-無印篇-
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「ねぇ、私達」
愛おしく微笑む貴方。
「このままひとつになれたらいいね」
そう言うから僕が貴方の頬を触れると少し照れくさそうにしていた。
「私、悟能の手好きだな。指も長くてすごくキレイ」
僕の手に貴方の手が触れてなぞる。
「ふふ、男の人に綺麗って変かな?」
――貴女の為なら、何でもできた。貴女の為なら、何にだってなれた。
「逃げよう花喃!僕が守るから」
下を向き僕を見てくれない。
いつものあの微笑みを浮かべない貴女。
「……駄目よ悟能」
そう言ってゆっくり顔をあげ僕を見つめる…
「貴方の手、血まみれなんだもの」
目の前が真っ赤になったと同時に腹を食い破り数え切れない程の百足が湧き出し、身体に、顔に、這わせる貴方の姿だった―――
「ッあ……」
起き上がり目を開けると今見た光景とは違う暗い森の中。
先程の夢を頭の隅にやりながら荒れた呼吸を整えるようにもう一度座席に持たれかかる。
(――もう何度目だろう。夢の中で僕は、繰り返し貴女を失う。)
「――どうかしたか。」
「三蔵…」
隣に座る三蔵が様子に気づき声をかけるも、八戒は強張った顔から無理やりいつもの笑みを作るように表情を変えた。
「何でもありません、寝相悪くて。ちょっと散歩に行ってきますね」
いつもの声と笑顔を作ってはいたが、その様子がいつもと違い何かあったのは明らかだった。
しかし、三蔵も深くは追求する事をせず八戒を見送った。
「気をつけろよ」
「はい」
八戒はそう言うと奥深くへと向かってフラフラと歩みを進めて行く。
寝ていたはずの悟浄がその後ろ姿を、頬杖をし片目を開け見つめていたが少し遅れてついて行った…
「なぁ三蔵…」
「起きてたのか。」
「いや、今起きたんだけどさ…双葉うなされてんの。起こしたがいいかな…」
爆睡しているだろうと思っていた悟空の目覚めに驚くもその当の本人が心配する人物に目をやると車体に持たれかかり、蹲るように丸まって眠っているが小さくうなされる双葉。
「心配なら起こしてやれ」
「うん…ってあれ?八戒と悟浄は?」
「……連れション」
変な間に何となく三蔵のそれが嘘だと気がついたがあえて何も言わず双葉を起こそうとしたその時、遠くから銃声のような音が響いて聞こえてきた。
その方角は2人が消えていった森の中、穏やかだった森が一変して空気が変わった。
「三蔵!」
「あぁ!さっさと双葉を起こせ!行くぞ!」
「うん!」
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「ねぇ、双葉」
優しく名前を呼んでくれる大好きな人
「私、双葉の髪も瞳も大好きよ。きっと神様からの贈り物なんだと思うの」
優しく微笑む貴方がそう言ってくれたから、この異色な髪も瞳も悪くないかもと思えた
「双葉が心から笑顔になるの私は見たいな」
貴方がそう言うから鏡の前で笑う練習もしてみた
なのに……
「双葉が本当の家族だったら良かったのにな…そしたら…」
ねぇ…待って。置いて行かないで…!!
私笑えるように頑張るから!行かないで!!
ねぇ!!――!!!
「…い……おい!!双葉起きろ!八戒と悟浄がやべぇかも!!」
「!!」
夢から呼び戻され飛び起きた自分を待っていたのは、起こそうと両肩を持って上下に揺さぶ悟空を見る
「ご、くぅ?」
(さっきのは夢か。こっちに来てからは全く見なかったのになんで今…)
「寝ぼけてる暇ねぇぞ、さっさとしやがれ!」
柄にもなく少し焦っているような三蔵にやっと頭が覚醒しとりあえず言われた通りに2人について行き走りながら状況だけ簡潔的に教えられた。
ジープから少し離れた距離に2人は居たが焦る声で悟浄を呼ぶ八戒の姿に到着した3人も動揺をする
「――八戒!!何があった?!」
「悟浄が…!!」
状況を確認せんと三蔵が少し怒鳴り気味で声をかけるも、八戒も動揺しながら言った言葉に3人の目線は悟浄に向かう。
そこで見た光景は、悟浄の体がバネのように跳ね上がりそれと同時に身体中かビキビキと不気味な音を立て血管が浮き上がっていた
「な……何だよ、コレ!!」
「血管……!?」
「悟浄…!!」
「あ、うごあァあぁ――あッ……!!」
両手で頭を抱えると、身体を弓なりに反らして絶叫する姿に四人は悟浄の身体に起こっている事に頭が追いつけず何も出来ずに見つめていた。
双葉はその光景に我慢できずに悟浄の手を強く握る。
そして悟浄は顔を歪めながら言った。
「クソッ――血管の中を、何かが這い回って、やがる……!!」
「どうなってやがる!?」
「一体何が――」
《種ダヨ!!》
4人以外の奇妙な声に、一斉に振り返る。
そこには不気味な壊れた人形が転がっていた。
その人形には麻雀牌の存在が見てわかる。
《ソイツノ身体ニ、種ヲ植エタノサ。血ヲ吸ッテ血管ニ根ヲハル、生キタ種ヲネ!!》
「……何だよアレ!?」
「気色悪い事してくれるっ!!」
カタカタと上下しながら話す人形に嫌悪を抱き吐き捨てる
「清一色の……使い魔です」
「あの野郎か」
八戒の言葉に三蔵は舌打ちをする。
人形は止まることを知らずカタカタと機械仕掛けの虚ろな瞳をこちらに向けて口を動かす
《ホラ、早ク種ヲ殺サナイト、ソイツモコノ森ノ木ノ一本ニナッチャウヨ?ソレトモソノ方ガ“えころじかる”デイイカモネ!!カカカカカカ!!ソウソウ、一応言ッテオクケド、種ハソイツノ心臓ノスグ隣ニ、植マッテルヨ》
止まることなく喋り続ける人形に三蔵は
「……てめェ、何が目的だ?」
《――カカカ、カカカカカ!!》
そう問いかけられても人形は嘲笑う。その声は機械音なくせに妙に生々しく聞こえフツフツと怒りが込み上げてくる。
《楽シイ……楽シイヨ猪悟能!!君タチもハヤクコッチへオイデヨ!!》
そこにいるはずのない清一色本人が嘲笑い、きっとこの状況を楽しんでいることは見なくても分かる。
双葉は心底怒りが湧いてきて力のコントロールを忘れた時無意識に暗器が発動し人形を破壊した。いつもと違い冷酷な表情で壊れた認識を鋭い目付きで睨みあげる。
近づいてきた人物に目をやると眉間のシワを一層増やしている三蔵だった。
「……いい御趣味だよ。あの変態野郎が。悟空!八戒!悟浄の腕押さえとけ!!」
「え?うんっ」
「何をする気ですか?」
三蔵の意図に戸惑いつつも呼ばれた2人は悟浄の腕を片方ずつ押さえ込む。
「……満足か?清一色。これがてめェの望みだろ!!」
三蔵はそう言って振り返り袖口から出した銃を悟浄に向け突きつけた。それは普段ふざけながらよく見る光景、しかし今は状況が全く違う。
今の三蔵の表情は真剣そのものなのだ。
「なッ…三蔵!?何やってンだよ!!」
「もしかして撃ち抜く気!!?」
「待って下さい!!的が小さすぎる……それに、例え種を撃ち抜いても心臓へのショックが「八戒。俺が撃ったら即傷を塞げ」
止める言葉も耳を貸さず、三蔵はトリガーに指をかけた。銃を下ろす気など更々無い彼は覚悟を決めた瞳をしていた。だったら今やるべき事はただ1つ…
「八戒変わって私が腕抑えるから三蔵が撃ったら間髪入れずに塞ぐことに集中して」
「しっかり押さえとけよ、悟空!」
「うえ〜…、まじかよ〜」
これしかないのなら、これしか方法がないのならこの可能性にかけるしかない。それでもリスクを最小限に抑えられるように……
そう分かっていても不安が拭えない。
「俺は絶対に外さん。これで死んだら悟浄の柔な心臓の所為だ」
装填した銃器を構える三蔵、不安なのはきっと彼だって一緒――
「…あー、すっげむかつくっ。ぜってー死なねぇ」
仲間同士でこんな事をさせてあの気色の悪い笑みを浮かべる清一色が頭を過ぎる。この手のひらで転がされているような感覚、虫唾が走る。
そして自分はただ腕を抑えるしか出来ず三蔵に嫌な役回りをさせてしまうことにもはがいく感じ下唇を噛んだ。
「減らず口を閉じんと舌噛むぞ」
ガウン、と響いた音に、悟浄の血が飛び散る――
「がはッ」
血管が消える代わりに、悟浄の意識も手放されていく。
「──悟浄!!」
「チッ」
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「──傷、塞がりました。意識は失ってますが、脈は正常です」
八戒の報告に双葉と悟空が安堵の声を上げる。
「はぁーっ、こっちの心臓に悪いぜ、ったく!!」
「良かった…悟浄…」
「……――僕のせい、なんですね」
「八戒?」
悟浄の隣で座り尽くし俯いたまま呟く八戒に、目線を向ける。
「清一色の狙いは明らかに僕だ」
「やめろ」
「でも三蔵!!」
「落ち着け!!ここでお前が取り乱したらそれこそ奴の思うツボなんだ!!」
「そうだよ…落ち着いて八戒」
三蔵は八戒の胸倉を掴みあげた。
このメンバーの中でいつも物事を冷静に判断し対応する2人の言い合いに双葉が間に入ろうとした時、八戒の体が倒れて行った
「――!おい!?」
「八戒!?」
1番近くにいた三蔵が倒れた八戒を受け止める。
双葉も数歩遅れて駆け寄るも気を失っているがその表情は疲労と睡眠不足のせいで真っ青──
「……水持ってこい悟空!」
「わかった!」
三蔵に言われ悟空は来た道を引き返して行った。
八戒を悟浄の隣にゆっくりと寝かせながら三蔵は溜息を漏らす。
「ここ最近ろくに寝てなかったらしいからな。無理もねェか……」
「三蔵私も悟空を追いかけるよ。一人じゃ危険だから」
「待て、お前も最近ずっとうなされてたぞ。大丈夫なのか?」
「……私なんか全然大丈夫だよ。八戒に比べたら…」
そう返事を返すともう見えなくなった悟空を追いかけるように走る。
(猪悟能が八戒ならこの経緯も辻褄が合う、そうなるとあのクソ野郎の目的は八戒を壊すこと。なんでそんなことするかは知らないけど多分2人は面識がある。どちらにせよこんなやり方……)
「許さない……!!」
「おや?何を許さないんですか?」
「!!?」
走る背後に現れたのはこのクソみたいな現状を作り上げた張本人の姿だった――