狐の箱庭
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つゆがいなくなってから銀時は一度も泣き言を言ったりしなかった。
つゆは生きてどこかにいる。
そうして疑わず探し続けた。
「すまぬ。役立てそうにない」
何かつゆの物を持っているか聞くと、桂は決まり悪そうにそう言った。
「おい銀時。つゆの葬式でもやるつもりか?」
引き止める桂の瞳には僅かだが同情の色が浮かんでいた。
しかし銀時はそれさえ気が付かない。
「あ? 馬鹿じゃねえの。俺がつゆの遺品を集めてるように見えるかよ。つゆは生きてる」
何か訳があると察した桂はもう歩き出していた。
「行くぞ」
と。
「鬼兵隊の舟だ。一週間前美濃で取引があった。そのあと江戸に停泊するのではないかと聞いてな。見張りを立てていたがその通りだ」
銀時もまた高杉の元へ向かうつもりだった。
「面倒な事になるのは目に見えている。そうでなくとも俺達はあいつの舟から格好良く飛び降りた身だしな。しかし銀時。今の俺達には全てを打ち消す"あて"がある。そうだろ?」
それがつゆだと桂の目が言っていた。
夜は濃く深く静かだった。
船着場に鬼兵隊の舟があり、出入口の傍らに三味線を爪弾く男がいた。
「高杉くんいますか」
銀時は言い切り、続けた。
「つゆって言えば話がわかると思うんだけど」
「ほう。その名を聞けば晋助も喜ぶだろう」
果たして本当だろうか。
巣穴に引き込んで一網打尽にするつもりかもしれない。
警戒しながら進むとしかし彼は真っ直ぐ高杉の元へ案内した。
甲板に立つ高杉の後ろ姿。
「晋助。お客だ。つゆについて話があるそうで御座る」
振り向いた高杉の顔は恐ろしく静かだった。
その高杉に銀時は全てを話した。
「つゆに会う。会って連れ戻す」
次いで桂がこう言った。
「それがあれば万事上手くいく訳じゃあるまいが余念はなくすに限る。お前が持っているなら出してくれ」
「それで、何を返すつもりだ?」
煙を吐き出しながら高杉は言った。
「茶番に付き合わせる代わりを用意してきたんだろ? 狐につままれて正面から乗り込んで雁首揃えたからにはよォ」
紫煙をくゆらせながら薄く笑う高杉の後ろに闇が広がっている。
月はない。
「何がなくとも渡せる筈だ」
桂が言うと高杉は黙った。
恐ろしく静かな顔をしている。
高杉が舌を打ったのは今だった。
投げて寄越したのは三味線のバチだった。
つゆもよく三味線を弾いていた。
船を降りると銀時は言った。
「何で持ってんだよ。気味の悪ィ野郎だぜ」
「これで揃ったな」と桂が決まりよく言おうとした時である。
銀時がバチを海へ放り投げた。
それが現実のものであり、信じられず桂は叫んだ。
「あぁああ!」
バチは夜の海へ吸い込まれて見えなくなった。
「ちょ……っおま……っあぁああ!」
「要らねえんだよ。奴の手垢のついたつゆの物なんざこの世に」
目的を果たした銀時は決まりよく言った。
「あてはあるから気にすんな。じゃあな」
明朝、明け方に僧は現れた。
万事屋の椅子に差し向かいに座り銀時は言った。
「パンツ」
その声はまだ暗い朝に静かに放たれた。
つゆは生きてどこかにいる。
そうして疑わず探し続けた。
「すまぬ。役立てそうにない」
何かつゆの物を持っているか聞くと、桂は決まり悪そうにそう言った。
「おい銀時。つゆの葬式でもやるつもりか?」
引き止める桂の瞳には僅かだが同情の色が浮かんでいた。
しかし銀時はそれさえ気が付かない。
「あ? 馬鹿じゃねえの。俺がつゆの遺品を集めてるように見えるかよ。つゆは生きてる」
何か訳があると察した桂はもう歩き出していた。
「行くぞ」
と。
「鬼兵隊の舟だ。一週間前美濃で取引があった。そのあと江戸に停泊するのではないかと聞いてな。見張りを立てていたがその通りだ」
銀時もまた高杉の元へ向かうつもりだった。
「面倒な事になるのは目に見えている。そうでなくとも俺達はあいつの舟から格好良く飛び降りた身だしな。しかし銀時。今の俺達には全てを打ち消す"あて"がある。そうだろ?」
それがつゆだと桂の目が言っていた。
夜は濃く深く静かだった。
船着場に鬼兵隊の舟があり、出入口の傍らに三味線を爪弾く男がいた。
「高杉くんいますか」
銀時は言い切り、続けた。
「つゆって言えば話がわかると思うんだけど」
「ほう。その名を聞けば晋助も喜ぶだろう」
果たして本当だろうか。
巣穴に引き込んで一網打尽にするつもりかもしれない。
警戒しながら進むとしかし彼は真っ直ぐ高杉の元へ案内した。
甲板に立つ高杉の後ろ姿。
「晋助。お客だ。つゆについて話があるそうで御座る」
振り向いた高杉の顔は恐ろしく静かだった。
その高杉に銀時は全てを話した。
「つゆに会う。会って連れ戻す」
次いで桂がこう言った。
「それがあれば万事上手くいく訳じゃあるまいが余念はなくすに限る。お前が持っているなら出してくれ」
「それで、何を返すつもりだ?」
煙を吐き出しながら高杉は言った。
「茶番に付き合わせる代わりを用意してきたんだろ? 狐につままれて正面から乗り込んで雁首揃えたからにはよォ」
紫煙をくゆらせながら薄く笑う高杉の後ろに闇が広がっている。
月はない。
「何がなくとも渡せる筈だ」
桂が言うと高杉は黙った。
恐ろしく静かな顔をしている。
高杉が舌を打ったのは今だった。
投げて寄越したのは三味線のバチだった。
つゆもよく三味線を弾いていた。
船を降りると銀時は言った。
「何で持ってんだよ。気味の悪ィ野郎だぜ」
「これで揃ったな」と桂が決まりよく言おうとした時である。
銀時がバチを海へ放り投げた。
それが現実のものであり、信じられず桂は叫んだ。
「あぁああ!」
バチは夜の海へ吸い込まれて見えなくなった。
「ちょ……っおま……っあぁああ!」
「要らねえんだよ。奴の手垢のついたつゆの物なんざこの世に」
目的を果たした銀時は決まりよく言った。
「あてはあるから気にすんな。じゃあな」
明朝、明け方に僧は現れた。
万事屋の椅子に差し向かいに座り銀時は言った。
「パンツ」
その声はまだ暗い朝に静かに放たれた。