追憶と幸福の間で
視線には鈍いほうだった。
いや、気づかないふりをするのが得意だった、というのが正しい。
自分も客観視できないやつが、他人からの評価を受け取ってはいけない気がしていた。
過去も、今も、自分が許せなかった。
ジニアくん。
ずっと彼の才能とひたむきさに憧れると同時に、自分はどう足掻いても凡人なのだと思い知らされ、もっと努力しなければと必死だった。
それでも彼の穏やかな笑顔は、私の心に癒しをくれていた。
近づきたいのに、近づけない。
そういうひとだった。
そんなひとが、私のことを“夜明け”のようだと言ってくれた。
劣等感で潰されそうになりながらも生きてきた私を、力強いと言って、優しく触れてくれた。
彼の口から聞いた、“たいせつなひと”。
彼にとって私は、そういってもらえるひとだったのだと思うと、すごく嬉しかった。
憧れと好意の滲む、柔らかな眼差しを見た時、過去の私が肯定された気がした。
フリード。
ジニアくんだったら、きっと違うところに目をつける。
ああでもない、こうでもない、とうまくいかない研究。
やっぱり私だけじゃ何の成果も上げられない、とひとりになっても付きまとう劣等感と焦燥感。
何を信じて進めばいいのだろうか。
目的すらも見失いかけていた。
そんな時、彼は立ち上がるための手ではなく、私が自由になるための翼を貸してくれた。
今のあなたじゃダメだ、ではなく、そのままでいいと言われた気がした。
ひとに優しくすることも忘れ、ひどい有様だったのに。
常に明るい、頼れるリーダーの彼は、いつもみんなのことを気にかけてくれていた。それは、私に対してもそうなのだと思った。
最初は、もうクセになってしまっていた、気づかないふりであしらっていたのに、これでもかと好意をぶつけてきた。
私の何がいいんだろう。
そう思って、「なんでそこまで私に時間を割くの?」と言ってしまった。失言だった。明るい彼の顔を一瞬、曇らせてしまった。罪悪感からか、彼が提案した“お試し”を承諾した。ちゃんと向き合うこともできないのに、無責任に頷いてしまったと、後から少し後悔した。
それをやめたいと言われた時、私のせいだと思った。
けれど、彼は真っ直ぐに私の眼を見て、好きだと言ってくれた。
私に歩き方を教えてくれたひと。
彼が笑うと、力が湧いた。
言葉は支えとなって、前へ進むための勇気に変わる。
ずっと一緒にいてくれたポケモンたち。
クラベルさん。
ライジングボルテッカーズのみんな。
私が自分と向き合えた時、見ていてくれていたひとたちの存在に気づけた。きっと、もっといたはず。
想いを伝えてくれるひともいて、こんなにも、しあわせなことはない。
今なら伝えられる。
私がそばにいたいのは――
ジニアルート『
追憶のジニア その先 Stay With Me This Time』
フリードルート『
フリードの幸福 その先 Walk Beside Me』
write 2025/7/4