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1

いやなんとなくね、予想はしてた。

迷子になることをー。

ルナは、石畳の上をキャリーケースを引っ張りながら歩いていた。

身軽な方を好むので年頃の女子にしては荷物は小さめだが、誤算だったのは、キャスターが、石と石の隙間に引っかかってしまい、進みにくいこと。

「ゔ〜・・・、やっぱり空港からタクシーでホテルまで行くべきだった、、、」

今回の旅費や滞在費は、承太郎の計らいでSPW財団から出してもらったので、つい遠慮して、安価なシャトルバスを選択してしまったのだ。

でもそんなことより何より、今もっとも頭を悩ませているのは・・・

「Ciao, bella!!どこまで行くの?」

ナンパの多さである。

ガリバルディ広場でバスを降りた途端、1メートル進むごとに嘘みたいにバンバン声をかけられている。

イタリア人のナンパは挨拶みたいなものだって、ほんとだったのね〜。息を吐くように声かけてくるわ。ある意味すごい。

ナンパ男に囲まれるため立ち止まれず、仕方なく早足で歩き続けているうちに、迷子になってしまったのだった。

「まあ、方向音痴っていうのもあるけど・・・ところで、どこよ?ここ。」

半ばヤケになって呟いた時、ふと、あれだけいたナンパ男たちがいなくなっていることに気づいた。

いつのまにか、街の雰囲気が変わっている。薄暗い路地が増えて、人通りもまばらだ。

「休憩しよ。」

ルナはようやく止まると、パラッツォの入り口の階段に座り込み、空港で買ったエビアンを飲んだ。

「あ〜・・・生き返る〜・・・」

でもなんかー、あんまりよろしくない視線を感じるなあ。あちこちから。

「てか、そんなことより!」

迷子なのを思い出し、薄手のリュックから地図を取り出そうとした時、

「あなた、こんな所で何してるの?」

見ると、通りに面した窓から、アパルタメントの住人らしい老婦人が顔を出していた。

「Buongiorno!」

にっこり挨拶して、現状をざっくり伝える私。すると、

「何を考えてるのっ!こんな所に一人で来るなんて!バカにもほどがあるわ!」

めっちゃ怒られた。ぐすっ・・・

「あなたみたいな若くて綺麗なお嬢さんが一人で歩いてたら、今にひどい目に遭うわよ!」

「いやそれほどでも・・・」

てへ。

「褒めてないから!ほら、早くうちへお入んなさい!タクシー、来るかわからないけど、呼んであげるからーあら?」

親切なおばあさんの言葉が途切れると同時に、その視線は、ルナを通り過ぎていた。

「ブチャラティ!ちょうど良かった!お願いがあるの!」





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