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16
事件は、寮の目前で起きた。
階段を掃除していた用務員が、ジョルノとルナに気づかず、バケツの水をぶちまけたのだ。
「すまんな。しぶきだけで、水がかからなくて良かった良かった。」
ジョルノは、とっさに身を引いたので、確かに身体にかかる水は避けたものの・・・
「ハルくん・・・!」
ルナは目を見開いて、ジョルノの濡れた両手を見ている。
「なんてことだ・・・」
そっと両手を開くと、濡れたライターの炎は、やはり、消えていた。
ーーマズイぞ!!
「もう一度、ポルポに頼んだら、再トライさせてもらえるのかしら・・・?」
と、ルナが呟いた。
「いや・・・そんや甘い奴なら、こんなテストで僕を試したりしないでしょう。」
どうするーー!?
「おや、そのライター、点かなくなったかのう?壊しちまったのかのう?ワシのせいで。」
いいえ、あなたは関係ないですーーそうジョルノが言う前に、老人は、ジョルノが石段の手すりに置いたライターを取ると、
ーーカチッ!!
「!!!?」
一瞬、炎は勢い良く吹き出したかと思うと、何事もなかったかのように再び赤々と燃えていた。
「すごい明るいんでびっくりしたが、でも、何も問題は無いようじゃがのう。」
思わず、ジョルノはルナと顔を見合わせた。
「そんなはずはない。テストは火が消えるか、点いているか。再点火できたら、テストの意味なんて何もないーー・・・!!」
「確かに・・・おかしいわ、再点火できるなんて。でも考えるのは後にして、ひとまず、ハルくんの部屋へ戻った方がいい。また何らかのアクシデントで、炎が消えてしまうかもしれないもの。」
「ええ・・・」
ジョルノとルナが、寮の入り口を入りかけたその時、
「おまえは再点火したのだ。受けてもらうぞ!!」
まるで地の底から響くような不気味な声とともに、グシャッ、と、何か弾力のある固いものを潰すような音が聞こえた。
振り向いた視界に飛び込んできたのは、一体の黒衣のスタンドと、そのスタンドに宙づりにされた用務員の老人の姿だった。
そして、老人の額から後頭部を貫く、黄金色の矢ーーーー。
「バカな!!きさま、何をやっているんだ!!」
老人を貫いた矢が、スタンドの口の中に戻ると同時に、老人の額から血しぶきが飛んだ。
ーーいや、違う!!
老人の身体は階段の下にあるーーならば、矢に貫かれたのは老人の魂なのか!?血しぶきに見えるのは、生命エネルギー!?
「この魂は、選ばれるべきものではなかった。」
そう言って、スタンドが無造作に老人の魂を放ったその時、ジョルノの隣から、ルナが階段下へ飛び降りた。そして、魂と重なるようにしてゆっくりと倒れる老人の身体を、片膝をつきながら捕らえる。
「死んでる・・・」
しかし時すでに遅く、ルナは、老人をそっと地面に降ろした。
ふわり、と、プラチナ色のオーラが炎のようにルナの全身を包む。
「アブソリュート・ブレス。」
ルナの声と同時にスタンドが現れ、階段にいる黒衣のスタンドに襲いかかった。
アブソリュート・ブレスの能力によって支配されたスタンドは、なす術もなく攻撃を受けている。
「待ってくださいルナ!!こいつは、ポルポのスタンドだ!間違いない!」
「だから何。」
「ー!!」
その声のあまりの冷たさは、ジョルノを絶句させた。
「組織の幹部のスタンドであってもなくても、こいつは、無関係なこのおじいさんを殺した。この人には、きっと家族もいるのに。そんな人の命を奪う権利は誰にもない。こいつも、そして、もしポルポが命じているのなら、ポルポも死をもって償わせる。」
ぞくり、と、ジョルノは背筋が凍りつくような感覚に襲われた。
ルナの、その横顔は、先程までの無邪気さや愛らしさが消え去り、代わりに、近寄りがたいほどの気高さがあった。
ーールナは、本気だ。
ポルポが、ギャングの幹部だとか、ブチャラティの上司だとかは関係なく、ただただ純粋な怒りで、罰を与えようとしている。
『ねえ。どうして、泣いてるの?』
『私のおうちで、一緒にごはん食べよう。』
『大丈夫だよ。私がハルくんのそばにいるから。』
・・・ああ、思い出した。
ルナは、昔からこういう人だった。
何か行動する時に、相手に対して対価を求めない。
気に入られようとか、上手く利用しようとか、同情するフリとか、そんなある意味で人間らしい邪な計算が、一切ない。
どこまでも純粋で、自由ーーーーーー。
そして・・・
ジョルノは、拳を握りしめた。
母親からすら与えられなかったー、見返りを求めない優しさを、幼い自分に与えてくれた、唯一の人だ・・・
「ルナ!!」
ジョルノは、ルナに駆け寄りながら叫んだ。
「ライターの点火は、僕の行動が原因です。この老人はどうしようもなかった・・・自分の行動は正しいと信じているが、すごくドス黒い気分だ・・・」
ルナは何も言わず、その菫色の眼ざしだけをジョルノに移した。
「僕には、正しいと信じる夢がある。これは、僕がケリをつけます!」
「・・・」
ルナのスタンドが、その姿を消す。
「ありがとうございます、ルナ・・・」
「・・・礼を言うのはまだ早いわ。」
ポルポのスタンドが、階段の影に手を伸ばすと、吸い込まれるように消えた。
「影の中に逃げ込んだ!?」
「アブソリュート・ブレスがあれだけ攻撃しても致命傷まではいかない。どうやらあいつは、日光の中に引きずり出さないといけないようね。」
「危ないっ!!」
ジョルノは、ルナの身体を片手で抱くようにして陽ざしの方へ押し出した。
突然、階段から延びた影に、ポルポのスタンドの手が現れ、ルナの足を掴もうとしていたのだ。
「こいつは、影の中を移動できるのか!?しかもすごい速さで!!」
「おまえたちも、再点火を見たな。」
ポルポのスタンドが影の中に立ち上がる。
「チャンスをやろう。<向かうべき二つの道>を!一つは、生きて選ばれる者への道。もう一つは、さもなくば死への道ーー!!」
「向かうべき二つの道・・・!?」
老人は死んだ。
では、生きて選ばれる者とはーーー・・・
「あの矢・・・」
ふと、ポルポのスタンドを厳しい表情で見すえたまま、ルナが呟いた。
「まさか、あの矢は、<弓と矢>のーー・・・なぜ、あの矢がイタリアに?なぜー、なぜ、ハルくんの所に・・・!?」
「矢・・・とは、あの老人を貫いた矢のことですか?どういうことですか?教えてください、ルナ!」
「・・・詳しく説明している時間がないわ。もうすぐ太陽が校舎の陰に隠れる。とにかくあの矢はー、私が考える通りの矢なら、矢に貫かれた者はスタンド使いになる。もちろん全員じゃあない。大半は命を落とす。あのおじいさんのように。」
「!!!」
<生きて選ばれる者>とはすなわち、スタンド使いを指しているのか。
「ハルくん、今のように確実に奴の姿が見えている状態なら、私のスタンドを使えば日光の中に引きずり出すことができる。けれど、もし日が落ちたら・・・」
「わかっています。まずはここを離れましょう、ルナ。校舎の影が延びてきた!」
ジョルノはライターの火が消えないように注意しながら、日なたの方へ走った。
ーーが、
「っ!!!?」
ものすごい力で足を抑えつけられ、見ると、木の影から伸びた黒い腕が、ジョルノの足首をがっちりと掴んでいた。
いつの間に!!どうやって移動したんだ!?
ルナがはっとして空を見上げた。
「カラスだわ!カラスの影に入って移動してる!!」
マズイ!!影の中へ引きずりこまれる!!
「ゴールド・エクスペリエンス!!」
「ハルくん!このスタンドに打撃はー」
「いいえ。」
ジョルノは、右の手のひらを石畳の地面につけたまま言った。そこには、今、ゴールド・エクペリエンスで開けた亀裂が入っている。
「こいつを攻撃するんじゃあない・・・これがいいんです!!」
直後、ポルポのスタンドが絶叫して苦しみ始めた。
太陽の光をその全身に浴びてーーーー。
「木を成長させて、枯れさせたの・・・!?
そのために地面をー、根から生命エネルギーを注ぐためにーー!」
ジョルノは頷いて、逃げ込まないように亀裂を踏みつけてふさいだ。
「ゆっくりと味わいな、日光浴を。たったそれ一つだけだ、おまえの行く道はーー!」
夕陽のあたる位置で、さらにゴールド・エクスペリエンスを打ち込む。
断末魔の叫び声をあげたポルポのスタンドは、黒い霧となって消えた。
事件は、寮の目前で起きた。
階段を掃除していた用務員が、ジョルノとルナに気づかず、バケツの水をぶちまけたのだ。
「すまんな。しぶきだけで、水がかからなくて良かった良かった。」
ジョルノは、とっさに身を引いたので、確かに身体にかかる水は避けたものの・・・
「ハルくん・・・!」
ルナは目を見開いて、ジョルノの濡れた両手を見ている。
「なんてことだ・・・」
そっと両手を開くと、濡れたライターの炎は、やはり、消えていた。
ーーマズイぞ!!
「もう一度、ポルポに頼んだら、再トライさせてもらえるのかしら・・・?」
と、ルナが呟いた。
「いや・・・そんや甘い奴なら、こんなテストで僕を試したりしないでしょう。」
どうするーー!?
「おや、そのライター、点かなくなったかのう?壊しちまったのかのう?ワシのせいで。」
いいえ、あなたは関係ないですーーそうジョルノが言う前に、老人は、ジョルノが石段の手すりに置いたライターを取ると、
ーーカチッ!!
「!!!?」
一瞬、炎は勢い良く吹き出したかと思うと、何事もなかったかのように再び赤々と燃えていた。
「すごい明るいんでびっくりしたが、でも、何も問題は無いようじゃがのう。」
思わず、ジョルノはルナと顔を見合わせた。
「そんなはずはない。テストは火が消えるか、点いているか。再点火できたら、テストの意味なんて何もないーー・・・!!」
「確かに・・・おかしいわ、再点火できるなんて。でも考えるのは後にして、ひとまず、ハルくんの部屋へ戻った方がいい。また何らかのアクシデントで、炎が消えてしまうかもしれないもの。」
「ええ・・・」
ジョルノとルナが、寮の入り口を入りかけたその時、
「おまえは再点火したのだ。受けてもらうぞ!!」
まるで地の底から響くような不気味な声とともに、グシャッ、と、何か弾力のある固いものを潰すような音が聞こえた。
振り向いた視界に飛び込んできたのは、一体の黒衣のスタンドと、そのスタンドに宙づりにされた用務員の老人の姿だった。
そして、老人の額から後頭部を貫く、黄金色の矢ーーーー。
「バカな!!きさま、何をやっているんだ!!」
老人を貫いた矢が、スタンドの口の中に戻ると同時に、老人の額から血しぶきが飛んだ。
ーーいや、違う!!
老人の身体は階段の下にあるーーならば、矢に貫かれたのは老人の魂なのか!?血しぶきに見えるのは、生命エネルギー!?
「この魂は、選ばれるべきものではなかった。」
そう言って、スタンドが無造作に老人の魂を放ったその時、ジョルノの隣から、ルナが階段下へ飛び降りた。そして、魂と重なるようにしてゆっくりと倒れる老人の身体を、片膝をつきながら捕らえる。
「死んでる・・・」
しかし時すでに遅く、ルナは、老人をそっと地面に降ろした。
ふわり、と、プラチナ色のオーラが炎のようにルナの全身を包む。
「アブソリュート・ブレス。」
ルナの声と同時にスタンドが現れ、階段にいる黒衣のスタンドに襲いかかった。
アブソリュート・ブレスの能力によって支配されたスタンドは、なす術もなく攻撃を受けている。
「待ってくださいルナ!!こいつは、ポルポのスタンドだ!間違いない!」
「だから何。」
「ー!!」
その声のあまりの冷たさは、ジョルノを絶句させた。
「組織の幹部のスタンドであってもなくても、こいつは、無関係なこのおじいさんを殺した。この人には、きっと家族もいるのに。そんな人の命を奪う権利は誰にもない。こいつも、そして、もしポルポが命じているのなら、ポルポも死をもって償わせる。」
ぞくり、と、ジョルノは背筋が凍りつくような感覚に襲われた。
ルナの、その横顔は、先程までの無邪気さや愛らしさが消え去り、代わりに、近寄りがたいほどの気高さがあった。
ーールナは、本気だ。
ポルポが、ギャングの幹部だとか、ブチャラティの上司だとかは関係なく、ただただ純粋な怒りで、罰を与えようとしている。
『ねえ。どうして、泣いてるの?』
『私のおうちで、一緒にごはん食べよう。』
『大丈夫だよ。私がハルくんのそばにいるから。』
・・・ああ、思い出した。
ルナは、昔からこういう人だった。
何か行動する時に、相手に対して対価を求めない。
気に入られようとか、上手く利用しようとか、同情するフリとか、そんなある意味で人間らしい邪な計算が、一切ない。
どこまでも純粋で、自由ーーーーーー。
そして・・・
ジョルノは、拳を握りしめた。
母親からすら与えられなかったー、見返りを求めない優しさを、幼い自分に与えてくれた、唯一の人だ・・・
「ルナ!!」
ジョルノは、ルナに駆け寄りながら叫んだ。
「ライターの点火は、僕の行動が原因です。この老人はどうしようもなかった・・・自分の行動は正しいと信じているが、すごくドス黒い気分だ・・・」
ルナは何も言わず、その菫色の眼ざしだけをジョルノに移した。
「僕には、正しいと信じる夢がある。これは、僕がケリをつけます!」
「・・・」
ルナのスタンドが、その姿を消す。
「ありがとうございます、ルナ・・・」
「・・・礼を言うのはまだ早いわ。」
ポルポのスタンドが、階段の影に手を伸ばすと、吸い込まれるように消えた。
「影の中に逃げ込んだ!?」
「アブソリュート・ブレスがあれだけ攻撃しても致命傷まではいかない。どうやらあいつは、日光の中に引きずり出さないといけないようね。」
「危ないっ!!」
ジョルノは、ルナの身体を片手で抱くようにして陽ざしの方へ押し出した。
突然、階段から延びた影に、ポルポのスタンドの手が現れ、ルナの足を掴もうとしていたのだ。
「こいつは、影の中を移動できるのか!?しかもすごい速さで!!」
「おまえたちも、再点火を見たな。」
ポルポのスタンドが影の中に立ち上がる。
「チャンスをやろう。<向かうべき二つの道>を!一つは、生きて選ばれる者への道。もう一つは、さもなくば死への道ーー!!」
「向かうべき二つの道・・・!?」
老人は死んだ。
では、生きて選ばれる者とはーーー・・・
「あの矢・・・」
ふと、ポルポのスタンドを厳しい表情で見すえたまま、ルナが呟いた。
「まさか、あの矢は、<弓と矢>のーー・・・なぜ、あの矢がイタリアに?なぜー、なぜ、ハルくんの所に・・・!?」
「矢・・・とは、あの老人を貫いた矢のことですか?どういうことですか?教えてください、ルナ!」
「・・・詳しく説明している時間がないわ。もうすぐ太陽が校舎の陰に隠れる。とにかくあの矢はー、私が考える通りの矢なら、矢に貫かれた者はスタンド使いになる。もちろん全員じゃあない。大半は命を落とす。あのおじいさんのように。」
「!!!」
<生きて選ばれる者>とはすなわち、スタンド使いを指しているのか。
「ハルくん、今のように確実に奴の姿が見えている状態なら、私のスタンドを使えば日光の中に引きずり出すことができる。けれど、もし日が落ちたら・・・」
「わかっています。まずはここを離れましょう、ルナ。校舎の影が延びてきた!」
ジョルノはライターの火が消えないように注意しながら、日なたの方へ走った。
ーーが、
「っ!!!?」
ものすごい力で足を抑えつけられ、見ると、木の影から伸びた黒い腕が、ジョルノの足首をがっちりと掴んでいた。
いつの間に!!どうやって移動したんだ!?
ルナがはっとして空を見上げた。
「カラスだわ!カラスの影に入って移動してる!!」
マズイ!!影の中へ引きずりこまれる!!
「ゴールド・エクスペリエンス!!」
「ハルくん!このスタンドに打撃はー」
「いいえ。」
ジョルノは、右の手のひらを石畳の地面につけたまま言った。そこには、今、ゴールド・エクペリエンスで開けた亀裂が入っている。
「こいつを攻撃するんじゃあない・・・これがいいんです!!」
直後、ポルポのスタンドが絶叫して苦しみ始めた。
太陽の光をその全身に浴びてーーーー。
「木を成長させて、枯れさせたの・・・!?
そのために地面をー、根から生命エネルギーを注ぐためにーー!」
ジョルノは頷いて、逃げ込まないように亀裂を踏みつけてふさいだ。
「ゆっくりと味わいな、日光浴を。たったそれ一つだけだ、おまえの行く道はーー!」
夕陽のあたる位置で、さらにゴールド・エクスペリエンスを打ち込む。
断末魔の叫び声をあげたポルポのスタンドは、黒い霧となって消えた。