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第1話 リヴァイの帰還

コツコツと足音が聞こえる。
石畳に雪が降っては溶けていく。
白と黒…黒はある男の黒い髪だ。

歩くたびにゆらゆらと毛先が揺れている。
寒空だが晴れていて、静かな住宅街に人気は疎らだった。

季節は12月の初頭。
ドイツの某街にの正午、男はある弁当屋に到着した。
黒いキャリーケースに麻薬でも入ってるのかと、
すれ違う男性はチラ見しては足早に怯えて歩く。

男の名前はリヴァイ・アッカーマン
彼は「みんなのお弁当屋さん」という、
ファンシーな熊の看板を見上げて、
サングラスにマスク姿で自動ドアを遠慮なく入っていく。

そのお店には女性が働いていた。

名はステラ・ラルという。
年齢は18歳、12月24日に19歳になるデザイン関係の専門学生だ。

154cmほどの小柄な体格だが、
明るい茶色の髪をまとめて、白いエプロンをしている。力が強いのか片手でフライパンを操って肉野菜炒めを作っている。

後ろにいたのはジャン・キルシュタイン
通称、馬面のジャンだジャン★

ジャンもステラと同じ格好で、ステラの肩を叩いて危険を知らせる。

無表情の黒い髪の男リヴァイを強盗と間違えたのか、
顔が引きつっている。
彼に気づいた彼女も顔を引き攣らせて
叫ぶ。

「ぉ、おい!先輩!」

「…強盗?!!」

警察に電話をかけられるように、
スマホを構えるが、すぐに苦笑いをうかべる。
見知ったリヴァイを見て、ちょっと面倒くさそうに
挨拶をした。

リヴァイはサングラスをかけて、
全身黒っぽい服装だったからだ。
黒のコートに紺色のセーターの下からカッターシャツが見えてるので、ギリギリ普通の格好をしている。

サングラスとマスクを外して内ポケットに収める。

「り、リヴァイさん?!!…お、お久しぶりです…」

「おぃ、…一年振りの帰りにその挨拶か。」

「そんな格好してたら強盗かと思うでしょ!!?」

ジャンがステラに同情するように
後ろからつぶやく。

「相変わらずだな…リヴァイさん…」

ため息をついてステラは困ったように笑う。
帰国を伝えてられていなかったので、
てっきり年末に帰ってくると思っていたが思ったより早く帰国してきて、一気に疲れがでてくる。

(帰って来るの連絡しとけよ……お姉ちゃん達発狂するぞ。)

発狂する連中の顔が浮かぶ。
そして、リヴァイは待合いの椅子にドカリと腰掛けて
ステラを睨むつもりはないが、睨む。

三白眼が故に誤解されやすい。
ステラは時計を指さして、慣れたように話す。

「リヴァイさん、私13時までバイトなんですよ。」

「なら、ここで待つ。」

「あの、営業妨害なんで向かいのカフェで待ってて下さいよ。外寒いし。」

ステラはリヴァイに向かってはっきり物を言う。
横目でジャンはヒヤヒヤしながら、
空気を読みながらステラに耳打ちする。

「なぁ、どうするよ。」

「あ、あのーリ」

間髪入れずにリヴァイが言い返す。

「長旅で帰ってきた兄貴分を蔑ろにした挙句に、追い出すのか?随分優しいお姉さんになったもんだな。」

「…いや、まじで営業妨害…………分かったよ!分かたから!紅茶飲んでて待ってて下さいよ!!!予約のお客様が来るから怖がらせないで下さいよ!」

「なぁ、予約のお客…俺の母ちゃんだし。心配ねぇって。」

「え?あ、ホントだ。」

予約のタブレットをジャンが見せてくれたら、
ステラは肩を落とす。
ジャンのお母さんなら、リヴァイを知っている。

とりあえず、彼女はソファの真ん中に居座るリヴァイを一睨みしてから、紅茶を注いで紙のカップに差し出す。

リヴァイはそれを手わたされると、
満足そうにまばたきする。
結構お喋りはするが、基本的にあまり必要以上に口を開かないし、目で語る方が多い。

「どうぞ。」

「あぁ…」

妙な沈黙の末、時間が過ぎていく。
ジャンの母が弁当を受け取りに来たのは彼女のバイトが終る頃だった。

午後からジャンの同級生のアルミン・アルレルトがステラの代わりにやってきた。
金髪のおかっぱに近い髪型に、青い瞳。
可愛らしい顔立ちで、お客のマダムから人気がある。

ステラはアルミンに引き継ぎをしてから、
お店の裏口に置いた赤い自転車を押して、隣に並ぶリヴァイを見て疲れたように話しかける。


「あ、あの…なんで私のバイト先に?…帰国したこともっと早くに教えて下さいよ。…姉達やエルヴィン社長には伝えてるんですか?」

「さっきした。」

淡々と話す。
そして…間が空く。


          しぃん…。
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