flower bud
5つ
「あら、随分と退屈そうじゃないの」
「判るーー?」
「顔に書いてあるわよ」
天蓬の机に置かれているカエルの置物兼灰皿といきなり一人芝居を始める捲簾。
秋霖はその面白い光景を読んでいた小説から目を離し眺める。捲簾が来てから天蓬の部屋は溜まり場のようになっていた。
「…一人上手ですね。兄弟少ないでしょう貴方」
「超マイペース人間にいわれたくねぇよ」
「カエル役上手ですね」
「まぁね」
ぶっきらぼうに何処か不満そうな捲簾の理由は秋霖にも分かっていた。ある種悩みのタネでもある。
「……でもよ マジな話。あんた現場じゃいつも一人で全部片付けちまうのな。俺ら下っぱの出る幕ねーじゃん」
「…そうですね スミマセン。僕の悪い癖です。」
着任時から何度言っても変わらない戦場での立ち振る舞いに秋霖も不満を言いたくなる気持ちは分かる。
自分以外を信じないとでも言うかのような顔つき。
全て信じろとまでは言わないないが、せめて少しぐらい頼って欲しいところである。
毎度前線に立ち一人で片付けようとする天蓬が動きやすいようにサポートにまわっていた。
「…ところで、こないだの出陣報告書出した?」
「──あ。」
「天蓬様ァ?またですか?私言いましたよね??」
「いやぁ、つい」
「もおぉ…私が書きます…」
「…秋霖いつも書いてんだろ。俺が書く。机貸して」
「あ、いいんですか?悪いなぁ」
「悪いって思ってないですよね?」
「てゆーかあんた、たまには風呂入れ!!俺が書いてる間に入ってこい!!」
「はいはいはい」
「お風呂沸いてますからね。着替えも置いてます」
「いつもすみませんねェ」
ネクタイを緩めながら浴室へと向かう天蓬を二人で見送り同時にため息をこぼす。
「ったくよぉ。」
「これでも捲簾のおかげで少し負担が減ってますよ」
「今まで一人で見てきたのすげぇな…」
「いえいえ。…私も何かすることありますか?」
「いいっていいって本の続きでも読んでろよ」
「……じゃあお言葉に甘えて」
捲簾の言葉に甘えてソファに深く座り直し本の続きを捲る。静かな部屋には紙とペンの擦れる音と、本の捲る音が響く。開けられた窓からは心地のいい風が入ってくるので睡魔が襲ってくるには十分過ぎた。
「終わったけど?どーすんのコレ…って寝てる…」
うとうとしていたのは視界の隅に入っていたが気が付けば珍しく眠っている様子の秋霖に笑みがこぼれる。
いつもは真面目な秘書官をしているが、ここまで心許されては可愛いものだ。
書類片手に天蓬から提出を言い渡され出ていった捲簾。少しした後、風呂が上がって来た天蓬が部屋へと戻ってくる。
「忘れてました。あれ、僕じゃないと受け取って貰えないんでした………寝てますね」
まさか寝ているとは思わず、ソファの前で立ち止まりしゃがみこんで寝顔を眺める。天蓬も秋霖の眠る姿は初めて見るのでなんだか嬉しくなり目的を忘れてしまっていた。
「…………っていけない 捲簾の所に行かないとですね」
立ち上がり近くに置いてあるブランケットを秋霖に掛け捲簾の後を追った。
それから天蓬と捲簾が部屋に戻ってきたのは大分経った後だった。秋霖は未だにすやすやと気持ちよなそうに眠ったまま。手に持っていた本を起こさないようにゆっくり抜き寝顔を眺める天蓬。
「秋霖の寝顔初めて見ました。いつも僕の方が寝落ちしてますから」
「分かっけどあんま見つめてっと穴開くぞー」
「それは困りますね。……よっと」
「どーすんの?」
「秋霖の部屋まで連れて行くと誰かにこの寝顔見られることになるので僕の寝室に運ぼうと思って」
「独占欲が強いこって」
「なんとでも〜」
眠っている秋霖を横抱きに持ち上げて寝室にそのまま連れて行く。丁度天蓬が歩始めた瞬間、秋霖からヒラヒラと何かが落ち「何だ?」と拾い上げると押し花の栞のようだった。
──────────────────────
翌日──
秋霖は自室ではない部屋で目を覚まし、ぼーっとする頭を起こしベッドから抜け出し周りをキョロキョロ見回す。それからここが天蓬の自室で昨日寝落ちしたことを思い出し慌てて寝室から出ると紫煙を漂わせながらソファで本を読む天蓬の姿が……
「天蓬様!すみません、私あれから寝てしまっていたみたいで……ごめんなさい…」
「ああ、秋霖。おはようございます。よく眠れたようで良かったです」
「ベッドを取っていた私が言うのもあれですが……天蓬様また徹夜ですか?」
「……あははは 下界の書物が面白くてつい」
「またついですか……仕方がないですね…」
そう言うと隣に座り天蓬の身体を倒しそのまま膝枕をする秋霖だか、されるがまま流れるような一連の動きに目が点になる天蓬。
「しゅ、秋霖?」
「少しは寝てください。貴方ほったらかすとすぐに徹夜してそのまま意識を失って転がってる事が多いんですから」
つらつらと文句を言う秋霖だがその声色は穏やかでトントン…っとリズム良く身体を叩かれれば睡魔がゆっくりと襲って来る。それに抗うことをせず、素直に受け入れれば夢の世界へ。
その様子を嬉しそうに眺める。
それから数時間後
天蓬の自室の扉がノックされ、返事を返せば捲簾が現れた。入って目にした光景に驚きもしたが微笑ましくもありすんなり受け入れた。
「寝てんのか」
「はい。書物でトリップしてまた徹夜していたので強制的に寝かしました」
覗き込めば気持ちが良さそうに眠る天蓬の姿。
捲簾の問いに冗談っぽく返す秋霖
「……んっ…けん、れん?」
「おはようさん」
「おはようございます。天蓬様」
「…………おはようございます…」
話し声に反応したのかむくりと起き上がった天蓬の髪の毛は、寝癖が付きはねておりそれを見てクスクス笑いながら整えてあげる。
「寝てましたね…」
「はい、寝てましたよ」
「すみません…足痛くないですか?」
「全然大丈夫ですよ」
二人のやり取りを横目にポケットに入れていた物に手が触れここに来た理由を思いました捲簾が話し出す。
「あっそう言えばよ。これって秋霖の?」
「え?……あっ!私のです!ありがとうございます捲簾!」
「押し花だよな?」
捲簾から受け取った栞を大事そうにする秋霖
「はい……塔に閉じ込められている時、ほぼ毎日もの好きな誰かさんが扉の前に置いていた花なんです。初めて貰った花が枯れてしまうのが悲しくて押し花の栞を作ったんですよ。」
「へぇーもの好きねぇ」
「…」
そのもの好きとやらの検討はついており、天蓬に目をやると明後日の方向に目を逸らしていた。
「あら、随分と退屈そうじゃないの」
「判るーー?」
「顔に書いてあるわよ」
天蓬の机に置かれているカエルの置物兼灰皿といきなり一人芝居を始める捲簾。
秋霖はその面白い光景を読んでいた小説から目を離し眺める。捲簾が来てから天蓬の部屋は溜まり場のようになっていた。
「…一人上手ですね。兄弟少ないでしょう貴方」
「超マイペース人間にいわれたくねぇよ」
「カエル役上手ですね」
「まぁね」
ぶっきらぼうに何処か不満そうな捲簾の理由は秋霖にも分かっていた。ある種悩みのタネでもある。
「……でもよ マジな話。あんた現場じゃいつも一人で全部片付けちまうのな。俺ら下っぱの出る幕ねーじゃん」
「…そうですね スミマセン。僕の悪い癖です。」
着任時から何度言っても変わらない戦場での立ち振る舞いに秋霖も不満を言いたくなる気持ちは分かる。
自分以外を信じないとでも言うかのような顔つき。
全て信じろとまでは言わないないが、せめて少しぐらい頼って欲しいところである。
毎度前線に立ち一人で片付けようとする天蓬が動きやすいようにサポートにまわっていた。
「…ところで、こないだの出陣報告書出した?」
「──あ。」
「天蓬様ァ?またですか?私言いましたよね??」
「いやぁ、つい」
「もおぉ…私が書きます…」
「…秋霖いつも書いてんだろ。俺が書く。机貸して」
「あ、いいんですか?悪いなぁ」
「悪いって思ってないですよね?」
「てゆーかあんた、たまには風呂入れ!!俺が書いてる間に入ってこい!!」
「はいはいはい」
「お風呂沸いてますからね。着替えも置いてます」
「いつもすみませんねェ」
ネクタイを緩めながら浴室へと向かう天蓬を二人で見送り同時にため息をこぼす。
「ったくよぉ。」
「これでも捲簾のおかげで少し負担が減ってますよ」
「今まで一人で見てきたのすげぇな…」
「いえいえ。…私も何かすることありますか?」
「いいっていいって本の続きでも読んでろよ」
「……じゃあお言葉に甘えて」
捲簾の言葉に甘えてソファに深く座り直し本の続きを捲る。静かな部屋には紙とペンの擦れる音と、本の捲る音が響く。開けられた窓からは心地のいい風が入ってくるので睡魔が襲ってくるには十分過ぎた。
「終わったけど?どーすんのコレ…って寝てる…」
うとうとしていたのは視界の隅に入っていたが気が付けば珍しく眠っている様子の秋霖に笑みがこぼれる。
いつもは真面目な秘書官をしているが、ここまで心許されては可愛いものだ。
書類片手に天蓬から提出を言い渡され出ていった捲簾。少しした後、風呂が上がって来た天蓬が部屋へと戻ってくる。
「忘れてました。あれ、僕じゃないと受け取って貰えないんでした………寝てますね」
まさか寝ているとは思わず、ソファの前で立ち止まりしゃがみこんで寝顔を眺める。天蓬も秋霖の眠る姿は初めて見るのでなんだか嬉しくなり目的を忘れてしまっていた。
「…………っていけない 捲簾の所に行かないとですね」
立ち上がり近くに置いてあるブランケットを秋霖に掛け捲簾の後を追った。
それから天蓬と捲簾が部屋に戻ってきたのは大分経った後だった。秋霖は未だにすやすやと気持ちよなそうに眠ったまま。手に持っていた本を起こさないようにゆっくり抜き寝顔を眺める天蓬。
「秋霖の寝顔初めて見ました。いつも僕の方が寝落ちしてますから」
「分かっけどあんま見つめてっと穴開くぞー」
「それは困りますね。……よっと」
「どーすんの?」
「秋霖の部屋まで連れて行くと誰かにこの寝顔見られることになるので僕の寝室に運ぼうと思って」
「独占欲が強いこって」
「なんとでも〜」
眠っている秋霖を横抱きに持ち上げて寝室にそのまま連れて行く。丁度天蓬が歩始めた瞬間、秋霖からヒラヒラと何かが落ち「何だ?」と拾い上げると押し花の栞のようだった。
──────────────────────
翌日──
秋霖は自室ではない部屋で目を覚まし、ぼーっとする頭を起こしベッドから抜け出し周りをキョロキョロ見回す。それからここが天蓬の自室で昨日寝落ちしたことを思い出し慌てて寝室から出ると紫煙を漂わせながらソファで本を読む天蓬の姿が……
「天蓬様!すみません、私あれから寝てしまっていたみたいで……ごめんなさい…」
「ああ、秋霖。おはようございます。よく眠れたようで良かったです」
「ベッドを取っていた私が言うのもあれですが……天蓬様また徹夜ですか?」
「……あははは 下界の書物が面白くてつい」
「またついですか……仕方がないですね…」
そう言うと隣に座り天蓬の身体を倒しそのまま膝枕をする秋霖だか、されるがまま流れるような一連の動きに目が点になる天蓬。
「しゅ、秋霖?」
「少しは寝てください。貴方ほったらかすとすぐに徹夜してそのまま意識を失って転がってる事が多いんですから」
つらつらと文句を言う秋霖だがその声色は穏やかでトントン…っとリズム良く身体を叩かれれば睡魔がゆっくりと襲って来る。それに抗うことをせず、素直に受け入れれば夢の世界へ。
その様子を嬉しそうに眺める。
それから数時間後
天蓬の自室の扉がノックされ、返事を返せば捲簾が現れた。入って目にした光景に驚きもしたが微笑ましくもありすんなり受け入れた。
「寝てんのか」
「はい。書物でトリップしてまた徹夜していたので強制的に寝かしました」
覗き込めば気持ちが良さそうに眠る天蓬の姿。
捲簾の問いに冗談っぽく返す秋霖
「……んっ…けん、れん?」
「おはようさん」
「おはようございます。天蓬様」
「…………おはようございます…」
話し声に反応したのかむくりと起き上がった天蓬の髪の毛は、寝癖が付きはねておりそれを見てクスクス笑いながら整えてあげる。
「寝てましたね…」
「はい、寝てましたよ」
「すみません…足痛くないですか?」
「全然大丈夫ですよ」
二人のやり取りを横目にポケットに入れていた物に手が触れここに来た理由を思いました捲簾が話し出す。
「あっそう言えばよ。これって秋霖の?」
「え?……あっ!私のです!ありがとうございます捲簾!」
「押し花だよな?」
捲簾から受け取った栞を大事そうにする秋霖
「はい……塔に閉じ込められている時、ほぼ毎日もの好きな誰かさんが扉の前に置いていた花なんです。初めて貰った花が枯れてしまうのが悲しくて押し花の栞を作ったんですよ。」
「へぇーもの好きねぇ」
「…」
そのもの好きとやらの検討はついており、天蓬に目をやると明後日の方向に目を逸らしていた。
