
「ええ。もう平気よ。」
そうルナが答えるやいなや、ブチャラティは彼女の手首を掴み、ぐいぐい引っ張って歩き出した。
「ブローノ?」
返事のないまま彼は列車のそばまでルナを連れて来ると、スティッキィ・フィンガーズで開けた空間の中に強引に引きずり込んだ。
「どうしたの?」
亜空間、とでも言うのかしら、ここって。などと思いながら尋ねる。
「どうしたのじゃあない!なぜあんな無謀なことを!下手すると怪我じゃあ済まなかったぞ、何を考えてるんだ!」
と、ブチャラティは溜まっていた怒りを吐き出すように怒鳴った。
「はあ?あなたに無謀なんて言われたくないわよ!そもそも走ってる列車から飛び降りる方が悪いんでしょう。こっちだって心臓が止まりそうだったんだからっ。」
さすがにカチンときて言い返す。
「俺のことはいい!危ない真似はするなと言っただろう、ミスタの命を救うだけにしろと・・・!」
「そうしてたわよ?でもそこに、誰かさんのせいでプロシュートが飛ばされて来たんじゃない。落ちたのはブローノかもしれなかったんだから、助けるのは当然でしょ!」
「敵と二人だけで話をするなど、警戒心がないにも程がある!君はあの男を信用しすぎだ!」
「だって、プロシュートは悪い人じゃあないもの。あなたこそ、どうして彼に対してあんなに険悪モード全開なの?せっかく手を組む話が出来たのに。」
するとブチャラティは、形のいい両の眉をさらに寄せて、
「・・・ルナの言う<話>は、抱き合わなきゃあ出来ないのか。」
と、吐き捨てるように言った。
「抱き合う?」
いきなり話の矛先が変わって、彼女は思わずきき返す。しかしすぐに、それが列車を降りた時のことを指していると気づき、ぎょっとして言った。
「だ、抱き合ってなんかないわよ!さっきのあれはー、ただ、私を下に降ろしてくれただけじゃない!」
カッコ良さに一瞬クラッときたことは内緒にしておこう。うん、その方がいい気がする、絶対。
なんとなく後ろ暗い気分で冷や汗を流したルナの耳に、押し殺したような低い声が響く。
「・・・全然わかってないな、君は。」
何を?と、きき返せそうとした口を、ブチャラティのそれがふさぐ。
「ー!やっ・・・まだ、話のー・・・!」
話の途中なのに!こんなのズルい!
そう言いたくて、たくましい胸を押し返そうとするけど、当然、力でかなうわけもなく。
ブチャラティは、ルナの腰と首の後ろをきつく拘束してキスしていた。
いつもの甘やかなキスと違って、行き場のない感情をぶつけるかのような荒々しいキス。角度を変えながら、何度も何度も。
「んっ・・・」
苦しさと気持ち良さで、ルナは思わず声をもらす。そのタイミングを逃さずに厚い舌がぬるりと侵入してくる。柔らかく温かな感触が、浅く深く、彼女の口内を侵食していく。
理由がわからないまま責められ逃げ腰になるルナを、ブチャラティは許さないというように捕らえて離さない。彼女の舌を絡めとり、口内をなぞり、音を立てて貪る。
ーー初めてかもしれない。
彼がここまでー、感情に任せたキスを私にするのは。
「やっ、あ・・・だめ・・・」
くちゅっ、と卑猥な水音が耳の内側から響いて脳が痺れる。強引で情熱的な口づけに押し出されるように、ルナの左右の目尻から生理的な涙があふれる。
ーー苦しい。力が入らない。酸素不足で頭がクラクラする。身体が熱い。
長い長いキスの後、ようやく離れた唇と唇の間には金色の糸がつながる。紫色の薄闇の中でキラリと光るそれを、ブチャラティの舌がペロリとすくい取った。
もう、限界ーー・・・
「おっと!」
カクンと膝から力の抜けたルナの身体を、ブチャラティが支える。そのまま、肩で息をする彼女を優しく抱きしめて髪に顔を埋める。
「も・・・ブローノのばか、きらい・・・」
「俺は愛してる。」
「・・・」
「あまり俺を妬かせるな、gattina mia.」
大きくて温かい胸から、とくんとくん、と、心臓の音が聞こえる。少し速いけれど安定したリズムが憎らしい。私の心臓はうるさいくらいドキドキしているというのに。
「・・・やきもち妬くの?あなたが?」
「あたりまえだろ。イタリアの男はー、とりわけ南部の男は嫉妬深いんだぜ。」
ブチャラティは溜め息をつくと、ルナの顎に長い指を絡めて上向かせる。碧い瞳からゾクリとする色香が漂い、その奥で暗い炎がゆらめいていた。
「君がああやって他の男に触られるのを見ると、俺は嫉妬で気が狂いそうになる・・・君は、俺ひとりの運命の女神であればいい。俺だけを見てろ、ルナ。他の男などこの目に映すな・・・!」
かすれた声で告げてブチャラティは、もう一度ルナにキスした。すべてを奪うように激しく、わずかな吐息も逃さない細やかさでーーー、まるで、彼女の中に自分を刻み込もうとするかのように。
・・・覚えておこう。
ブローノは怒らせたらーー、怖い。
身体を満たす想いの熱さに目眩がしそうになりながら、ルナは思う。
でも、こんなふうに感情的なる姿は、他では見たことがないなあ・・・
「・・・残念だがこの先はお預けだ、今は。」
ブチャラティはふっと笑うと、ルナの額に唇を押し当てながら、
「これぐらいで音をあげられちゃあ困るんだがな・・・続きをする時は、覚悟しておけよ、ルナ。」
「〜〜〜!」
ルナは自分の顔が一気に真っ赤になるのがわかる。文句を言いたいけど言葉が見つからず、口をパクパクさせる彼女を、予想通りという顔でブチャラティは笑う。そして彼は、彼女の手を握ると、外に出るためにジッパーに手をかけた。
42.5
「兄貴っ!奴らを見逃すんですかっ!?オレまったくワケがわからねえんですけど!聞いてます!?兄貴っ!?」
「ったくうるせぇな・・・耳許ででかい声を出すんじゃあねえ。後で説明してやる。」
ペッシを適当にあしらいながら、プロシュートは携帯を持ち、記憶している番号を押す。
「ー首尾は?」
普段と変わらない、沈着な重々しい声が耳に届く。スーツの内ポケットからジタンカポラルを取り出して一本くわえ、火を点けながら、
「失敗だ。」
ひとこと言って、深く吸い込んだ煙を吐き出した。
「それで?」
「メローネとギアッチョに連絡してくれ、話があるからアジトに戻れと。俺とペッシは現在ローマまで約20キロの地点にいる。アシを見つけ次第、俺たちもそっちへ向かう。」
「・・・どういうことだ。」
電話の向こうの空気が変わる。
夕陽がさびれた街道を朱色に染め上げながら、プロシュートの影を黒々と引き伸ばしている。それは血濡れで死んでいく自分の姿を思い起こさせた。たとえば、胃袋の中から大量のカミソリを吐き出しながら。
プロシュートは目を閉じる。
ーーしょうがねえ。
これは賭けだ。負けたら死ぬ。
それがわかっていて、俺は賭けたんだ。
口の端に煙草をくわえた唇から、自嘲の笑みがこぼれる。
「ちょっと面白い土産話があるぜ、リゾット。」