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ーーガクンッ!!
車両がつんのめったように大きく揺れる。ほぼ同時に、耳障りなブレーキ音を響かせながら、列車が停止した。
揺れから身体を支える為に力を入れたせいで身体が内側からズキンと痛む。ルナは顔をしかめながら窓の方を見た。
「止まったの?どうして、、、」
「・・・グレイトフル・デッドが解除されて数分経つ。老化から元に戻った乗客か車掌が、緊急停止させたんだろ。」
言いながら、プロシュートはドアの取れた(正確にはルナのスタンドが破壊した)乗降口から、線路脇のむき出しの土の地面へひらりと飛び降りた。そして、ごく自然な動作でルナに向かって左手を差し伸べる。
「え?」
「・・・さっさと手を寄越せ。アバラが何本かイッちまってるんだろ。」
ーーあの時。
アブソリュート・ブレスで進行方向とは逆向きの強風を起こした。その風が、飛んでくる彼の身体を支え、受け止めるスタンドとの間でクッション替わりになるー・・・予定だった。
やはり空気のような気体は目に見えないので、ある程度イメージは出来ても支配は難しい。その点、液体や固体は見える分わかりやすいのだけれど。まあ、とにかく、一瞬の出来事だったせいもあって、衝撃を打ち消しきれなかったのよね。
ルナが目を丸くしながらプロシュートの手を取ると、彼はその手を自分の首に回し、子供を抱え上げるようにして彼女を地面にそっと降ろした。一瞬、抱きしめられるような形になり、その拍子に、ふわりと香水が漂う。さわやかさの中に潜む刺激的な香り。ドキン、と、彼女の心臓が大きく跳ねた。
さらに、長く綺麗にそろった睫毛の下のブルーグレーの瞳にじっと見つめられ、顔が勝手に熱くなる。
ーーううっ!会ったのは2回目だけど、、、やっぱり、めちゃくちゃイケメンだわ、この人。アップは危険よっ!
「痛むのか?」
「え?あ、違うの!大丈夫!治せるーというか戻せるから!」
あたふたするルナを見て、プロシュートが訝しげに目を細めた時、
「ルナ!!」
耳に馴染んだ声が自分の名前を呼んだ。
「ブローノ!」
列車の側面がジッパーで開き、ブチャラティが外に出ようとしている。ルナは骨折の痛みも忘れて、地面に降りた彼に駆け寄りその胸に飛び込んだ。
「ルナ!良かった・・・」
心から安堵したように呟いて、ブチャラティは、胸の中の愛しい存在を強く抱きしめた。しかしルナの口からうめき声をもれると、顔をのぞき込んで、
「どうしたんだ。この血はーーどこか怪我をしたのか!?」
「!!違う違う!これはミスタの血だから!私は何ともー」
「アバラが折れてる。たぶんな。」
と、プロシュートが言った途端、ブチャラティの顔色が変わった。ザワリ、という音が聞こえそうなほど全身から殺気があふれ、ルナは背筋が凍りつく。ブチャラティは、プロシュートを見すえた。
「・・・やったのはきさまか?」
「ーだったらどうなんだ?」
「大したことじゃあない。ここが死に場所になるだけだ。」
ーーええっ!?
はっと我に返ると、ルナはスティッキィ・フィンガーズの射程距離に踏み込もうとしたブチャラティの腕に慌ててしがみつきながら、
「待ってブローノ!誤解よっ、私が勝手に怪我したの!プロシュートは悪くないってば!」
「・・・奴はさっき列車から落ちて死んだはずだった。今こうして目の前にいるってことは、君が助けたんだな。だがそのせいで君は負傷した。そういうことだろう。」
こちらをチラッとも見ないまま、低い声で淡々と語った横顔を見上げ、ルナの口はあんぐりと開く。
すごい!正解!
「そうだとしても、奴のせいで君が負傷したことに変わりはない。俺が許せると思うか?離せ、ルナ。」
ご、誤解が解けたのに結論は変わらない!なぜ!?
「だ、だめだってば!プロシュートには<あの話>をしたの!彼の仲間に伝えてもらわなきゃ!」
「・・・」
ブチャラティはルナを見下ろす。その目の迫力に負けないよう、彼女は強く頷いた。
「・・・それは質問の答え次第だがな。」
プロシュートが厳しい表情で、ブチャラティに向かって続ける。
「ペッシはどこだ。」
「・・・」
「ブローノ・・・」
ルナが見上げると、ブチャラティは溜め息をついて列車に近づいた。彼の背後から現れたスティッキィ・フィンガーズが列車の側面を殴り、開いたジッパーの中から、綺麗に首から上と下に分かれた男を引きずり出す。
「あら。」
ルナは思わず声を上げる。パイナップル君じゃないの。
「兄貴〜〜!!生きてー、生きてたんですね!!てっきりオレはブチャラティの奴に突き落とされて死んじまったもんだと・・・!!」
生首状態のパイナップルは、プロシュートの姿を見て涙を流して喜んでいる。たぶんブローノと戦って負けたんだろう。殺さないでいてくれて良かった。
ルナはブチャラティに頼み込み、ペッシの頭と胴体を元に戻してもらう。
「兄貴!いったいどうなってるんです!?あの女、捕まえなきゃあー」
「やめろ。」
プロシュートは弟分を制すと、
「・・・何があろうと俺たちは、もう後には戻れはしない。」
ブチャラティに向かって静かに言った。
「仲間には伝えてやる。しかし、それからどうするかは仲間の判断だ。おまえらの申し出を拒否する選択をすれば、俺たちはまた敵対する。つまり、この女を狙う。」
プロシュートの視線がルナに向けられる。
「ボスが直々の命令でおまえらに護衛させ、自分の元へ連れて来させるってことは、やはり何らかのつながりがあるのは確かだからな。ルナは、間違いなくボスの唯一の手がかりだ。」
・・・まだ、あの<矢>の話はしていない。
だから、なぜボスが私をヴェネツィアへ呼んでいるのかー、その理由をプロシュートは知らない。
「ールナを狙うのなら、」
一度言葉を切ると、ブチャラティは立ちはだかるようにルナの斜め前に出る。
「次は容赦しない。きさまも、きさまの仲間も必ず始末する。そう伝えておけ。」
コクン、と、ルナは息をのむ。
緋色に金色を垂らしたような質量を持つ夕暮れの中で、交わった二つの視線から、火花が出そうだった。
「・・・フン。本当なら今すぐ地獄に送ってやりたいって目だぜ、そりゃあ。」
不敵に笑って、言うと、プロシュートは身を翻した。
ーーガクンッ!!
車両がつんのめったように大きく揺れる。ほぼ同時に、耳障りなブレーキ音を響かせながら、列車が停止した。
揺れから身体を支える為に力を入れたせいで身体が内側からズキンと痛む。ルナは顔をしかめながら窓の方を見た。
「止まったの?どうして、、、」
「・・・グレイトフル・デッドが解除されて数分経つ。老化から元に戻った乗客か車掌が、緊急停止させたんだろ。」
言いながら、プロシュートはドアの取れた(正確にはルナのスタンドが破壊した)乗降口から、線路脇のむき出しの土の地面へひらりと飛び降りた。そして、ごく自然な動作でルナに向かって左手を差し伸べる。
「え?」
「・・・さっさと手を寄越せ。アバラが何本かイッちまってるんだろ。」
ーーあの時。
アブソリュート・ブレスで進行方向とは逆向きの強風を起こした。その風が、飛んでくる彼の身体を支え、受け止めるスタンドとの間でクッション替わりになるー・・・予定だった。
やはり空気のような気体は目に見えないので、ある程度イメージは出来ても支配は難しい。その点、液体や固体は見える分わかりやすいのだけれど。まあ、とにかく、一瞬の出来事だったせいもあって、衝撃を打ち消しきれなかったのよね。
ルナが目を丸くしながらプロシュートの手を取ると、彼はその手を自分の首に回し、子供を抱え上げるようにして彼女を地面にそっと降ろした。一瞬、抱きしめられるような形になり、その拍子に、ふわりと香水が漂う。さわやかさの中に潜む刺激的な香り。ドキン、と、彼女の心臓が大きく跳ねた。
さらに、長く綺麗にそろった睫毛の下のブルーグレーの瞳にじっと見つめられ、顔が勝手に熱くなる。
ーーううっ!会ったのは2回目だけど、、、やっぱり、めちゃくちゃイケメンだわ、この人。アップは危険よっ!
「痛むのか?」
「え?あ、違うの!大丈夫!治せるーというか戻せるから!」
あたふたするルナを見て、プロシュートが訝しげに目を細めた時、
「ルナ!!」
耳に馴染んだ声が自分の名前を呼んだ。
「ブローノ!」
列車の側面がジッパーで開き、ブチャラティが外に出ようとしている。ルナは骨折の痛みも忘れて、地面に降りた彼に駆け寄りその胸に飛び込んだ。
「ルナ!良かった・・・」
心から安堵したように呟いて、ブチャラティは、胸の中の愛しい存在を強く抱きしめた。しかしルナの口からうめき声をもれると、顔をのぞき込んで、
「どうしたんだ。この血はーーどこか怪我をしたのか!?」
「!!違う違う!これはミスタの血だから!私は何ともー」
「アバラが折れてる。たぶんな。」
と、プロシュートが言った途端、ブチャラティの顔色が変わった。ザワリ、という音が聞こえそうなほど全身から殺気があふれ、ルナは背筋が凍りつく。ブチャラティは、プロシュートを見すえた。
「・・・やったのはきさまか?」
「ーだったらどうなんだ?」
「大したことじゃあない。ここが死に場所になるだけだ。」
ーーええっ!?
はっと我に返ると、ルナはスティッキィ・フィンガーズの射程距離に踏み込もうとしたブチャラティの腕に慌ててしがみつきながら、
「待ってブローノ!誤解よっ、私が勝手に怪我したの!プロシュートは悪くないってば!」
「・・・奴はさっき列車から落ちて死んだはずだった。今こうして目の前にいるってことは、君が助けたんだな。だがそのせいで君は負傷した。そういうことだろう。」
こちらをチラッとも見ないまま、低い声で淡々と語った横顔を見上げ、ルナの口はあんぐりと開く。
すごい!正解!
「そうだとしても、奴のせいで君が負傷したことに変わりはない。俺が許せると思うか?離せ、ルナ。」
ご、誤解が解けたのに結論は変わらない!なぜ!?
「だ、だめだってば!プロシュートには<あの話>をしたの!彼の仲間に伝えてもらわなきゃ!」
「・・・」
ブチャラティはルナを見下ろす。その目の迫力に負けないよう、彼女は強く頷いた。
「・・・それは質問の答え次第だがな。」
プロシュートが厳しい表情で、ブチャラティに向かって続ける。
「ペッシはどこだ。」
「・・・」
「ブローノ・・・」
ルナが見上げると、ブチャラティは溜め息をついて列車に近づいた。彼の背後から現れたスティッキィ・フィンガーズが列車の側面を殴り、開いたジッパーの中から、綺麗に首から上と下に分かれた男を引きずり出す。
「あら。」
ルナは思わず声を上げる。パイナップル君じゃないの。
「兄貴〜〜!!生きてー、生きてたんですね!!てっきりオレはブチャラティの奴に突き落とされて死んじまったもんだと・・・!!」
生首状態のパイナップルは、プロシュートの姿を見て涙を流して喜んでいる。たぶんブローノと戦って負けたんだろう。殺さないでいてくれて良かった。
ルナはブチャラティに頼み込み、ペッシの頭と胴体を元に戻してもらう。
「兄貴!いったいどうなってるんです!?あの女、捕まえなきゃあー」
「やめろ。」
プロシュートは弟分を制すと、
「・・・何があろうと俺たちは、もう後には戻れはしない。」
ブチャラティに向かって静かに言った。
「仲間には伝えてやる。しかし、それからどうするかは仲間の判断だ。おまえらの申し出を拒否する選択をすれば、俺たちはまた敵対する。つまり、この女を狙う。」
プロシュートの視線がルナに向けられる。
「ボスが直々の命令でおまえらに護衛させ、自分の元へ連れて来させるってことは、やはり何らかのつながりがあるのは確かだからな。ルナは、間違いなくボスの唯一の手がかりだ。」
・・・まだ、あの<矢>の話はしていない。
だから、なぜボスが私をヴェネツィアへ呼んでいるのかー、その理由をプロシュートは知らない。
「ールナを狙うのなら、」
一度言葉を切ると、ブチャラティは立ちはだかるようにルナの斜め前に出る。
「次は容赦しない。きさまも、きさまの仲間も必ず始末する。そう伝えておけ。」
コクン、と、ルナは息をのむ。
緋色に金色を垂らしたような質量を持つ夕暮れの中で、交わった二つの視線から、火花が出そうだった。
「・・・フン。本当なら今すぐ地獄に送ってやりたいって目だぜ、そりゃあ。」
不敵に笑って、言うと、プロシュートは身を翻した。