狐の箱庭
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「つゆのパンツ持ってる」
お茶を淹れていた新八の手元が狂い、たちまち机にお茶が溢れた。
「昔のことだけどよォ、後で枝に引っ掛けてさらし者にしようって寸法で____まあ未遂に終わったんだけどよ」
「すいませんお坊さん、僕ら行くんで手筈を教えてくれますか?」
「あ?」
新八は恥ずかしさに銀時の胸ぐらを掴んで言った。
「よくもそんなもん大事に持ってたな」
「捨てるに捨てられねえだろ元々俺のじゃねえんだから」
「当たり前だろあんたがその手で盗ったんだからな!」
「盗ってねえよ!」
勢い余って机に片足を乗り上げた銀時はしかし、いや、と言って頭をかいた。
「盗ったけどよ、まあ今はもうサイズが合わねえ代物____」
そう言う銀時の鼻から紅い代物が滴り落ちた。
咳払いして僧が言う。
「祈祷によって持ち主が惹かれ合うように、帰路がこちらまで続いていることを知らせることが出来る。では拙僧が」
差し出す僧の手をひっぱたき、銀時は懐から出したつゆの下着を祭壇の上に置いた。
「パンツで祈祷される事になったんですよ。つゆさんは。あんたのせいで」
「るせーな。馴れ馴れしく名ァ呼ぶんじゃねえや」
「力は弱くなるが何か目印を渡すからそこへ従って戻って来ればいい」
「おう頼んだぜ」
僧はソファーに寝かせた銀時の額に指を置く。
反対の手には昨晩妖し者が置いていった花が在る。
「この花の咲いていた場所へ。そこへ紛れ込みやすいようにする。寝ていないのだろう。それまで舟でも漕いでいるといい。その方がうまくいく」
目をひらいても閉じても銀時はつゆの事を考えていた。
つゆとつゆとつゆの事を。
「繋がる糸の先を辿り終える。お前さんが動くのはその時だ。まあ、そう簡単にはいくまい。箱庭を、相手の世界を壊す事だ。あらゆる手を使ってくるだろうが、決して騙されるな」
お香のにおいに混じってツツジの花のにおいがする。
待ってろよつゆ。
今迎えに行くから。
何度もそう思い、眠れなかった。
しかしパチンという小気味のいい音がして銀時は目を開けた。
すると部屋には誰もいなく、寝ている自分の身体を見下ろしていた。
部屋の壁にはおおきな穴が空いており、そこへ向かってお香の煙が流れている。
そっちへ行けばいいんだな。
銀時はそう感じて歩き出した。
仄かに夜色の光が射して銀時はある夜の中に紛れ込んだ。
そこは林のようで、木々が生い茂っており、中空には三日月がかかっている。
ひらけた場所に人の姿が見え、銀時は近づいて言った。
「おいあんた。この辺でこんな女見なかったか」
懐から人相書を出して背中に問う。
「成程、女かそうか。とんと見ていないな。此処じゃみんな同じ顔だから」
と振り向いた男の顔は肉のない骨だった。
にわかに信じがたいその姿に驚いて、銀時は思わずびくりと退いた。
「____脅かすんじゃねえよ殴るぜおい」
その銀時の姿を暫く黙って見ていた男は、骨だけの口をひらいた。
「ワシはこんなじゃが、生きていた時の姿のまま後生を過ごしている者もおる。この、女とやらは知らんが」
表情を見て捉えることは出来ないが、僅かに首を傾げる様は訝しげなそれだった。
「はて、後生の見える坊さまには見えぬし、さてはあんた、おっ死んだばかりだろう」
「____ああまあな」
「この先に辺りを仕切るのがいるから聞いてみなさい。探すのはいいが朝の来るまでに自分の場所へ帰ることだ。戻れなくなるからね」
後生の在り方であるそれは生者に通じない事だった。
朝となく昼となく目的を果たしに来た銀時の立つ前に夜が広がっている。
「あそこ行くにはどうすんだ?」
川の向こうの明かりを見て銀時が言う。
「この辺りにはね、湯侍、なんて呼ばれるお人がいるんだよ。その人に顔を見せなさい」
「顔を見せなきゃ通さねえとは随分偉いお人がいたもんだ」
「小僧さんの頃から生真面目に奉公していてね、そいつがまあ義理堅い男で仕事ぶりもいい。店前で小便してく野郎や盗人なんかも捕まえて私刑にしちゃう。とまあちょいと恐ろしいところもあるんだが仲間からの信頼は厚く、御子息を差し置いて若と呼ばれた。あんま屋なんかも呼んだりしてね、これが評判。若が番頭となって仕切りはじめてからというものの偉いお侍さんなんかも通いはじめて店はおおきくなった。するとまあ、今はもう若じゃなくて暖簾分けして貰った身で何をするのかと思えば船頭よ。湯を乗せて船漕いでんのさ。ご執心のおなごも乗せてね」
「あのなァじいさん、俺ァ風呂入りに来たんじゃねえんだよ」
その時だった。
後ろからの殺気に銀時は木刀を抜いた。
お茶を淹れていた新八の手元が狂い、たちまち机にお茶が溢れた。
「昔のことだけどよォ、後で枝に引っ掛けてさらし者にしようって寸法で____まあ未遂に終わったんだけどよ」
「すいませんお坊さん、僕ら行くんで手筈を教えてくれますか?」
「あ?」
新八は恥ずかしさに銀時の胸ぐらを掴んで言った。
「よくもそんなもん大事に持ってたな」
「捨てるに捨てられねえだろ元々俺のじゃねえんだから」
「当たり前だろあんたがその手で盗ったんだからな!」
「盗ってねえよ!」
勢い余って机に片足を乗り上げた銀時はしかし、いや、と言って頭をかいた。
「盗ったけどよ、まあ今はもうサイズが合わねえ代物____」
そう言う銀時の鼻から紅い代物が滴り落ちた。
咳払いして僧が言う。
「祈祷によって持ち主が惹かれ合うように、帰路がこちらまで続いていることを知らせることが出来る。では拙僧が」
差し出す僧の手をひっぱたき、銀時は懐から出したつゆの下着を祭壇の上に置いた。
「パンツで祈祷される事になったんですよ。つゆさんは。あんたのせいで」
「るせーな。馴れ馴れしく名ァ呼ぶんじゃねえや」
「力は弱くなるが何か目印を渡すからそこへ従って戻って来ればいい」
「おう頼んだぜ」
僧はソファーに寝かせた銀時の額に指を置く。
反対の手には昨晩妖し者が置いていった花が在る。
「この花の咲いていた場所へ。そこへ紛れ込みやすいようにする。寝ていないのだろう。それまで舟でも漕いでいるといい。その方がうまくいく」
目をひらいても閉じても銀時はつゆの事を考えていた。
つゆとつゆとつゆの事を。
「繋がる糸の先を辿り終える。お前さんが動くのはその時だ。まあ、そう簡単にはいくまい。箱庭を、相手の世界を壊す事だ。あらゆる手を使ってくるだろうが、決して騙されるな」
お香のにおいに混じってツツジの花のにおいがする。
待ってろよつゆ。
今迎えに行くから。
何度もそう思い、眠れなかった。
しかしパチンという小気味のいい音がして銀時は目を開けた。
すると部屋には誰もいなく、寝ている自分の身体を見下ろしていた。
部屋の壁にはおおきな穴が空いており、そこへ向かってお香の煙が流れている。
そっちへ行けばいいんだな。
銀時はそう感じて歩き出した。
仄かに夜色の光が射して銀時はある夜の中に紛れ込んだ。
そこは林のようで、木々が生い茂っており、中空には三日月がかかっている。
ひらけた場所に人の姿が見え、銀時は近づいて言った。
「おいあんた。この辺でこんな女見なかったか」
懐から人相書を出して背中に問う。
「成程、女かそうか。とんと見ていないな。此処じゃみんな同じ顔だから」
と振り向いた男の顔は肉のない骨だった。
にわかに信じがたいその姿に驚いて、銀時は思わずびくりと退いた。
「____脅かすんじゃねえよ殴るぜおい」
その銀時の姿を暫く黙って見ていた男は、骨だけの口をひらいた。
「ワシはこんなじゃが、生きていた時の姿のまま後生を過ごしている者もおる。この、女とやらは知らんが」
表情を見て捉えることは出来ないが、僅かに首を傾げる様は訝しげなそれだった。
「はて、後生の見える坊さまには見えぬし、さてはあんた、おっ死んだばかりだろう」
「____ああまあな」
「この先に辺りを仕切るのがいるから聞いてみなさい。探すのはいいが朝の来るまでに自分の場所へ帰ることだ。戻れなくなるからね」
後生の在り方であるそれは生者に通じない事だった。
朝となく昼となく目的を果たしに来た銀時の立つ前に夜が広がっている。
「あそこ行くにはどうすんだ?」
川の向こうの明かりを見て銀時が言う。
「この辺りにはね、湯侍、なんて呼ばれるお人がいるんだよ。その人に顔を見せなさい」
「顔を見せなきゃ通さねえとは随分偉いお人がいたもんだ」
「小僧さんの頃から生真面目に奉公していてね、そいつがまあ義理堅い男で仕事ぶりもいい。店前で小便してく野郎や盗人なんかも捕まえて私刑にしちゃう。とまあちょいと恐ろしいところもあるんだが仲間からの信頼は厚く、御子息を差し置いて若と呼ばれた。あんま屋なんかも呼んだりしてね、これが評判。若が番頭となって仕切りはじめてからというものの偉いお侍さんなんかも通いはじめて店はおおきくなった。するとまあ、今はもう若じゃなくて暖簾分けして貰った身で何をするのかと思えば船頭よ。湯を乗せて船漕いでんのさ。ご執心のおなごも乗せてね」
「あのなァじいさん、俺ァ風呂入りに来たんじゃねえんだよ」
その時だった。
後ろからの殺気に銀時は木刀を抜いた。