その後、暗闇の中で
「わたしたちってどんな関係だっけ」
ベッド脇に座って携帯を見る彼のぼんやりと照らされた横顔を見ながら、わたしは言った。
「はあ?なんだよそれ」
急ぎの仕事だと言って、画面を操作する彼はわたしの方を見向きもせず、言った。
どちらともとれない言葉と声色に、何故そんな事を呟いてしまったのかと、今更ながらに後悔した。
わたしは、彼のことがすきだった。
たとえ気持ちがなくてもそのあたたかい腕に抱かれることが嬉しかった。
ずくずくと軋みながら打つ嫌な鼓動が息を浅くさせる。
「ごめんなさい」
絞り出すように言った言葉は思ったより掠れていて、向こうを向いたままの彼に届いたのかわからない。
「ごめんね」
もう一度そう言うと、彼は携帯を枕横に放り投げて、部屋にまた暗闇が戻ってくる。
「何が足りなかった?言葉か?寝た数か?」
黒い影が覆い被さって、その黒から溢れるには切なすぎるほどのさらさらとしたガラスのような声で言った。
わたしが何か勘違いをしているようだと気づくには十分すぎるものだった。
write 2024/1/19