暗転
空欄の場合はつゆになります
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「誰でしょう。お客さんかな」
「飯時だぜ。無視しろ無視」
そういう訳にもいかない新八がひとり席を立ち、玄関戸を開けた。
夜を背にしてつゆは立っていた。
「銀さん。お客さんです」
廊下に顔を出した銀時は玄関を見るなり
「よお。入れよ」
促されるままつゆは居間へ入り椅子に座った。
「依頼のお願いに来たの」
「____あ、そう」
そう軽く受けあった銀時が名刺の通り社長らしい。
つゆは手短に話したが詳しくと言うので詳しく、本当に詳しく全て話した。
「一匹っていうのは皮肉だろ。沖田くんが言ってんのは人じゃなくてよ」
膝の上で組んでいた指に視線を落としていた銀時は沈黙し、突然天を向いて「あー」と何か思い当たるような声をあげる。
「そういや俺のオオクワガタ。あれ見つかった? まあ、俺ももう餓鬼じゃねえしよ、見つかったら非常食にでも置いて置くかな。虫ってのはタンパク質だからよ」
暗転し、あからさまに嫌な顔をするが頼みに来た分堪えるつゆを見て新八が苦笑い
「銀さん。あんたしっかり餓鬼じゃないですか」
「あー俺はあれ忘れないね。散々俺の邪魔しといてよ、助けて下さいってのはむしがよすぎるんじゃァねえの?」
確かに邪魔をした。
悪戯に触ったらいけないと言って、銀時が捕まえたカブトムシを全て逃がしたのはつゆだ。
食べようとする銀時からカブトムシを奪ったのもつゆ。
空気が確かに歪みはじめていた。
しかし二人はもう大人だ。
「思い出させてごめんなさい。他を当たることにする」
そう言ってつゆは立ち上がった。
「他って何? お前を逃がした高杉くんのとこでも行くつもりか? そんな仲良くねえよな。やらねえなんて俺言ってねえけど」
銀時は事なげもなく言い、その時だった。
数秒の沈黙のあと、彼がニヤリと笑ったのをつゆは見逃さなかった。
その笑顔で全てを思い出す。
この男の意地の悪さを。
カブトムシを取る取らないの事件よりずっと前、例えば席が隣にいる時の授業。
「おっと悪ィ。はみ出しちまった」
ひらいた書物の12ページ。
つゆのそこには銀時がわざとはみ出した線が弧を描いて何本も残っている。
それがわざとだと確信したのは実に七回目の時だった。
今思えばそのくらいは可愛いものである。
「そういやあの日よ、お前も探し物あったろ。結局見つかったの?あれ」
つゆはたちまち思い出し顔を真っ赤に染めた。
皆で銭湯に行った時だった。
つゆの着替えがなくなった。
長風呂のつゆのそばに同窓の者はいなく、どうやって帰ろうか風呂と着替え場を行ったり来たり。
結局二時間後に来た芸者の女の子に着替えを貸してもらった。
そのあとも銀時はしつこく話を続けた。
それもつゆの恥ずかしい話、悔しい話を。
最中、しびれを切らした新八が銀時をぐーで殴った。
「ってえな。ぱっつァん」
「帰りましたよ」
悪びれる様子もなく銀時は
「あ? そう」
と言う。
「泣いてた?」
「あんたばっちり見てたように見えましたけど。それも真正面から」
「涙ってのは真っ直ぐ流れるよな」
隠すでもわめくでもなく、つゆは真っ直ぐ前を見て涙を落とす。
銀時は声を震わせて笑った。
「あいつああやって泣くんだよ」
と。
「こいつ……」と新八が怒りに震えて立ち上がった。
「見損ないましたよ銀さん」
「おい、ちょ……ククっ待てって」
「腹ァ下してる坊やはおねんねしてな」
「飯時だぜ。無視しろ無視」
そういう訳にもいかない新八がひとり席を立ち、玄関戸を開けた。
夜を背にしてつゆは立っていた。
「銀さん。お客さんです」
廊下に顔を出した銀時は玄関を見るなり
「よお。入れよ」
促されるままつゆは居間へ入り椅子に座った。
「依頼のお願いに来たの」
「____あ、そう」
そう軽く受けあった銀時が名刺の通り社長らしい。
つゆは手短に話したが詳しくと言うので詳しく、本当に詳しく全て話した。
「一匹っていうのは皮肉だろ。沖田くんが言ってんのは人じゃなくてよ」
膝の上で組んでいた指に視線を落としていた銀時は沈黙し、突然天を向いて「あー」と何か思い当たるような声をあげる。
「そういや俺のオオクワガタ。あれ見つかった? まあ、俺ももう餓鬼じゃねえしよ、見つかったら非常食にでも置いて置くかな。虫ってのはタンパク質だからよ」
暗転し、あからさまに嫌な顔をするが頼みに来た分堪えるつゆを見て新八が苦笑い
「銀さん。あんたしっかり餓鬼じゃないですか」
「あー俺はあれ忘れないね。散々俺の邪魔しといてよ、助けて下さいってのはむしがよすぎるんじゃァねえの?」
確かに邪魔をした。
悪戯に触ったらいけないと言って、銀時が捕まえたカブトムシを全て逃がしたのはつゆだ。
食べようとする銀時からカブトムシを奪ったのもつゆ。
空気が確かに歪みはじめていた。
しかし二人はもう大人だ。
「思い出させてごめんなさい。他を当たることにする」
そう言ってつゆは立ち上がった。
「他って何? お前を逃がした高杉くんのとこでも行くつもりか? そんな仲良くねえよな。やらねえなんて俺言ってねえけど」
銀時は事なげもなく言い、その時だった。
数秒の沈黙のあと、彼がニヤリと笑ったのをつゆは見逃さなかった。
その笑顔で全てを思い出す。
この男の意地の悪さを。
カブトムシを取る取らないの事件よりずっと前、例えば席が隣にいる時の授業。
「おっと悪ィ。はみ出しちまった」
ひらいた書物の12ページ。
つゆのそこには銀時がわざとはみ出した線が弧を描いて何本も残っている。
それがわざとだと確信したのは実に七回目の時だった。
今思えばそのくらいは可愛いものである。
「そういやあの日よ、お前も探し物あったろ。結局見つかったの?あれ」
つゆはたちまち思い出し顔を真っ赤に染めた。
皆で銭湯に行った時だった。
つゆの着替えがなくなった。
長風呂のつゆのそばに同窓の者はいなく、どうやって帰ろうか風呂と着替え場を行ったり来たり。
結局二時間後に来た芸者の女の子に着替えを貸してもらった。
そのあとも銀時はしつこく話を続けた。
それもつゆの恥ずかしい話、悔しい話を。
最中、しびれを切らした新八が銀時をぐーで殴った。
「ってえな。ぱっつァん」
「帰りましたよ」
悪びれる様子もなく銀時は
「あ? そう」
と言う。
「泣いてた?」
「あんたばっちり見てたように見えましたけど。それも真正面から」
「涙ってのは真っ直ぐ流れるよな」
隠すでもわめくでもなく、つゆは真っ直ぐ前を見て涙を落とす。
銀時は声を震わせて笑った。
「あいつああやって泣くんだよ」
と。
「こいつ……」と新八が怒りに震えて立ち上がった。
「見損ないましたよ銀さん」
「おい、ちょ……ククっ待てって」
「腹ァ下してる坊やはおねんねしてな」