暗転
空欄の場合はつゆになります
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「またつゆの事ですかい?」
副長室で地図を広げる土方に沖田が言った。
「どっかで薬箱ぶちまけて拾ってまさァ」
「なら良いんだがな」
「それか旦那に監禁されてるか」
沖田の言葉に土方は胸の内で同意した。
万事屋に聞けば銀時は三ヶ月も帰っていないという。
何かつゆに関係ありそうで、嫌な予感しかしない。
行方知れずのつゆと再開したのは小さな祭の会場だった。
飴屋の前に佇むつゆの後ろ姿を見て走った。
すると真横にいた銀時が振り向き、土方に気づくと恐ろしく静かな顔つきで歩み寄り道を塞いだ。
「どしたの土方くん。怖い顔して何か用? つゆに」
低くうなるような声だった。
「薬屋に用がある」
「薬はもう売ってねえけど」
「そうか。だとしてもだ。悪いが組織内の事は薬一つとしても外部の耳に入れやしねえ。悪いが外してくれ」
「大変だね。お堅いお役人さんは」
その目をあてたまま、銀時は道を開けた。
つゆの背姿が小さな灯りに濡れてそこに在る。
静かに真っ直ぐ下りた黒髪が、通り過ぎる人のたてる風にも動じない。
幾つもの風車を差した荷車に横切られ、土方は立ち止まった。
これを逃せば二度と会えない。
そんな予感がして、荷車が通り過ぎる間も彼女から目を離さなかった。
夜風に絡まり、風車が音もなく回った。
糸を引くほど煮詰めた飴のにおいが灯りの下で光っていた。
その端に立ち止まっているつゆのそばで土方は足を止めた。
「つゆ」
例えば蝶が羽根を休めるみたいに、息をするのと同じように、つゆはただその静かさで一定に瞬きを繰り返していた。
伏せた睫毛のその奥に、蜜色の飴を映すつゆの瞳が光っている。
「何処にいた」
今までずっと。
「薬はもう売らねえのか?」
奇妙なことに、真横から声がする。
蜜色の飴に目を奪われたまま、つゆは夜の空気を吸い込んだ。
笛や太鼓、飴のように絡まる人の声。
真横から伸びてくる。
それはまるでそこに誰かいて、話しかけてくるみたいに。
「つゆ」
呼ぶ人がいる。
不思議に思いながら蜜色に瞬いて、見ればそこに男がいた。
慧眼な眼差しをこちらへ向けて、地面に足を突き刺している。
「売れねえのか?」
心の中で、その人が誰かわかった。
離れたところでついた灯りのようにぽつんと光ったのだ。
土方が何を問うているのか、それより先程まで真横にいた銀時は何故いないのか____ 。
心臓が動いている。
銀時を追って見るつゆの目は静かに巡った。
人影、幕、硝子、灯り。
幾つもの色が目の端に尾を引いてどれも眩しい。
参道の挟んだ向かえの木の下に銀時が立っている。
いた。
目が合って、その顔は恐ろしく静かだった。
つゆはまた前を向く。
「つゆ 」
真っ赤に染まったつゆの首筋に気づいている土方が言った。
「言えねえなら目で合図しろ」
遠くで祭囃子がきこえる。
辺りが滲んで見える中、真っ直ぐ土方を見上げるつゆの口元がほんの一瞬だけ闇の中で笑った。
____END?
2025年2月16日
副長室で地図を広げる土方に沖田が言った。
「どっかで薬箱ぶちまけて拾ってまさァ」
「なら良いんだがな」
「それか旦那に監禁されてるか」
沖田の言葉に土方は胸の内で同意した。
万事屋に聞けば銀時は三ヶ月も帰っていないという。
何かつゆに関係ありそうで、嫌な予感しかしない。
行方知れずのつゆと再開したのは小さな祭の会場だった。
飴屋の前に佇むつゆの後ろ姿を見て走った。
すると真横にいた銀時が振り向き、土方に気づくと恐ろしく静かな顔つきで歩み寄り道を塞いだ。
「どしたの土方くん。怖い顔して何か用? つゆに」
低くうなるような声だった。
「薬屋に用がある」
「薬はもう売ってねえけど」
「そうか。だとしてもだ。悪いが組織内の事は薬一つとしても外部の耳に入れやしねえ。悪いが外してくれ」
「大変だね。お堅いお役人さんは」
その目をあてたまま、銀時は道を開けた。
つゆの背姿が小さな灯りに濡れてそこに在る。
静かに真っ直ぐ下りた黒髪が、通り過ぎる人のたてる風にも動じない。
幾つもの風車を差した荷車に横切られ、土方は立ち止まった。
これを逃せば二度と会えない。
そんな予感がして、荷車が通り過ぎる間も彼女から目を離さなかった。
夜風に絡まり、風車が音もなく回った。
糸を引くほど煮詰めた飴のにおいが灯りの下で光っていた。
その端に立ち止まっているつゆのそばで土方は足を止めた。
「つゆ」
例えば蝶が羽根を休めるみたいに、息をするのと同じように、つゆはただその静かさで一定に瞬きを繰り返していた。
伏せた睫毛のその奥に、蜜色の飴を映すつゆの瞳が光っている。
「何処にいた」
今までずっと。
「薬はもう売らねえのか?」
奇妙なことに、真横から声がする。
蜜色の飴に目を奪われたまま、つゆは夜の空気を吸い込んだ。
笛や太鼓、飴のように絡まる人の声。
真横から伸びてくる。
それはまるでそこに誰かいて、話しかけてくるみたいに。
「つゆ」
呼ぶ人がいる。
不思議に思いながら蜜色に瞬いて、見ればそこに男がいた。
慧眼な眼差しをこちらへ向けて、地面に足を突き刺している。
「売れねえのか?」
心の中で、その人が誰かわかった。
離れたところでついた灯りのようにぽつんと光ったのだ。
土方が何を問うているのか、それより先程まで真横にいた銀時は何故いないのか____ 。
心臓が動いている。
銀時を追って見るつゆの目は静かに巡った。
人影、幕、硝子、灯り。
幾つもの色が目の端に尾を引いてどれも眩しい。
参道の挟んだ向かえの木の下に銀時が立っている。
いた。
目が合って、その顔は恐ろしく静かだった。
つゆはまた前を向く。
「つゆ 」
真っ赤に染まったつゆの首筋に気づいている土方が言った。
「言えねえなら目で合図しろ」
遠くで祭囃子がきこえる。
辺りが滲んで見える中、真っ直ぐ土方を見上げるつゆの口元がほんの一瞬だけ闇の中で笑った。
____END?
2025年2月16日
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