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34
「ブチャラティ!ボスからメッセージが入ったようだぜ!」
葡萄畑の家で一夜を過ごした翌朝。
ノートパソコンの前でそう叫んだミスタに、リビングにいる全員の視線が集まる。
どうやら、待望のボスからの連絡らしい。
「メールなの?」
と、ルナは隣にいるフーゴに尋ねた。
「はい。ボスはこうやって幹部に命令を送って来ます。どんな人物が送っているのか逆探知できませんから・・・それが、初めてブチャラティに送られて来ました。」
ふうん。
「ーメッセージを確認する。」
ブチャラティは固い表情でソファに座ると、パソコンのキーボードにパスワードらしきものを入力した。
---ーー------ーー---------
ポンペイの遺跡へ行け。
そこの「犬のゆか絵」のところにキーを隠してある。そのキーは、私のところまで彼女を安全に連れて来れる「乗り物」のキーだ。
---ーーーー------ーー-------
「乗り物?何だ、その安全な乗り物って。」
「ヘリコプターだぜ!そのキーはきっとヘリコのキーだぜ。ヘリコなら追っ手に捕まらずどこへでも行けるもの!!」
「・・・ここからポンペイまでは15キロ足らず。1時間もあれば、行ってキーを手に入れられるはずだ。ーフーゴ、アバッキオ、ジョルノ!」
よく通るテノールが力強く響く。
「3人でポンペイに行き、キーを手に入れてくれ。俺とミスタとナランチャは、ここでヒットマンチームからルナを護る。キーを手に入れて、安全なようなら連絡しろ。そうしたら俺たちもルナを連れて、その乗り物のところへ行く。」
ブチャラティは立ち上がって、指名した3人をまっすぐに見て続けた。
「頼んだぞ・・・!」
34.5
ネアポリス市内、某所。
男は、古びた革のソファーの背に両腕を広げて座っていた。うるさそうに組まれた長い脚の先ーー、低いテーブルの上には陶器の灰皿と、数枚の写真が散らばる。
「兄貴!」
片手に携帯を持ったペッシが、部屋の入り口に姿を現した。
「リーダーからーー。奴らが、動き出すって!」
「・・・」
プロシュートは、ソファの背にのけぞらせた頭を載せたまま、天井を眺めている。黄ばんだシーリングファンのプロペラが、ジタンカポラルの紫煙をからみつかせながらゆっくりと回っていた。
ペッシが焦れ始めた頃、ようやく、磨き込まれた一枚板のバーカウンターのような、深みのある低音が届く。
「ーホルマジオは?」
「なんとか持ち直したってよ。撃たれてる上にあっちこっち火傷だらけで、まだ動けねえけど。」
「フン・・・悪運の強い野郎だぜ。」
仲間の命が助かったことを、喜んでいないはずはない。しかしペッシは、プロシュートの声の中に暗く沈んだ何かを感じた。
他のメンバーは、たぶん気づいてない。
でも自分は、いつも、この背中を見ているからーー、だからこそわかる、最近のプロシュートのいつもとは違う雰囲気。
「・・・どうかしたのかい?兄貴・・・」
「ああ?何のことだよ。」
プロシュートは、スーツの上着をつかみながら立ち上がる。そして、テーブルの上の写真にちらりと目をやり、
「・・・」
灰皿で煙草を揉み消すと、肩に上着をかけ、大きなストライドでペッシとすれ違い廊下に出た。
ふと、テーブルに置かれたままの写真がペッシの目に入る。
ーあの手前の写真、確か・・・
「何してる。行くぞ、ペッシ。」
「あ、ああ!」
ペッシは、胸にモヤモヤを抱えながら、慌ててプロシュートの後を追いかけた。
♢
「・・・ローマ人の保養地として栄えていたポンペイが、ヴェスビオ火山の火山礫と溶岩によって、あっという間に壊滅したのは、西暦79年8月24日。その後1800年間、家や道路、ワインの瓶、馬車の轍の跡までも、噴火時のままの姿で埋もれていたのが発掘された・・・<犬のゆか絵>は、ポンペイの<悲劇詩人の家>と呼ばれる場所の、入り口近くにありーーー・・・」
ふっと、ルナは読んでいた本から目を上げて、窓の方を見た。
「ん?なんで急にやめるんだよォ、ルナ。」
隣で一緒にページを覗きこんでいたナランチャが、怪訝そうに彼女を見る。
「今ーー・・・」
ルナは、窓の外を見つめたまま眉をひそめる。
ハルくんたちの身に何かあった?ううん、そんな、いやな感じじゃあない。
まるで、誰かに呼ばれたようなーー・・・
「おーい、ルナ〜!コーヒー淹れてくれねーか?あと、こいつらに何かねえ?腹へったってうるせーんだ。」
ミスタが、ピストルズをまとわりつかせながら間延びした大声で呼ぶ。ルナは我に返ると、溜め息をついた。
「私はあなたたちのマンマじゃあないの。コーヒーぐらい自分で淹れてくれない?」
「冷たいこと言うなよ〜。見張りの時は持って来てくれたじゃあねえか。」
「えーっ!ミスタ、ルナに差し入れもらったのかよ?ずりーぜ!」
「・・・ちょっと、あなたたち、少し黙ってくれる?そこに、まだご機嫌ナナメな人がいるから。」
ブチャラティの不機嫌モードを感じ取り、そそくさとキッチンへ逃げる。
ー何だったのかしら・・・
お茶の用意をしながら、ルナは、さっきの感覚が気になって仕方なかった。
「ブチャラティ!ボスからメッセージが入ったようだぜ!」
葡萄畑の家で一夜を過ごした翌朝。
ノートパソコンの前でそう叫んだミスタに、リビングにいる全員の視線が集まる。
どうやら、待望のボスからの連絡らしい。
「メールなの?」
と、ルナは隣にいるフーゴに尋ねた。
「はい。ボスはこうやって幹部に命令を送って来ます。どんな人物が送っているのか逆探知できませんから・・・それが、初めてブチャラティに送られて来ました。」
ふうん。
「ーメッセージを確認する。」
ブチャラティは固い表情でソファに座ると、パソコンのキーボードにパスワードらしきものを入力した。
---ーー------ーー---------
ポンペイの遺跡へ行け。
そこの「犬のゆか絵」のところにキーを隠してある。そのキーは、私のところまで彼女を安全に連れて来れる「乗り物」のキーだ。
---ーーーー------ーー-------
「乗り物?何だ、その安全な乗り物って。」
「ヘリコプターだぜ!そのキーはきっとヘリコのキーだぜ。ヘリコなら追っ手に捕まらずどこへでも行けるもの!!」
「・・・ここからポンペイまでは15キロ足らず。1時間もあれば、行ってキーを手に入れられるはずだ。ーフーゴ、アバッキオ、ジョルノ!」
よく通るテノールが力強く響く。
「3人でポンペイに行き、キーを手に入れてくれ。俺とミスタとナランチャは、ここでヒットマンチームからルナを護る。キーを手に入れて、安全なようなら連絡しろ。そうしたら俺たちもルナを連れて、その乗り物のところへ行く。」
ブチャラティは立ち上がって、指名した3人をまっすぐに見て続けた。
「頼んだぞ・・・!」
34.5
ネアポリス市内、某所。
男は、古びた革のソファーの背に両腕を広げて座っていた。うるさそうに組まれた長い脚の先ーー、低いテーブルの上には陶器の灰皿と、数枚の写真が散らばる。
「兄貴!」
片手に携帯を持ったペッシが、部屋の入り口に姿を現した。
「リーダーからーー。奴らが、動き出すって!」
「・・・」
プロシュートは、ソファの背にのけぞらせた頭を載せたまま、天井を眺めている。黄ばんだシーリングファンのプロペラが、ジタンカポラルの紫煙をからみつかせながらゆっくりと回っていた。
ペッシが焦れ始めた頃、ようやく、磨き込まれた一枚板のバーカウンターのような、深みのある低音が届く。
「ーホルマジオは?」
「なんとか持ち直したってよ。撃たれてる上にあっちこっち火傷だらけで、まだ動けねえけど。」
「フン・・・悪運の強い野郎だぜ。」
仲間の命が助かったことを、喜んでいないはずはない。しかしペッシは、プロシュートの声の中に暗く沈んだ何かを感じた。
他のメンバーは、たぶん気づいてない。
でも自分は、いつも、この背中を見ているからーー、だからこそわかる、最近のプロシュートのいつもとは違う雰囲気。
「・・・どうかしたのかい?兄貴・・・」
「ああ?何のことだよ。」
プロシュートは、スーツの上着をつかみながら立ち上がる。そして、テーブルの上の写真にちらりと目をやり、
「・・・」
灰皿で煙草を揉み消すと、肩に上着をかけ、大きなストライドでペッシとすれ違い廊下に出た。
ふと、テーブルに置かれたままの写真がペッシの目に入る。
ーあの手前の写真、確か・・・
「何してる。行くぞ、ペッシ。」
「あ、ああ!」
ペッシは、胸にモヤモヤを抱えながら、慌ててプロシュートの後を追いかけた。
♢
「・・・ローマ人の保養地として栄えていたポンペイが、ヴェスビオ火山の火山礫と溶岩によって、あっという間に壊滅したのは、西暦79年8月24日。その後1800年間、家や道路、ワインの瓶、馬車の轍の跡までも、噴火時のままの姿で埋もれていたのが発掘された・・・<犬のゆか絵>は、ポンペイの<悲劇詩人の家>と呼ばれる場所の、入り口近くにありーーー・・・」
ふっと、ルナは読んでいた本から目を上げて、窓の方を見た。
「ん?なんで急にやめるんだよォ、ルナ。」
隣で一緒にページを覗きこんでいたナランチャが、怪訝そうに彼女を見る。
「今ーー・・・」
ルナは、窓の外を見つめたまま眉をひそめる。
ハルくんたちの身に何かあった?ううん、そんな、いやな感じじゃあない。
まるで、誰かに呼ばれたようなーー・・・
「おーい、ルナ〜!コーヒー淹れてくれねーか?あと、こいつらに何かねえ?腹へったってうるせーんだ。」
ミスタが、ピストルズをまとわりつかせながら間延びした大声で呼ぶ。ルナは我に返ると、溜め息をついた。
「私はあなたたちのマンマじゃあないの。コーヒーぐらい自分で淹れてくれない?」
「冷たいこと言うなよ〜。見張りの時は持って来てくれたじゃあねえか。」
「えーっ!ミスタ、ルナに差し入れもらったのかよ?ずりーぜ!」
「・・・ちょっと、あなたたち、少し黙ってくれる?そこに、まだご機嫌ナナメな人がいるから。」
ブチャラティの不機嫌モードを感じ取り、そそくさとキッチンへ逃げる。
ー何だったのかしら・・・
お茶の用意をしながら、ルナは、さっきの感覚が気になって仕方なかった。