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12
ジョルノのちぎれかけた左腕は、ひとまずブチャラティにジッパーで留めてもらった。
ルナは、その腕にそっと触れて目を閉じた。
「アブソリュート・ブレス。」
「ーー!!」
しばらくすると、ジョルノの腕がつながり、彼は呆然と自分の手を見つめた。
「驚いたな・・・ルナのスタンドは、傷の治癒まで出来るのか?」
ブチャラティの問いかけに、ルナは首を横に振った。
「いいえ、違うの。今のはハルくんの腕を支配して、皮膚や筋肉や骨や血管にー、さまざまな組織に、元に戻るように命令したにすぎない。私のスタンドは、短い間だけど対象を操ることが出来る。本来なら、実際に私が自分の目で見た範囲でしか出来ないのだけれど、人体の構造はほぼ共通だから、予備知識があれば今のようなことが出来る時もある。」
「つまり、ルナの頭の中でイメージが出来れば可能、ということか?」
「その通り。」
ルナは、ブチャラティの理解の速さに感心しつつ、ジョルノの横に腰かけると、
「私は医者じゃない。だから、表面上はつながってるけど、中身は、骨や主要な血管や神経ぐらいしかつながってないのよ。」
仗助のクレイジー・ダイヤモンドなら、完璧に治せるけど。
「充分です・・・ルナ、ありがとうございます。あなたのおかげで、片腕を失くさずに済んだーーいや、命も・・・かな。」
そう言って、ジョルノはちょっと笑った。
その笑顔には、少しだけ10年前の面影があるように思えた。
「ハルくんの髪、染めてるわけじゃあなさそうだけど・・・昔は黒髪だったよね?」
と、ルナは気になっていたことを尋ねた。
「少し前に、急に金髪に変わったんです。ちょうど、この妙な力が現れた頃に。」
「・・・」
スタンド能力の発現時、身体的な変化が起こることは時々ある。
DIOも、金髪だった。
「助かったのは俺の方だ。」
ブチャラティは腕を組んで続けた。
「あの状況で、おまえは俺に攻撃を仕掛けてきた。あの時、ルナがスタンドを発動せず、ゴールド・エクスペリエンスをもう一度食らっていたら、俺はまた感覚が暴走し、何も出来ないまま、おまえにトドメを刺されておしまいだっただろう。」
「僕は、あんたにトドメを刺すつもりは無かった。もし僕のゴールド・エクスペリエンスが一瞬早くあんたに叩きこめたら、それで終わりにするつもりだった。」
と、ジョルノはきっぱりと言った。
「なぜだ?なぜ、俺への攻撃をやめる?」
「・・・」
ジョルノは、何かを考えるような表情で、組んだ脚の膝を指先でトントンと叩いた。
そして、ブチャラティをちらりと見て言った。
「あんたが、良い人だからかな。」
ルナは目を見張ってジョルノを見た。
そのエメラルドグリーンの瞳は真剣で、冗談を言っているわけではない。
「あんたは、さっき、僕への攻撃を一瞬ためらったから、あんたへの攻撃を止める事にしたんだ。ブチャラティ、あんたは自分から外したあの少年の腕を見た時、あの<腕の異常>に気づいてショックを受けて、一瞬攻撃を止めた・・・ですよね。」
ーーあの時・・・!!
ルナは、ブチャラティがダミーの腕を切り離した瞬間、動きを止めたことを思い出した。
「腕の異常・・・?」
「注射針の痕ですよ、ルナ。あの少年はーー・・・まだ12、3歳くらいでしょうが、麻薬をやっている。」
思わずルナはブチャラティを見た。
あの日、アマルフィで聞いた哀しい過去。
ブチャラティの父親の死の原因となり、彼をギャングにしたその元凶は、麻薬だった。
「麻薬をやっているあの<腕>に、ショックを受けて。あんたがショックを受けた一瞬の時間があったからこそ、僕は腕を切り離し、ゴールド・エクスペリエンスを発動する時間ができた。だからもし叩き込めたら、攻撃はもうそこで終わらせようと思ったんです。」
ブチャラティは厳しい表情のまま、黙って聞いていた。
「麻薬をやりたいヤツがやるのは勝手だ。個人の自由ってものがあるし、死にたいヤツが自分の死に方を決めるのだって自由だ。だがしかし!この街には、子供に麻薬を売るヤツがいて、そんなヤツは許さない・・・!!と、<ブチャラティ、あんたは>そう思っている。」
「・・・」
「そして、その少年に麻薬を売っているのはあんたのとこのボスだ。そこにあんたは、<矛盾>を感じている・・・」
「・・・だとしたら、どうだと言うんだ?」
と、ブチャラティは低い声で言った。
ジョルノはゆっくりと立ち上がって、ブチャラティを正面から見た。
「お互い、ルナに助けてもらったせいもあるかもしれないけど・・・あんたはもう、僕を殺したりはしませんね、ブチャラティ。なぜならあんたは、僕の仲間になるからだ。僕はあんたのボスを倒して、この街を乗っ取るつもりでいる。」
ブチャラティは目を見張った。
もちろん、ルナも。
「何だと!?」
「子供に麻薬を流すようなギャングを消し去るには、自らギャングにならなくっちゃあいけないってことさ。」
「それはつまり、俺たちの組織に入団するということか?本気で言っているのか?それがどういうことか、意味がわかって言っているのか!!」
「ええ。この街を乗っ取るには、街を支配する組織に入ってのし上がって行くしかない。」
言ってジョルノは、まるで誓いを立てるように自分の右手のひらを胸に当てた。
「ブチャラティ、僕は、<ギャング・スター>になります!!」
ーーああ、彼は。
ルナは、一点の曇りもないジョルノの晴れやかな表情を見て、思わずにはいられなかった。
この金色のオーラ。このカリスマ性。
ハルくんは・・・ジョルノ・ジョバァーナは、間違いなくDIOの息子だ。
そして、ジョースター家に流れる正義の血。
何よりそれが、承太郎さんのように、ジョルノにも確実に受け継がれている・・・
「・・・」
ふと、ブチャラティのサファイアブルーの瞳が、ルナを捉える。
海よりも深く、静かに、何かを確かめるように。
そして一度目を閉じた後、ジョルノを正面から見すえた。
「ーーいいだろう。」
そう言ったブチャラティの瞳の中には、決意のような光が見えた。
「もし涙目のルカをやったのがおまえだとバレた時や、ボスを倒そうとしていることが途中でバレた時は、俺はお前を助けない。裏切者は誰も助けられないからな・・・自分の失敗は、自分で償うんだ。」
「・・・」
「何より、俺には守るべきものがある。それ以外は、俺は、自分の腕をひきちぎったほどのおまえの気高き<覚悟>と、黄金のような <夢>に賭けよう、ジョルノ・ジョバァーナ。」
ルナは、胸が熱くなるのを感じた。
ブローノは、見抜いた。
ハルくんが・・・ジョルノ・ジョバァーナが、ただの少年ではないことを。
圧倒的な<何か>が、備わっていることを。
きっと、二人は、お互いに力強い味方となるに違いない。
それが、ルナには嬉しかった。
ジョルノのちぎれかけた左腕は、ひとまずブチャラティにジッパーで留めてもらった。
ルナは、その腕にそっと触れて目を閉じた。
「アブソリュート・ブレス。」
「ーー!!」
しばらくすると、ジョルノの腕がつながり、彼は呆然と自分の手を見つめた。
「驚いたな・・・ルナのスタンドは、傷の治癒まで出来るのか?」
ブチャラティの問いかけに、ルナは首を横に振った。
「いいえ、違うの。今のはハルくんの腕を支配して、皮膚や筋肉や骨や血管にー、さまざまな組織に、元に戻るように命令したにすぎない。私のスタンドは、短い間だけど対象を操ることが出来る。本来なら、実際に私が自分の目で見た範囲でしか出来ないのだけれど、人体の構造はほぼ共通だから、予備知識があれば今のようなことが出来る時もある。」
「つまり、ルナの頭の中でイメージが出来れば可能、ということか?」
「その通り。」
ルナは、ブチャラティの理解の速さに感心しつつ、ジョルノの横に腰かけると、
「私は医者じゃない。だから、表面上はつながってるけど、中身は、骨や主要な血管や神経ぐらいしかつながってないのよ。」
仗助のクレイジー・ダイヤモンドなら、完璧に治せるけど。
「充分です・・・ルナ、ありがとうございます。あなたのおかげで、片腕を失くさずに済んだーーいや、命も・・・かな。」
そう言って、ジョルノはちょっと笑った。
その笑顔には、少しだけ10年前の面影があるように思えた。
「ハルくんの髪、染めてるわけじゃあなさそうだけど・・・昔は黒髪だったよね?」
と、ルナは気になっていたことを尋ねた。
「少し前に、急に金髪に変わったんです。ちょうど、この妙な力が現れた頃に。」
「・・・」
スタンド能力の発現時、身体的な変化が起こることは時々ある。
DIOも、金髪だった。
「助かったのは俺の方だ。」
ブチャラティは腕を組んで続けた。
「あの状況で、おまえは俺に攻撃を仕掛けてきた。あの時、ルナがスタンドを発動せず、ゴールド・エクスペリエンスをもう一度食らっていたら、俺はまた感覚が暴走し、何も出来ないまま、おまえにトドメを刺されておしまいだっただろう。」
「僕は、あんたにトドメを刺すつもりは無かった。もし僕のゴールド・エクスペリエンスが一瞬早くあんたに叩きこめたら、それで終わりにするつもりだった。」
と、ジョルノはきっぱりと言った。
「なぜだ?なぜ、俺への攻撃をやめる?」
「・・・」
ジョルノは、何かを考えるような表情で、組んだ脚の膝を指先でトントンと叩いた。
そして、ブチャラティをちらりと見て言った。
「あんたが、良い人だからかな。」
ルナは目を見張ってジョルノを見た。
そのエメラルドグリーンの瞳は真剣で、冗談を言っているわけではない。
「あんたは、さっき、僕への攻撃を一瞬ためらったから、あんたへの攻撃を止める事にしたんだ。ブチャラティ、あんたは自分から外したあの少年の腕を見た時、あの<腕の異常>に気づいてショックを受けて、一瞬攻撃を止めた・・・ですよね。」
ーーあの時・・・!!
ルナは、ブチャラティがダミーの腕を切り離した瞬間、動きを止めたことを思い出した。
「腕の異常・・・?」
「注射針の痕ですよ、ルナ。あの少年はーー・・・まだ12、3歳くらいでしょうが、麻薬をやっている。」
思わずルナはブチャラティを見た。
あの日、アマルフィで聞いた哀しい過去。
ブチャラティの父親の死の原因となり、彼をギャングにしたその元凶は、麻薬だった。
「麻薬をやっているあの<腕>に、ショックを受けて。あんたがショックを受けた一瞬の時間があったからこそ、僕は腕を切り離し、ゴールド・エクスペリエンスを発動する時間ができた。だからもし叩き込めたら、攻撃はもうそこで終わらせようと思ったんです。」
ブチャラティは厳しい表情のまま、黙って聞いていた。
「麻薬をやりたいヤツがやるのは勝手だ。個人の自由ってものがあるし、死にたいヤツが自分の死に方を決めるのだって自由だ。だがしかし!この街には、子供に麻薬を売るヤツがいて、そんなヤツは許さない・・・!!と、<ブチャラティ、あんたは>そう思っている。」
「・・・」
「そして、その少年に麻薬を売っているのはあんたのとこのボスだ。そこにあんたは、<矛盾>を感じている・・・」
「・・・だとしたら、どうだと言うんだ?」
と、ブチャラティは低い声で言った。
ジョルノはゆっくりと立ち上がって、ブチャラティを正面から見た。
「お互い、ルナに助けてもらったせいもあるかもしれないけど・・・あんたはもう、僕を殺したりはしませんね、ブチャラティ。なぜならあんたは、僕の仲間になるからだ。僕はあんたのボスを倒して、この街を乗っ取るつもりでいる。」
ブチャラティは目を見張った。
もちろん、ルナも。
「何だと!?」
「子供に麻薬を流すようなギャングを消し去るには、自らギャングにならなくっちゃあいけないってことさ。」
「それはつまり、俺たちの組織に入団するということか?本気で言っているのか?それがどういうことか、意味がわかって言っているのか!!」
「ええ。この街を乗っ取るには、街を支配する組織に入ってのし上がって行くしかない。」
言ってジョルノは、まるで誓いを立てるように自分の右手のひらを胸に当てた。
「ブチャラティ、僕は、<ギャング・スター>になります!!」
ーーああ、彼は。
ルナは、一点の曇りもないジョルノの晴れやかな表情を見て、思わずにはいられなかった。
この金色のオーラ。このカリスマ性。
ハルくんは・・・ジョルノ・ジョバァーナは、間違いなくDIOの息子だ。
そして、ジョースター家に流れる正義の血。
何よりそれが、承太郎さんのように、ジョルノにも確実に受け継がれている・・・
「・・・」
ふと、ブチャラティのサファイアブルーの瞳が、ルナを捉える。
海よりも深く、静かに、何かを確かめるように。
そして一度目を閉じた後、ジョルノを正面から見すえた。
「ーーいいだろう。」
そう言ったブチャラティの瞳の中には、決意のような光が見えた。
「もし涙目のルカをやったのがおまえだとバレた時や、ボスを倒そうとしていることが途中でバレた時は、俺はお前を助けない。裏切者は誰も助けられないからな・・・自分の失敗は、自分で償うんだ。」
「・・・」
「何より、俺には守るべきものがある。それ以外は、俺は、自分の腕をひきちぎったほどのおまえの気高き<覚悟>と、黄金のような <夢>に賭けよう、ジョルノ・ジョバァーナ。」
ルナは、胸が熱くなるのを感じた。
ブローノは、見抜いた。
ハルくんが・・・ジョルノ・ジョバァーナが、ただの少年ではないことを。
圧倒的な<何か>が、備わっていることを。
きっと、二人は、お互いに力強い味方となるに違いない。
それが、ルナには嬉しかった。