立海大附属
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仁王と別れてまた付き合う話(ブン太がでしゃばります)
同窓会のお知らせ。そう書かれたはがきをかれこれ数分眺めている。そういえばスマホからは立海大テニス部のグループLINEがぴょこぴょこなっていた。既読はまだつけていない。
ヴヴヴ…
聞き慣れた音とバイブにスマホが机の上で踊りだす。スマホの画面には«ブン太»の文字。出ないとうるさいしと思って画面をスワイプすれば馬鹿みたいに明るい声が聞こえる。
「あ、出た。仕事終わった?お前まだLINE見てないだろぃ、学年の同窓会のあとテニス部で集まろって話になったんだよ。迎えに行ってやるから同窓会は参加で出せよ」
「ちょっと一方的すぎなんだけど?バカブン太」
「そうでもしねぇと来ねぇじゃん、空けとけよ」
それだけ言うと電話は一方的に切られる。小学生の頃から腐れ縁でずっと同じクラスだったブン太。私が参加しないで出そうとしていたことなんてお見通しというわけか。というか私とジャッカル以外はみんな大学に進んだんだししょっちゅう会ってると思ったんだけど。
別に行きたくないわけじゃない。ただ彼は来るんだろうか、ちゃんと普通に彼と話せるだろうか。そう思うと気持ちは後ろ向きになる。
仁王雅治、1番好きで大切な人。彼と別れて今年で4年。付き合っていた長さよりも1年また別れた時間の方が長くなる。
雅治と付き合ったのは中1の夏休みの終り頃。
それからずっと高1のそれまた夏休みの終りまで彼と付き合っていた。喧嘩なんてほとんどしなくて、いつも2人でくっついて、周りにバカップルとか言われていたっけ。
別れた理由も嫌いになったとか浮気されたとかじゃない。むしろお互い大好きだった。だからお互いの為にさようならをしたのだ。共依存、多分それだったんだと思う。
雅治は立海の高校ではなく外部の工業高校を受験して、私はそのまま立海の高校。県内だし学校が離れてもどうってことないと思ってた。だけど日に日に会えない日々が寂しくなって、私たちは学校に行くふりをして学校ではないどこかへと、電車に乗って遊びに行くようになっていく。
丸1日学校を休んで雅治と動物みたいにずっとセックスをして過ごしたり、放って置いたらまともなご飯を食べない雅治と一緒にご飯を食べたりしてから学校へ向かったり。首筋に惨いほどのキスマークを貼り付けて、それを愛だと思って隠すこともなくクラスに入ればまたクラスが同じになったブン太が酷い顔をするんだ。
そんなガタガタの出席日数でついに私は学校に親と一緒に呼び出されて説教を食らう。別にテストで赤点は取らなかったんだからいいじゃないか。
だって仕方がないじゃない、雅治がいないんだもん。私も工業高校受けたらよかった。
だけど学校生活に支障が出たのは私よりも雅治の方。直接聞いたわけじゃない、高校が変わってもメールのやり取りを頻繁にしていた比呂士が「仁王くんは大丈夫ですか」なんて聞かれるまで思ってもみなかった。雅治は器用で何でも卒なくこなすけれど、私と同じ分だけ休んでいる雅治の出席日数も酷いことになっているだろう。それどころか専門授業の多い雅治の方が私なんかよりも数段に忙しい。
夏休みが始まった頃、雅治は補習があるから少しの間だけ会えないと悲しそうに笑っていた。そこで悟ってしまったんだ。このままだと私たちはダメになるって。
雅治は高校を決める時締切のギリギリまで工業高校と立海を悩み続けた。だけど私は応援するからって言ったんだ、なのに結果私が邪魔してる。
雅治の夢を応援したかったのに。
だからね、さようならすることにしたの。
ごめんね雅治。自分勝手でごめんね。だけど最後にワガママ、この夏休みだけは傍に居させて。最後に思い出に、大好きなあなたの近くにいたい。
「本当によかったんか?」
「なぁに?」
「夏休み最後の日なのに近場の花畑でええんかってことなり。いつもなら夢の国とか行きたい言うじゃろ」
「……うん、でもね、今日はいいのここがいいんだぁ」
雅治が選んでくれたワンピースを着て、雅治が買ってくれた麦わら帽子を被って固く恋人繋ぎをして二人並んで歩く。
2日前から雅治の家にお泊まりをしていつもみたいに意識が飛ぶまでセックスをして体に沢山跡をつけられて大事に抱きしめられる。2日間そうやって過ごした。そしてお泊まりも最終日だるい腰を引きずりながら雅治を起こしてひまわり畑に行きたいと揺さぶれば眠そうな目を擦って「仕方ないのぉ」なんて甘やかす。
こうして雅治と一緒にひまわり畑へとやってきた。カップルや家族連れがおおくひまわり畑の細い道を歩いている。
ひまわりの他の花や、カフェなどもあってそこで軽い昼ごはんを食べたり、ソフトクリームを食べて一息つく。
「雅治、ひまわり迷路だって」
「入りたいんか?」
「入る」
この時私の心臓は壊れてしまうほどバクバクと激しく脈打っていた。このデートで最後。雅治に言わなくてはならない、さようならと。
本当は嫌だ、ずっとそばにいたい。約束したんだ、将来結婚しようねって。付き合った時に約束したんだ、絶対別れたりしないって。ごめんなさい。私は弱いから雅治と別れるくらいしかあなたを縛り付けない方法がわからないの。
「○○疲れとらん?そのサンダルヒール高いじゃろ」
「平気だよ、こうしないとまーくんと距離近くなんないんだもん」
たしかにアスファルトの上を歩くわけじゃないから歩きにくさはあるけれど雅治との身長差を埋めるにはこれくらい高いのを履かないとなかなか埋まらない。
迷路もだんだん深いところへ来て時間が夕方に近くなってきたこともあり迷路には人気が少ない。言わなきゃ、そう気持ちが焦る。だけど優しく笑う雅治の顔を見たら気持ちが揺らいでしまって涙が溢れ出て来てしまう。
「まーくん」
「○○好きじゃ。愛しとる」
「まぁくん…」
「分かっとるよ、お前さんが今から言いたいことも」
「ごめんね、雅治。私とわ…」
肝心な言葉は雅治のキスで塞がれた。誰もいないことをいいことに長い時間私の唇を奪い続けた雅治。その間私はボロボロと零れる涙と抑えきれなくなった感情に雅治に必死にしがみついていた。
「言わんでええ」
「まさ、はるっ、まさはるっ」
「俺が約束破っちゃる、だから○○は約束破らんくてええんじゃよ」
ほらまあ優しい顔で私の頭を撫でる。別れたくない、だけどきっと付き合ってたら私たちは同じことを繰り返す。どうしようもなくて私はひたすらに泣きじゃくった。
「別れよう、○○」
雅治が告白してくれた時の約束、絶対に俺からは別れたいなんて言わん。そう言ってくれた。
最後まで自分を悪者にして、私に残る罪悪感を緩和させようとするなんて馬鹿だ。別れたくないって駄々こねて無理矢理キスするくらいが雅治だと思ったのに。
「さようなら」
最後の言葉が耳に残って私は跳ね起きる。どうやら夢を見ていたようだ、雅治との最後の日の夢。
ふたりの声と離れていく体温。ひまわり迷路の中で私たちは3年間の交際に幕を下ろした。あれからどうやって家に帰ったのか正直記憶がなくて次の人始業式で久々に顔を合わせたブン太を見て盛大に泣き崩れたのだけは覚えている。
やっと思い出さなくなったのに、同窓会のお知らせが来てから毎晩夢に雅治が出てくる。ましてや今日なんてその中学同窓会の当日だと言うのに別れた日の時の夢だなんて。
同窓会の場所は県内のそこそこいいホテル。適当な服を着ていくわけにも行かなくて、慌ててパーティドレスをクローゼットから引っ張り出した。
深い青に黒い飾りのレースリボンが着いている私のパーティードレス。着て歩けばスカートがふわりと空を舞って腰のリボンが体のラインを細く見せてくれる。
靴はリボンとパールで彩られた少し高めのヒール。可愛いけれど履いてスタスタ歩くにはまだ私は慣れなくてこういう時しか履けないのが少しだけ悲しい。
あのころよりも多少上達したお化粧。
まつげをくるんと上向きにしてマスカラで伸ばして、まぶたにはピンクとブラウンのシャドーを乗せる。アイラインを控えめに引いてチークを塗って唇には薄桜色のリップ。
髪の毛はコテで毛先を巻いて後ろでハーフアップにパーティードレスと同じ色のリボンバレッターをつければ完成。
鏡を見て完璧、と思った途端ため息が出る。
「あー、やり直そ……」
「なんでだよ、それでいいんじゃん?」
「なんで勝手に入ってきてんのさ、ブン太」
「おばさんに入れてもらったんだよ」
なんでこんなに頑張って可愛くしてるんだろう。仕事に行く時のようなナチュラルメイクで良かったのに。頑張ったって今更雅治の隣に立てる訳でもないのにね。って馬鹿らしくなって化粧落としに手を伸ばせばそれを見ていたブン太止められた。
「まだ早くない?」
「これからジャッカルんとこ行って車乗せてもらうんだよ、お前どうせまともに歩けねぇ靴履くつもりだろぃ」
「歩ける…ゆっくりだけど」
ブン太は子供の頃からお兄ちゃんみたいだ。家が近くてクラスもずっと同じ。どれだけブン太にはお世話になるんだろう。
時間よりも少し早く久々に会ったジャッカルの車に乗せてもらって会場のホテルに着いた。さすが立海の学年の同窓会とあれば大ホールを貸切で立食パーティ。こんだけ人がいれば雅治が来ても分からないだろうなと少しだけ安堵する。
「やぁ、○○久しぶり」
「幸村くんだ、久しぶり」
幸村くんと真田、柳。懐かしい面々が私とブン太、ジャッカルの元にやってくる。
高校を卒業して何度かは遊んだりしていたけど、今年はまだ1度も遊んでなかったんだよな。そう思いながら久しぶりの面々と会話を楽しんでいれば私たちとは反対側の方が少しざわついている。
「おや、皆さんおそろいでしたか」
「比呂士久しぶり〜」
「○○さんお元気でしたか」
少し疲れたような顔を見せる柳生がこちらに来て挨拶を交わす。なんかあったの?と質問すれば「いえ……」なんだか言いづらそう。
まぁいいか、ジャッカルのお気楽に考えてホテルの料理を口に運んでいると不意にブン太に腕を引かれる。お皿の上に乗っていたミニケーキがころっと倒れて「ちょっとぉ」と怒ったように振り返ればブン太の視線の先には雅治がいた。腕にはどっかのクラスだった女の子を引っつけて。
4年ぶりに見た雅治は私の知らない雅治だった。耳にはピアスなんて開けて女の子を引き連れてる。そりゃあそうだよね、雅治はかっこいいから昔からモテてたし。もう私は彼女じゃない、他人だから何を言うことも思うこともない。
だけどひとつ安心した。雅治を見ても悲しいとかそういうのは思わなくて、ただ幸せになってくれてればいいなくらいしか思わなかった。私は知らずうちに吹っ切れていたんだ。
「ブン太平気だよ」
「あ、ああ……」
掴んできたブン太の手を離して微笑む。まだ心配なのか戸惑った表情を見せつつも私の隣からは避け無かった。まぁ、確かにあの頃の私を知っている以上心配しないでなんて言えないよな。
散々泣いたあと、毎日が虚ろで雅治のいなくなった穴を埋めるのに必死だった。でも誰かと付き合うなんてことは出来なくて結局またみんなが所属するテニス部のマネージャーに身を置いて部活出来を紛らわせ続ける。
「久しぶりじゃな、おまんら」
「久しぶり、じゃないよ仁王。ちゃんと連絡しろよ」
「全くだ。お前だけ卒業後どうしてるかわからなかったのだぞ」
幸村くんと真田がそう話してる時にふと目が合った雅治の腕にくっつく女の子はニヤリと笑ってみせる。別に何も思わないけれど性格の悪い女。
勝手に勝ち誇ってればいいと視線を外すとグラスを持つ左手の薬指には指輪があってそれには少しだけ驚いた。結婚?それとも婚約かただ彼女持ちのアピールか。どの道安心したのは変わらない。
「お前さんも久しぶり」
「久しぶり仁王くん」
私たちはそれだけ言葉を交わすと、雅治じゃあまた後でと背を向ける。それから2時間ほどだろうか元級友たちと会話と食事を楽しんだ。
その後は呼び出された赤也も合流して立海の敷地へ行った。
テニス部の懐かしい部室に入って飾られているトロフィーや写真が昔のままなものもある。あの頃に戻れたらとても幸せになれるのに。
私の青春は中学時代で終わってしまった。
感傷的になる私とは反対にみんなは「テニスする?」とか言い出していてスーツ着てるのに出来るのかな。相変わらず元気というか馬鹿というか。私はそんなみんなを横目に部室を出て薄暗くなったコートの周りを歩く。
テニスコートから校舎を見ればちょうどコートを全部見れる教室が見える。あそこは図書室だ。私はマネージャーだったから、あの窓からテニスコートを見る機会は少なかったけれど、図書委員の仕事でよくあそこに入ったものだ。
「お前さんに好きって言ったんもあそこじゃった」
「…仁王くん。そうだね」
「本気で、」
「うん。分かってるよ」
本気で好きだった。そう言いかけた雅治の言葉を遮る。図書室は私たちの思い出の場所だね。雅治が私に好きって言ってくれた、初めてキスしたそんな思い出の場所。
「好きになってくれてありがとう」
今度こそ笑顔で言えた。これで決別できる。