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17
「しかし、困ったな・・・ポルポのスタンドを倒してしまったら、入団試験はどうなる?」
と、火のついたままのライターを拾いながら、ジョルノは呟いた。
それを聞いて、ルナは、やっぱりと思った。
やっぱりハルくんは、スタンドについて何も知らない・・・
「倒してなんかいないわ。」
ルナはきっぱりと言った。
「ハルくんは勘違いしてる。今のスタンドは、日光に当たって攻撃をやめただけ。もしそのライターの炎が消えたら、また現れるでしょう。だって<本体>は、ダメージもなくピンピンしてるはずだもの。」
「!!!生きてるんですか?ポルポは!」
「あれは恐らく、遠隔自動操縦型のスタンド。遠隔自動操縦型は、一定の法則に基づいて行動し攻撃してくる。今回で言うなら、ライターを再点火したりそれを見たりした者を自動追跡し、攻撃する。そして、たとえスタンドに何かあっても、本体にはまるで影響がない。きっとポルポは、戦いがあったこと自体、気づいていないわ。」
「戦いに気づいていない・・・ということは、あなたや僕がスタンド使いであるということも?」
「わかるわけがないわ。感じたとしたら、せいぜい十数秒、身体の自由がきかなかった、という程度でしょう。」
「・・・」
ジョルノは、何かを考えるような表情でライターの炎を見つめていたが、ふいに踵を返すと、老人のもとへ行き、片膝をついた。そして、片手で老人の目を覆って、その目を閉ざすと、そのまま、しばらく動かなかった。
ーー杞憂、だったわ。
夕闇に包まれていく中、ルナは、ジョルノを見つめながら思う。
もし彼が、自分の入団試験のことしか考えていない人間だったら・・なんて、心配したけれど。
ハルくんの目を見ればわかる。
彼は、死を悼むことが出来る。
それは恐らく、DIOとは、決定的に違うところだから・・・
ジョルノが学校の事務室に上手く連絡して、老人の遺体は発見された。それを見届けてから、ルナは、彼と一緒にその場を離れた。
「ルナ、お願いがあります。」
ジョルノは真剣な目をして言った。
「スタンドについて教えてください。正直、ブチャラティと戦った時も、今回も、あなたのおかげで危機を乗り切ることが出来た。でもこれからはそうはいかない。だから、きちんと知っておきたいんです。」
ルナは頷いた。
「そうね。それがいいと思う。私の知っている範囲で良ければ、教えるわ。」
Grazie.と言って、ジョルノはちょっと笑って続けた。
「それからもう一つ。僕のことは、<ハルノ>ではなく、ジョルノと呼んでくれませんか。」
予想外のお願いに、ルナは目を丸くした。
「どうして?」
「僕はもうじき16です。いつまでも5歳のままじゃあない。<ハルくん>のままなら、あなたは永遠に僕を子ども扱いだ。」
「そんな、子ども扱いしてるつもりはないけど・・・まあ、3つも下だから、弟っぽい感じがあって。」
ジョルノは無言でライターを花に変えた。
ーーあ、さっきと同じ花だわ。
と、ルナが思った、次の瞬間、二の腕をやや乱暴に引き寄せられ、抱きしめられていた。
突然のことに、頭と身体がフリーズする。
「・・・それが困るんですよ、ルナ。僕は、あなたにひとりの男として見て欲しいんです。」
と、ルナを強く抱きしめたまま、ジョルノはどこか苦しげな声で言った。
・・・背が伸びたな、とは思っていたけれど。
昔は私の方が高かったのに、今は、負けてる。
身体つきも。
肩幅も広い胸も手首の太さもーー、私とは全然、違う・・・
意識した途端、ルナの心臓がどきんと跳ねた。
こ、このシチュエーションは、なに!?はたから見たら、恋人同士みたいじゃない!?
しかも相手は、ブロンドの美少年よ!!
「え、えっとー!うん、わかった。ジョルノって呼ぶね。だから、そろそろ、離してくれる?」
「拒否します。」
「なっーー!?」
何なの、その謎のきっぱり感!!
「回りくどい言い方をしても、鈍感なあなたには通じないでしょうから、はっきり言っておきます。ルナ、僕は、あなたが好きです。」
あ、なんかまた失礼なことをーっ・・!?
「え?」
今、何て・・・
「二度も同じことを言わせないで下さい・・・ルナが好きだ、と言ったんです。10年前、別れも言えないまま、イタリアに連れて来られた後もーー、あなたを忘れたことはなかった。いつか会いに行こうと思っていました。」
「・・・」
ふっ、とジョルノの腕がゆるみ、繊細そうな長い指がルナの頰に触れ、そのまますべるように顎を持ち上げる。
ルナは、胸がしめつけられるように痛んだ。
遠慮のない物言いとは裏腹に、ジョルノがひどくーー、つらそうな表情をしていたから。
「なぜですか?ルナ。もしイタリアで、ブチャラティより先に僕と会っていたら、あなたは僕を好きになったかもしれないのに。僕は10年以上前に、あなたに出会っていたのにーー、たった2週間の差で、あなたの心はもう、彼のものなんですか?僕の入る余地は少しもないんですか?あなたにとって、僕よりも彼の方が大切な存在ですか?」
「そんなー・・・」
憂いをたたえたエメラルドグリーンの瞳の中で、呆然としたルナの顔が揺れている。
「そんなこと、考えたことない・・・私には、どっちも大切だわ。ハルくんも、ブローノも・・・」
「ーまた。」
あ、ついハルくんってーと、ルナが思った時、
「ーー!」
目の前には、伏せられた長い金色の睫毛。
それを見てルナは、自分が、ジョルノにキスされていることに気づいた。
頭の中が真っ白になるって、こういう時を指すのだろう。
ただ・・・
初めて触れたジョルノの唇は、かすかに震えているような気がした。
「待っ・・て!ーーーージョルノ!!」
はっとして、ルナは、精一杯ジョルノの身体を押して離れた。
すると、
「やっと、呼んでくれましたね。」
と、ジョルノはさわやかに笑って言った。
「し、信じられないっ!!名前を呼ばせるためにキスするなんてっ。少しは反省したらどうなの!?ばかハルージョルノっ!」
思いきり叫ぶと、ルナは、熱くなった顔を隠すように身を翻した。
途端、背中から声が届く。
「送ってあげられなくてすみません。ライターがあるので。気をつけてください。」
「気にしないでっ!あなたの方がよっぽど危険よっ!」
「この花は、リナリアです。」
ーーえ?
その声の真剣な響きに、思わずルナは足を止めて振り向く。
ジョルノの手の中で、ゴールド・エクスペリエンスの輝きに包まれた、白く可憐な花。
首を傾げるルナに向かって、ジョルノはエメラルドの瞳をせつなげに細めた。
「キスしたのは、名前を呼んで欲しいからではないですよ・・・」
17.5
ホテルのそばにある花屋が、ちょうど、店じまいを始めている。
ルナは、思わず立ち止まって、ショーケースを眺めた。
「何かご入り用ですか、シニョリーナ。」
店主らしい男に尋ねられて、はっとする。
「あ、いえ・・・<リナリア>ってお花、あるかしら。」
「ああ、ありますよ。花は小さいが、可愛いんで今の時期は小さいブーケなんかにも使える。花言葉もロマンティックだしね。」
「花言葉?」
「そう。リナリアの花言葉は、<この恋に気づいて>、でしょう?」
「!ーー・・・」
「ところで、お嬢さん、もしかしてブチャラティさんがいつも花を贈ってる方じゃあないですか?ホテル・サン・ピエトロには、うちも花をおろしてるから。見かけたことがあるんだ。いやあ、やっぱり綺麗な人だねえ。天使かと思ったよ。さすがブチャラティさんの恋人だね。美男美女でお似合いですよ。あ、そうだ、これ、持って行ってください。」
一気にまくしたてた後、人の良さそうな店主は、リナリアの花束をルナに押しつけるように渡した。ルナがお金を払おうとすると、店主は笑って遮った。
「ブチャラティさんの恋人からお金はもらえないよ。あの人には世話になってるからね。」
ルナはお礼を言って歩き出した。
すっかり、ブチャラティの恋人認定されている自分。
そんな自分に、衝撃の告白をしてきた、10年越しの幼なじみ。
これもみんな、運命を変える自分のスタンドのせいなのだろうか・・・
「どうしろって、言うのよ・・・」
あてもない呟きには、当然、返事はない。
見上げたネアポリスの夜空は、厚い雲が垂れ込めて、月が見えなかった。
「しかし、困ったな・・・ポルポのスタンドを倒してしまったら、入団試験はどうなる?」
と、火のついたままのライターを拾いながら、ジョルノは呟いた。
それを聞いて、ルナは、やっぱりと思った。
やっぱりハルくんは、スタンドについて何も知らない・・・
「倒してなんかいないわ。」
ルナはきっぱりと言った。
「ハルくんは勘違いしてる。今のスタンドは、日光に当たって攻撃をやめただけ。もしそのライターの炎が消えたら、また現れるでしょう。だって<本体>は、ダメージもなくピンピンしてるはずだもの。」
「!!!生きてるんですか?ポルポは!」
「あれは恐らく、遠隔自動操縦型のスタンド。遠隔自動操縦型は、一定の法則に基づいて行動し攻撃してくる。今回で言うなら、ライターを再点火したりそれを見たりした者を自動追跡し、攻撃する。そして、たとえスタンドに何かあっても、本体にはまるで影響がない。きっとポルポは、戦いがあったこと自体、気づいていないわ。」
「戦いに気づいていない・・・ということは、あなたや僕がスタンド使いであるということも?」
「わかるわけがないわ。感じたとしたら、せいぜい十数秒、身体の自由がきかなかった、という程度でしょう。」
「・・・」
ジョルノは、何かを考えるような表情でライターの炎を見つめていたが、ふいに踵を返すと、老人のもとへ行き、片膝をついた。そして、片手で老人の目を覆って、その目を閉ざすと、そのまま、しばらく動かなかった。
ーー杞憂、だったわ。
夕闇に包まれていく中、ルナは、ジョルノを見つめながら思う。
もし彼が、自分の入団試験のことしか考えていない人間だったら・・なんて、心配したけれど。
ハルくんの目を見ればわかる。
彼は、死を悼むことが出来る。
それは恐らく、DIOとは、決定的に違うところだから・・・
ジョルノが学校の事務室に上手く連絡して、老人の遺体は発見された。それを見届けてから、ルナは、彼と一緒にその場を離れた。
「ルナ、お願いがあります。」
ジョルノは真剣な目をして言った。
「スタンドについて教えてください。正直、ブチャラティと戦った時も、今回も、あなたのおかげで危機を乗り切ることが出来た。でもこれからはそうはいかない。だから、きちんと知っておきたいんです。」
ルナは頷いた。
「そうね。それがいいと思う。私の知っている範囲で良ければ、教えるわ。」
Grazie.と言って、ジョルノはちょっと笑って続けた。
「それからもう一つ。僕のことは、<ハルノ>ではなく、ジョルノと呼んでくれませんか。」
予想外のお願いに、ルナは目を丸くした。
「どうして?」
「僕はもうじき16です。いつまでも5歳のままじゃあない。<ハルくん>のままなら、あなたは永遠に僕を子ども扱いだ。」
「そんな、子ども扱いしてるつもりはないけど・・・まあ、3つも下だから、弟っぽい感じがあって。」
ジョルノは無言でライターを花に変えた。
ーーあ、さっきと同じ花だわ。
と、ルナが思った、次の瞬間、二の腕をやや乱暴に引き寄せられ、抱きしめられていた。
突然のことに、頭と身体がフリーズする。
「・・・それが困るんですよ、ルナ。僕は、あなたにひとりの男として見て欲しいんです。」
と、ルナを強く抱きしめたまま、ジョルノはどこか苦しげな声で言った。
・・・背が伸びたな、とは思っていたけれど。
昔は私の方が高かったのに、今は、負けてる。
身体つきも。
肩幅も広い胸も手首の太さもーー、私とは全然、違う・・・
意識した途端、ルナの心臓がどきんと跳ねた。
こ、このシチュエーションは、なに!?はたから見たら、恋人同士みたいじゃない!?
しかも相手は、ブロンドの美少年よ!!
「え、えっとー!うん、わかった。ジョルノって呼ぶね。だから、そろそろ、離してくれる?」
「拒否します。」
「なっーー!?」
何なの、その謎のきっぱり感!!
「回りくどい言い方をしても、鈍感なあなたには通じないでしょうから、はっきり言っておきます。ルナ、僕は、あなたが好きです。」
あ、なんかまた失礼なことをーっ・・!?
「え?」
今、何て・・・
「二度も同じことを言わせないで下さい・・・ルナが好きだ、と言ったんです。10年前、別れも言えないまま、イタリアに連れて来られた後もーー、あなたを忘れたことはなかった。いつか会いに行こうと思っていました。」
「・・・」
ふっ、とジョルノの腕がゆるみ、繊細そうな長い指がルナの頰に触れ、そのまますべるように顎を持ち上げる。
ルナは、胸がしめつけられるように痛んだ。
遠慮のない物言いとは裏腹に、ジョルノがひどくーー、つらそうな表情をしていたから。
「なぜですか?ルナ。もしイタリアで、ブチャラティより先に僕と会っていたら、あなたは僕を好きになったかもしれないのに。僕は10年以上前に、あなたに出会っていたのにーー、たった2週間の差で、あなたの心はもう、彼のものなんですか?僕の入る余地は少しもないんですか?あなたにとって、僕よりも彼の方が大切な存在ですか?」
「そんなー・・・」
憂いをたたえたエメラルドグリーンの瞳の中で、呆然としたルナの顔が揺れている。
「そんなこと、考えたことない・・・私には、どっちも大切だわ。ハルくんも、ブローノも・・・」
「ーまた。」
あ、ついハルくんってーと、ルナが思った時、
「ーー!」
目の前には、伏せられた長い金色の睫毛。
それを見てルナは、自分が、ジョルノにキスされていることに気づいた。
頭の中が真っ白になるって、こういう時を指すのだろう。
ただ・・・
初めて触れたジョルノの唇は、かすかに震えているような気がした。
「待っ・・て!ーーーージョルノ!!」
はっとして、ルナは、精一杯ジョルノの身体を押して離れた。
すると、
「やっと、呼んでくれましたね。」
と、ジョルノはさわやかに笑って言った。
「し、信じられないっ!!名前を呼ばせるためにキスするなんてっ。少しは反省したらどうなの!?ばかハルージョルノっ!」
思いきり叫ぶと、ルナは、熱くなった顔を隠すように身を翻した。
途端、背中から声が届く。
「送ってあげられなくてすみません。ライターがあるので。気をつけてください。」
「気にしないでっ!あなたの方がよっぽど危険よっ!」
「この花は、リナリアです。」
ーーえ?
その声の真剣な響きに、思わずルナは足を止めて振り向く。
ジョルノの手の中で、ゴールド・エクスペリエンスの輝きに包まれた、白く可憐な花。
首を傾げるルナに向かって、ジョルノはエメラルドの瞳をせつなげに細めた。
「キスしたのは、名前を呼んで欲しいからではないですよ・・・」
17.5
ホテルのそばにある花屋が、ちょうど、店じまいを始めている。
ルナは、思わず立ち止まって、ショーケースを眺めた。
「何かご入り用ですか、シニョリーナ。」
店主らしい男に尋ねられて、はっとする。
「あ、いえ・・・<リナリア>ってお花、あるかしら。」
「ああ、ありますよ。花は小さいが、可愛いんで今の時期は小さいブーケなんかにも使える。花言葉もロマンティックだしね。」
「花言葉?」
「そう。リナリアの花言葉は、<この恋に気づいて>、でしょう?」
「!ーー・・・」
「ところで、お嬢さん、もしかしてブチャラティさんがいつも花を贈ってる方じゃあないですか?ホテル・サン・ピエトロには、うちも花をおろしてるから。見かけたことがあるんだ。いやあ、やっぱり綺麗な人だねえ。天使かと思ったよ。さすがブチャラティさんの恋人だね。美男美女でお似合いですよ。あ、そうだ、これ、持って行ってください。」
一気にまくしたてた後、人の良さそうな店主は、リナリアの花束をルナに押しつけるように渡した。ルナがお金を払おうとすると、店主は笑って遮った。
「ブチャラティさんの恋人からお金はもらえないよ。あの人には世話になってるからね。」
ルナはお礼を言って歩き出した。
すっかり、ブチャラティの恋人認定されている自分。
そんな自分に、衝撃の告白をしてきた、10年越しの幼なじみ。
これもみんな、運命を変える自分のスタンドのせいなのだろうか・・・
「どうしろって、言うのよ・・・」
あてもない呟きには、当然、返事はない。
見上げたネアポリスの夜空は、厚い雲が垂れ込めて、月が見えなかった。