甘える係
〇〇が久しぶりに会う友人と食事へ行く日。
「ひざしー、コレ!このヘアアレンジやってー」
「オッケー、ん?いいね、可愛い!ぜってー似合う!俺がもーっと可愛くしてやるヨ」
また別の日。
「ひーざーしーくん、爪塗ってー」
「オケー、ワオ!ヌーディで色っぺー色!ちょー俺好み」
そしてまた別の日の夜。
「ひーくん、ひーくん、髪乾かしてぇ」
「お疲れだな。ヨシ、とっておきのヘアオイルで乾かしてやるよ」
なんだこれは。そりゃ山田の方が器用だし、そういう話題にも乗ってやれるだけの知識がある。だが、少しくらい俺に振ったってよくないか?
「ねー、ひざしー、」
「生憎、山田は電話中です」
「わ、消太、びっくりしたあ」
「それ、俺にもできるやつか?また山田に頼み事しようとしてただろ?」
「ん?ああ、なんか柄物のシャツ持ってないかなーって」
こんなコーデしたくって。と携帯の画面を見せてくる。俺のクローゼットをひっくり返しても絶対に出てこないような派手な柄のシャツを羽織った女性が写っていた。
「俺は…持ってないな」
「そうだと思って、ひざしに聞こうかなって。でも消太も似合いそうだけどねー」
ほら、こんな風に髪耳にかけてさー。と一生懸命手を伸ばす
〇〇に、「役に立てなくてすまん」と呟けば、「しょうくんは可愛いねえ」と項垂れる俺の頭を撫でる。
「こんなとこでどしたの?そいや、さっき
〇〇ちゃん、俺のこと呼んだ?」
「呼んだー、ねぇ、こういうの持ってない?」
「俺も、
〇〇の役に立ちたい。甘えられたい」
「ん?」「え?」
「消太は私に甘える係だと思ってた」
「そうそう、この間だってなア」
「
〇〇ー、ここ座って」
「はいはーい、膝枕ね、いいよー。はい、どうぞ」
また別の日。
「
〇〇、ん」
「ん?はい、ぎゅー」
そのまた別の日の夜。
「
〇〇、髪やって」
「またびちゃびちゃで出てくるー、しょうがないなあ、ほらそこ座って」
「ね?」「な?」
「俺、そんなに
〇〇に甘えてたか?」
「無意識だったのぉ?か、可愛すぎるよ、消太」
おわり!
write 2023/8/26