暗転
空欄の場合はつゆになります
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目が覚めた時、辺りは真っ暗だった。
奇妙なのは、その暗闇に浮かび上がるものがまるでない。
目隠しがある。
起き上がろうとして、その腕にろくに力がこもらない。
両の腕は背中にまわった状態で、何か布か紐のようなもので固く結ばれて動かない。
自分が何処にいるのかもわからないまま身じろぎし、その間にも神経をそばだてて辺りを伺う。
自由な両足を使って半身を起こす事が出来ると、あがり始めていた呼気がつゆを一層ひとりにさせた。
土と畳のにおいがする。
裸足の下にあるやわらかな感触は恐らく布団だ。
捉えどころがないほどやわらかい。
陽の光は感じないが鳥の声が微かにきこえる。
両足で少しずつ後ろへ下がってゆくと、壁に当たった。
「____誰かいるの?」
つゆは独り言ちるほどの幽かさで問いかけて
「____銀……?」
最後に会った人の名を呼ぶ。
「そう。俺ひとりだ」
心ならずもほっとしたつゆの胸の内はざわざわと落ち着かない。
前が見えない上に身動きが出来ないのだ。
「こんな酷い仕打ちをすんのは俺の他いねえもんな。それとも、こんな最悪な状況にいて一番嫌なのが俺とか?」
僕ではなく俺と言う銀時が気になる。
胸のざわめきが止まらない。
「ひとりってどこ? 前が見えない____」
布切れを通した向こうがどうなっているのか、暗闇のなかから返ってきたのは沈黙だった。
外すから、わたしのも外して。
そう言おうとした時だった。
「宿場町に団子屋が出来たんだってよ。明日はそこ行こっか」
状況は見えないが、そこにただひとりいるという銀時はやけに落ち着いていた。
「好きだろ? つゆちゃん。菊屋の甘味。朝飯も休憩するのも菊屋。他にも色々と知ってるんだぜ。例えばどんな、って思うようなこと」
例えばどんな____。
「____例えばどんな?」
喉の奥で銀時が笑った。
「つゆが声に出す前にその質問が心のなかできこえるくらいには知ってる」
胸のざわめきは膨らむばかり。
つゆは押し黙った。
「なァつゆ」
つゆちゃんではなくつゆと呼ぶ銀時が気になった。
「とりわけ好きな男がいるだろ。当てて見せよっか」
立ち上がり、歩いて来る音がする。
銀時の身は自由らしい。
「あの門番はどうだ? 目え合わせて笑ってたのはそのせいだろ」
衣擦れの音がする。
銀時がしゃがみ込んだのだ。
「なんてな。毎週末薬を届けるために出入りして、それだけだろ? 問題ねえよな。あんな____」
声が低くなり、うなるようだった。
「あんな親しげに視線を交わす事以外は」
暗闇の中で情報が多すぎてつゆは混乱する。
胸のざわめきも止まらない。
「つゆの仲間は俺しかいねえはずだったんだけど。今も昔もよ」
髪に触れる指先の刺激を受けてつゆはびくりと震える。
「俺にはどんな顔向けてるのか知ってる? 関わるのは嫌ってよ、そういう面だ」
いつから記憶が戻ったの?
つゆは暗い心のなかで問いかけた。
「そのとっておきの顔も、嫌いじゃねえから困りもんだよなァ。どう足掻いても俺ァつゆに御執心って訳だ」
眉を歪めてつゆは困惑した。
「お前を感じてねえとおかしくなっちまう」
殆ど確信してつゆは問いをそのまま口にした。
「いつから戻ってたの?」
聞きながら混乱していた。
そうだとすれば何故言わなかったのか。
しかしそれも、聞いたところで何の意味もない。
この一年もの間、関係はまるでずっとそうだったみたいに眩しい。
それは分かち難く感じているのだから。
両目を覆う暗闇が濃く何も見えない。
その向こうからきこえる声の持ち主は一体何者だというのか。
奇妙なのは、その暗闇に浮かび上がるものがまるでない。
目隠しがある。
起き上がろうとして、その腕にろくに力がこもらない。
両の腕は背中にまわった状態で、何か布か紐のようなもので固く結ばれて動かない。
自分が何処にいるのかもわからないまま身じろぎし、その間にも神経をそばだてて辺りを伺う。
自由な両足を使って半身を起こす事が出来ると、あがり始めていた呼気がつゆを一層ひとりにさせた。
土と畳のにおいがする。
裸足の下にあるやわらかな感触は恐らく布団だ。
捉えどころがないほどやわらかい。
陽の光は感じないが鳥の声が微かにきこえる。
両足で少しずつ後ろへ下がってゆくと、壁に当たった。
「____誰かいるの?」
つゆは独り言ちるほどの幽かさで問いかけて
「____銀……?」
最後に会った人の名を呼ぶ。
「そう。俺ひとりだ」
心ならずもほっとしたつゆの胸の内はざわざわと落ち着かない。
前が見えない上に身動きが出来ないのだ。
「こんな酷い仕打ちをすんのは俺の他いねえもんな。それとも、こんな最悪な状況にいて一番嫌なのが俺とか?」
僕ではなく俺と言う銀時が気になる。
胸のざわめきが止まらない。
「ひとりってどこ? 前が見えない____」
布切れを通した向こうがどうなっているのか、暗闇のなかから返ってきたのは沈黙だった。
外すから、わたしのも外して。
そう言おうとした時だった。
「宿場町に団子屋が出来たんだってよ。明日はそこ行こっか」
状況は見えないが、そこにただひとりいるという銀時はやけに落ち着いていた。
「好きだろ? つゆちゃん。菊屋の甘味。朝飯も休憩するのも菊屋。他にも色々と知ってるんだぜ。例えばどんな、って思うようなこと」
例えばどんな____。
「____例えばどんな?」
喉の奥で銀時が笑った。
「つゆが声に出す前にその質問が心のなかできこえるくらいには知ってる」
胸のざわめきは膨らむばかり。
つゆは押し黙った。
「なァつゆ」
つゆちゃんではなくつゆと呼ぶ銀時が気になった。
「とりわけ好きな男がいるだろ。当てて見せよっか」
立ち上がり、歩いて来る音がする。
銀時の身は自由らしい。
「あの門番はどうだ? 目え合わせて笑ってたのはそのせいだろ」
衣擦れの音がする。
銀時がしゃがみ込んだのだ。
「なんてな。毎週末薬を届けるために出入りして、それだけだろ? 問題ねえよな。あんな____」
声が低くなり、うなるようだった。
「あんな親しげに視線を交わす事以外は」
暗闇の中で情報が多すぎてつゆは混乱する。
胸のざわめきも止まらない。
「つゆの仲間は俺しかいねえはずだったんだけど。今も昔もよ」
髪に触れる指先の刺激を受けてつゆはびくりと震える。
「俺にはどんな顔向けてるのか知ってる? 関わるのは嫌ってよ、そういう面だ」
いつから記憶が戻ったの?
つゆは暗い心のなかで問いかけた。
「そのとっておきの顔も、嫌いじゃねえから困りもんだよなァ。どう足掻いても俺ァつゆに御執心って訳だ」
眉を歪めてつゆは困惑した。
「お前を感じてねえとおかしくなっちまう」
殆ど確信してつゆは問いをそのまま口にした。
「いつから戻ってたの?」
聞きながら混乱していた。
そうだとすれば何故言わなかったのか。
しかしそれも、聞いたところで何の意味もない。
この一年もの間、関係はまるでずっとそうだったみたいに眩しい。
それは分かち難く感じているのだから。
両目を覆う暗闇が濃く何も見えない。
その向こうからきこえる声の持ち主は一体何者だというのか。