傷に結う
空欄の場合はつゆになります
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祭の最終日、殆どの準備を終えたつゆは祭囃子のきこえるおおきな桐の下に座り銀時から夜飯を受け取った。
弁当と桃の実だった。
桃の実を膝に乗せてつゆはいう。
「銀と話してて他の人と話せなかった」
「不満?」
「だって」
胸を詰まらせるつゆの唇の前に桃が差し出され、いいにおいがした。
つゆは銀時の手を下ろすと慎重に、しかし切実にいう。
「銀から離れられなくなっちゃう」
二人分の弁当を開けてくれていた銀時の止まった手。
すると不意に顔を持ち上げられ、顔をあげたつゆの目の前に銀時の視線がぶつかった。
「つゆ」
真面目な、それでいて穏やかな顔をしている。
「それでいい」
つゆにはわからなかった。
穏やかに微笑する銀時の事を。
少しでも変わったことを見せようと思い、つゆは箸を握った。
「少し上手くなったでしょ?」
「少しだろ。こぼすぜ」
助けようとする銀時の手を避けると、こぼしにこぼすつゆはいよいよ観念して素直に箸を取られた。
桃もひとつ食べ切り、小川で口と手をすすぐ。
「銀」
口元を拭いながら銀時が振り向いた。
つゆはひっそりと笑う。
「これからみんなで秘湯に行くんだって。行こう」
銀時は何も言わない。
ただつゆの座る石の上に腰掛けて息をついた。
暫く二人ともそこで黙っていた。
祭囃子の音に混ざり警笛の音が聞こえはじめ、つゆはにわかに不安を覚えた。
「少し歩くって言ってた。もうすぐ来ると思うんだけど、どうしたんだろう」
つゆの気は長く、遠くの灯りを見つめたまま動かない。
「つゆ」
声が真摯だった。
大事な事を言う時の銀時の声。
見ると、真剣な顔をしてこちらを見ていた。
「つゆ愛してる」
突然の告白につゆは戸惑った。
しかし強く心に思う。
「わたしも大切に思ってる」
と。
しかしそれは同じにならないとつゆは知っていた。
あの狂った密度で笑う銀時を見ていたから。
「じゃあ、行こうぜ」
一拍置いて、銀時がつゆの手を取った。
「何処に?」
「見せたいものがあってな」
そう言って銀時は山を登りはじめた。
半分も登ったというところで馬車に乗った。
窓から下を見ると、人が何人か倒れているのが見えた。
今の今まで祭の会場を一緒に作り上げた人々だった。
「銀、待って人が……っ」
見ると、彼は人差し指を唇につけて静かにと合図する。
声を張ったため、暗がりの車内にいる他の乗客からつゆは注目を浴びていた。
遠ざかる景色、馬の走る揺れ。
窓に張り付くつゆの前をその光景はどんどん遠ざかっていった。
「人が倒れていたの。よく見えなかったけれど、みんなかもしれない」
声をひそめてつゆは言う。
乗客の真上でランプが揺れている。
返事がないので銀時を見上げた。
すると彼は機嫌のいい顔でただ真っ直ぐ前を見ていた。
「気にしなくていい。俺達には関係のねえ事だ。もう会わねえだろ?」
「だからって____」
「高杉やヅラにも」
不意にこちらに視線を落とした銀時が穏やかに笑った。
「な」
と。
馬車は揺れながら前へと進む。
暗がりの車内でつゆは何処へ向かっているのか胸がざわついた。
弁当と桃の実だった。
桃の実を膝に乗せてつゆはいう。
「銀と話してて他の人と話せなかった」
「不満?」
「だって」
胸を詰まらせるつゆの唇の前に桃が差し出され、いいにおいがした。
つゆは銀時の手を下ろすと慎重に、しかし切実にいう。
「銀から離れられなくなっちゃう」
二人分の弁当を開けてくれていた銀時の止まった手。
すると不意に顔を持ち上げられ、顔をあげたつゆの目の前に銀時の視線がぶつかった。
「つゆ」
真面目な、それでいて穏やかな顔をしている。
「それでいい」
つゆにはわからなかった。
穏やかに微笑する銀時の事を。
少しでも変わったことを見せようと思い、つゆは箸を握った。
「少し上手くなったでしょ?」
「少しだろ。こぼすぜ」
助けようとする銀時の手を避けると、こぼしにこぼすつゆはいよいよ観念して素直に箸を取られた。
桃もひとつ食べ切り、小川で口と手をすすぐ。
「銀」
口元を拭いながら銀時が振り向いた。
つゆはひっそりと笑う。
「これからみんなで秘湯に行くんだって。行こう」
銀時は何も言わない。
ただつゆの座る石の上に腰掛けて息をついた。
暫く二人ともそこで黙っていた。
祭囃子の音に混ざり警笛の音が聞こえはじめ、つゆはにわかに不安を覚えた。
「少し歩くって言ってた。もうすぐ来ると思うんだけど、どうしたんだろう」
つゆの気は長く、遠くの灯りを見つめたまま動かない。
「つゆ」
声が真摯だった。
大事な事を言う時の銀時の声。
見ると、真剣な顔をしてこちらを見ていた。
「つゆ愛してる」
突然の告白につゆは戸惑った。
しかし強く心に思う。
「わたしも大切に思ってる」
と。
しかしそれは同じにならないとつゆは知っていた。
あの狂った密度で笑う銀時を見ていたから。
「じゃあ、行こうぜ」
一拍置いて、銀時がつゆの手を取った。
「何処に?」
「見せたいものがあってな」
そう言って銀時は山を登りはじめた。
半分も登ったというところで馬車に乗った。
窓から下を見ると、人が何人か倒れているのが見えた。
今の今まで祭の会場を一緒に作り上げた人々だった。
「銀、待って人が……っ」
見ると、彼は人差し指を唇につけて静かにと合図する。
声を張ったため、暗がりの車内にいる他の乗客からつゆは注目を浴びていた。
遠ざかる景色、馬の走る揺れ。
窓に張り付くつゆの前をその光景はどんどん遠ざかっていった。
「人が倒れていたの。よく見えなかったけれど、みんなかもしれない」
声をひそめてつゆは言う。
乗客の真上でランプが揺れている。
返事がないので銀時を見上げた。
すると彼は機嫌のいい顔でただ真っ直ぐ前を見ていた。
「気にしなくていい。俺達には関係のねえ事だ。もう会わねえだろ?」
「だからって____」
「高杉やヅラにも」
不意にこちらに視線を落とした銀時が穏やかに笑った。
「な」
と。
馬車は揺れながら前へと進む。
暗がりの車内でつゆは何処へ向かっているのか胸がざわついた。