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23
ジョルノの身体がデッキへ沈むと同時に、ルナは、アバッキオの横をすり抜けて走った。
「どうして・・・!?」
ジョルノの消えた辺りには、ナランチャが消えた場所と同じような正方形のくぼみがあった。しかし、その周囲には数滴の血痕だけが残り、姿が消えている。
「ハルくー」
「そこの床には降りるな、ルナ。いや、下がれ。」
二の腕を強く引き戻され、見ると、アバッキオがいつの間にか背後に立っていた。
そして、そのままブチャラティの方へルナを押しやりながら、
「普段は天然のくせに、たまにスイッチが入ったみたいに急に人が変わるな・・・しっかり捕まえてろよ。」
「だっ、誰が天然よ!」
てか、ブローノまで、なに普通に頷いてるのよ!!
「俺は、ジョルノ・ジョバァーナを仲間として信用するわけじゃあないが、ジョルノは、ルナ、おまえが自分をけっして見捨てないってことを、随分信用してるらしいな。」
「・・・私だけじゃあないわ、彼が信用しているのは。」
と、ルナは、自分を守るようにそばに立つブチャラティを意識しながら言った。
「随分クレイジーなことをやる奴だぜ・・・ジョルノ・ジョバァーナ。もし今ので死んじまったら、どうするつもりだったんだ。だからルナ、そこの床には入るな。」
アバッキオは、デッキの隅を指さした。小さな黒い点が動いている。
ルナは、はっとして言った。
「あのハエはー、ナランチャの靴!?」
「ジョルノの力は消えてない。ジョルノはまだ生きているのか?」
「ハエがこっちに来てるぞ!ナランチャと敵は床下だ!」
と、アバッキオが叫んだ瞬間、
「スティッキィ・フィンガーズ!」
ブチャラティの声と共に、青銀色の人型のスタンドが、ハエの飛んでいた辺りのデッキを殴りつけた。そこにジッパーが現れ、開き、下の船室の中があらわになる。
「ナランチャもフーゴもミスタも、ジョルノもいない・・・!」
船室の内部には、誰ひとりいなかった。もちろん、敵の姿もない。
「ハエがいるその下じゃあないのか・・・」
「やっぱり、敵はロッカーの中とかどこかの物陰に、ただ隠れて攻撃してきてるわけじゃあないわ。」
「おいブチャラティ!ルナ!ハエがこっちに回り込んで来てるぜ!!」
ルナが顔を上げると、アバッキオの視線の先で、反対側にいたハエが、こちら側にゆっくり近づいて来ているのが見えた。
「おかしい。どこを移動して来るんだ。敵はどうやってー、どこに隠れているんだ・・・!?」
「この敵の能力に関してはー、仕方ねえ、ジョルノの言ってることを認めるしかねえようだな。俺のスタンドで謎を解く!」
ルナは、アバッキオを見た。
「アバッキオ・・・!」
ハルくんの身を呈した行動が、アバッキオを突き動かした!
「だが、ここはヤバイぜ!ーブチャラティ!ルナをっ!」
言うと同時に、アバッキオは、自分も倒れこみながら、ジッパーの開けた穴の方にブチャラティを突き飛ばした。
スティッキィ・フィンガーズがルナを抱えて、船室の内部に着地する。続けざまに、ブチャラティとアバッキオも受け身を取りながら落ちて来た。
「ありがと、スティッキィ。」
ルナが頭を撫でると、スティッキィ・フィンガーズは焦った様子で消えた。
なんか、今、赤くなってた。可愛い。
「・・・初めて見たぜ、スタンドに礼を言う奴。」
アバッキオに呆れたように言われ、きょとんとする私。
「え、そう?」
「まあ、ルナらしくていい。ーアバッキオ、やれるか?」
ブチャラティの言葉に、アバッキオは頷いた。
「ムーディ・ブルース!」
現れたのは、額にタイマーが付いた、中性的な外見のスタンドだった。その全身が、アバッキオの唇のルージュと同じ、綺麗な青紫色をしている。
「5分前のナランチャからでいいか?」
「ああ。そのくらいでいい。」
ムーディ・ブルースは、電話の呼び出し音ような音を立ててタイマーの数字をセットすると、ふわり、と船室を移動し始めた。そして、突き当たりに着くと、デッキへ上がって行く。
3人でその後を追うと、ムーディ・ブルースは船室の真上の屋根あたりに移動していた。
「ハエは大丈夫か?」
「反対側を船首の方に向かって来ている。今のうちだ、素早くやれよ。」
「ああ。」
その言葉が終わらないうちに、ムーディ・ブルースの形状がみるみる変化して、ルナは目を見張った。
「ナランチャ・・・!?」
その姿は、ナランチャとうり二つだったのだ。
「俺のスタンドは、記録をすべてリプレイする。ナランチャがかいてる汗も、脈拍までもすべて見れる。そして、どこまでも追跡する。」
面白い、と、ルナは思った。
警官だったアバッキオには、ピッタリの能力だわ。
「100億は俺たちのものだ。その金があれば、幹部の座が手に入る。」
「すっ、すげえ!!」
スタンドのナランチャが、顔を輝かせている。
「今のー、ブローノの声ね。」
「ああ。この会話の後だ、ナランチャが襲われたのは。ナランチャの背後に回ろう、襲われるぞ。」
ちょうどナランチャの靴が落ちていた、四角いハッチの辺りに立った、その時、
ーーザクッ!!
ナランチャの左肩に、何かで刺されたような穴が開いた。
ハルくんの時と、同じーーーー!!
そして、ハッチに背中から引っ張られると、まるでパンパンに膨らんだ風船から空気が抜けるように、音を立てて身体がしぼみ始めたのだった。
ルナは、デッキに片膝をついて言った。
「肩の傷から空気がもれて、しぼんでいっているわ・・・」
「どうやら、敵の正体が見えてきたようだな。」
アバッキオが言ったその時、チューブのようになったナランチャの身体が、ハッチの隅の排水口の中へ引きずり込まれ始めた。
「ポーズしろ、アバッキオ!」
カチッ。
すごい、一時停止も出来るのね。
ルナが妙に感心していると、ブチャラティが隣にしゃがんで、ナランチャの姿をしたスタンドを調べた。
「パイプの中・・・これが謎の答えか。爪も肉も骨も、コンドームみたいにベロベロになっている。靴とかベルトのバックルまでも。」
例えにはあえて突っ込まない。
「でも、脈は打っている。ジョルノの言った通り、生きているわ。」
「そういうことか。敵は自分の身体をも、こうやって、パイプとか板と壁の隙間に隠し、ミスタやフーゴやジョルノをも引きずり込んだってわけだ。これであのジョルノのハエが、だいたいの位置はわかるが、正確な場所にはたどり着けないという説明もつくぜ。」
「敵の能力の正体は解けたな。あとはこのまま追跡して、ナランチャたちのいる場所を見つけ、救い出し、野郎をブチのめすだけだ。ムーディ・ブルースのリプレイを続行するぜ!」
再び、カチッという音がして、スタンドが排水口の中に完全に吸い込まれていく。
「追跡だと?」
ブチャラティが驚いたように言った。
「待て、アバッキオ。リプレイ中は、攻撃も防御もできない無防備状態。パイプの中に入るのは危険だ・・・!」
「えっ!?」
遠隔操作型を除けば、多くの場合、スタンドが受けたダメージはそのまま本体のダメージとなる。
なら、今、ムーディ・ブルースが攻撃されたら、アバッキオはーー・・・
「ムーディ・ブルースがどこを移動しているのか、位置はわかる。野郎の近くに来たら、おまえのジッパーで床を切開して叩け!追跡しなきゃあ、敵は倒せねえんだぜ、ブチャラティ!」
「・・・」
「左へ行ったぜ!」
言ってアバッキオは、下のデッキを指さした。
「ミスタのやられた所だ。ムーディ・ブルースは、あの浮き輪の下を通過している。回り込んで・・・フーゴとジョルノがやられた、船室の入り口の方へ向かっている。」
「ハエもそっちへ動いていってる・・・やっぱり敵は、ナランチャたちを拉致したまま移動してるのね。」
「移動のスピードが、ゆっくりになっているぞ。野郎はさっきそこに潜んでいたんだ・・・今、そのロープ留めの内側!たった今、そのデッキ座席の下にいる!!」
その時、ハエが向きを変えてこちらに近づいて来るのがわかった。
「野郎が向かって来るぜ。能力がバレてることを知ってか知らずか・・・」
「いい度胸だ。パイプだ!切開して引きずり出してやれっ!!」
瞬時に現れたブチャラティのスタンドが、デッキの床を殴りつける。
「!?」
3人とも目を見張った。
切開した床とパイプの隙間にも、パイプの中にも、何もいなかったから。
「敵はどこだアバッキオ!おまえのムーディ・ブルースは、どこにいる!?」
「そこだ・・・自分のスタンドだ、位置はわかっている。今、その辺りにいる。」
「その辺りって?」
「だから切り開いたそこだぜ!俺のムーディ・ブルースは、確かにそこにいる!!」
ブチャラティが舌打ちすると同時に、さらにスティッキィ・フィンガーズが激しく動いた。
でも、床やデッキの座席やーー、切り開かれた先に、敵もみんなも、何もいない。
「まさか、まだーー・・・解いていない謎があるの?」
「ーー!」
アバッキオは集中するように目を閉じた。
「おかしい・・・この壁はどこの壁だ?どこに潜り込んでいるんだ、いったいー」
ーコオン・・・
「!?聞いたか、ルナ!ブチャラティ!パイプの壁の音だ。姿は見えねえが、ムーディ・ブルースは確かにこの下にいる!!」
アバッキオはデッキに膝をつくと、
「パイプの中・・・パイプを切開しているのに、パイプの中・・・」
一心不乱に床を調べ始めた。
ふと、ルナは、まるで事件の証拠を懸命に探す警察官のようだ、と思った。
ブチャラティが、ハエの位置を見て言った。
「敵が近づいて来ている!スタンドを戻せ、アバッキオ!逃げるんだ!」
「ー逃げるだと?」
アバッキオは低く鋭い声で言うと、自分の肩越しにブチャラティを睨んだ。
「あの気に入らねえジョルノ・ジョバァーナは、この俺に謎を解けって言ったんだぜ。生意気なガキだ・・・解いてやるさ!」
「アバッキオ!でも、このままならあなたがー・・・」
その時、アバッキオが空を見上げたまま一点を凝視しているのに気づき、ルナの言葉が宙に浮いた。
「そうだ・・・ルナ、おまえの言う通り、敵の謎はもう一つある!それがわかりかけてきたー、解いて野郎をブッ殺す!!」
長い銀色の髪を翻して、アバッキオは立ち上がった。
「わかったぜ!こいつの、もう一つの謎が!!」
アバッキオがニヤリと笑って叫ぶのと、その胸に、敵によって刺された穴が開くのが、同時だった。
「アバッキオ!!」
「ブッ殺すんだ、ブチャラティ・・・こいつの謎は・・・こいつの、いる場所はーーー・・・!」
そのまま、アバッキオはデッキの下につながる扉の方へ、あっという間に引きずり込まれてしまったのだった。
ジョルノの身体がデッキへ沈むと同時に、ルナは、アバッキオの横をすり抜けて走った。
「どうして・・・!?」
ジョルノの消えた辺りには、ナランチャが消えた場所と同じような正方形のくぼみがあった。しかし、その周囲には数滴の血痕だけが残り、姿が消えている。
「ハルくー」
「そこの床には降りるな、ルナ。いや、下がれ。」
二の腕を強く引き戻され、見ると、アバッキオがいつの間にか背後に立っていた。
そして、そのままブチャラティの方へルナを押しやりながら、
「普段は天然のくせに、たまにスイッチが入ったみたいに急に人が変わるな・・・しっかり捕まえてろよ。」
「だっ、誰が天然よ!」
てか、ブローノまで、なに普通に頷いてるのよ!!
「俺は、ジョルノ・ジョバァーナを仲間として信用するわけじゃあないが、ジョルノは、ルナ、おまえが自分をけっして見捨てないってことを、随分信用してるらしいな。」
「・・・私だけじゃあないわ、彼が信用しているのは。」
と、ルナは、自分を守るようにそばに立つブチャラティを意識しながら言った。
「随分クレイジーなことをやる奴だぜ・・・ジョルノ・ジョバァーナ。もし今ので死んじまったら、どうするつもりだったんだ。だからルナ、そこの床には入るな。」
アバッキオは、デッキの隅を指さした。小さな黒い点が動いている。
ルナは、はっとして言った。
「あのハエはー、ナランチャの靴!?」
「ジョルノの力は消えてない。ジョルノはまだ生きているのか?」
「ハエがこっちに来てるぞ!ナランチャと敵は床下だ!」
と、アバッキオが叫んだ瞬間、
「スティッキィ・フィンガーズ!」
ブチャラティの声と共に、青銀色の人型のスタンドが、ハエの飛んでいた辺りのデッキを殴りつけた。そこにジッパーが現れ、開き、下の船室の中があらわになる。
「ナランチャもフーゴもミスタも、ジョルノもいない・・・!」
船室の内部には、誰ひとりいなかった。もちろん、敵の姿もない。
「ハエがいるその下じゃあないのか・・・」
「やっぱり、敵はロッカーの中とかどこかの物陰に、ただ隠れて攻撃してきてるわけじゃあないわ。」
「おいブチャラティ!ルナ!ハエがこっちに回り込んで来てるぜ!!」
ルナが顔を上げると、アバッキオの視線の先で、反対側にいたハエが、こちら側にゆっくり近づいて来ているのが見えた。
「おかしい。どこを移動して来るんだ。敵はどうやってー、どこに隠れているんだ・・・!?」
「この敵の能力に関してはー、仕方ねえ、ジョルノの言ってることを認めるしかねえようだな。俺のスタンドで謎を解く!」
ルナは、アバッキオを見た。
「アバッキオ・・・!」
ハルくんの身を呈した行動が、アバッキオを突き動かした!
「だが、ここはヤバイぜ!ーブチャラティ!ルナをっ!」
言うと同時に、アバッキオは、自分も倒れこみながら、ジッパーの開けた穴の方にブチャラティを突き飛ばした。
スティッキィ・フィンガーズがルナを抱えて、船室の内部に着地する。続けざまに、ブチャラティとアバッキオも受け身を取りながら落ちて来た。
「ありがと、スティッキィ。」
ルナが頭を撫でると、スティッキィ・フィンガーズは焦った様子で消えた。
なんか、今、赤くなってた。可愛い。
「・・・初めて見たぜ、スタンドに礼を言う奴。」
アバッキオに呆れたように言われ、きょとんとする私。
「え、そう?」
「まあ、ルナらしくていい。ーアバッキオ、やれるか?」
ブチャラティの言葉に、アバッキオは頷いた。
「ムーディ・ブルース!」
現れたのは、額にタイマーが付いた、中性的な外見のスタンドだった。その全身が、アバッキオの唇のルージュと同じ、綺麗な青紫色をしている。
「5分前のナランチャからでいいか?」
「ああ。そのくらいでいい。」
ムーディ・ブルースは、電話の呼び出し音ような音を立ててタイマーの数字をセットすると、ふわり、と船室を移動し始めた。そして、突き当たりに着くと、デッキへ上がって行く。
3人でその後を追うと、ムーディ・ブルースは船室の真上の屋根あたりに移動していた。
「ハエは大丈夫か?」
「反対側を船首の方に向かって来ている。今のうちだ、素早くやれよ。」
「ああ。」
その言葉が終わらないうちに、ムーディ・ブルースの形状がみるみる変化して、ルナは目を見張った。
「ナランチャ・・・!?」
その姿は、ナランチャとうり二つだったのだ。
「俺のスタンドは、記録をすべてリプレイする。ナランチャがかいてる汗も、脈拍までもすべて見れる。そして、どこまでも追跡する。」
面白い、と、ルナは思った。
警官だったアバッキオには、ピッタリの能力だわ。
「100億は俺たちのものだ。その金があれば、幹部の座が手に入る。」
「すっ、すげえ!!」
スタンドのナランチャが、顔を輝かせている。
「今のー、ブローノの声ね。」
「ああ。この会話の後だ、ナランチャが襲われたのは。ナランチャの背後に回ろう、襲われるぞ。」
ちょうどナランチャの靴が落ちていた、四角いハッチの辺りに立った、その時、
ーーザクッ!!
ナランチャの左肩に、何かで刺されたような穴が開いた。
ハルくんの時と、同じーーーー!!
そして、ハッチに背中から引っ張られると、まるでパンパンに膨らんだ風船から空気が抜けるように、音を立てて身体がしぼみ始めたのだった。
ルナは、デッキに片膝をついて言った。
「肩の傷から空気がもれて、しぼんでいっているわ・・・」
「どうやら、敵の正体が見えてきたようだな。」
アバッキオが言ったその時、チューブのようになったナランチャの身体が、ハッチの隅の排水口の中へ引きずり込まれ始めた。
「ポーズしろ、アバッキオ!」
カチッ。
すごい、一時停止も出来るのね。
ルナが妙に感心していると、ブチャラティが隣にしゃがんで、ナランチャの姿をしたスタンドを調べた。
「パイプの中・・・これが謎の答えか。爪も肉も骨も、コンドームみたいにベロベロになっている。靴とかベルトのバックルまでも。」
例えにはあえて突っ込まない。
「でも、脈は打っている。ジョルノの言った通り、生きているわ。」
「そういうことか。敵は自分の身体をも、こうやって、パイプとか板と壁の隙間に隠し、ミスタやフーゴやジョルノをも引きずり込んだってわけだ。これであのジョルノのハエが、だいたいの位置はわかるが、正確な場所にはたどり着けないという説明もつくぜ。」
「敵の能力の正体は解けたな。あとはこのまま追跡して、ナランチャたちのいる場所を見つけ、救い出し、野郎をブチのめすだけだ。ムーディ・ブルースのリプレイを続行するぜ!」
再び、カチッという音がして、スタンドが排水口の中に完全に吸い込まれていく。
「追跡だと?」
ブチャラティが驚いたように言った。
「待て、アバッキオ。リプレイ中は、攻撃も防御もできない無防備状態。パイプの中に入るのは危険だ・・・!」
「えっ!?」
遠隔操作型を除けば、多くの場合、スタンドが受けたダメージはそのまま本体のダメージとなる。
なら、今、ムーディ・ブルースが攻撃されたら、アバッキオはーー・・・
「ムーディ・ブルースがどこを移動しているのか、位置はわかる。野郎の近くに来たら、おまえのジッパーで床を切開して叩け!追跡しなきゃあ、敵は倒せねえんだぜ、ブチャラティ!」
「・・・」
「左へ行ったぜ!」
言ってアバッキオは、下のデッキを指さした。
「ミスタのやられた所だ。ムーディ・ブルースは、あの浮き輪の下を通過している。回り込んで・・・フーゴとジョルノがやられた、船室の入り口の方へ向かっている。」
「ハエもそっちへ動いていってる・・・やっぱり敵は、ナランチャたちを拉致したまま移動してるのね。」
「移動のスピードが、ゆっくりになっているぞ。野郎はさっきそこに潜んでいたんだ・・・今、そのロープ留めの内側!たった今、そのデッキ座席の下にいる!!」
その時、ハエが向きを変えてこちらに近づいて来るのがわかった。
「野郎が向かって来るぜ。能力がバレてることを知ってか知らずか・・・」
「いい度胸だ。パイプだ!切開して引きずり出してやれっ!!」
瞬時に現れたブチャラティのスタンドが、デッキの床を殴りつける。
「!?」
3人とも目を見張った。
切開した床とパイプの隙間にも、パイプの中にも、何もいなかったから。
「敵はどこだアバッキオ!おまえのムーディ・ブルースは、どこにいる!?」
「そこだ・・・自分のスタンドだ、位置はわかっている。今、その辺りにいる。」
「その辺りって?」
「だから切り開いたそこだぜ!俺のムーディ・ブルースは、確かにそこにいる!!」
ブチャラティが舌打ちすると同時に、さらにスティッキィ・フィンガーズが激しく動いた。
でも、床やデッキの座席やーー、切り開かれた先に、敵もみんなも、何もいない。
「まさか、まだーー・・・解いていない謎があるの?」
「ーー!」
アバッキオは集中するように目を閉じた。
「おかしい・・・この壁はどこの壁だ?どこに潜り込んでいるんだ、いったいー」
ーコオン・・・
「!?聞いたか、ルナ!ブチャラティ!パイプの壁の音だ。姿は見えねえが、ムーディ・ブルースは確かにこの下にいる!!」
アバッキオはデッキに膝をつくと、
「パイプの中・・・パイプを切開しているのに、パイプの中・・・」
一心不乱に床を調べ始めた。
ふと、ルナは、まるで事件の証拠を懸命に探す警察官のようだ、と思った。
ブチャラティが、ハエの位置を見て言った。
「敵が近づいて来ている!スタンドを戻せ、アバッキオ!逃げるんだ!」
「ー逃げるだと?」
アバッキオは低く鋭い声で言うと、自分の肩越しにブチャラティを睨んだ。
「あの気に入らねえジョルノ・ジョバァーナは、この俺に謎を解けって言ったんだぜ。生意気なガキだ・・・解いてやるさ!」
「アバッキオ!でも、このままならあなたがー・・・」
その時、アバッキオが空を見上げたまま一点を凝視しているのに気づき、ルナの言葉が宙に浮いた。
「そうだ・・・ルナ、おまえの言う通り、敵の謎はもう一つある!それがわかりかけてきたー、解いて野郎をブッ殺す!!」
長い銀色の髪を翻して、アバッキオは立ち上がった。
「わかったぜ!こいつの、もう一つの謎が!!」
アバッキオがニヤリと笑って叫ぶのと、その胸に、敵によって刺された穴が開くのが、同時だった。
「アバッキオ!!」
「ブッ殺すんだ、ブチャラティ・・・こいつの謎は・・・こいつの、いる場所はーーー・・・!」
そのまま、アバッキオはデッキの下につながる扉の方へ、あっという間に引きずり込まれてしまったのだった。