明暗
空欄の場合はつゆになります
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男と付き合い始めた二日目、何処へ行くんだと聞くとつゆは言った。
「お団子屋さん。土方さんも一緒に来ますか?」
と。
デートだというのにそうして人を誘えるのはつゆの好きが相手の好きとは違うからだ。
罪だと土方は思いながら「ああ」と答えた。
「わたし、きついところありますか?」
釣りの後、夜が明けた町の喫茶店でつゆは聞いた。
つゆの前には紅茶が、土方の前には珈琲があり、それらはしきりに湯気を立てている。
「いや。ねえよ。まるなしだな」
「じゃあ、変なところは?」
「んなもん誰にでもあるだろうよ」
それもそうか、とつゆは素直に安心する。
「何だ」
遠慮なくじっとこちらを見る土方の視線はほとんど凝視していた。
こちらの方がどうしたのと聞きたくなる見方だった。
「土方さんこそ、どうしたんですか。怖い顔をして」
飲みかけた紅茶茶碗を手にしたまま、つゆは問うた。
すると暗闇みたいに動じず、土方は恐ろしく静かな顔つきのまま言った。
「気にする程こたえたのか? 今回は」
ふ……と息を吐き、つゆは自分が息をつめていたことを知る。
一口紅茶を飲み、いいえ、とつゆは曖昧に笑った。
「でも、合わせる顔がないってどういう事なんだろうと思って」
その夜、修理から戻ってきた三味線を抱えてつゆは縁側を歩いていた。
「町田サノスケってつゆの男だろィ」
そう声が聞こえてつゆは歩みを止めた。
「元な。薬を所持していた疑いで捕まった」
「前の男もそれでしょっぴかれたじゃァねえですかい。ろくな男に引っ掛からねえな。いい男でも介してやらねえと」
その衝撃につゆは動けなくなった。
薬____。
しかしある出来事がつゆの脳裏でふと重なった。
昨日の事である。
珈琲屋の三階で夜ごはんを食べていると、向かいの旅籠の前で話す土方と町田を見かけた。
何を話しているんだろう。
つゆがそう思い見ていると二人は旅籠の中へ入って行った。
一昨日町田とつゆと土方とで団子屋に行った時はそうでもなかった気がするが、二人はつゆの知らないうちに仲良くなったのだろうか。
二人は旅籠の二階、珈琲屋兼barになっているそこの窓際に座ったので、つゆのいる三階からその姿はよく見えた。
二人は会話が弾んでいる様子で、つゆはそれを何気なく見ていた。
すると町田が厠に立った時、土方が町田のグラスに何か入れたのだった。
一瞬だったが確かに見た。
「よおつゆじゃねえの」
その時銀時がつゆの隣に座った。
目を離した隙に二人の姿はなくなっており、気になったつゆは慌てて外へ出た。
すると店へ入る前に銀時に止められた。
「おいつゆ。この旅籠に何か用か?」
「うん。ちょっと」
「悪い事ァ言わねえからよ、二階で紅茶飲みてえなら他を当たった方がいいぜ」
「どうして?」
「近頃甘い代物が流行っているらしくてね。ひと匙舐めれば桃源郷。団子の山で団子を食うんだと。そいつをキメればもう手放す事は出来ねえんだよ」
土方は町田のグラスに入れた代物を何と言っていただろう。
昨日の銭湯帰りに聞いた答えをつゆは思い出す。
「眠剤だ。よく眠れる代物を知っていたからくれてやったんだよ。お前の事を考えると眠れねえらしくてな」
そう言っていた土方をありありと思い出すつゆの目の端でふと行灯の火が消えた。
近藤と沖田が見回りに向かう足音がし、つゆは身を潜めて考えた。
睡眠薬なら、何故わざわざ厠に立った瞬間に入れたのだろう。
あれは何だったのだろう。
そう思うと胸がざわざわした。
しかし考え過ぎていると思い直して、つゆは土方の部屋に向かった。
雨は昼間から降り続いており、廊下の所々が濡れて光っている。
「お団子屋さん。土方さんも一緒に来ますか?」
と。
デートだというのにそうして人を誘えるのはつゆの好きが相手の好きとは違うからだ。
罪だと土方は思いながら「ああ」と答えた。
「わたし、きついところありますか?」
釣りの後、夜が明けた町の喫茶店でつゆは聞いた。
つゆの前には紅茶が、土方の前には珈琲があり、それらはしきりに湯気を立てている。
「いや。ねえよ。まるなしだな」
「じゃあ、変なところは?」
「んなもん誰にでもあるだろうよ」
それもそうか、とつゆは素直に安心する。
「何だ」
遠慮なくじっとこちらを見る土方の視線はほとんど凝視していた。
こちらの方がどうしたのと聞きたくなる見方だった。
「土方さんこそ、どうしたんですか。怖い顔をして」
飲みかけた紅茶茶碗を手にしたまま、つゆは問うた。
すると暗闇みたいに動じず、土方は恐ろしく静かな顔つきのまま言った。
「気にする程こたえたのか? 今回は」
ふ……と息を吐き、つゆは自分が息をつめていたことを知る。
一口紅茶を飲み、いいえ、とつゆは曖昧に笑った。
「でも、合わせる顔がないってどういう事なんだろうと思って」
その夜、修理から戻ってきた三味線を抱えてつゆは縁側を歩いていた。
「町田サノスケってつゆの男だろィ」
そう声が聞こえてつゆは歩みを止めた。
「元な。薬を所持していた疑いで捕まった」
「前の男もそれでしょっぴかれたじゃァねえですかい。ろくな男に引っ掛からねえな。いい男でも介してやらねえと」
その衝撃につゆは動けなくなった。
薬____。
しかしある出来事がつゆの脳裏でふと重なった。
昨日の事である。
珈琲屋の三階で夜ごはんを食べていると、向かいの旅籠の前で話す土方と町田を見かけた。
何を話しているんだろう。
つゆがそう思い見ていると二人は旅籠の中へ入って行った。
一昨日町田とつゆと土方とで団子屋に行った時はそうでもなかった気がするが、二人はつゆの知らないうちに仲良くなったのだろうか。
二人は旅籠の二階、珈琲屋兼barになっているそこの窓際に座ったので、つゆのいる三階からその姿はよく見えた。
二人は会話が弾んでいる様子で、つゆはそれを何気なく見ていた。
すると町田が厠に立った時、土方が町田のグラスに何か入れたのだった。
一瞬だったが確かに見た。
「よおつゆじゃねえの」
その時銀時がつゆの隣に座った。
目を離した隙に二人の姿はなくなっており、気になったつゆは慌てて外へ出た。
すると店へ入る前に銀時に止められた。
「おいつゆ。この旅籠に何か用か?」
「うん。ちょっと」
「悪い事ァ言わねえからよ、二階で紅茶飲みてえなら他を当たった方がいいぜ」
「どうして?」
「近頃甘い代物が流行っているらしくてね。ひと匙舐めれば桃源郷。団子の山で団子を食うんだと。そいつをキメればもう手放す事は出来ねえんだよ」
土方は町田のグラスに入れた代物を何と言っていただろう。
昨日の銭湯帰りに聞いた答えをつゆは思い出す。
「眠剤だ。よく眠れる代物を知っていたからくれてやったんだよ。お前の事を考えると眠れねえらしくてな」
そう言っていた土方をありありと思い出すつゆの目の端でふと行灯の火が消えた。
近藤と沖田が見回りに向かう足音がし、つゆは身を潜めて考えた。
睡眠薬なら、何故わざわざ厠に立った瞬間に入れたのだろう。
あれは何だったのだろう。
そう思うと胸がざわざわした。
しかし考え過ぎていると思い直して、つゆは土方の部屋に向かった。
雨は昼間から降り続いており、廊下の所々が濡れて光っている。