きれいな古傷が好きでした

 鈍く、内側から押されるような痛みで目を覚ます。身体は酷く重く、軽いストレッチをするのさえも億劫だ。なるほど、これがコールドスリープ。入院初期のろくに動けなかった頃を思い出す感覚にわずかな懐かしさをおぼえながら、辛うじて気力の残る頭を左右に動かした。
「やぁ、風早くん。目が覚めたかい? 寝起きのところ悪いけど、研修を始めるので移動してもらえるかな? これから君と――多くの仲間が共に生きることになるESスペースコロニーについて、しっかり記憶に刻んでもらいたいんだ」
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