暗転
空欄の場合はつゆになります
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猛烈なだるさと痛みを抱えて目を覚ましたつゆはやわらかな布団の中だった。
細かな水音のする先を見れば、日向を映した壁につゆの浴衣と銀時の黒い衣の上下が掛けられており、その裾から滴り落ちる水が溜まりになっている。
「ぎ……ン」
独り言ちて、つゆはようやく重い身体を引き上げようとした。
痛みが走り、声も出なかった。
ただ汗が吹きあがり息が乱れる。
足は震えるばかりで立たない。
部屋を見渡すが、銀時も、窓も、何処に在るのかわからない。
未だ濡れた浴衣を肌に通した。
此処から出なきゃという焦りが一層強くつゆを動かした。
それも早く、急いで此処から出なきゃならない。
そんな気持ちだけがつゆを急がせ、動かした。
這って行く度に「ンぅ」と苦悶し「ぃ"た……」と崩れ、立ち止まった。
見つかった玄関戸は不気味だった。
幾つも鍵が掛けられており、開かない。
時間を要する。
つゆは休み休み必死になって移動し、外へ出る道を探した。
唯一あった窓は固く、無理に開け放ったつゆの目の前に広がったのは絶望だった。
一面にび色の、それはおおきな岩がその向こうを封じて動かない。
真昼の晴れた光が天井の高い梁の上から漏れてつゆの睫毛の上に乗っていた。
瞬きもせず、唖然とするつゆは胸に差した苛立ちに任せて握った両の拳を目の前に叩きつけた。
「っっン…ん……____」
叩きつけ、叩きつけても岩はビクともしない。
やっとのことで立っていた足から崩れていった。
その間にも身体中に残る銀時の痕跡がつゆにのしかかり体力を奪う。
銀時は一体どこから出たというのか。
幾つもあったあの鍵をどう開けたらいい?
斧か何かあれば鍵でも戸でも壊せる。
刀や石、なんでもいい。何か壊せるものが必要だ。
考えているうちにも銀時が何処からか戻ってくるような気がして、つゆはぞっとした。
立ち上がろうとして壁を触った時
「____」
うすく聞こえたその誰ともわからない声に耳をそばだてて、つゆは瞬きもしない。
誰かいる。
遠い。でももうそれを掴まえる他なかった。
腕を伸ばし、窓枠に手をかけるともうそれ以上立ち上がることが出来ない。
それでも出来る限り窓に近づいて口を開けた。
「待っ……____……って」
恐ろしいほど喉が開かない。
「待って……っ」
あらん限りの声をあげて伸ばしたが、どこまで届いたか分からない。
耳をそばだてれば、足を止めずに談笑する声が鷹揚に彼方を指している。
聞こえていない。
焦るつゆは立ち上がろうとして、窓枠にかけた腕に何度も力を込めて言った。
「待っ ……って 」
外気へ向かって伸びるつゆの首に片腕が巻き付き、のしかかる人の重みがあった。
もう一方は胸の下を抱き、その腕は紛れもなくつゆを抱擁する。
たちまち蒼くなって固まるつゆの肩に顎を乗せ、耳元でその人は言った。
「どしたのつゆ。俺ァこっちだよ」
低く落ち着いた声を放したその人の語尾が静かに笑みで滲んだ。
見なくともわかる。
つゆは凍りついたまま何処までも耳をそばだてた。
木々の間を踏んで外を歩く人の気配。
「たす____け……」
遠のく足音がきこえる。
「____たすけて、たすけて……っ」
仄かに強まった抱擁を感じて喉が締まる。
「何を助けて欲しいんだ?」
つゆ。
「俺がいるじゃねえの。こんな近くに。ひとり置いてったりしねえよ」
愛してる。
こんなもんでつゆを縛り付けられるとは思っていない。
俺が足りない。
しかし下を向いて笑うよりも上を向いて絶望したいから。
愛しいつゆの前では。
細かな水音のする先を見れば、日向を映した壁につゆの浴衣と銀時の黒い衣の上下が掛けられており、その裾から滴り落ちる水が溜まりになっている。
「ぎ……ン」
独り言ちて、つゆはようやく重い身体を引き上げようとした。
痛みが走り、声も出なかった。
ただ汗が吹きあがり息が乱れる。
足は震えるばかりで立たない。
部屋を見渡すが、銀時も、窓も、何処に在るのかわからない。
未だ濡れた浴衣を肌に通した。
此処から出なきゃという焦りが一層強くつゆを動かした。
それも早く、急いで此処から出なきゃならない。
そんな気持ちだけがつゆを急がせ、動かした。
這って行く度に「ンぅ」と苦悶し「ぃ"た……」と崩れ、立ち止まった。
見つかった玄関戸は不気味だった。
幾つも鍵が掛けられており、開かない。
時間を要する。
つゆは休み休み必死になって移動し、外へ出る道を探した。
唯一あった窓は固く、無理に開け放ったつゆの目の前に広がったのは絶望だった。
一面にび色の、それはおおきな岩がその向こうを封じて動かない。
真昼の晴れた光が天井の高い梁の上から漏れてつゆの睫毛の上に乗っていた。
瞬きもせず、唖然とするつゆは胸に差した苛立ちに任せて握った両の拳を目の前に叩きつけた。
「っっン…ん……____」
叩きつけ、叩きつけても岩はビクともしない。
やっとのことで立っていた足から崩れていった。
その間にも身体中に残る銀時の痕跡がつゆにのしかかり体力を奪う。
銀時は一体どこから出たというのか。
幾つもあったあの鍵をどう開けたらいい?
斧か何かあれば鍵でも戸でも壊せる。
刀や石、なんでもいい。何か壊せるものが必要だ。
考えているうちにも銀時が何処からか戻ってくるような気がして、つゆはぞっとした。
立ち上がろうとして壁を触った時
「____」
うすく聞こえたその誰ともわからない声に耳をそばだてて、つゆは瞬きもしない。
誰かいる。
遠い。でももうそれを掴まえる他なかった。
腕を伸ばし、窓枠に手をかけるともうそれ以上立ち上がることが出来ない。
それでも出来る限り窓に近づいて口を開けた。
「待っ……____……って」
恐ろしいほど喉が開かない。
「待って……っ」
あらん限りの声をあげて伸ばしたが、どこまで届いたか分からない。
耳をそばだてれば、足を止めずに談笑する声が鷹揚に彼方を指している。
聞こえていない。
焦るつゆは立ち上がろうとして、窓枠にかけた腕に何度も力を込めて言った。
「待っ ……って 」
外気へ向かって伸びるつゆの首に片腕が巻き付き、のしかかる人の重みがあった。
もう一方は胸の下を抱き、その腕は紛れもなくつゆを抱擁する。
たちまち蒼くなって固まるつゆの肩に顎を乗せ、耳元でその人は言った。
「どしたのつゆ。俺ァこっちだよ」
低く落ち着いた声を放したその人の語尾が静かに笑みで滲んだ。
見なくともわかる。
つゆは凍りついたまま何処までも耳をそばだてた。
木々の間を踏んで外を歩く人の気配。
「たす____け……」
遠のく足音がきこえる。
「____たすけて、たすけて……っ」
仄かに強まった抱擁を感じて喉が締まる。
「何を助けて欲しいんだ?」
つゆ。
「俺がいるじゃねえの。こんな近くに。ひとり置いてったりしねえよ」
愛してる。
こんなもんでつゆを縛り付けられるとは思っていない。
俺が足りない。
しかし下を向いて笑うよりも上を向いて絶望したいから。
愛しいつゆの前では。