傷に結う
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攘夷戦争が終結を迎えた時つゆはひとりだった。
銀時の一件以来つゆは友情も愛情も人も信じていない。
しかし時分を信じるには銀時の愛情と呼べる何かを頼り過ぎていた。
ただ、誰がいなくとも一日は滞りなく幕を閉じる。
すっかり姿を変えた江戸で、どの場所でもふと目に留まる仲間という代物。
つゆはひとりで何処なと行き、ちゃんと食べてちゃんと休む。
ある昼日中、勤め先の薬屋に頼まれたつゆは夏の終わりまでの仕事として森に入った。
それは祭の準備だった。
つゆが任されたのはちいさな提灯を糸で繋げるという作業で片手でするには時間がかかるので両手で挑むが簡単な作業が簡単にはいかない。
少し休もうと息を抜いた時だった。
「つゆ」
抱擁し、のしかかられた重みで前のめリにつゆの身が沈む。
近づいた地面と提灯の山を見つめたままつゆはその人を認めていた。
銀時だ。
耳元にくっついた銀時の唇が息を吐ききり、全身で絞り出すようにこう震えた。
「つかまえた」
笑み震える銀時の声の重さにつゆの胸がざわつく。
「銀____」
銀時の心臓が早鐘を打っているのを背中に感じる。
こちらを認める眼差しもひたと感じるが、逃げてきたようなつゆは彼に目をあてる事が出来なかった。
覚悟して視線を持ち上げると、銀時はにっこりと笑った。
「何してんの? 俺なしでよ」
張り付けたような笑顔。
怒っているのだ。逃げた事を。
「お祭りの、準備____」
そのあとが続かなくて、つゆは途方に暮れた。
不意に何かが滴り落ちた。
水だ。よく見れば銀時が濡れている。
「どうしたの。____ずぶ濡れで」
かろうじてつゆはいう。
「そこで水撒いてんだろ? あれにやられたんだよ」
こちらから一切視線を逸らさずにいう銀時に息をのみ、つゆはそちらに目をあてる。
確かに水を撒いている男がひとりいた。
「よォ、そこ傾いてんぞ。もうちょい右な」
そう言って離れた銀時が向かうのは屋台の看板を吊り下げている場所だった。
指示しながら別の場所も指示に向かう。
「見なよ。張り切ってるね。手伝いに来てくれた人だよ。あんたの婚約者だってね」
祭の責任者にそう肩を叩かれてつゆはよく分からなかった。
指示する銀時もたこ焼きをつまみ食いする銀時もそこに立つ銀時もどうやら現実らしかった。
不意にこちらを振り向いた銀時が穏やかに笑った。
懐かしい笑顔。
その途端につゆは全てを思い出す。
甘やかされた全てのことを。
そしてまた銀時は此処でずぶ濡れになるような贅沢をつゆに浴びせた。
銀時の一件以来つゆは友情も愛情も人も信じていない。
しかし時分を信じるには銀時の愛情と呼べる何かを頼り過ぎていた。
ただ、誰がいなくとも一日は滞りなく幕を閉じる。
すっかり姿を変えた江戸で、どの場所でもふと目に留まる仲間という代物。
つゆはひとりで何処なと行き、ちゃんと食べてちゃんと休む。
ある昼日中、勤め先の薬屋に頼まれたつゆは夏の終わりまでの仕事として森に入った。
それは祭の準備だった。
つゆが任されたのはちいさな提灯を糸で繋げるという作業で片手でするには時間がかかるので両手で挑むが簡単な作業が簡単にはいかない。
少し休もうと息を抜いた時だった。
「つゆ」
抱擁し、のしかかられた重みで前のめリにつゆの身が沈む。
近づいた地面と提灯の山を見つめたままつゆはその人を認めていた。
銀時だ。
耳元にくっついた銀時の唇が息を吐ききり、全身で絞り出すようにこう震えた。
「つかまえた」
笑み震える銀時の声の重さにつゆの胸がざわつく。
「銀____」
銀時の心臓が早鐘を打っているのを背中に感じる。
こちらを認める眼差しもひたと感じるが、逃げてきたようなつゆは彼に目をあてる事が出来なかった。
覚悟して視線を持ち上げると、銀時はにっこりと笑った。
「何してんの? 俺なしでよ」
張り付けたような笑顔。
怒っているのだ。逃げた事を。
「お祭りの、準備____」
そのあとが続かなくて、つゆは途方に暮れた。
不意に何かが滴り落ちた。
水だ。よく見れば銀時が濡れている。
「どうしたの。____ずぶ濡れで」
かろうじてつゆはいう。
「そこで水撒いてんだろ? あれにやられたんだよ」
こちらから一切視線を逸らさずにいう銀時に息をのみ、つゆはそちらに目をあてる。
確かに水を撒いている男がひとりいた。
「よォ、そこ傾いてんぞ。もうちょい右な」
そう言って離れた銀時が向かうのは屋台の看板を吊り下げている場所だった。
指示しながら別の場所も指示に向かう。
「見なよ。張り切ってるね。手伝いに来てくれた人だよ。あんたの婚約者だってね」
祭の責任者にそう肩を叩かれてつゆはよく分からなかった。
指示する銀時もたこ焼きをつまみ食いする銀時もそこに立つ銀時もどうやら現実らしかった。
不意にこちらを振り向いた銀時が穏やかに笑った。
懐かしい笑顔。
その途端につゆは全てを思い出す。
甘やかされた全てのことを。
そしてまた銀時は此処でずぶ濡れになるような贅沢をつゆに浴びせた。