睫毛に蝶
空欄の場合はつゆになります
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銀時から離れた理由。
それが稲光のように刺してつゆの心をさらけ出す。
銀時だけではない。
桂や高杉にも会わない理由は、仲間が斬られてゆく惨劇を、戦を思い出すから。
しかしそれだけではこんなに胸は痛まない。
こうはならないこんなことがあった。
「何だ兄ちゃん両手に華だな」
見ただけで判る、金と女を欲しがる輩だ。
「両手にね」
そう言った銀時がつゆの横にいた友人を迷いなく斬ったのは今だった。
「これでいいか?」
食料を調達に団子屋に来ただけだった。
無事に調達し、三人で帰るところだった。
「つゆ。帰ろっか」
物取りを全員簡単に斬り伏せて、銀時がにっこりと笑って振り向いた。
未だ事態を飲み込めずに友人を抱いているつゆの目からぼろっと涙が零れ落ちた。
刀を納めて近づいて来る銀時の目が紅い。
何かに燃え立つように紅い目をしていた。
唖然とするつゆの手を引いて立たせた銀時はそのままふわりと抱き寄せた。
血のにおいがする。
「泣いてんの? 優しいな。つゆは」
優しい? 何を言ってるの? 何をしたの?
きりもなく溢れる感情が喉をつき、つゆは銀時の胸を押し返した。
そこには目の笑っていない銀時が笑っていた。
「なにを見てるの____」
その瞬間、ふ、とほどけるように笑った銀時の瞳には狂った密度の熱がこもった。
「つゆ」
目が離せなかった。
「国の為仲間の為、幾つ命が必要になる? ひとつきりだ。俺の心は。俺ァつゆがいればそれでいい」
そう言って銀時はつゆを抱擁した。
その腕の力は恐ろしいほど強く静かで、耳元にこう聞こえた。
「隣に立つのは俺だけだから」
と。
信じられないのは、隣にいるためなら手段を選ばない彼のこと。
それが今胸のなかを泡立って押し寄せてくる。
「つゆ」
足を止めたつゆは振り向いて銀時に焦点を合わせた。
彼の目は真っ直ぐこちらを凝視している。
「俺ァいつもいるから。お前の一番近くによ」
「だったら、さっきみたいな冗談言わないで」
「怒っても可愛いなんてよ、も……本当に」
はあ、と息をついた銀時は一息で言った。
「どうしてくれよう」
こちらを覗き込む銀時の顔つきといったら不穏そのもの。
つゆはたじろいで息をのんだ。
一階でチャイムの音が聞こえたような気がした。
銀時の顔が真横に近づいてくる。
「俺が出るよ」
瞳を動かして見ると、瞳を動かしてこちらを見た銀時の目と合った。
彼は穏やかに笑った。
「そうだ。つゆは部屋にいろよ。出て来ちゃ駄目だから」
真剣な顔をして言うのでつゆは信じてしまう。
それで二、三歩下がると銀時は前を向いて階段を降りはじめた。
階段の手すりから1階を覗くと玄関の硝子越しに黒い影が二つあった。
「旦那ァ。あんたが通報したんですかィ?」
「てめえかよ」
訪問者は真撰組だった。
知り合いらしい銀時はただ面倒臭そうに言った。
「エレベーターは廊下の奥な」
「話を聞こうじゃねえの」
何人かがエレベーターの方に向かって行き、銀時は二人をリビングへ通した。
どうやら銀時が辻斬りの件を通報したらしい。
「つまり外に倒れていた警備をここまで運び、そいつを斬った辻斬りと同じ空間に詰めた訳か」
「指紋一致しました」
「あ、そう。出口あっちな」
「遺体を動かす必要ねえだろうが」
「こんな大雨のなか晒したんじゃ浮かばれねえだろうよ」
遺体はどうやらつゆの部屋の真下にあったらしい。
銀時はつゆが気が付かないように隠したのかもしれない。
そしてにおいが届かないように使っていないエレベーターの中に。
だとしたら銀時が今疑われているのは自分のせいだ。
先程から彼らが動く度にする刀の音。
甲冑を着ているのかと見紛う重厚感。
染み込んだ血のにおい。
「わたしのせいです____」
階段を降りきったところで座り込んだつゆに視線が集まった。
それが稲光のように刺してつゆの心をさらけ出す。
銀時だけではない。
桂や高杉にも会わない理由は、仲間が斬られてゆく惨劇を、戦を思い出すから。
しかしそれだけではこんなに胸は痛まない。
こうはならないこんなことがあった。
「何だ兄ちゃん両手に華だな」
見ただけで判る、金と女を欲しがる輩だ。
「両手にね」
そう言った銀時がつゆの横にいた友人を迷いなく斬ったのは今だった。
「これでいいか?」
食料を調達に団子屋に来ただけだった。
無事に調達し、三人で帰るところだった。
「つゆ。帰ろっか」
物取りを全員簡単に斬り伏せて、銀時がにっこりと笑って振り向いた。
未だ事態を飲み込めずに友人を抱いているつゆの目からぼろっと涙が零れ落ちた。
刀を納めて近づいて来る銀時の目が紅い。
何かに燃え立つように紅い目をしていた。
唖然とするつゆの手を引いて立たせた銀時はそのままふわりと抱き寄せた。
血のにおいがする。
「泣いてんの? 優しいな。つゆは」
優しい? 何を言ってるの? 何をしたの?
きりもなく溢れる感情が喉をつき、つゆは銀時の胸を押し返した。
そこには目の笑っていない銀時が笑っていた。
「なにを見てるの____」
その瞬間、ふ、とほどけるように笑った銀時の瞳には狂った密度の熱がこもった。
「つゆ」
目が離せなかった。
「国の為仲間の為、幾つ命が必要になる? ひとつきりだ。俺の心は。俺ァつゆがいればそれでいい」
そう言って銀時はつゆを抱擁した。
その腕の力は恐ろしいほど強く静かで、耳元にこう聞こえた。
「隣に立つのは俺だけだから」
と。
信じられないのは、隣にいるためなら手段を選ばない彼のこと。
それが今胸のなかを泡立って押し寄せてくる。
「つゆ」
足を止めたつゆは振り向いて銀時に焦点を合わせた。
彼の目は真っ直ぐこちらを凝視している。
「俺ァいつもいるから。お前の一番近くによ」
「だったら、さっきみたいな冗談言わないで」
「怒っても可愛いなんてよ、も……本当に」
はあ、と息をついた銀時は一息で言った。
「どうしてくれよう」
こちらを覗き込む銀時の顔つきといったら不穏そのもの。
つゆはたじろいで息をのんだ。
一階でチャイムの音が聞こえたような気がした。
銀時の顔が真横に近づいてくる。
「俺が出るよ」
瞳を動かして見ると、瞳を動かしてこちらを見た銀時の目と合った。
彼は穏やかに笑った。
「そうだ。つゆは部屋にいろよ。出て来ちゃ駄目だから」
真剣な顔をして言うのでつゆは信じてしまう。
それで二、三歩下がると銀時は前を向いて階段を降りはじめた。
階段の手すりから1階を覗くと玄関の硝子越しに黒い影が二つあった。
「旦那ァ。あんたが通報したんですかィ?」
「てめえかよ」
訪問者は真撰組だった。
知り合いらしい銀時はただ面倒臭そうに言った。
「エレベーターは廊下の奥な」
「話を聞こうじゃねえの」
何人かがエレベーターの方に向かって行き、銀時は二人をリビングへ通した。
どうやら銀時が辻斬りの件を通報したらしい。
「つまり外に倒れていた警備をここまで運び、そいつを斬った辻斬りと同じ空間に詰めた訳か」
「指紋一致しました」
「あ、そう。出口あっちな」
「遺体を動かす必要ねえだろうが」
「こんな大雨のなか晒したんじゃ浮かばれねえだろうよ」
遺体はどうやらつゆの部屋の真下にあったらしい。
銀時はつゆが気が付かないように隠したのかもしれない。
そしてにおいが届かないように使っていないエレベーターの中に。
だとしたら銀時が今疑われているのは自分のせいだ。
先程から彼らが動く度にする刀の音。
甲冑を着ているのかと見紛う重厚感。
染み込んだ血のにおい。
「わたしのせいです____」
階段を降りきったところで座り込んだつゆに視線が集まった。