そこに野望があるからⅡ
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放たれたボールは綺麗に弧を描き、リングへと吸い込まれていく。ボールとネットがパスッ、と気持ちのいい音を立てた。
赤木くんはボールを拾って、元の位置、ゴール下へと戻った。
「実力があるのに、腐って辞めちまったら勿体ないって思ったんだよ」
”誰に似てるの?”とは聞けなかった。それはきっと、最後まで一緒に戦ってくれた仲間のことだろうし、聞いたところで名前を教えてはくれないだろう。
『そっか』と短く答えてから、私は赤木くんとは反対側のゴール下に位置を取り、ボールを貰う。
見よう見まねでシュートするが、ボールはリングには届かなかった。
『私もね、勿体ないって思ったんだ』
「うん?」
赤木くんは私のシュートミスしたボールを拾う。そして、不思議そうな顔を私に向けた。
赤木くんは私が思っている以上に人の機微に疎いのかもしれない。それならば、多少強引に出ても気付かれないかもしれない。私の気持ちに気付いてほしいのは山々だけれど、今はまだ気付いてほしくはない。
「確かに、私、あの時にテニスを辞めようとしてた。赤木くんは実力があるって言ってくれたけど、実力があっても、目標はなかったし。でもね、辞めるなって喝を入れてくれた人がいたんだ」
「‥‥‥‥‥‥」
『それでね、目が覚めたの。私が全国制覇を目指す切っ掛けになったのは、赤木くんなんだよ』
「そうか」と、赤木くんは少し照れくさそうに笑った。
『成し遂げられなかったけどね』
私がそう言うと、赤木くんは表情を曇らせて「そうだな」と呟いた。
私は赤木くんの側へ歩み寄ると、右手を差し出した。
『三年間ありがとう』
お礼は、前々から言いたかったのだ。
喝を入れてくれたあの日から。
赤木くんはボールを拾って、元の位置、ゴール下へと戻った。
「実力があるのに、腐って辞めちまったら勿体ないって思ったんだよ」
”誰に似てるの?”とは聞けなかった。それはきっと、最後まで一緒に戦ってくれた仲間のことだろうし、聞いたところで名前を教えてはくれないだろう。
『そっか』と短く答えてから、私は赤木くんとは反対側のゴール下に位置を取り、ボールを貰う。
見よう見まねでシュートするが、ボールはリングには届かなかった。
『私もね、勿体ないって思ったんだ』
「うん?」
赤木くんは私のシュートミスしたボールを拾う。そして、不思議そうな顔を私に向けた。
赤木くんは私が思っている以上に人の機微に疎いのかもしれない。それならば、多少強引に出ても気付かれないかもしれない。私の気持ちに気付いてほしいのは山々だけれど、今はまだ気付いてほしくはない。
「確かに、私、あの時にテニスを辞めようとしてた。赤木くんは実力があるって言ってくれたけど、実力があっても、目標はなかったし。でもね、辞めるなって喝を入れてくれた人がいたんだ」
「‥‥‥‥‥‥」
『それでね、目が覚めたの。私が全国制覇を目指す切っ掛けになったのは、赤木くんなんだよ』
「そうか」と、赤木くんは少し照れくさそうに笑った。
『成し遂げられなかったけどね』
私がそう言うと、赤木くんは表情を曇らせて「そうだな」と呟いた。
私は赤木くんの側へ歩み寄ると、右手を差し出した。
『三年間ありがとう』
お礼は、前々から言いたかったのだ。
喝を入れてくれたあの日から。