-無印篇-
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悟空達よりも少し遅れて三蔵が2人の元へ追いつく
「なぁ」
「あぁ?」
「さっき八戒に何言ってたんだ?」
「ふん。お前に一々言うことでもない。」
「あーそうですかそう言うと思いましたよ!」
予想していた通りの返事に少し拗ねた態度で悪態を着きながら先程買った煙草を咥える悟浄。
悟空と先に出店に向かう途中後ろで三蔵が八戒に何かを言っていたのが見えていた大方何を言っていたのかは想像がつく。
あれが人の世話を焼くのはいつものことだ、そういつもの事…しかし今回はやけに気にかけている気がする。
悟浄とて三蔵ほどでは無いが全く警戒がない訳では無い。
旅を初めて早数ヶ月、ここまで色んな敵に出くわして来た。双葉と出会った時も刺客かと少なからず警戒はしたがあの年頃で全くと言っていいほどの無表情さにどこか引っかかる所があった。
「なぁなぁ三蔵!あれ買っていいか?」
両手にいっぱいの荷物を持った悟空が小走りで近づいて来た。八戒から渡された買い出しのメモとあとは何やら関係のなさそうなものまで目に入る
「お猿ちゃんそんだけ買ってまだ食いもん買う気かよ」
「猿じゃねぇ!!だって美味いもん食べたら元気出るだろ?」
「誰がよ」
「誰って双葉だよ!さっきの戦いからあんまし元気なさそうじゃん」
その言葉に2人は考える。思い返してみても昨日出会った時から1つも双葉の表情は変わっていない
「あれ?2人とも気づいてないの?多分八戒は気づいてたっぽいけど」
「あの女はずっと表情変わってないだろ」
「変わってないけどなんて言うか上手く言えないけどさ、うーんオーラ?っていうか雰囲気がよく見てたら凄い分かりやすいんだよ。多分いきなり違う世界に来させられただけでも不安に思うのに俺たちと旅するってなると今日みたいなこともこれから沢山あるじゃん?それに普通に考えれば多分あんなことするの初めてだと思うから平気そうに見えてもきっと平気じゃないと思う」
確かに年端も行かない少女が全く知らない世界に飛ばされた挙句、常日頃危険な戦闘をするとなれば平気なわけがない
表情ひとつ変えない彼女は大人びて見えていたがそこらを歩く少女たちと何ら変わらない。
「だからさ!美味いもん食って元気になって欲しいって言うか俺ッ双葉の笑った顔が見てみたいんだ!!」
抱えていた荷物をぎゅっと力を込めて言う悟空の頭をくしゃくしゃと撫でる悟浄
「そう言うのは本人に言ってやれよ」
「さっさとそれを買って八戒たちと合流するぞ」
「!うん!!!」
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───
待ち合わせ場所に先に来ていたのは八戒と双葉。
ボーっと出店や行く人々を眺めベンチに座り白竜を膝に乗せ撫でている双葉の顔はやはり相変わらずともどことなく元気がないことに八戒も気づいていた
原因も先程の戦闘だろうと検討も着いている。
やはり三蔵に止められてでも自分が手を出すべきだったとそんなことを考えていた
「双葉、先程はやはり僕が助けに入るべきでした。すみませんでした」
「?どうして八戒が謝るの?これからもあんなこときっと山ほどある、その度にみんなに助けて貰ってたら申し訳ないよ。遅かれ早かれ自分で手を下す時はくるんだから……ただ」
「ただ?」
「飛び交う血を見ても肉を絶った感触もなんとも思わないどこか欠けてる自分が嫌になるほど気持ちが悪いなって思ってただけ。そのくせ未だに自分の手がまだ血に染って汚れている感覚が消えない事が気になってる…こんな事考えてたらダメだね。これからはそれが日常になっていくんだから。」
「双葉…」
白竜を撫でていた手を見つめ儚げに話す様子に八戒は胸の奥をぐっと締め付けられる気分になった、そして同時にその様子が昔の自分と少し被って見えた。
それはまだ彼らと出会ったばかりの頃の自分に……
見つめていたその手を優しく包み込む様に両手で握る
「八戒?」
「……僕も前は色んな事があって自虐的になってた頃があったんです。でも周りに感化されて気づいたんです。どんだけ汚れたって洗い流せる。だから双葉の手だってもう洗い流されて綺麗ですよ。血で染まってなんかいません。」
「八戒…」
「無理に割り切ろうとしなくたっていいんです。きっと僕みたいに周りに感化されてこれから少しずつそう思えるようになるはずですから。」
「…ありがとう、八戒。」
今までの自分を思い出すかの様に話す八戒にそう返した双葉は微笑んで見えた───
「おーい!双葉ー!八戒ー!」
それから少しして集合場所に現れた3人。
荷物を両手いっぱいに持った悟空は走って双葉の目の前に止まった。走ってきたにも関わらず息の上がらないまま荷物をベンチに置き双葉の両手を強く握った
「双葉!俺、双葉の笑った顔が見たい!」
「!!」
「今はまだ無理かもだけど俺手伝うから」
「…」
「上手く言えねぇけもさ、何かあったら何でも言っていいかんな」
「ありがとう悟空」
「!どういたしまして!」
そんな2人を微笑ましく見守りながら宿へと足を進めるのだった