睫毛に蝶
空欄の場合はつゆになります
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昔もこんなやり取りがあった。
怪我人の手当が一段落した時、つゆの生傷のある腕を掴んだ銀時が言った。
「広げていい?」
と。
「麻酔してよ」
暗転した暗い顔でつゆがいう。
「俺ァ手伝うっつったのによ、ひとりで飯運んでそこでスっ転んでかすったんだろ。広げていいなら傷になるよ」
「嫌」
「そんなに使ってられるほど麻酔薬ねえんだよ。おめえが一番知ってんだろ? 贅沢言うなや」
「放っておけば治るよ」
「おめーがそれ言うの?」
救護班のつゆから見てこの傷は縫うほどまでいかない。
しかし治療は必要だ。
銀時のいない間で。
「見てつゆちゃん俺の額。もうねえだろ? もう治っちゃった。浅い傷に薬塗られたの俺なんだけど」
「それは余ったから____」
「余り物? 余り物塗られたの? 俺の額」
銀時はしつこい。
こういう時は逃げるのが早いとみたつゆは走り出した。
「おい待てよつゆちゃん」
思いの外真後ろに張り付いた銀時の本気の声に戦いて余所見をした時だった。
「____って……っ!」
誰かの背中を蹴ってしまいつゆの足は止まった。
見れば、片足に片腕を休ませてうなだれた高杉がそこにいた。
そこから視線を上げると彼の人相は酷く悪いものになる。
「____ごめんね」
つゆは言ったが高杉はその顔でニヤリと笑った。
「救護班のおめえが怪我人の背ァ蹴るたァどういう了見だ? つゆ」
ゆらりと立ち上がった高杉は立ち上がりざまにつゆの両の腕を背後から取った。
腕の傷が擦れ
「____痛っ」
「何だ? おめえも怪我ァしてるじゃねえか。治療が必要だな」
「行儀がいいなァ高杉くんは」
「こっちのセリフだぜ。銀時」
何かを合図するみたいに高杉が顎でしゃくった。
すると銀時が「つゆちゃん覚悟しろよ?」そう言いながら舌を出した。
その舌から伝うヨダレはきりもなく溢れて銀時の手のひらの中に納まってゆく。
やめてと暗い顔で笑うつゆの生傷に銀時のよだれが塗られたのは今だった。
つゆは声にならない悲鳴をあげ、それから暫く銀時を嫌いになった。
実際つゆは半狂乱になり、痛みと気持ち悪さに任せて銀時のその顔を思い切り平手で打った。
嫌い、と言い残して。
そんなことがあったな。
つゆは苦く思い出しながら紅茶を飲み干した。
その時だった。
膝に細い痛みが走った。
それは紛れもなく針の刺さる痛みで、見れば、銀時が注射器を持っている。
「ぎ……____ん」
驚きのあまり上手く声が出なかった。
何故そんなものを持っているのか。
何を刺したのか____。
「な……____」
ゆるゆると力が抜けてゆく。
膝の上から紅茶茶碗が落ちて絨毯の上に転がった。
筋緩剤だろうか、あるいは麻酔。それなら効きすぎだ。
「手当てはいつも俺がしてたろ? もうよだれはつけねえからよ。本当はつけたいけど」
針を抜いた銀時が穏やかに目だけで笑う。
「痛がりのつゆにちゃんと麻酔もしておいたから。まずは浅い方からな。額もちゃんと治療するからよ」
傷口に薬をつけている感覚を受けながらつゆの力はゆるゆると抜けてゆく。
半身が崩れ、支えた銀時がカウチの上に横にならせた。
「あの頃は麻酔ってやつが不足してたからな」
何をしてるの。
何でそんなものを持っているの。
誰が許すの。
つゆは心の内で言い切った。
しかし口から出たのは
「ぇ……____あ」
呂律のまわらない音だった。
「こっちも大した事ねえから案ずるなよ。場所が場所だからよ、驚いたかもしれねえが深くは入っちゃいねえは」
傷口を触る感触。痛みはない。
つゆは意識が途切れる瞬間に微笑みだけを寄越す銀時の声を聞いた。
「おやすみ」
と。
怪我人の手当が一段落した時、つゆの生傷のある腕を掴んだ銀時が言った。
「広げていい?」
と。
「麻酔してよ」
暗転した暗い顔でつゆがいう。
「俺ァ手伝うっつったのによ、ひとりで飯運んでそこでスっ転んでかすったんだろ。広げていいなら傷になるよ」
「嫌」
「そんなに使ってられるほど麻酔薬ねえんだよ。おめえが一番知ってんだろ? 贅沢言うなや」
「放っておけば治るよ」
「おめーがそれ言うの?」
救護班のつゆから見てこの傷は縫うほどまでいかない。
しかし治療は必要だ。
銀時のいない間で。
「見てつゆちゃん俺の額。もうねえだろ? もう治っちゃった。浅い傷に薬塗られたの俺なんだけど」
「それは余ったから____」
「余り物? 余り物塗られたの? 俺の額」
銀時はしつこい。
こういう時は逃げるのが早いとみたつゆは走り出した。
「おい待てよつゆちゃん」
思いの外真後ろに張り付いた銀時の本気の声に戦いて余所見をした時だった。
「____って……っ!」
誰かの背中を蹴ってしまいつゆの足は止まった。
見れば、片足に片腕を休ませてうなだれた高杉がそこにいた。
そこから視線を上げると彼の人相は酷く悪いものになる。
「____ごめんね」
つゆは言ったが高杉はその顔でニヤリと笑った。
「救護班のおめえが怪我人の背ァ蹴るたァどういう了見だ? つゆ」
ゆらりと立ち上がった高杉は立ち上がりざまにつゆの両の腕を背後から取った。
腕の傷が擦れ
「____痛っ」
「何だ? おめえも怪我ァしてるじゃねえか。治療が必要だな」
「行儀がいいなァ高杉くんは」
「こっちのセリフだぜ。銀時」
何かを合図するみたいに高杉が顎でしゃくった。
すると銀時が「つゆちゃん覚悟しろよ?」そう言いながら舌を出した。
その舌から伝うヨダレはきりもなく溢れて銀時の手のひらの中に納まってゆく。
やめてと暗い顔で笑うつゆの生傷に銀時のよだれが塗られたのは今だった。
つゆは声にならない悲鳴をあげ、それから暫く銀時を嫌いになった。
実際つゆは半狂乱になり、痛みと気持ち悪さに任せて銀時のその顔を思い切り平手で打った。
嫌い、と言い残して。
そんなことがあったな。
つゆは苦く思い出しながら紅茶を飲み干した。
その時だった。
膝に細い痛みが走った。
それは紛れもなく針の刺さる痛みで、見れば、銀時が注射器を持っている。
「ぎ……____ん」
驚きのあまり上手く声が出なかった。
何故そんなものを持っているのか。
何を刺したのか____。
「な……____」
ゆるゆると力が抜けてゆく。
膝の上から紅茶茶碗が落ちて絨毯の上に転がった。
筋緩剤だろうか、あるいは麻酔。それなら効きすぎだ。
「手当てはいつも俺がしてたろ? もうよだれはつけねえからよ。本当はつけたいけど」
針を抜いた銀時が穏やかに目だけで笑う。
「痛がりのつゆにちゃんと麻酔もしておいたから。まずは浅い方からな。額もちゃんと治療するからよ」
傷口に薬をつけている感覚を受けながらつゆの力はゆるゆると抜けてゆく。
半身が崩れ、支えた銀時がカウチの上に横にならせた。
「あの頃は麻酔ってやつが不足してたからな」
何をしてるの。
何でそんなものを持っているの。
誰が許すの。
つゆは心の内で言い切った。
しかし口から出たのは
「ぇ……____あ」
呂律のまわらない音だった。
「こっちも大した事ねえから案ずるなよ。場所が場所だからよ、驚いたかもしれねえが深くは入っちゃいねえは」
傷口を触る感触。痛みはない。
つゆは意識が途切れる瞬間に微笑みだけを寄越す銀時の声を聞いた。
「おやすみ」
と。