狐の箱庭
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外に出られない。
それを除けばつゆの生活は何の支障もなかった。
仕事を終えて帰って来た三人はすき焼きの材料を手にしていた。
今日は迷い猫の捜索という仕事で怪我もなく彼らは夕刻に帰って来た。
「苦しい」
食べ終わったつゆはそう言って壁にもたれた。
「何か飲む?」
真横にいる銀時が言い、つゆの空いたグラスを持つ。
つゆは首を横に振った。
「いらない」
「飲めねえほど腹ァいっぱい? その辺歩く?」
食べかけの器に箸を置いた銀時が手を差し出し、つゆは「うん」とその手を握った。
「今日は秋なのに日中は暑かったな。つゆも汗かいたんじゃねえの? 舐めていい? 爪の先でもいいよ。足のな」
洗面所、座敷、居間を渡りぐるぐると家中を手を繋いで歩く二人を見た新八が呆れて思わず言った。
「あんたら外出たらどうですか。何してんだよ家の中で」
「外なんか出たら危ねえだろ? 砲弾飛んでくんぞ。ろくな奴いねえぞ」
「たまにはいいんじゃないですか?」
二人の通り過ぎる裾風がお茶を淹れていた新八の足元にあたる。
視線を感じて目線を持ち上げた新八は銀時の冷えた眼差しを受けて押し黙った。
「真選組が暴れてねえ日なんざねえだろ?」
「____そうですね」
「今日もやっつけて来たネ」
「そうだよな、神楽ー」
家の中はすき焼きをした水蒸気でいっぱいだった。
窓は開いていない。
器を下げて台所にいた銀時の背につゆが抱きついたのは今だった。
全身をそばだたせる銀時の手は止まり、出しっぱなしの水がとうとうと流れてゆく。
「________つゆ?」
つゆは微笑を灯して言った。
「よかった。銀が帰って来て」
離れて居間へ戻ろうとしたつゆの手を銀時が取り、猛然と抱擁した。
「つゆ。愛してる」
突然の告白だった。
しかしそれはつゆの胸の奥まできりもなく届いた。
「わたしも愛してる」
すると抱擁の力を僅かに解き、銀時がこちらを真剣に見ながら言った。
「本当に?」
と。
銀時は瞬きもしない。
「仲間じゃなくて恋の方の愛だよ? つゆ。仲間の方とか言うのは無しだぜおい」
「本当。恋の方」
つゆの両頬に銀時が触れた瞬間銀時の唇がつゆの唇に重なった。
名残惜しそうに今銀時の唇が離れてつゆは目を開けた。
一心にこちらを認める銀時を見てつゆは微笑を灯す。
その唇にまた銀時が唇を重ね、長く深く重ね吸い付いた。
「わ……っ」
と間近で新八の声がして唇を離したつゆがそちらを見る。
「何してんですかあんたらこんなとこで」
「邪魔ァすんじゃねえよ。今俺ァ最高にハイになってんだからよ」
文句を言いながら新八がその場を後にすると、つゆは出しっぱなしになっている水を止めた。
「つゆ。新しい部屋見に行こうぜ」
銀時が言い、つゆの手を引いてゆく。
万事屋は半年前から増築をはじめた。
銀時の寝室にしている座敷の真横で、防火防音耐震の部屋。
万が一家が崩壊してもこの座敷の部分だけは無事に残るという。
「もうすぐ完成だな」
「うん」
つゆを後ろから抱き締めて銀時が言う。
「そしたら毎日此処で待ってて。必ず帰るからよ」
頷くが、つゆはひとつ疑問があった。
「でもこれ、外からしか鍵をかけられないの? わたし出られなくなっちゃう」
つゆの肩口に近づいた銀時の唇が動いた。
「つゆ愛してる」
愛してる。
「愛してる愛してる愛してる愛してる」
全身から絞り出すように繰り返す銀時につゆは少し困惑して笑う。
「____わかってるよ、銀」
「本当に?」
後ろからこちらを覗き込む銀時の瞳と目が合った。
瞬きをしない。
ほとんど凝視するような目の奥は異様に静まりかえっている。
圧倒されて、つゆはやはり少し困惑しながらも言った。
「うん」
と。
すると今、銀時の唇が異様に吊り上がった。
「絶対に離さねえから」
異様な密度でこちらを覗き込む銀時が笑う。
「な」
と。
____END
2025年3月3日
それを除けばつゆの生活は何の支障もなかった。
仕事を終えて帰って来た三人はすき焼きの材料を手にしていた。
今日は迷い猫の捜索という仕事で怪我もなく彼らは夕刻に帰って来た。
「苦しい」
食べ終わったつゆはそう言って壁にもたれた。
「何か飲む?」
真横にいる銀時が言い、つゆの空いたグラスを持つ。
つゆは首を横に振った。
「いらない」
「飲めねえほど腹ァいっぱい? その辺歩く?」
食べかけの器に箸を置いた銀時が手を差し出し、つゆは「うん」とその手を握った。
「今日は秋なのに日中は暑かったな。つゆも汗かいたんじゃねえの? 舐めていい? 爪の先でもいいよ。足のな」
洗面所、座敷、居間を渡りぐるぐると家中を手を繋いで歩く二人を見た新八が呆れて思わず言った。
「あんたら外出たらどうですか。何してんだよ家の中で」
「外なんか出たら危ねえだろ? 砲弾飛んでくんぞ。ろくな奴いねえぞ」
「たまにはいいんじゃないですか?」
二人の通り過ぎる裾風がお茶を淹れていた新八の足元にあたる。
視線を感じて目線を持ち上げた新八は銀時の冷えた眼差しを受けて押し黙った。
「真選組が暴れてねえ日なんざねえだろ?」
「____そうですね」
「今日もやっつけて来たネ」
「そうだよな、神楽ー」
家の中はすき焼きをした水蒸気でいっぱいだった。
窓は開いていない。
器を下げて台所にいた銀時の背につゆが抱きついたのは今だった。
全身をそばだたせる銀時の手は止まり、出しっぱなしの水がとうとうと流れてゆく。
「________つゆ?」
つゆは微笑を灯して言った。
「よかった。銀が帰って来て」
離れて居間へ戻ろうとしたつゆの手を銀時が取り、猛然と抱擁した。
「つゆ。愛してる」
突然の告白だった。
しかしそれはつゆの胸の奥まできりもなく届いた。
「わたしも愛してる」
すると抱擁の力を僅かに解き、銀時がこちらを真剣に見ながら言った。
「本当に?」
と。
銀時は瞬きもしない。
「仲間じゃなくて恋の方の愛だよ? つゆ。仲間の方とか言うのは無しだぜおい」
「本当。恋の方」
つゆの両頬に銀時が触れた瞬間銀時の唇がつゆの唇に重なった。
名残惜しそうに今銀時の唇が離れてつゆは目を開けた。
一心にこちらを認める銀時を見てつゆは微笑を灯す。
その唇にまた銀時が唇を重ね、長く深く重ね吸い付いた。
「わ……っ」
と間近で新八の声がして唇を離したつゆがそちらを見る。
「何してんですかあんたらこんなとこで」
「邪魔ァすんじゃねえよ。今俺ァ最高にハイになってんだからよ」
文句を言いながら新八がその場を後にすると、つゆは出しっぱなしになっている水を止めた。
「つゆ。新しい部屋見に行こうぜ」
銀時が言い、つゆの手を引いてゆく。
万事屋は半年前から増築をはじめた。
銀時の寝室にしている座敷の真横で、防火防音耐震の部屋。
万が一家が崩壊してもこの座敷の部分だけは無事に残るという。
「もうすぐ完成だな」
「うん」
つゆを後ろから抱き締めて銀時が言う。
「そしたら毎日此処で待ってて。必ず帰るからよ」
頷くが、つゆはひとつ疑問があった。
「でもこれ、外からしか鍵をかけられないの? わたし出られなくなっちゃう」
つゆの肩口に近づいた銀時の唇が動いた。
「つゆ愛してる」
愛してる。
「愛してる愛してる愛してる愛してる」
全身から絞り出すように繰り返す銀時につゆは少し困惑して笑う。
「____わかってるよ、銀」
「本当に?」
後ろからこちらを覗き込む銀時の瞳と目が合った。
瞬きをしない。
ほとんど凝視するような目の奥は異様に静まりかえっている。
圧倒されて、つゆはやはり少し困惑しながらも言った。
「うん」
と。
すると今、銀時の唇が異様に吊り上がった。
「絶対に離さねえから」
異様な密度でこちらを覗き込む銀時が笑う。
「な」
と。
____END
2025年3月3日
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