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「お疲れ様~! ウッキ~もサリ~もすごくよかったよ!」
「ありがとう、明星くん! なんとか今日中に済んで安心したよ~……!」
「うむ。遊木が同じシーンの同じ台詞で同じように五回も噛んだときはどうしたものかと思ったが、それ以外は特に目立ったNGもなかったようだしな」
「だ、だって生徒会長の明星くんがあまりにもかっこよくて……うわあぁ、恥ずかしいから思い出させないで~っ!」
 出演者の多いシーンは全て撮り終わり、残すは主演二人だけのシーンのみ。クランクアップ直後、仕事関係の連絡で少し離れたところにいた衣更だったが、五分程度で通話を終了しこちらへ戻ってきた。
「悪い、お待たせ」
「二人とも、次の予定は大丈夫なのか?」
「おう、俺も真も今日はこれだけ。さっきのは生徒会の後輩からの相談の連絡だよ」
「それなら、これからの撮影を見学していかない? 俺もホッケ~も、このシーンはかなり練習したから見ていってほしいな! ねっ、いいでしょ?」
「え、えぇっ!? 練習したの!? どうやって!?」
「どうやってって言われてもなぁ……台本通りに二人で動いただけだよ? でも、雰囲気とか気持ちづくりとか、動作以外のところもたくさん研究したからね! 見た人全員に『Amazing』って言わせちゃうよ☆」
「その単語を出すな、悪寒がする」
 遊木は落ち着きなく目を泳がせ、「えっと……その……」とはっきりしない返事ばかりを口に出している。これだけ明星に推されてもすぐに首を縦に振らないのは珍しい。そんなに他人の目に気恥ずかしく映るものなのだろうか、俺と明星の共演というものは。
「真、この後ってどんな展開なんだ? ぶっちゃけ自分の出演シーン以外あまり目を通せてなくて、俺はよく知らないんだけど」
「うぅ……あの、ね……」
 耳まで真っ赤になりながら、遊木は衣更へと耳打ちする。
「!」
「……っ!」
 すると、遊木の口から伝染したように衣更の顔も同じ色になり、無言で頷いたり目配せしたりと謎のコミュニケーションを交わし始めた。
「どうしたの、二人とも。見たくないなら無理に見なくてもいいよ? 俺、怒らないから」
「いや、別にそういうわけじゃないんだけど……どうしよう、衣更くん」
「真……ここは覚悟を決めよう。明日は我が身だ、いつまでもこんなことで照れてたってしょうがない」
「衣更くん……!」

『うるさい、うるさい……! 勝手なことばっかり言うんじゃねぇよ……!』
『……勝手なのはどっち? そっちだって、ちっとも俺の話を聞いてくれないじゃない』
 掴まれた腕を強く引かれ、背を向けた体勢から一気に全身を抱き寄せられる。
『いつまでも逃げないでよ。強引な手段は、これっきりにしたいから』
『ん……っ!』
 視界いっぱいに朝焼け色が広がり、背景の夕焼け空を塗り潰していく。ここにある事実こそが虚構のさなか。恋人同士のプライベートのようなシチュエーションを囲むカメラも、この光景を見てどんな顔をしているか分からない仲間のことも、今は遠い現実。
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