-無印篇-
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ー桃源郷ー
「腹減ったったら腹減ったぁぁぁぁ!!!」
「うるせんだよ!!お前はそれしかないのか!!」
「おい猿、生臭坊主様はヤニ切れでイラつきMAXなんだから少しは大人しくしてろ!」
「ついでに次の村までどれ位掛かるか分からない状況ですからね」
辺り一面砂漠の中を4人の男たちがジープに乗って走っていく
「仕方がありません。今日はここら辺で野宿の準備をしましょう」
「飯だぁぁぁ!!」
「だからうるせぇ!!!」
スパーン!
どこからが出したか分からない大きめのハリセンで金髪の僧侶が騒いでいた少年の頭を強く叩く。
「痛てぇぇ!!…ってあれ?」
「どうしました?悟空」
「いや、あれって人?」
「あ?こんなへんぴなとこに人なんて…あれま本当だ」
野宿をと思い止まった場所から少し離れたところに人影
その人物はこちらに気づくと歩み近づいてきた
「こんにちは。あなた達が西へ旅しているという人達ですね」
近づいてきたのは紫の髪が靡ききらりと輝くエメラルドグリーンの瞳の奇妙な格好をした少女。
僧侶はそんな少女に向けて短銃を構え警戒態勢をとる
「貴様何者だ」
「あなたが僧侶…確かに金髪ね…」
短銃を向けられたというのに怯えもせず顔色一つ変えずに無表情のまま自分を見つめ独り言を言う少女に眉を寄せる
「あ?」
「あなたにこれを渡すように言われました。観世音菩薩様って言う人に――」
聞き覚えのある名前に反応し手渡された紙を受け取り内容に目を通すがその内容により一層眉間のシワが深くなる
「ッチ!」
舌打ちと共に持っていた紙を赤髪の青年に投げつける
「どうしたんだ三蔵?」
「なんて書いてあるんですか?」
「えーどれどれ…その者も一緒に旅へと同行させよ。さもなくはカードの使用を止める。観世音菩薩より…ってなにこれ」
手紙の内容にはぁとため息と共に加えていたタバコの煙を吐き出すと僧侶が面倒くさそうに話し出す
「旅に出る前、三仏神から途中女と合流するように言われていがお前のことか」
「…多分」
「ッチ!めんどくせぇ…」
「よく分かんねぇけど一緒に旅するってこと!?」
「そういう事みたいだぜ。むさ苦しい男の中に可愛い女の子が入ってくれるなんて嬉しいことこの上ないぜ」
「これから一緒に旅をするという事は自己紹介しなくてはですね。僕は八戒と言います。こちらが玄奘三蔵」
「はいはい!俺は悟空って言うだ!でこっちがゴキブリエロ河童!」
「誰がゴキブリエロ河童だ!チビ猿ちゃんは黙ってろよ!俺は悟浄よろしくな!」
「林崎 双葉です。よろしくお願いします。」
淡々と自己紹介を初める4人に三蔵は気に食わんと言う顔で止めに入る
「おい。俺はこいつを旅に同行させるのを認めてねぇぞ」
「三蔵、そんなこと言ったって双葉さんを同行させないとカードの使用も出来なくなるんですからね?そんな事になったら始まったばかりの旅が無一文からの開始になっちゃいますよ」
三蔵を見ながら八戒はため息混じりに論破しその説明から更に悟空がいち早く反応する
「そうなったら飯食えないじゃん!!!」
「いやそこかよ!」
「チッ!!めんどくせぇ!!」
まだ納得いかないと言う顔の三蔵をよそに今日はここで野宿をするということで一行(三蔵除き)と準備をし夕飯を食べることに
「双葉さんは何か嫌いなものなどはありませんか?」
「はい。ないのでお構いなく。」
「なぁなぁ双葉のその服装変わってるな!どこから来たんだ?」
「確かにミニスカでいいよな」
「悟浄、教育的指導」
よそってもらった器を受け取る双葉をキラキラした目で見ながら興味津々に聞く悟空と双葉を上から下まで見て鼻の下を伸ばす悟浄に八戒はどこから出したのか分からない笛を吹きながら悟浄に制裁を加えていた
「こことは別の世界から来ました。私の通っていた学校ではこの制服で登校していてタイミング的に学校へ向かってる途中、急にこちらの世界に来たのでこの服装のままだったんです。」
これまた表情を変えずスラスラ答えるが自分が向こうで死んだことは別に話すことでもないと思いそこは伏せて話した。
そんな双葉を見ながら聞き流してはならないワードに悟浄と悟空の動きが止まった
「待って今サラッとすっごいこと言わなかったか!?」
「双葉別の世界から来たの!!!?」
驚いたのは2人だけではない八戒と三蔵を箸を止め双葉を驚いた顔で見つめる
「はい。信じてもらえないと思いますが」
「じゃあさ!双葉の世界にも美味いもんいっぱいあんの!??」
「だからそこじゃねぇだろ…おめぇはまじで食いもんしかねぇな」
「そう、ですね…こちらの料理を知りませんがあの世界にも美味しい物はいっぱいありました。機会があれば今度お作りしますね。」
「わーいやったー!!!」
本当なら別の世界から急に来たとなれば動揺の1つでもするはずが出会ってから今まで表情1つ変えない少女に三蔵はどこか違和感を覚えた。
「おい、そんな状況なら普通動揺の1つでもするだろ自分の意思で来た訳では無いなら尚更な。それなのになぜお前は表情一つ変えずに平然でいられる。」
「…昔からどうやら表情筋を動かすことが苦手らしくよく表情が死んでいると言われます。お気に触るようでしたらすみません。」
ご馳走様でした。と言い残し荷物を持ち上げそそくさとどこからへ向かって行ってしまった
「えっちょおい!?」
「あ〜ぁ…もうちっと言い方がないかね…」
「三蔵…」
当の本人は煙草を咥え火をつける
「八戒、あまりあの女から目を離すなよ。やはりまだ信用ならん。」
双葉は少し離れた所にある小川に腰がけ観世音菩薩から渡された荷物の中身の確認をし始めた
「アメニティセット、部屋着、メガネ、救急箱、寝袋…旅に必要そうなのは粗方あるようね。ん?これって…」
手に取ったのは見慣れたアルバム。開いてみるとそこには万遍の笑みを浮かべ双葉を抱きしめる女性との写真などが入っていた。まさか大切なこの写真たちをこちらに持って来れるとは思ってもいなかったのでとても嬉しい。
どれを見てもいつも笑顔で写る女性にそっと触れる
「よく分からない所に来ちゃったよ…表情なんて動かせるなら動かしたいよ…これでも一応動揺してるんだけどな…正直人ともう関わりたくないってまだ思ってる…ねぇこんな弱い私に力を貸して…」
「双葉さん?」
「!!」
後ろの茂みから顔を出したのは八戒だったが気配には敏感な方の双葉は全く気づかなかったのでアルバムを勢いよく閉じ驚いて振り返る
「八戒、さん」
「すみません驚かす気はなかったんですけど」
「いえ、大丈夫です…」
「隣いいですか?」
「はい」
広げていた荷物を速やかに直し座るスペースを開けそこに八戒が腰かけた
「先程は三蔵がすみません。言い方があぁですが悪気はないのであまり気にしないでくださいね」
「はい。分かっていますので大丈夫です」
「そうですか」
「表情が豊かになればいいなとは思っているのですか上手くいかなくて…。前は1人その人の前ではまだ少しは笑えたり出来てたんですが…」
3角座りをし表情がなくても明らかに落ち込んでいるのが分かる姿に八戒は少し驚いた後笑みがこぼれた
「そんなに落ち込むこともないと思いますよ?」
「え?」
落ち込んでいた顔を上げるとこちらに微笑みながら覗き込む八戒の姿
「だって近くで見ると双葉さん結構分かりやすいですし」
「…!!」
『双葉は自分が思ってるよりも結構分かりやすくてずっと表情豊かよ?』
思い出したのはもう会うことが出来ない大切な人
「それにそんなに悩んでいてもうちには元気の化身のような悟空もいますしそのうち釣られて笑えるようになると思いますよ」
『そんなに悩まなくたって何かの拍子で釣られてそのうち笑えるようになるわ』
あの人と同じことを言う八戒に驚き目を見開く。
元の世界ではこの容姿のせいもあって気味悪がられ嫌悪の対象だったのでそんなことを言ってくれる人などそう居なかった。
「双葉さん?」
「双葉…でいいです。そっちの方がいいです」
「分かりました。では僕のことも八戒と呼んでください、みんなそう呼んでいますし。あと敬語も日頃使っていないのでしたら普通通りにしてていいですからね」
「は、うん。ありがとう、八戒。」
「どういたしまして。さぁ明日も朝早いですから戻りましょう」
「うん」
立ち上がり砂を叩いて落としていると八戒が来た方から何かの鳴き声が聞こえこちらにとんできた
「キュー」
「白竜、探しに来てくれたんですね。今から戻ろうと思っていたところなんですよ」
「竜…?」
それは白い小さな竜。八戒の肩に乗り撫でられ気持ちよさそうに目を閉じている
「あっそうですね、この姿は初めて見ますね。先程まで僕たちが乗っていたジープなんですよ」
「そうだったんだ…えっと初めまして、双葉です。よろしくね」
「キュー!」
今度は双葉の肩に乗り頬を寄せる白竜に表情は変わらないが背景に花が飛んでるのが分かるほど嬉しそうな双葉にまた笑みを1つこぼした