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29
ブチャラティに呼ばれると、ルナはこちらを見て、ゆっくりと立ち上がった。
どんな時だろうとマイペースな人だ、と、ジョルノは半ば呆れながら、感心する。
パッショーネの老幹部や、ブチャラティの幹部昇格など、さして気にならないらしい。
いくら相手が恋人とはいえーー、今の状況は、ギャングに捕らわれているようなものなのに。
「サングラスを取ってくれるか?」
「・・・」
ペリーコロの言葉に従って、ルナはサングラスを外した。
ペリーコロの目が鋭くなる。
にぎやかなカプリの港の中で、ここだけは静かな緊張に包まれた。
「・・・怖れを知らぬヴィオラの瞳。ソアラと同じ目をしているな・・・」
「ー!!」
ルナは眉をひそめた。
「えっ、どーゆうこと?ソアラって誰?」
ナランチャの疑問に、ジョルノが代わりに答える。
「ソアラさんはーー、ルナの母親です。」
「母親!ルナのお!?」
ジョルノは覚えていた。
温かいスープ、湯気の向こうの柔らかい笑顔。風呂上がりに髪を拭いてくれた時に感じた、ほっとする日なたの匂い・・・
とても優しくて、美しい女性だった。
すでに亡くなったとルナに聞いてーー・・・せめて、お礼が言いたかったと思った。実の母親よりよっぽど、母親の温もりを教えてくれた人に。
彼女とルナがいなければ、幼い自分の心は、きっと、暗すぎる闇にのみ込まれてしまったことだろう。
「なぜ、ママを知っているの?」
「それは順に話そう。まずー、」
ペリーコロは、ブチャラティへ顔を向けた。
「ポルポの仕事の権利を受け継いだ君に早速じゃが、奴は生前、ひとつだけ仕事をやり残しての・・・ポルポのやり残した仕事は、当然、ブチャラティ、君が受け継ぐということだ。ここのところはいいかね?」
「・・・ポルポがやり残した仕事?」
ブチャラティは訝しげに言った。
それとルナに何の関係があるのか、と、言いたげだった。
「うむ。ボス直々の命令なのじゃよ。」
ボス!?
チーム全員が驚愕した。
誰も会ったことがないと言われるボスから、直接の命令・・・
「ここで君に伝えるぞ、ブチャラティ。ソアラ・フォルトゥナの娘を護衛すること・・・命をかけて!」
いずれ正体を突き止めて、倒そうと思っている<ボス>。
その男が、なぜ、ルナを護衛するように命令をーー!?
「以上だ。護衛は今より始まる。任せたぞ、ブチャラティ。」
「ーなに、それ。」
ブチャラティより先に声を発したのは、他ならないルナだった。
普段とは異なる、その冷たく硬い響きには、聞き覚えがある。
ジョルノは、マズい、と思った。
「意味がわからない。私がママの娘だからって、いったい何なの?なぜ、どこの誰とも知らないー」
「ルナ!」
急いで、後ろからルナの口をふさぐ。そして、耳許で日本語で言った。
「それ以上は駄目です。今は我慢してください、ブチャラティの為に・・・!」
ルナの怒りは、いつも純粋だ。
知りもしない男が、なぜブチャラティに、命をーーつまりそれはチームのメンバー全員の命を意味するーーかけてまで、自分を護衛をしろと命じるのか。
相手がパッショーネのボスだろうと、そんなことはルナは考えない。その純粋さゆえに、はっきりと言ってしまうだろう。あのポルポのスタンドと戦った時のように。
ブチャラティの立場を悪くしてしまう。彼は、組織と愛する女の板挟みになる。
ルナの手が、わかったというようにジョルノの肘を叩くのを合図に、ジョルノは手を離した。
アバッキオの視線が背中を刺すのを感じる。
その時、
「ー理由を。」
ブチャラティが静かな声で言った。
「ルナを護衛する理由をきかせて下さい、ペリーコロさん。彼女の亡くなった母親、ソアラ・フォルトゥナは、組織と、どのような関係が?」
「うむ・・・」
ペリーコロは頷くと、ゆっくりと話し始めた。
「君たちも知っての通り、ボスの正体を知る者はいない。わしにしても、命令が届くだけで顔は見たこともない。だが、当然、ボスにも過去は<ある>。特に、若い頃の過去はな・・・」
彼の口から語られたのは、にわかには信じがたい話だった。
ー20年前、まだパッショーネが今とは比べものにならないほど小さな組織で、<義賊>と呼ばれていた頃ーー。
組織には、その美しさと強さから、<パッショーネの宝石>と呼ばれる女性がいた。
それが、ソアラ・フォルトゥナ。
そしてそこには、まだ組織の構成員のひとりにすぎなかった、若き日のボスもいた。
ボスは、その頃からすでに偽名を使っていて、正体を明かさない男だった。
ある時、ソアラは突然、姿を消した。当然ながら、組織は彼女の行方を捜したが、見つからなかった。敵対する組織に殺されたという噂も流れたが、長い間、彼女がどうなったのか、知る者はいなかった。
しかし、2週間ほど前。
イタリアの主要な空港の入国者名簿は、組織によって自動的にチェックされる仕組みが出来ている。そこで、ソアラと同じ姓がヒットし、パスポートの写真を含め、身元が照会された。
現在のパッショーネで、ある程度の地位にいる人間なら、ソアラ・フォルトゥナの名は知っている。
「一部の者がささやき始めた。ソアラには、娘がいたんじゃあないか?ひょっとしてこの娘は、ボスのことを何か聞いてるんじゃあないか?ってな・・・」
「・・・」
ーほとんど同時期に、そのことが当然ボスの耳に入った。ボスの決断は早かった。
ただちに、その娘を探して保護しろ!と、命令が下った。
「偶然にせよ、ルナのそばにブチャラティがいたのは良かったんじゃ。わしがルナの所在を突き止めた直後、何者かがルナを捜していることがわかった。ルナを拉致しようとしてな。奴らはルナを拉致して、殺そうとするじゃろう。『何でもいい、何かボスの秘密を知ってるはずだ・・・!』それを聞き出されてからな。」
「何者ですか、そいつらは。」
と、ブチャラティは鋭い声で尋ねた。
「組織の裏切り者じゃよ。何人いるかはわからない。ボスを倒して、麻薬のルートの縄張りを乗っ取ろうとしている。」
麻薬!
「護衛の期間は?」
「1週間ー、いや、もっと短いかもしれん。ボスはその裏切り者を今、捜している。見つけ出して始末するまでだ。」
「ペリーコロさん、命令は、ポルポに行くはずだったとおっしゃいましたね。ということは、敵は・・・」
「うむ。敵はスタンド使い。そう考えていいじゃろうな。ボスがポルポに命令する時は、それに関することのみだったからな。」
あのソアラさんが、かつて、パッショーネの一員だった・・・
ルナは、それを知らなかったのだろう。
でなければ、カンのいい彼女が、ここに連れて来られる理由に心当たりがないと答えるはずがない。
そして、まだ一つ、気になることがある。
しかしそれは訊きづらいな・・・
「質問していいかしら。」
ふいに、ルナが口を開いた。
「あなた方のボスは、なぜ、私を<護衛>するように命じたの?組織の裏切り者とかいう人たちを始末するために、囮として使うため?それよりも、私自身をさっさと始末した方が手っ取り早い気がするけど。その後で、裏切り者なんてじっくり捜せばいいんじゃあないの?」
思わず、ジョルノはうつむいて額を押さえた。
まったく、この人は・・・
自分を殺した方が早い、なんて、よくここまであっけらかんと言えるものだ。
もしその通りにーー、ボスが始末しろと命じたら、いったいどうするんだ。
もちろん、僕は、そんなことはさせませんけど。
まあ、おそらく、ブチャラティも。
「ルナ、おまえ、それをよお・・・自分で言っちゃあおしまいなんじゃあねえの?」
ミスタの呆れ声に、他のメンバーも頷いて同意している。
「え?だって変じゃない。」
変なのはおまえだ、と、ミスタが全員の意見を代表して呟いた時、
「君はスタンド使いじゃな、ルナ。ソアラと同じように。」
ペリーコロが言った。
「君の家系は、代々、女児にスタンド能力が遺伝するはず・・・ソアラは、強力なスタンド使いだった。それと同様の力が、ルナ、彼女の娘である君にも受け継がれているはずじゃ。」
ルナの美しい口許が、皮肉げに笑った。
「・・・だったら?」
「ボスは、君のスタンド能力で、ある<矢>の封印を解いて欲しいと言っている。それが、ボスが君の護衛を命じた理由じゃよ。」
「<矢>、ですって・・・?」
「そう。それは特殊な矢で、1本は死んだポルポが持っていた。そして最後の1本は、ボスが持っている。ソアラ・フォルトゥナが、組織を去る前に残したものだからじゃ。しかし矢は、ソアラのスタンドの力によって封印されーー、言わば、眠っている状態なんじゃ。その封印を解けるのは、娘である君だけだと、ボスは考えている。」
「・・・」
ジョルノは、ポルポのスタンドに仕込まれていた、金色の矢を思い出していた。
貫いた人間をスタンド使いにする<矢>。
あれは、ポルポが死んだ時に破壊されたはずだ。しかし、矢はもう1本あったのか?
ポルポのスタンドと戦った時も、ルナは、あの矢のことを気にしていた・・・
「ボスの目的は矢の封印を解くことであって、君自身の命ではない。だが、さっき言った理由で、君は裏切り者たちに狙われるじゃろう。だから護衛が必要なんじゃ。」
そう言うと、ペリーコロはブチャラティに向き直った。
「とにかくー・・・わしにはスタンド能力はない。役に立てるのはここまでじゃ。この島を出たら身を隠せ。ルナが君のところにいるのは、ボスとわししか知らない。」
ーールナを護衛しろ、か・・・
ジョルノは、ペリーコロの去って行く後ろ姿を見ながら考えていた。
今まで、僕が突き止めようとしていた謎のボスへのつながりが、まさか、彼女だったなんて。
ソアラさん、ルナ、僕・・・
10年前の出会いはー、すべては、今につながるための布石だったのだろうか。
ルナと、ブチャラティが出会ったことさえもーーーー。
とにかく、僕たちは命をかけてルナを守るしかない。彼女を狙っている奴らがいるのなら、なおさらだ。
やる価値はある。彼女を守り続ければ、ブチャラティは、ボスからポルポ並みの信頼を得ることができるだろう。
失敗は許されない。
失敗は、イコール僕たち6人の死。
それは、皆がよく知っていることだ。
そして何よりも、僕にとって、失敗はーー・・・
『ハルくん!見て、テントウ虫!テントウ虫はね、幸運を運んでくるんだって。ママが言ってた!』
『コウウンって、なに?』
『・・・えっとー、うんと、テントウ虫は、お天道さまの虫だから、きっと、お陽さまが守ってくれるってことだよ!』
この世界で、唯一愛する人を、失うことを意味するからだ。
ブチャラティに呼ばれると、ルナはこちらを見て、ゆっくりと立ち上がった。
どんな時だろうとマイペースな人だ、と、ジョルノは半ば呆れながら、感心する。
パッショーネの老幹部や、ブチャラティの幹部昇格など、さして気にならないらしい。
いくら相手が恋人とはいえーー、今の状況は、ギャングに捕らわれているようなものなのに。
「サングラスを取ってくれるか?」
「・・・」
ペリーコロの言葉に従って、ルナはサングラスを外した。
ペリーコロの目が鋭くなる。
にぎやかなカプリの港の中で、ここだけは静かな緊張に包まれた。
「・・・怖れを知らぬヴィオラの瞳。ソアラと同じ目をしているな・・・」
「ー!!」
ルナは眉をひそめた。
「えっ、どーゆうこと?ソアラって誰?」
ナランチャの疑問に、ジョルノが代わりに答える。
「ソアラさんはーー、ルナの母親です。」
「母親!ルナのお!?」
ジョルノは覚えていた。
温かいスープ、湯気の向こうの柔らかい笑顔。風呂上がりに髪を拭いてくれた時に感じた、ほっとする日なたの匂い・・・
とても優しくて、美しい女性だった。
すでに亡くなったとルナに聞いてーー・・・せめて、お礼が言いたかったと思った。実の母親よりよっぽど、母親の温もりを教えてくれた人に。
彼女とルナがいなければ、幼い自分の心は、きっと、暗すぎる闇にのみ込まれてしまったことだろう。
「なぜ、ママを知っているの?」
「それは順に話そう。まずー、」
ペリーコロは、ブチャラティへ顔を向けた。
「ポルポの仕事の権利を受け継いだ君に早速じゃが、奴は生前、ひとつだけ仕事をやり残しての・・・ポルポのやり残した仕事は、当然、ブチャラティ、君が受け継ぐということだ。ここのところはいいかね?」
「・・・ポルポがやり残した仕事?」
ブチャラティは訝しげに言った。
それとルナに何の関係があるのか、と、言いたげだった。
「うむ。ボス直々の命令なのじゃよ。」
ボス!?
チーム全員が驚愕した。
誰も会ったことがないと言われるボスから、直接の命令・・・
「ここで君に伝えるぞ、ブチャラティ。ソアラ・フォルトゥナの娘を護衛すること・・・命をかけて!」
いずれ正体を突き止めて、倒そうと思っている<ボス>。
その男が、なぜ、ルナを護衛するように命令をーー!?
「以上だ。護衛は今より始まる。任せたぞ、ブチャラティ。」
「ーなに、それ。」
ブチャラティより先に声を発したのは、他ならないルナだった。
普段とは異なる、その冷たく硬い響きには、聞き覚えがある。
ジョルノは、マズい、と思った。
「意味がわからない。私がママの娘だからって、いったい何なの?なぜ、どこの誰とも知らないー」
「ルナ!」
急いで、後ろからルナの口をふさぐ。そして、耳許で日本語で言った。
「それ以上は駄目です。今は我慢してください、ブチャラティの為に・・・!」
ルナの怒りは、いつも純粋だ。
知りもしない男が、なぜブチャラティに、命をーーつまりそれはチームのメンバー全員の命を意味するーーかけてまで、自分を護衛をしろと命じるのか。
相手がパッショーネのボスだろうと、そんなことはルナは考えない。その純粋さゆえに、はっきりと言ってしまうだろう。あのポルポのスタンドと戦った時のように。
ブチャラティの立場を悪くしてしまう。彼は、組織と愛する女の板挟みになる。
ルナの手が、わかったというようにジョルノの肘を叩くのを合図に、ジョルノは手を離した。
アバッキオの視線が背中を刺すのを感じる。
その時、
「ー理由を。」
ブチャラティが静かな声で言った。
「ルナを護衛する理由をきかせて下さい、ペリーコロさん。彼女の亡くなった母親、ソアラ・フォルトゥナは、組織と、どのような関係が?」
「うむ・・・」
ペリーコロは頷くと、ゆっくりと話し始めた。
「君たちも知っての通り、ボスの正体を知る者はいない。わしにしても、命令が届くだけで顔は見たこともない。だが、当然、ボスにも過去は<ある>。特に、若い頃の過去はな・・・」
彼の口から語られたのは、にわかには信じがたい話だった。
ー20年前、まだパッショーネが今とは比べものにならないほど小さな組織で、<義賊>と呼ばれていた頃ーー。
組織には、その美しさと強さから、<パッショーネの宝石>と呼ばれる女性がいた。
それが、ソアラ・フォルトゥナ。
そしてそこには、まだ組織の構成員のひとりにすぎなかった、若き日のボスもいた。
ボスは、その頃からすでに偽名を使っていて、正体を明かさない男だった。
ある時、ソアラは突然、姿を消した。当然ながら、組織は彼女の行方を捜したが、見つからなかった。敵対する組織に殺されたという噂も流れたが、長い間、彼女がどうなったのか、知る者はいなかった。
しかし、2週間ほど前。
イタリアの主要な空港の入国者名簿は、組織によって自動的にチェックされる仕組みが出来ている。そこで、ソアラと同じ姓がヒットし、パスポートの写真を含め、身元が照会された。
現在のパッショーネで、ある程度の地位にいる人間なら、ソアラ・フォルトゥナの名は知っている。
「一部の者がささやき始めた。ソアラには、娘がいたんじゃあないか?ひょっとしてこの娘は、ボスのことを何か聞いてるんじゃあないか?ってな・・・」
「・・・」
ーほとんど同時期に、そのことが当然ボスの耳に入った。ボスの決断は早かった。
ただちに、その娘を探して保護しろ!と、命令が下った。
「偶然にせよ、ルナのそばにブチャラティがいたのは良かったんじゃ。わしがルナの所在を突き止めた直後、何者かがルナを捜していることがわかった。ルナを拉致しようとしてな。奴らはルナを拉致して、殺そうとするじゃろう。『何でもいい、何かボスの秘密を知ってるはずだ・・・!』それを聞き出されてからな。」
「何者ですか、そいつらは。」
と、ブチャラティは鋭い声で尋ねた。
「組織の裏切り者じゃよ。何人いるかはわからない。ボスを倒して、麻薬のルートの縄張りを乗っ取ろうとしている。」
麻薬!
「護衛の期間は?」
「1週間ー、いや、もっと短いかもしれん。ボスはその裏切り者を今、捜している。見つけ出して始末するまでだ。」
「ペリーコロさん、命令は、ポルポに行くはずだったとおっしゃいましたね。ということは、敵は・・・」
「うむ。敵はスタンド使い。そう考えていいじゃろうな。ボスがポルポに命令する時は、それに関することのみだったからな。」
あのソアラさんが、かつて、パッショーネの一員だった・・・
ルナは、それを知らなかったのだろう。
でなければ、カンのいい彼女が、ここに連れて来られる理由に心当たりがないと答えるはずがない。
そして、まだ一つ、気になることがある。
しかしそれは訊きづらいな・・・
「質問していいかしら。」
ふいに、ルナが口を開いた。
「あなた方のボスは、なぜ、私を<護衛>するように命じたの?組織の裏切り者とかいう人たちを始末するために、囮として使うため?それよりも、私自身をさっさと始末した方が手っ取り早い気がするけど。その後で、裏切り者なんてじっくり捜せばいいんじゃあないの?」
思わず、ジョルノはうつむいて額を押さえた。
まったく、この人は・・・
自分を殺した方が早い、なんて、よくここまであっけらかんと言えるものだ。
もしその通りにーー、ボスが始末しろと命じたら、いったいどうするんだ。
もちろん、僕は、そんなことはさせませんけど。
まあ、おそらく、ブチャラティも。
「ルナ、おまえ、それをよお・・・自分で言っちゃあおしまいなんじゃあねえの?」
ミスタの呆れ声に、他のメンバーも頷いて同意している。
「え?だって変じゃない。」
変なのはおまえだ、と、ミスタが全員の意見を代表して呟いた時、
「君はスタンド使いじゃな、ルナ。ソアラと同じように。」
ペリーコロが言った。
「君の家系は、代々、女児にスタンド能力が遺伝するはず・・・ソアラは、強力なスタンド使いだった。それと同様の力が、ルナ、彼女の娘である君にも受け継がれているはずじゃ。」
ルナの美しい口許が、皮肉げに笑った。
「・・・だったら?」
「ボスは、君のスタンド能力で、ある<矢>の封印を解いて欲しいと言っている。それが、ボスが君の護衛を命じた理由じゃよ。」
「<矢>、ですって・・・?」
「そう。それは特殊な矢で、1本は死んだポルポが持っていた。そして最後の1本は、ボスが持っている。ソアラ・フォルトゥナが、組織を去る前に残したものだからじゃ。しかし矢は、ソアラのスタンドの力によって封印されーー、言わば、眠っている状態なんじゃ。その封印を解けるのは、娘である君だけだと、ボスは考えている。」
「・・・」
ジョルノは、ポルポのスタンドに仕込まれていた、金色の矢を思い出していた。
貫いた人間をスタンド使いにする<矢>。
あれは、ポルポが死んだ時に破壊されたはずだ。しかし、矢はもう1本あったのか?
ポルポのスタンドと戦った時も、ルナは、あの矢のことを気にしていた・・・
「ボスの目的は矢の封印を解くことであって、君自身の命ではない。だが、さっき言った理由で、君は裏切り者たちに狙われるじゃろう。だから護衛が必要なんじゃ。」
そう言うと、ペリーコロはブチャラティに向き直った。
「とにかくー・・・わしにはスタンド能力はない。役に立てるのはここまでじゃ。この島を出たら身を隠せ。ルナが君のところにいるのは、ボスとわししか知らない。」
ーールナを護衛しろ、か・・・
ジョルノは、ペリーコロの去って行く後ろ姿を見ながら考えていた。
今まで、僕が突き止めようとしていた謎のボスへのつながりが、まさか、彼女だったなんて。
ソアラさん、ルナ、僕・・・
10年前の出会いはー、すべては、今につながるための布石だったのだろうか。
ルナと、ブチャラティが出会ったことさえもーーーー。
とにかく、僕たちは命をかけてルナを守るしかない。彼女を狙っている奴らがいるのなら、なおさらだ。
やる価値はある。彼女を守り続ければ、ブチャラティは、ボスからポルポ並みの信頼を得ることができるだろう。
失敗は許されない。
失敗は、イコール僕たち6人の死。
それは、皆がよく知っていることだ。
そして何よりも、僕にとって、失敗はーー・・・
『ハルくん!見て、テントウ虫!テントウ虫はね、幸運を運んでくるんだって。ママが言ってた!』
『コウウンって、なに?』
『・・・えっとー、うんと、テントウ虫は、お天道さまの虫だから、きっと、お陽さまが守ってくれるってことだよ!』
この世界で、唯一愛する人を、失うことを意味するからだ。