友達以上両想い未満
俺の意中の相手は、彼氏に不満が出る度、俺を飲みに誘う。
ただ愚痴を聞いて欲しいのか、男心を教えて欲しいのか、はたまた他に別の理由があるのか、その意図はわからない。何で女友達じゃ駄目なんだって聞いた事があるが「惚気に捉えられちゃってさ」と答えただけだった。俺だって最初はそう思ったがな。だから当たり障りのない返事と相槌を打ってやり過ごす。
今日は話を聞くようになって何人目だったかのダメ男の話だ。
「でさ、せっかくご飯作ったのに、腹は減ったけどそれ食べる気分じゃないからって、目の前でカップ麺食べたんだよ?」
はぁ、もうそれダメ男っていうより人としてどうなんだ。
「ご飯ある?って聞いてさー、メニュー聞いた後にだよ、酷くない?」
聞いてる?と箸を置く。聞いているが何と言えばいいのかわからないんだよ、さすがにな。
「で?この前はなんだったか、ああ、靴下丸めて洗濯機だっけ」
「相澤はよく覚えてるねー、ホント彼にも見習って欲しいよ」
つい口から出そうになる「そんなヤツ別れちまえよ」という言葉を飲み込む。
「はぁ、もう疲れちゃったなぁ。なんでこんな男運悪いんだろ」
それはお前が引き寄せてるんだろうが。
「
〇〇は世話焼き過ぎなんだよ、頼ってくるヤツじゃなくて自立したヤツ探せ」
「えぇ、だって、頼られたら嬉しくない?」
「頼られる方向性が母親なんだよ、望んでるのはそうじゃないだろ?」
確かに、と言いながら次の焼き串に手を伸ばす。
「今日、すごくアドバイスしてくれるじゃん、どうしたの?」
「毎度、彼氏の、しかも歴代何人だ?毎回毎回聞かされるこっちの身にもなって欲しいよ。そろそろしっかりした彼氏見つけて来い」
…嫌な間、言い過ぎたか。
「しっかりした彼氏見つけたら、相澤と飲む理由なくなっちゃうじゃん」
「はぁ?別に飲みたいから誘うでもいいだろ」
「しっかりした彼は多分、男友達と飲むの許さないよ」
嫌じゃない?彼女が他の男とサシで飲んでるとか、と言って水を飲む。確かに、俺は嫌だな、というか行かせない。
「それもそうだな」
「でしょ?相澤はそう言うと思った」
一体彼女は何が言いたいんだろうか。
これは俺に言い寄って欲しいってことか?それとも一般的なしっかりした男として認識されているだけか?だが、俺とは飲みに行きたいとは思ってくれているということは、どう言うことだ?ただの男友達か、恋愛対象なのかでは変わってくる。
「相澤みたいな彼だったら幸せになれるのかなあ」
「あ?それってどういう…」
「や!忘れて!ごめん、聞かなかったことにして」
「無理。忘れない。
〇〇の事幸せにできる男がここに居るってこと、
〇〇こそ忘れるな」
だからそのダメ男とはさっさと別れて、俺のところに来い。
write 2023/6/22