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30
あれは、いつだったかしら・・・
きっかけは忘れたけれど、ママにきいたことがある。イタリアが恋しくならないの?って。
『そりゃあ、たまにね。でも、ママにとっては、パパとあなたが一番だから。』
でも、ママが時々、遠くを見ていることをーー少しだけ寂しそうな顔をしてーー、私は知っていた。
『ママは、あの国に、忘れものしちゃったから・・・』
そう。
いつだったかママは、そんなふうに言ってた。
ママの<忘れもの>、それはーーー・・・
「ルナ?」
はっとして見ると、ブチャラティが部屋の入り口に立っていた。
「ブローノ。どうしたの?」
「こっちのセリフだ。ノックしても返事がないから、焦ったぜ。」
「そうなの?気づかなかったわ。」
ブチャラティは、ルナが腰かけている窓枠まで近づいて来ると、
「まったく・・・君には、振り回されっぱなしだ。」
言って、身をかがめてルナに口づけた。
そのキスの甘さに、ルナは一瞬、ここがどこなのか忘れそうになる。
カプリ島から戻り、ブチャラティに連れて来られた隠れ家は、周りを一面のブドウ畑に囲まれていた。大きな家で、白い漆喰の壁と赤い屋根は、いかにも南イタリアの田舎の一軒家という風情だ。
「まあ、それは・・・100パーセント否定は出来ないわね、今となっては。」
ーールナの護衛は、<任務>だ。
カプリ島から戻るヨットの中で、申し訳なさそうなルナに対して、チームのメンバーはみんな、そんなふうに言った。それは彼らの本心であり、同時に、仕事なのだから気にするなというーー、ルナの心の負担を軽くするための優しさだった。
「俺たちの運命を変えてしまったと思ってるのか?」
「もともとこうなる運命だったのか、私が変えてしまったのか、もうわからないけれど。少なくとも、みんなを面倒には巻き込んじゃったかな・・・命がけの。」
すべてが私のスタンドのせいなどでは、当然、ない。
ただ、身体の奥底から感じるだけ。
運命の歯車が回り始めたーー、その鈍く重々しい響きを。
「ギャングだぞ、俺たちは。そもそも明日の命の保証などない。任務を遂行するだけだ。ーもっとも今回は、俺にとっては任務だけじゃあないが・・・」
そう言ってブチャラティは、ルナを、ふわりと後ろから抱きしめた。
その抱擁が、愛しいと言っているようでー・・・そう感じれば感じるほど、ルナは、心が締めつけられる。
命をかけて欲しくなんかないのに。
「ルナ、ひとりで悩むな。心配事があるなら、俺に話してくれ。」
「ふふ。私より、あなたの方が心配だわ、ブローノ。昨日の夜、寝てないんじゃあない?あのおじいちゃん幹部に、私を連れて来いって言われたせいで。当たりでしょ。」
「話をそらすな。本当に君はー・・・本心はなかなか言わないから困る。」
切れ長のサファイアブルーの瞳に見つめられて、どきん、と、ルナの心臓が音を立てる。
こ、こっちこそ困る。
ブローノって、綺麗なうえに、やたら色っぽいんだもの・・・
どぎまぎするルナを見て、ブチャラティは目を細めると、彼女を囲うように窓枠に両手をついた。
「そろそろ覚悟を決めろ、ルナ。」
艶を含んだ声が、睫毛が触れそうな距離でささやく。
「か、覚悟って・・・」
ルナは、かああっと顔が熱くなるのを感じた。
『俺に愛される覚悟を決めろ。Noは、なしだ。』
アマルフィで言われたこと、よね?
「俺の忍耐はとっくに限界だ。この任務が終わったら、君を、俺のものにする。」
「〜〜!!」
な、なに!?その宣言!!
いや、さすがに意味はわかるわよ!?
わかるけどっ!
ブチャラティが再びルナにキスしようとしたその時、彼の視線が、急に横に動いた。
「・・・まあ、異論のある奴もいるようだが。」
コンコン。
ブチャラティが不敵に笑って呟くのと、開けっ放しのドアがノックされるのが、同時だった。
「計ったようなタイミングだな、ジョルノ。」
「・・・気づいていたくせに何を言ってるんですか。」
少し憮然とした表情を浮かべ、ジョルノがドアに寄りかかっている。
き、気づいてたって・・・ブローノのばか〜〜〜!!
「一応報告を。ナランチャが買い物に出ました。ミスタは1階、アバッキオは玄関、フーゴは表を見張っています。」
「わかったーいてっ。」
背中を叩かれたブチャラティが、肩越しに苦笑してルナを見る。ルナは頰を膨らませたまま床に下りた。
「・・・嫌われてしまえばいい。」
と、ジョルノが横を向いてボソリと呟く。
「あきらめの悪い男の方が、嫌われるぞ。」
「あなたのその余裕な態度、結構ムカつきますよ、ブチャラティ。」
「俺は、今のおまえは悪くないと思うぜ?ルナが絡んだ時のおまえは、年相応に可愛げがある。」
「そんな偉そうにかまえていられるのも今のうちです。絶対に奪ってみせます。」
「やってみろ。やれるもんなら、な。」
「あのー・・・盛り上がってるところに、悪いんだけど。」
ルナは、おずおずと割り込んだ。
途端、碧玉の瞳と翡翠の瞳の両方が、なぜか不満げに向けられる。
ジョルノが呆れたように溜め息をついた。
「誰かさんが原因なんですけどね・・・」
「まあそれはともかくー、ちょうど良かったわ。あなたたち二人に話があったの。」
言って、ルナはスタンドを使ってドアを<支配して>閉めた。
そして、ブチャラティとジョルノを真っすぐに見ると、
「さっきの話に出てきた、組織の裏切り者っていう人・・・ペリーコロは、複数いるみたいな口ぶりだったけど。その人たちと、手を組めないかしら?」
「!!?」
二人とも、その表情に驚きが広がる。
「だって、麻薬に関することを除けば、彼らと目的は同じだと思わない?ジョルノとブローノがやろうとしていることと。彼らが私を捕まえたいのは、謎のボスの正体につながる手がかりをつかんで、ボスを倒したいからなんでしょう?そもそもー・・・」
ルナは、考えながら続けた。
「なぜ、彼らは、組織を裏切ろうと思ったのかしら?」
詳しくきいたわけではないけれど、<パッショーネ>が、かなり大きな組織であることは、なんとなくわかる。つまり、組織に反旗を翻すことは、彼らだって相当のリスクを覚悟した賭けのはずだ。
なぜ、そこまでして?
彼らに反乱を決意させた<理由>はーー、いったい何だろう?
「ーそう。きっと<理由>がある。あなたたちが麻薬を許せないように、彼らにも、巨大な組織への裏切りを決意するほど不満だった、何かがあるはず。もし彼らが、ただ組織の麻薬ルートを握って金儲けがしたいだけの連中だったらー、それはそれ。手が組めなくても仕方ない。けれど、そうじゃあなければ・・・」
「ー今の話、いつから考えていた?ルナ。」
え?
急にきかれて、戸惑いながら見ると、ブチャラティは真剣な目でルナを見ていた。
「カプリ島でペリーコロから話をきいた時からだけど・・・どうして?」
「・・・」
どうしたのかしら?
ルナが首を傾げた時、
「つまり、敵の敵は味方。そういうことですね、ルナ。」
ジョルノが口を開いた。
「おもしろいですね。敵は倒すものとばかり考えていた僕には、思いつかない発想です。いくつか、クリアしなければいけない問題がありそうですがーー、試してみる価値はあるんじゃあないでしょうか。どうです?ブチャラティ。」
「・・・相手は、俺たちを始末してルナを奪う気でいる。当然こっちは反撃するが、そうなると、どちら側かに死者が出る可能性が高い。もし相手がチームだったら、仲間を殺した奴らと手を組む気にはならないだろう。かと言って、殺さないように手加減して戦うなんて、現実的にほぼ不可能だ。相手も命がけだ・・・そんなヌルいことをしてたら、こっちが殺られるからな。それに、ここにいる3人以外、俺たちの本当の目的を知らない。アバッキオたちにとっては、敵は、あくまで始末すべき裏切り者だ。」
ブチャラティは、彼らしい見解を述べると、考えるように軽く丸めた右手を顎に付けながら続けた。
「上手くいく可能性は低い・・・だが、もし成功すればメリットは大きいのは確かだ。おそらくスタンド使いである強敵と、無駄に争わずに済む。」
ジョルノが頷いた。
「ええ。こちら側はもちろんですが、相手のチームに死者が出ないうちに話が出来れば、可能性はゼロではない。もちろん、麻薬の件は譲れませんけど。」
「ああ。」
ーケンカしてるかと思えば、こういう意見はしっかり合うのね、この二人って。
ルナは、くすりと笑った。
なんだかんだ言って、いいコンビだわ。
「何ですか?」
目ざといジョルノがルナに尋ねる。
「何でもないわ。さ、話がまとまったところでー、」
ルナは、ドアを指さしながらにっこり笑った。
「ちょっと遠慮してくれる?ボーイズ。私、シャワー浴びたいから。」
「・・・」
ブチャラティとジョルノは、無言で顔を見合わせる。
そして、やれやれという感じでドアへと向かった。
あれは、いつだったかしら・・・
きっかけは忘れたけれど、ママにきいたことがある。イタリアが恋しくならないの?って。
『そりゃあ、たまにね。でも、ママにとっては、パパとあなたが一番だから。』
でも、ママが時々、遠くを見ていることをーー少しだけ寂しそうな顔をしてーー、私は知っていた。
『ママは、あの国に、忘れものしちゃったから・・・』
そう。
いつだったかママは、そんなふうに言ってた。
ママの<忘れもの>、それはーーー・・・
「ルナ?」
はっとして見ると、ブチャラティが部屋の入り口に立っていた。
「ブローノ。どうしたの?」
「こっちのセリフだ。ノックしても返事がないから、焦ったぜ。」
「そうなの?気づかなかったわ。」
ブチャラティは、ルナが腰かけている窓枠まで近づいて来ると、
「まったく・・・君には、振り回されっぱなしだ。」
言って、身をかがめてルナに口づけた。
そのキスの甘さに、ルナは一瞬、ここがどこなのか忘れそうになる。
カプリ島から戻り、ブチャラティに連れて来られた隠れ家は、周りを一面のブドウ畑に囲まれていた。大きな家で、白い漆喰の壁と赤い屋根は、いかにも南イタリアの田舎の一軒家という風情だ。
「まあ、それは・・・100パーセント否定は出来ないわね、今となっては。」
ーールナの護衛は、<任務>だ。
カプリ島から戻るヨットの中で、申し訳なさそうなルナに対して、チームのメンバーはみんな、そんなふうに言った。それは彼らの本心であり、同時に、仕事なのだから気にするなというーー、ルナの心の負担を軽くするための優しさだった。
「俺たちの運命を変えてしまったと思ってるのか?」
「もともとこうなる運命だったのか、私が変えてしまったのか、もうわからないけれど。少なくとも、みんなを面倒には巻き込んじゃったかな・・・命がけの。」
すべてが私のスタンドのせいなどでは、当然、ない。
ただ、身体の奥底から感じるだけ。
運命の歯車が回り始めたーー、その鈍く重々しい響きを。
「ギャングだぞ、俺たちは。そもそも明日の命の保証などない。任務を遂行するだけだ。ーもっとも今回は、俺にとっては任務だけじゃあないが・・・」
そう言ってブチャラティは、ルナを、ふわりと後ろから抱きしめた。
その抱擁が、愛しいと言っているようでー・・・そう感じれば感じるほど、ルナは、心が締めつけられる。
命をかけて欲しくなんかないのに。
「ルナ、ひとりで悩むな。心配事があるなら、俺に話してくれ。」
「ふふ。私より、あなたの方が心配だわ、ブローノ。昨日の夜、寝てないんじゃあない?あのおじいちゃん幹部に、私を連れて来いって言われたせいで。当たりでしょ。」
「話をそらすな。本当に君はー・・・本心はなかなか言わないから困る。」
切れ長のサファイアブルーの瞳に見つめられて、どきん、と、ルナの心臓が音を立てる。
こ、こっちこそ困る。
ブローノって、綺麗なうえに、やたら色っぽいんだもの・・・
どぎまぎするルナを見て、ブチャラティは目を細めると、彼女を囲うように窓枠に両手をついた。
「そろそろ覚悟を決めろ、ルナ。」
艶を含んだ声が、睫毛が触れそうな距離でささやく。
「か、覚悟って・・・」
ルナは、かああっと顔が熱くなるのを感じた。
『俺に愛される覚悟を決めろ。Noは、なしだ。』
アマルフィで言われたこと、よね?
「俺の忍耐はとっくに限界だ。この任務が終わったら、君を、俺のものにする。」
「〜〜!!」
な、なに!?その宣言!!
いや、さすがに意味はわかるわよ!?
わかるけどっ!
ブチャラティが再びルナにキスしようとしたその時、彼の視線が、急に横に動いた。
「・・・まあ、異論のある奴もいるようだが。」
コンコン。
ブチャラティが不敵に笑って呟くのと、開けっ放しのドアがノックされるのが、同時だった。
「計ったようなタイミングだな、ジョルノ。」
「・・・気づいていたくせに何を言ってるんですか。」
少し憮然とした表情を浮かべ、ジョルノがドアに寄りかかっている。
き、気づいてたって・・・ブローノのばか〜〜〜!!
「一応報告を。ナランチャが買い物に出ました。ミスタは1階、アバッキオは玄関、フーゴは表を見張っています。」
「わかったーいてっ。」
背中を叩かれたブチャラティが、肩越しに苦笑してルナを見る。ルナは頰を膨らませたまま床に下りた。
「・・・嫌われてしまえばいい。」
と、ジョルノが横を向いてボソリと呟く。
「あきらめの悪い男の方が、嫌われるぞ。」
「あなたのその余裕な態度、結構ムカつきますよ、ブチャラティ。」
「俺は、今のおまえは悪くないと思うぜ?ルナが絡んだ時のおまえは、年相応に可愛げがある。」
「そんな偉そうにかまえていられるのも今のうちです。絶対に奪ってみせます。」
「やってみろ。やれるもんなら、な。」
「あのー・・・盛り上がってるところに、悪いんだけど。」
ルナは、おずおずと割り込んだ。
途端、碧玉の瞳と翡翠の瞳の両方が、なぜか不満げに向けられる。
ジョルノが呆れたように溜め息をついた。
「誰かさんが原因なんですけどね・・・」
「まあそれはともかくー、ちょうど良かったわ。あなたたち二人に話があったの。」
言って、ルナはスタンドを使ってドアを<支配して>閉めた。
そして、ブチャラティとジョルノを真っすぐに見ると、
「さっきの話に出てきた、組織の裏切り者っていう人・・・ペリーコロは、複数いるみたいな口ぶりだったけど。その人たちと、手を組めないかしら?」
「!!?」
二人とも、その表情に驚きが広がる。
「だって、麻薬に関することを除けば、彼らと目的は同じだと思わない?ジョルノとブローノがやろうとしていることと。彼らが私を捕まえたいのは、謎のボスの正体につながる手がかりをつかんで、ボスを倒したいからなんでしょう?そもそもー・・・」
ルナは、考えながら続けた。
「なぜ、彼らは、組織を裏切ろうと思ったのかしら?」
詳しくきいたわけではないけれど、<パッショーネ>が、かなり大きな組織であることは、なんとなくわかる。つまり、組織に反旗を翻すことは、彼らだって相当のリスクを覚悟した賭けのはずだ。
なぜ、そこまでして?
彼らに反乱を決意させた<理由>はーー、いったい何だろう?
「ーそう。きっと<理由>がある。あなたたちが麻薬を許せないように、彼らにも、巨大な組織への裏切りを決意するほど不満だった、何かがあるはず。もし彼らが、ただ組織の麻薬ルートを握って金儲けがしたいだけの連中だったらー、それはそれ。手が組めなくても仕方ない。けれど、そうじゃあなければ・・・」
「ー今の話、いつから考えていた?ルナ。」
え?
急にきかれて、戸惑いながら見ると、ブチャラティは真剣な目でルナを見ていた。
「カプリ島でペリーコロから話をきいた時からだけど・・・どうして?」
「・・・」
どうしたのかしら?
ルナが首を傾げた時、
「つまり、敵の敵は味方。そういうことですね、ルナ。」
ジョルノが口を開いた。
「おもしろいですね。敵は倒すものとばかり考えていた僕には、思いつかない発想です。いくつか、クリアしなければいけない問題がありそうですがーー、試してみる価値はあるんじゃあないでしょうか。どうです?ブチャラティ。」
「・・・相手は、俺たちを始末してルナを奪う気でいる。当然こっちは反撃するが、そうなると、どちら側かに死者が出る可能性が高い。もし相手がチームだったら、仲間を殺した奴らと手を組む気にはならないだろう。かと言って、殺さないように手加減して戦うなんて、現実的にほぼ不可能だ。相手も命がけだ・・・そんなヌルいことをしてたら、こっちが殺られるからな。それに、ここにいる3人以外、俺たちの本当の目的を知らない。アバッキオたちにとっては、敵は、あくまで始末すべき裏切り者だ。」
ブチャラティは、彼らしい見解を述べると、考えるように軽く丸めた右手を顎に付けながら続けた。
「上手くいく可能性は低い・・・だが、もし成功すればメリットは大きいのは確かだ。おそらくスタンド使いである強敵と、無駄に争わずに済む。」
ジョルノが頷いた。
「ええ。こちら側はもちろんですが、相手のチームに死者が出ないうちに話が出来れば、可能性はゼロではない。もちろん、麻薬の件は譲れませんけど。」
「ああ。」
ーケンカしてるかと思えば、こういう意見はしっかり合うのね、この二人って。
ルナは、くすりと笑った。
なんだかんだ言って、いいコンビだわ。
「何ですか?」
目ざといジョルノがルナに尋ねる。
「何でもないわ。さ、話がまとまったところでー、」
ルナは、ドアを指さしながらにっこり笑った。
「ちょっと遠慮してくれる?ボーイズ。私、シャワー浴びたいから。」
「・・・」
ブチャラティとジョルノは、無言で顔を見合わせる。
そして、やれやれという感じでドアへと向かった。