虜囚
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「おはよう、ジョルノ。」
軽やかなノックの音とともに、ルナが執務室に入ってくる。
ふわりと、涼やかでかすかに甘い香りが鼻腔をくすぐり、ジョルノ・ジョバァーナは思わず目を細めた。
「おはようございます。今日は早いですね、ルナ。」
「あ、今、今日は、を強調した?」
「先週は40分遅刻、2週間前は25分遅刻です。その前に至ってはー」
「あーはいはい、どうせ遅刻魔ですよー。」
まったく、細かいことまでよく覚えてるんだから。ブツブツ言いながらルナはソファにドサッと腰を下ろした。
あなたのことなら、何でも。
口をついて出そうになった言葉をすんでのところで止める。
危ない。
二人きりになると、いまだ胸の奥で暴れ出す何か。
「・・・ブチャラティは一緒じゃあないんですか?」
抑えるために、一番、効果のある言葉を吐く。
「そこの角で、おばあさん3人組に捕まってる。例によって。」
そんなこちらの心情などどこ吹く風で、ルナはやれやれというふうに肩をすくめると、ソファの肘かけに頬杖をついた。
「まったく、、、よくやるわ。」
口調とは裏腹に、微笑をたたえた美しい横顔。細められた菫色の瞳から、困っている人間を捨て置けない性分の恋人への想いがあふれているように見えた。
週に1度、パッショーネの幹部たちは集まり、ジョルノに対してすべき報告をしつつ、皆で情報を共有する。
ジョルノは、早く皆が来てくれるといい、と思いながら手許の書類に目を落とした。
第三者がいれば、いつもの自分になれるはずだ。冷静沈着でめったに感情を表に出さない、パッショーネのドンとしての自分に。
「ん〜?」
怪訝そうな声とほぼ同時に、巨大な執務机に近づいてくる気配。
艶やかな琥珀色の髪が視界の隅で揺れて、ジョルノは気づかれぬように奥歯を噛みしめた。
「あんまり顔色が良くないみたい。ジョルノ、また徹夜した?」
「いいえ。逆光だからそう見えるんじゃあないですか?」
「そうかなあ〜、、、」
ルナは身をかがめてジョルノの顔を斜めにのぞきこむ。
近づかないで欲しい。
その真珠色に輝く肌や、なめらかな腰や、細い腕に、手を伸ばせば触れられる距離に。
「無理してるんじゃないの?いきなり組織を全部把握しようなんて無茶よ。なんていうか、ハルくんは、昔もそういうとこあったよね。これと決めたら脇目も振らずに一直線、みたいな。」
呼び方が、幼い頃のそれに変わっている。
おそらくルナ本人は無意識に。
タチの悪い人だ、あなたは。
でもそれでも、愛しい。この世界の誰よりも。
「心配してくれてありがとうございます、ルナ。そうですね、あなたの言う通り、少しこんを詰めすぎたかもしれない。今日からもう少し、書類仕事をあなたへ回してもかまいませんか?」
「!!」
にっこりと笑って言うと案の定、真っ青になって部屋の端まで逃げて行くルナ。
ちょうどそこへ扉が開き、フーゴやミスタが現れる。
「お!めずらしくいるじゃん、ルナ。ん、なんだおまえ、青い顔して。」
「じょ、じょるの、、、仕事大変だよね。うん、そうだよね。ちゃんと私も働くから、、、だけど、やっぱり書類関係は、フーゴが適任だと思います、、、」
「何の話です?」
こちらを見るフーゴに軽く首を横に振って微笑む。
「何でもないですよ。」
ルナにとって自分は、3つ下の、弟のような存在。日本で過ごしたわずかな幼少期から、10年経った今もなお。
かつて、ルナには伝えたのだ。
いつもかばってくれた弱々しいハルくん、はもういないのだとー。
自分はもう、<男>なのだと。
あなたが好きです。
もう長い間、ずっとー。
胸に抱いていた気持ちを、彼女にぶつけた。
けれど、ルナが選んだのはー、、、
「あ〜、まあ、あれだ、ジョルノ。なんていうか・・いい女は他にもゴマンといるぜ?」
会議も終わり、執務室はミスタとフーゴとジョルノだけになる。
ミスタの歯切れの悪い言葉が何を言わんとしているのか、わかっている。
別段隠してはいなかったから、旧チームの全員がジョルノの想い人を知っている。
ブチャラティを含めて。
そして、当のルナだけは、ジョルノの自分へ恋情はすでに友情に変わったと考えている。
「そんなに、僕はわかりやすいですか?」
「・・・まあ、俺から見れば。他のことは何考えてるか全然わからねえけど。」
「そうですか。でも仕方ないです。僕は無駄が嫌いですが、手に入らないからと言ってあきらめられる程度なら、それこそ時間の無駄ですから。」
他の女など目に映らない。
自分は、ルナだけが欲しいのだから。
そこで、常にまっすぐ己に向けられる碧く鋭い眼差しが脳裏に浮かび、思わず苦笑がもれる。
「・・・まあ、そうやすやすと渡してくれる相手ではありませんけど。」
ブチャラティは知っている。
ジョルノが、いまだルナを想っていることを。
わかった上で、パッショーネのNo.2として、ジョルノの右腕としての自分の責務を全うしている。
一歩も引くつもりはないとー、寸分の迷いもなく、あの強い意志の宿った瞳は語っていた。
「ま、おまえがそれでいいなら。でもなあ、もーちょっとさあ・・・」
「ミスタ。」
咎めるようなフーゴの声。
その声をどこか遠くに聞きながら、ジョルノは防弾ガラスの窓から外を眺めた。
先ほどのルナの言葉が頭の中に蘇る。
あなたの言う通りだ。
僕は、きっと一生、あなたに囚われる。
軽やかなノックの音とともに、ルナが執務室に入ってくる。
ふわりと、涼やかでかすかに甘い香りが鼻腔をくすぐり、ジョルノ・ジョバァーナは思わず目を細めた。
「おはようございます。今日は早いですね、ルナ。」
「あ、今、今日は、を強調した?」
「先週は40分遅刻、2週間前は25分遅刻です。その前に至ってはー」
「あーはいはい、どうせ遅刻魔ですよー。」
まったく、細かいことまでよく覚えてるんだから。ブツブツ言いながらルナはソファにドサッと腰を下ろした。
あなたのことなら、何でも。
口をついて出そうになった言葉をすんでのところで止める。
危ない。
二人きりになると、いまだ胸の奥で暴れ出す何か。
「・・・ブチャラティは一緒じゃあないんですか?」
抑えるために、一番、効果のある言葉を吐く。
「そこの角で、おばあさん3人組に捕まってる。例によって。」
そんなこちらの心情などどこ吹く風で、ルナはやれやれというふうに肩をすくめると、ソファの肘かけに頬杖をついた。
「まったく、、、よくやるわ。」
口調とは裏腹に、微笑をたたえた美しい横顔。細められた菫色の瞳から、困っている人間を捨て置けない性分の恋人への想いがあふれているように見えた。
週に1度、パッショーネの幹部たちは集まり、ジョルノに対してすべき報告をしつつ、皆で情報を共有する。
ジョルノは、早く皆が来てくれるといい、と思いながら手許の書類に目を落とした。
第三者がいれば、いつもの自分になれるはずだ。冷静沈着でめったに感情を表に出さない、パッショーネのドンとしての自分に。
「ん〜?」
怪訝そうな声とほぼ同時に、巨大な執務机に近づいてくる気配。
艶やかな琥珀色の髪が視界の隅で揺れて、ジョルノは気づかれぬように奥歯を噛みしめた。
「あんまり顔色が良くないみたい。ジョルノ、また徹夜した?」
「いいえ。逆光だからそう見えるんじゃあないですか?」
「そうかなあ〜、、、」
ルナは身をかがめてジョルノの顔を斜めにのぞきこむ。
近づかないで欲しい。
その真珠色に輝く肌や、なめらかな腰や、細い腕に、手を伸ばせば触れられる距離に。
「無理してるんじゃないの?いきなり組織を全部把握しようなんて無茶よ。なんていうか、ハルくんは、昔もそういうとこあったよね。これと決めたら脇目も振らずに一直線、みたいな。」
呼び方が、幼い頃のそれに変わっている。
おそらくルナ本人は無意識に。
タチの悪い人だ、あなたは。
でもそれでも、愛しい。この世界の誰よりも。
「心配してくれてありがとうございます、ルナ。そうですね、あなたの言う通り、少しこんを詰めすぎたかもしれない。今日からもう少し、書類仕事をあなたへ回してもかまいませんか?」
「!!」
にっこりと笑って言うと案の定、真っ青になって部屋の端まで逃げて行くルナ。
ちょうどそこへ扉が開き、フーゴやミスタが現れる。
「お!めずらしくいるじゃん、ルナ。ん、なんだおまえ、青い顔して。」
「じょ、じょるの、、、仕事大変だよね。うん、そうだよね。ちゃんと私も働くから、、、だけど、やっぱり書類関係は、フーゴが適任だと思います、、、」
「何の話です?」
こちらを見るフーゴに軽く首を横に振って微笑む。
「何でもないですよ。」
ルナにとって自分は、3つ下の、弟のような存在。日本で過ごしたわずかな幼少期から、10年経った今もなお。
かつて、ルナには伝えたのだ。
いつもかばってくれた弱々しいハルくん、はもういないのだとー。
自分はもう、<男>なのだと。
あなたが好きです。
もう長い間、ずっとー。
胸に抱いていた気持ちを、彼女にぶつけた。
けれど、ルナが選んだのはー、、、
「あ〜、まあ、あれだ、ジョルノ。なんていうか・・いい女は他にもゴマンといるぜ?」
会議も終わり、執務室はミスタとフーゴとジョルノだけになる。
ミスタの歯切れの悪い言葉が何を言わんとしているのか、わかっている。
別段隠してはいなかったから、旧チームの全員がジョルノの想い人を知っている。
ブチャラティを含めて。
そして、当のルナだけは、ジョルノの自分へ恋情はすでに友情に変わったと考えている。
「そんなに、僕はわかりやすいですか?」
「・・・まあ、俺から見れば。他のことは何考えてるか全然わからねえけど。」
「そうですか。でも仕方ないです。僕は無駄が嫌いですが、手に入らないからと言ってあきらめられる程度なら、それこそ時間の無駄ですから。」
他の女など目に映らない。
自分は、ルナだけが欲しいのだから。
そこで、常にまっすぐ己に向けられる碧く鋭い眼差しが脳裏に浮かび、思わず苦笑がもれる。
「・・・まあ、そうやすやすと渡してくれる相手ではありませんけど。」
ブチャラティは知っている。
ジョルノが、いまだルナを想っていることを。
わかった上で、パッショーネのNo.2として、ジョルノの右腕としての自分の責務を全うしている。
一歩も引くつもりはないとー、寸分の迷いもなく、あの強い意志の宿った瞳は語っていた。
「ま、おまえがそれでいいなら。でもなあ、もーちょっとさあ・・・」
「ミスタ。」
咎めるようなフーゴの声。
その声をどこか遠くに聞きながら、ジョルノは防弾ガラスの窓から外を眺めた。
先ほどのルナの言葉が頭の中に蘇る。
あなたの言う通りだ。
僕は、きっと一生、あなたに囚われる。
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