狐の箱庭
空欄の場合はつゆになります
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狐に化されていたつゆが万事屋の従業員になって半年が経つ。
ひとりで留守を任されるのも事務仕事をするのも慣れた。
江戸はすっかり姿を変えた事をはじめに銀時から聞いた。
「真選組っつーのがいてよ、そいつらが未だドンパチやってんだよ。昼夜問わずな。町が崩壊しかねねえ暴れっぷりでよ、危ねえからつゆは外に出んなよ?」
銀時の寝室にしている座敷で二人とも壁にもたれて話していた。
繋いだ銀時の手は小指の先まで熱かった。
「な」
こちらを覗き込んで銀時が真剣に、しかし愛に溢れた微笑をして言うので、つゆは素直にうんと言った。
此処へ来てからつゆは一度も外へ出ていない。
一度だけ、月見をしようと言ってつゆに甘酒を持たせ、窓を開けてくれた。
砲弾が飛んでくると危ないからと言って長くは開けなかったが、それでも久しく見る月は遠くて近い美しい満月だった。
砲弾が飛んでくると危ないからと言って昼間もほとんど雨戸を閉めきっているので、つゆはどれほど江戸の町が変わったのかその程を実際には知らない。
銀時が言うにはかなり便利になっていて、しかしつゆはそれほどそこに興味がなかった。
「後はそうさな、桂と高杉と坂元は____」
仲間の行く末につゆの瞳が揺れ動いた。
「死んだ」
死んだ____。そうきこえた。
頭が真っ白になり、動けないつゆの瞳だけが細かに揺れていた。
握っていた銀時の手を握り直したつもりが、小指の先しか動かなかった。
「____死んだ?」
「ああ」
つゆの視界はくっきりと辺りを映し、神経がはりつめる。
喉がひきつり、それ以上声が出なかった。
信じられない。
「俺達二人だけだよ」
涙がぼろっと一粒零れたあと、きりもなく溢れてきた。
「____信じないよ」
そう認めるもしかし信頼し尽くしている銀時が言うこと。
それに涙を零すつゆの身が引き寄せられ、銀時の腕がつゆを覆っていた。
「つゆ」
大事な事を言う時の生真面目な銀時の声。
「泣き終わったら俺を見て」
胸がいっぱいになり、つゆは息が苦しかった。
「一緒に暮らしていこうな。二人きりなんだからよ」
それから暫く後のことだった。
秋で、肌寒い夕刻。
座敷で三味線の調子を直していたつゆの横に座って銀時が言った。
「つゆ。祭に行く?」
祭。
その言葉を聞いただけでにおいや温度がよみがえる。
「ちょいと遠いんだけどよ、ちいせえ祭」
つゆは嬉しくなって笑みくだける。
「行こう」
と。
玄関の中で銀時が呼んだ籠に一緒に乗り外へ出ると、網の隙間から、つゆは実に三ヶ月ぶりの外のにおいを肺に入れた。
祭は寂れたちいさな神社の境内で行われていた。
出店は三軒で、人もまばらだった。
すると参拝している時、突然人が降ってきた。
「人相書のお人じゃねえですかィ」
着地したその人はつゆを認めてそう言った。
銀時がつゆの前に出て
「つゆ。下がってろ」
自分の後ろにつゆを押しやった銀時は恐ろしく静かな顔つきで言った。
「管轄外だろ」
「近藤さん探してたらこんなとこまで来ちまって。ねえ土方さん」
向こうから歩いて来た土方が煙草の煙を吸い込んで今吐き出した。
「旦那ァ。その後ろの人、土方さんにも見せてやって下せえ。この人人相書集めてたんですぜ」
「俺ァ仕事で回収してただけだ」
「嘘はいけねえや。机に大事に取って置いてる癖に。笑った顔とあの暗い顔がお気に入りでしょう? バレてやすぜ。他にどんな顔すんのか本人に聞きなせえ」
「メモ用紙だ。妙な勘繰りはやめろ」
そう言って煙草をくわえた土方が銀時の後ろに目をあて、今一瞬ほんのごく僅かに目だけで笑ったのを銀時は見逃さなかった。
真っ黒になって抜刀した銀時の木刀の切っ先は土方の左胸を貫こうとして、それを土方がすんでで手で抑えた。
「銀____……っ」
砂埃が立つ中、目を爛々と光らせよだれを垂らしながら銀時が言った。
「次ィつゆに目ぇあてやがったらてめえを殺す」
ひとりで留守を任されるのも事務仕事をするのも慣れた。
江戸はすっかり姿を変えた事をはじめに銀時から聞いた。
「真選組っつーのがいてよ、そいつらが未だドンパチやってんだよ。昼夜問わずな。町が崩壊しかねねえ暴れっぷりでよ、危ねえからつゆは外に出んなよ?」
銀時の寝室にしている座敷で二人とも壁にもたれて話していた。
繋いだ銀時の手は小指の先まで熱かった。
「な」
こちらを覗き込んで銀時が真剣に、しかし愛に溢れた微笑をして言うので、つゆは素直にうんと言った。
此処へ来てからつゆは一度も外へ出ていない。
一度だけ、月見をしようと言ってつゆに甘酒を持たせ、窓を開けてくれた。
砲弾が飛んでくると危ないからと言って長くは開けなかったが、それでも久しく見る月は遠くて近い美しい満月だった。
砲弾が飛んでくると危ないからと言って昼間もほとんど雨戸を閉めきっているので、つゆはどれほど江戸の町が変わったのかその程を実際には知らない。
銀時が言うにはかなり便利になっていて、しかしつゆはそれほどそこに興味がなかった。
「後はそうさな、桂と高杉と坂元は____」
仲間の行く末につゆの瞳が揺れ動いた。
「死んだ」
死んだ____。そうきこえた。
頭が真っ白になり、動けないつゆの瞳だけが細かに揺れていた。
握っていた銀時の手を握り直したつもりが、小指の先しか動かなかった。
「____死んだ?」
「ああ」
つゆの視界はくっきりと辺りを映し、神経がはりつめる。
喉がひきつり、それ以上声が出なかった。
信じられない。
「俺達二人だけだよ」
涙がぼろっと一粒零れたあと、きりもなく溢れてきた。
「____信じないよ」
そう認めるもしかし信頼し尽くしている銀時が言うこと。
それに涙を零すつゆの身が引き寄せられ、銀時の腕がつゆを覆っていた。
「つゆ」
大事な事を言う時の生真面目な銀時の声。
「泣き終わったら俺を見て」
胸がいっぱいになり、つゆは息が苦しかった。
「一緒に暮らしていこうな。二人きりなんだからよ」
それから暫く後のことだった。
秋で、肌寒い夕刻。
座敷で三味線の調子を直していたつゆの横に座って銀時が言った。
「つゆ。祭に行く?」
祭。
その言葉を聞いただけでにおいや温度がよみがえる。
「ちょいと遠いんだけどよ、ちいせえ祭」
つゆは嬉しくなって笑みくだける。
「行こう」
と。
玄関の中で銀時が呼んだ籠に一緒に乗り外へ出ると、網の隙間から、つゆは実に三ヶ月ぶりの外のにおいを肺に入れた。
祭は寂れたちいさな神社の境内で行われていた。
出店は三軒で、人もまばらだった。
すると参拝している時、突然人が降ってきた。
「人相書のお人じゃねえですかィ」
着地したその人はつゆを認めてそう言った。
銀時がつゆの前に出て
「つゆ。下がってろ」
自分の後ろにつゆを押しやった銀時は恐ろしく静かな顔つきで言った。
「管轄外だろ」
「近藤さん探してたらこんなとこまで来ちまって。ねえ土方さん」
向こうから歩いて来た土方が煙草の煙を吸い込んで今吐き出した。
「旦那ァ。その後ろの人、土方さんにも見せてやって下せえ。この人人相書集めてたんですぜ」
「俺ァ仕事で回収してただけだ」
「嘘はいけねえや。机に大事に取って置いてる癖に。笑った顔とあの暗い顔がお気に入りでしょう? バレてやすぜ。他にどんな顔すんのか本人に聞きなせえ」
「メモ用紙だ。妙な勘繰りはやめろ」
そう言って煙草をくわえた土方が銀時の後ろに目をあて、今一瞬ほんのごく僅かに目だけで笑ったのを銀時は見逃さなかった。
真っ黒になって抜刀した銀時の木刀の切っ先は土方の左胸を貫こうとして、それを土方がすんでで手で抑えた。
「銀____……っ」
砂埃が立つ中、目を爛々と光らせよだれを垂らしながら銀時が言った。
「次ィつゆに目ぇあてやがったらてめえを殺す」