-無印篇-
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翌日――
太陽の眩しさで目を開くといつもの見なれた天上ではなく清々しい程によく晴れた青空が目に入った。
一瞬寝起きの頭では理解できなかったが自分の状況を理解し上半身を起こし周りを見ると大きないびきをかきながら未だ爆睡している悟浄と悟空を横目に伸びをした
「キュー…?」
「おはよう白竜。起こしちゃった?」
自分と同じように寝起きの白竜を抱き先程からいい匂いがする方へと歩みを進める
「あっおはようございます。昨日はよく寝れましたか?」
「おはよう、八戒。うん、手伝うよ」
「ありがとうございます。ちょうど起こしに行こうと思っていたところなのでまだ寝てる2人を起こしてきてもらってもいいですか?」
「分かった。三蔵もおはよう」
「あぁ。」
今来た道を戻りまだ寝る2人を起こしたあと朝食を済ませある程度の準備をし出発をすることに
「今日中には次の村に到着出来ると思いますよ」
「わぁあい!!飯だ飯だ!!」
「今食ったばっかりだろうが」
「着いたら煙草買うのが先だ。」
「宿が取れればいいですね」
この4人を見ながら双葉はみんながみんなまとまりがなくて自由だなぁと感じながら眺めていた
まだ会って間もない、しかも人と関わろうとしてこなかった双葉からしたらこの中に入るというのはとてつもなく至難の業なのでは感じるのであった
出発する時も双葉が後ろの席のどこに座るかで悟浄と悟空が騒ぎ出したのでハリセンを取り出した三蔵と八戒の鶴の一声で騒ぎは静まった。
ちなみに後部座席は悟浄、悟空、双葉と言う座り順になった
そして出発からある程度した時―――
「見つけたぞ!!三蔵一行!!!」
「今日こそ経文を頂く!!!」
そんな声とともにいつの前にかジープを囲むように周りには耳が尖り、鋭そうな爪を光らせ皆が武器を持ちこちらに殺気を立てながら大勢集まっていた
「まーた懲りずにぞろぞろと」
「雑魚ばっかじゃん!」
「仕方ありませんね。この人達を倒したら町までもうすぐですよ」
「さっさと片付けるぞ」
なんとなくの状況は観世音菩薩からある程度簡単に聞かされていた、負の波動によって妖怪の理性がなくなる現象。
今まで平和な世界で過ごしてきた双葉からしたらリアリティのない話を聞かされるだけでさすがにこの状況を目のあたりにして驚かないわけがなくその様子を見るしかなかった
しかしこの状況に慣れている4人はジープから降り戦闘態勢に入る。
双葉に目を向けた悟浄が近くの岩場に隠れるようにつれていく
「双葉ちゃんはここにいてね」
「ジープ、双葉を頼みましたよ」
「キュー!!」
八戒から言われ白竜もおまかせをと言わんばかりの顔をし双葉の前を守るように飛ぶ
そこからは瞬きの暇もないほどに圧倒的強さの4人に寄って倒されていく妖怪を眺めていた。
「白竜、みんな強いね」
「キュー!」
そうでしょと言う顔をする白竜に表情が動くはずがないのに笑みがこぼれそうなった。
しかし目の前で飛び交う血や肉片を見ても動揺1つしない自分にやはり昔からなにも変わってないなと思ってしまうといつも以上に冷たい無表情になっているのが自分でも分かった…そんなことを思っていたせいで少しの油断で隙を作ってしまったのだ。
後ろから勢いよく羽交い締めされ首元に刃物を当てられているのを感じそちらに目を向ける
「キュー!!!」
「っち!!邪魔だ!!」
「っ!!白竜!」
妖怪から双葉を助けようとした白竜が叩き落とされてしまった。白竜に駆け寄ろうと動かした時首元に当てられていた刃物のが少し食いこんだだ
「動くなよ。お前は今から人質だ!」
「…」
そのまま岩場から皆が見えるところに移動させられ見せしめるよう妖怪が4人に向かって叫んだ
「この女が殺されたくなかったら経文を渡してもらおうか!!!」
「なっ!」
「汚ぇぞ!!」
「おい。俺はお前がどうなろうが知らん。まだ同行を認めとらんからな。」
「さ、三蔵!!」
「今更何言ってんだ生臭坊主!」
「俺たちの旅をこんな事ばかりだ。何も出来ない足手まといを守りながらこの先進むほど甘くねぇ。着いてきたきゃ自分でどうにかするこったな」
「んな無茶な!?」
「三蔵いくらなんでも!」
「うるせぇ!黙ってろ。」
確かに三蔵の言う通りだと思った。別に来たくてこの世界に来たわけではない。どの道多分元の世界に帰った途端私は死ぬだろう。別に生きたいと言う気持ちがあるわけでもなく勝手に生き返らせられて西へ迎えと言われたからそうしているだけに過ぎない。
しかし昨日、八戒と話してて大切な事を思い出した
『双葉が心から笑顔になるの私は見たいな』
生きたい訳でもないしまだ人と関わることもしたいと思ってない。でもこの人達と旅をしたらきっと私は変われる気がする…あの人に見せられなかった私になれる気がする、だから…だから私はまだこんなとこで死ねない…!!
「…言われなくても…」
「あ?…っ!!!!」
勢いよく後ろの妖怪の足の甲を踏みつけ緩んだ隙に素早くしゃがみこみ相手の足元を回し蹴りした。
後ろに転けた相手が攻撃してくるより先に手先に武器を構え躊躇なくやられたように喉を突いた
双葉は自分がトドメを指し首を突かれ飛び散る血とその死体をいつも以上に冷たい瞳で見つめていた
「フン…やれば出来るじゃねぇか。」
敵を全滅させ5人は再びジープに乗り込みあと少しで着く町へと向かった
「なぁなぁ!さっき武器どこから出したんだ??」
それは先程の戦闘でどこからともなく出した武器の事をさしながら好奇心豊かに聞いてくる悟空
「確かにアイツが持ってたのはナイフだったけど双葉ちゃんが持ってたのってクナイ?みたいだったよな」
「それが私にも分からなくて…もしかしたら菩薩様から渡された物かも。」
「渡された?」
「ここに来る前に光?みたいなのが私の中に入っていって」
「それって俺の如意棒と悟浄の錫月杖みたいな物かな?」
「多分そうだろうな。」
「三蔵知ってんの?」
今まで黙って聞いていた三蔵がタバコを吹かしながら会話に入ってきて前に見た書物を思い出しながら話し出す
「お前らが前に壊した壺ん中には3つ入ってたらしい。あの後色々調べて分かったことだがな。どうやら特殊な暗器が入っていたらしい」
「あんこ?」
「馬鹿猿お前わざとだろ…」
「暗器ですよ。主に暗殺に使われる武器の事です」
「暗殺か…確かに双葉ちゃん体術もスピードも早かったよな」
「なにかそんな訓練でもしてたのか?」
「いや…全く何も…どっちか言うと体が勝手に動いたような無意識な感じ…」
「ある意味才能だな。」
「あっ町が見えてきましたよ」
「わーい!飯だ飯だ!!」
「猿じゃねぇけどさすがに腹減ったな」
そして着いたのはそこそこに賑わいのある町で出店あったり人がそこそこ行き交っていた。
初めて見るこの世界の建物や出店達。やはり元の世界とはまた違った雰囲気だなと思いながら白竜を抱え4人の後ろを歩いていた。そこで目にしたあるもので今までなんとな感じていた事が確信へと変わったのが分かった。
そんな落ち着きのないようにキョロキョロと周りを見る双葉に気が付き声をかける
「双葉はぐれないようにしてくださいね」
「八戒八戒。大変だわ。」
自分を呼ぶ八戒の服の裾をくいくいと引っ張り大変と言う割にはやはり無表情の双葉を不思議そうに思いそこそこ身長差があるので少し屈み内容を聞いてみる
「どうしました?なにかありましたか?」
「なんとなくそうかもとは思っていたのだけど私…この土地の文字読めない」
なんとなく見た事のあるので中国語だと分かるが見たことがあるだけで読めないという事に気がつき焦る。
さすがにこの世界で衣食住を過ごすとなれば書けないにしても文字が読めないのは何かと不便になる。
戦闘は何とか動けることが先程の戦いで分かったがこんな小さなことまで足手まといになってしまうと思うと申し訳なさを感じた。しかしそんな双葉の気も知らず無表情だが雰囲気で少し焦っているのを感じた八戒はそれが可笑しくなりくすくすと笑う
「そんなことですか…」
「そんなことって文字読めないのは不便だし一々あなた達に聞かないといけなくなっちゃう」
「そこまで言うなら分かりました。それなら僕が文字を教えますよ」
「本当?」
「えぇ。僕こう見えて塾の先生をしていた時期があるんですよ?」
「塾の先生…似合うね」
1度脳内で八戒の先生姿を想像し考える素振りを見せた後うんうんと1人納得する素振りを見せる双葉に八戒は表情の事で悩んでいると言う割に雰囲気はすごく分かりやすいなとこれまた別の事を考えていた。
先に行ってしまった3人を追いかけ合流したところ宿屋を探すか店を探すかで揉めているのを見つけたがそんな3人に八戒は慣れた素振りで提案する
「分かりました。僕と双葉は宿を探しますので3人は買い出しと食事の出来るお店を探して来てください。1時間後にこの場所で待ち合わせしましょう」
「よし!飯だー!!」
「ばっか!煙草が先だ!」
渡された買い出しのメモを持ってやいやい騒ぎながら一足先に行ってしまう2人を見ながら三蔵が八戒の耳元で双葉を横目に呟く
「随分ご熱心な事だな。」
「やだなぁあなたが目を離すなと言ったんでしょ?」
「フン」
鼻で笑った後騒ぎながら行ってしまった2人を追いかけるようにゆっくり人混みへと消えていく三蔵を見送ってから残った2人も宿探しへと向かった。
色々探しまくり2部屋空いている所を見つけそこに決めることに。白竜と荷物の見張りをしながらチェックインを済ませる八戒を眺めふと忘れていた先程の光景が頭をよぎった
あの時見た飛び交う血と肉片や何も躊躇なく妖怪だからと関係なく人を殺した時の感触のこと…まだ肉を絶った感触が手に残っている。だからと言って恐怖や懺悔すら感じない。そんな自分が気持ち悪いと思ってしまうがこれがこれからの日常になる。こんな事を一々気にしてたらきっと埒が明かない…そう言い聞かせながらじっと手を見つめるも、もう血なんて着いていないのに幻覚のように赤く見えてきてしまう―――。