そこに野望があるから
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「それで、女子テニスはどうなんだ?」
赤木くんの真剣な眼差しで現実に引き戻される。
少しは赤木くんに興味を持ってもらえているようで、私は嬉しくなった。
『そうそう! 聞いて聞いて! なんとスーパールーキーが入部したの! それも二人も!』
「ほう」
普段、自分について話せることは少ない。けれど部活の話となれば別だ。赤木くんが興味を持って話を聞いてくれるなら、部活の話だろうと何の話だろうと構わない。私にとって大切なのは赤木くんと話ができるこの時間なのだ。
私は自分のことのように嬉しく思い、自慢げに話をする。
『二人はあまり仲は良くないみたいなんだけど、ライバルとして意識し合ってるみたいだから、大会までにどれだけ成長するかが見物なのよね』
「なんかうちと似てるな。うちも今年は有望なのが入部したんだ」
『知ってる知ってる! 流川くんと桜木花道くんでしょう!』
小暮くんの言葉に、私は思わず反応する。
桜木くんと赤木くんの勝負は直接見た訳じゃない。後日、友達やあの勝負を見ていた子たちの話や噂を聞いて知っているだけだ。勝負を目撃した人たちは、みんな口をそろえて面白かったと言った。部活動に参加していて見れなかったのが悔やまれる。
しかし、勝負をしたのに入部を決めた桜木くんには驚いたが、それを認めた赤木くんにも驚いた。本人は何も言わないが、赤木くんを認めさせる何かが桜木くんにはあったのだろう。
「知ってたのか。意外だな」
本当に意外そうに、驚いて赤木くんは言った。
赤木くんが率いているバスケ部の事だ。知らないはずがない。知らないことなど、あってほしくはない。
『当たり前でしょう。あんなに話題になる二人が入部してたら、知らない人なんていないよ』
「そうか」
口ではそう言ったけれど、本当は知らないことがあるのが少し悔しい。
マネージャーの二年生のように、バスケ部に入部していたら、もっと赤木くんに近づけただろうか。
もっと、違う関係になっていただろうか。
それは考えても無駄なことだけれど。
『今年は、私はレギュラー外されちゃうだろうけど、全国制覇はするんだから!』
「おい、奈々氏‥‥‥」
赤木くんが何かを言いかけたけれど、その時、タイミングよくチャイムが鳴った。
私は多くを語らないまま、青田くんと一緒に教室を出て行った。