いっそ身を焦がすくらいの

「ま~くん」
 瞼を舐められるくすぐったさに身を捩ると、すぐ眼前に現れたザクロ色の瞳がゆったりと弧を描く。
「随分熟睡してたねぇ。何か面白い夢でも見てた?」
「……うん。ちょっとだけ、懐かしい夢」
「ふぅん。それにしても、ここは程よくあったかくて気持ち良いねぇ。もう日没まで日差しは来ないだろうし、俺も一緒に寝ちゃおうかなぁ……?」
「こら、まだこの時間は剣技の稽古のはずだろ~? あんまりサボりすぎると俺まで大目玉食らうんだからな」
「いいの、その分夜にいっぱい動いてるから。夜行性は猫として正しい生活習慣……♪」
「あっ、おい! 俺は枕じゃないって!」
 押してももがいても離れる様子のない身体に、仕方なく身を寄せる。少しひんやりした心地良さに再び微睡みながら、優しいザクロの笑顔を思い出していた。

 これは、俺の第二の生のお話。
 陽だまりの中で失ったものを、もう一度取り戻す物語。
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