— RELOAD —

九輪 再装填

『桃源郷』
人と妖怪、科学と妖術が共存を果たす無秩序な世界

その均衡は突如崩れた
…負の波動を受けた妖怪達の暴走という、謎の『異変』によって───

「…おいおい、なァに今更説明してんだか」

斯くして、四人の若者と異世界から来た少女が、西域・天竺国への旅を余儀無くされた

異変の元凶とみられる牛魔王蘇生実験を阻止し、この世界に平和を取り戻す為に───

「『世界の為』?ははッ、それこそ今更だな。四の五の理屈はいらねぇんだよ………さあ」
 

『準備はいいか、野郎ども。』


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「皆様同じ部屋でよろしいですね?ではこちらの宿帳にお名前を」
「――はい、どうぞ」
「ありがとうございます …あら」

ローブを被って見るからに怪しい五人組。
しかもサングラスまで付けて変装…
怪しまれる上にこの宿帳に書かれた名前は、

『ハヤブサ 太郎、次郎、三郎、四郎、花子』

「ご兄弟ですか?」
「あははは、ええまあ」
「……貴様な…」
「仕方ないでしょう。咄嗟に浮かばなかったんですから」
「ネーミングセンス…怪しさに拍車がかかってる」

さすがのネーミングセンスにと頭を抱えていると、お姉さんが「ではお部屋の方に…」と動こうとした時、壁ドンし毎度恒例次郎のナンパ…

「ねぇ君さ、名前何てゆーの?」
「あ…はい、聖羅です」
「セーラちゃん?可愛い子はやっぱ名前も可愛いんだな。今夜ちょっとあいてる?」
「え?えっと……」
「仕事何時あがり?待ってるからさ」

なんて言っているナンパ最中の次郎のおしり目掛けて太郎が蹴り飛ばしそのまま前へと倒れる。その様子に呆れながら近づく花子。

「~~~ってぇなァ!何しやがんだてめぇ」
「やめなよ〜オニーチャンのナンパしてるとこなんて妹は見たくないよぉ」
「黙れ節操なし。怪しさに拍車かけてんじゃ」

太郎の続きの言葉が出るよりも先に『ぐぅーーー』と盛大な腹の音が鳴り響く。

「……なーー 飯はァ?」

四郎のお腹の音にお姉さんがクスリと笑う。

「もうすぐ夕御飯なのでお部屋までお届けしますね」
「わー!やったァ久々にちゃんとした飯だ♡」
「やかましいッ騒ぐなバカ者」

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案内された部屋で夕食後、やっと一息を付くハヤブサ兄弟もとい三蔵一行。こんな怪しい格好をしているのも理由があってのことである。
……そんなことも露知らず、先程のお姉さん 聖羅の妹である星華は町での噂もあってこの兄弟を怪しみ監視という名の扉の前で張り込みをしていた。

「…あーあ、いつまでこんなカッコしてなきゃなんねーんだろ」
「仕方ねぇだろ。俺達の事がこんな騒ぎになっちまってる以上はな」
「見られたら一発で正体バレかねませんからね」

正体……どういう事?

「そーそー特に“太郎兄さん”がな」
「…ブッ殺されてぇか貴様」
「“次郎オニーチャン”も変わりませんよー?」

何?何だこの人達……?

「ま、とにかく今晩だけでも大人しくしてて下さいね“次郎兄さん”」
「えーー次郎ちょっと自信ないカモーーー」
「妹としては、お兄ちゃんがそういうのしてるの見るのやだ。」
「ほら“花子”もこう言ってることですし」
「見境なく女に食いついてんじゃねぇよ」

こ…この人達
妖怪だーーー!!

「アレ、俺けっこーー美食家よ?」
「そーゆー問題じゃないでしょう」
「だとしたら美食家の意味を辞典で引いてきた方がいいよ…」

きっとこいつらが最近女の人を襲ってる妖怪なんだ
だから正体がバレないように

「あーあ、あの姉ちゃんの料理旨かったけど やっぱ普通の量じゃ足んねーーなぁ」
「あははっ僕らを食べるのだけはやめて下さいね」
「私には多すぎる……」
「お前はもう少し食え」
「え」
「そうだぞ。“四郎”まで食べろとは言わねぇけどもうちょっと食べてくれないとオニーチャン心配」
「え」
「少しずつ食べる量を増やしましょうね」
「え」
「双葉は本当に食べませんからねぇ」
「だってお腹いっぱいになるんだもん」
「五歳児か」
「五歳児以下だろ」
「ひどい」

ど…どうしよう
食べられちゃうよーー!!

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「妖怪?あのお客さん達が?」
「そーだよ!アタシ聞いちゃったもん!!アイツら人間のふりしてダマしてアタシ達食べるつもりなんだ!!」

聖羅の元へ向かい訴えてみるも相手にされず

「プッ…やあねぇ星華ったら」
「本当に本当なんだってば 大体あんな怪しくてあんなガラの悪い奴ら変じゃんか!!」
「そうかしら?私はそんな変な人達には見えなかったけど……あ お姉ちゃん朝の食材足りなくなったから買ってくるわね あんまりお客さんの事疑っちゃダメよ?」
「お姉ちゃんってば!!……もーーっ!!」

お姉ちゃんいっつものほほんとしてるから判らないんだ

子どもの戯言で片付けられてしまい…

こーなったら、アタシがあいつらの正体暴いてやる!
と意気込んだのはいいものの……

「よォっしゃあ五連勝!!」
「だーーっっクソ激ムカツク!!もー一回だもっかい!!」

……。うるさい……
こいつらが悪い妖怪だっていう証拠を絶対つかんでやるんだから!!
 
そう思った瞬間…

「うるせえ!!何時だと思ってやがる このバカどもがッ さっさと寝ろ!!」
「ぎゃッ」
「どわ!!」
「花子がうとうとしてるんですから、三人とも静かにしてください。」
 
軽快な音の後、部屋からは音もせずぴたりと騒ぎ声が止まる。

「……」
「……」
「……」

数秒後。

「花子、眠いのか?」
「ん……」
「じゃあ寝ろ」
「うん……」
「ほら、毛布」
「ありがと」
「歯磨きしました?」
「した」
「嘘ですね?」
「…」
「花子」
「……してない」
「してきなさい」
「はーい……」

ぱたぱたと部屋を歩く足音。
しばらくして静かになり、聖羅は耳を澄ませる。
すると

「ちゃんと布団かけろ」
「風邪ひくぞ」
「おやすみなさい双葉」
「おやすみ〜」

そんな声が聞こえてきた。

「……」

聖羅は考える。
凶悪な妖怪集団で人を襲う極悪人。
宿帳の偽名に怪しい格好。
そのはずなのに。

(……妹には優しいんだ)

何とも言えない気持ちになった。

「…ちゃん、星華ちゃん。こんな所におったか!」
「伯父さん?」
「聖羅ちゃんは何処行ったんだ?夕飯の後からずっと姿がみえんのだが…」

その言葉を聞き立ち上がる。

「お姉ちゃん、まだ帰ってないの?だって買い物に出てからもう三時間も…」
「こんな時間に一人で買い物に!?今、妖怪騒ぎで危ないというのに……」

だんだんと嫌な予感が込み上げてくる。

「おやっさん!!裏通りに買い物カゴ落ちとったがコレ…聖羅ちゃんのじゃないか!?」

落ちていたと言うカゴは自分の姉の私物。

「嘘……」
「何かあったんですか?」

外の騒ぎに気が付き部屋の扉を開けた三郎を勢いよく押しのけ中を覗き込む星華。

「あ!!ちょ…?」
「あン?」
「……何…で」
「え?」

そこにいるのは最初に見た五人組で

「じゃあお姉ちゃんは…?」

誰一人としてかけていないと言うことは……
 
「あんた達が妖怪 なんじゃなかったの…?」
「……どういう事だ?」

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買い物途中に聖羅は誘拐され投げ捨てられたのは山の中。気を失っていたが投げ捨てられた衝撃で目を覚ますと同時に耳に届く嫌な笑い声

「今夜は上玉じゃねぇか」
「!!?…ここは……」
「こんな町外れ誰も来やしねぇよ」
「しかも今は妖怪が出るって信じてるから余計になァ」
「ま…さか。いままでのは貴方達が…!?」
「この町の連中はバカばっかで助かるぜ」
「女犯して金めの物盗ってもよ」
「死体メチャメチャにひき裂いておけば勝手に妖怪の仕業だと思い込んでくれる……まったく 妖怪サマサマってな」

ニヤリとした顔で近づいてくる人間の男達。
この場から逃げなければと走り出そうとするも髪を引っ張られ、いとも簡単に捕まり押し倒されてしまう。

「無駄なんだよ!!」
「きゃ……ああッ!!」
「手間かけさすんじゃねぇよ!このアマ!!」
「いやッ!!誰か…いゃああああ!!」

ガコッ!!っと物凄い音と共に何かに蹴り挙げられた男はそのまま後ろへと倒れる。

「俺より先に手ェ出すたあイイ度胸じゃねーか兄ちゃん達」

現れたのは宿に泊まった赤髪の男。

「…ンだてめぇは!?邪魔すんじゃ……!!?」

男達が次々と蹴り倒される。

「妖怪に罪なすりつけてただとォ!?セコイ手使ってんじゃてねーーよ!!」

男達を蹴り倒す茶髪の少年。
その男達の手元に向かって勢いよく何かが突き刺さる
 
「ぎゃぁぁぁぁあ!!」
「あんたらが…睡眠の邪魔したウジ虫ども…?」

数本の千針を片手に泣き叫ぶ男たちを容赦なく踏みつける少女。

「お姉ちゃん!!」
「星華!どうしてここへ…?」
「あのお客さん達が……っ」

一緒に来ていた星華が聖羅の元へと駆け寄る。

「ふざけやがって……ブッ殺すぞぁあ!?」
「…せぇな………すぞ」

邪魔された事に腹を立て男が金髪の男にのローブの切り裂く──

「!!? え」
「聞こえなかったか?」

ガウン!と銃声と共に男の大腿部を撃ち抜き、バサリと、落としたローブの下から現れた法衣。

「殺すと言ったんだ。クソ野郎」
「ぎゃあああ!!」
「ヒィ!な…何者だてめぇら…!!」
「…お、おい…ジョーダンだろ……銀の銃を持つ金髪の僧侶、ジープに乗った五人組………と言ったら…まさか」

残りの四人もケープを脱ぎ捨てる。

「―――さて、どうします?こちらの方々」
「そりゃもーーボコでしょう!!」
「殺せ、今殺せすぐ殺せ」
「三蔵に賛成。睡眠邪魔したやつ皆殺し。」
「そいじゃま、とっとと片付けますか。おネムだもんねぇ。三蔵様と妹ちゃんは」

聖羅も星華、そして男たちも皆、開いた口が塞がらないようであった。
その後、瞬く間に男たちの断末魔が森に響いた──
 

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次の日─
 
あの後たっぷり寝れた双葉はジープとクロガネを抱き抱えみんなと宿のロビーに降りると『歓迎!三蔵法師御一行』と書かれた垂れ幕と朝から食べるには胸焼けしそうな豪華な食事、そして押し寄せた人たち…まさに客寄せパンダ状態。

「町中の皆が三蔵様に是非と持ち寄った物です お口にあうかわかりませんが、どうぞお召し上がり下さい」

そう言って席を勧めてくる光景に「チッ…だから嫌だったんだ」と寝起きと面倒なのもあり、いつにも増して不機嫌な三蔵は掌で自らの顔を覆っている。

「これ全部、俺ら食っていいの!?マジ……でッ」

三蔵の気も知らず目の前の食べ物に飛びつく勢いの悟空を三蔵がハリセンで叩く

「…悪いが俺達はなにぶん先を急いでいる身だ。おかしな噂が流れているようだが、俺達に出来る事もここで世話になる義理もない」

断り方はあれだが、言っていることに間違いない。

行くぞと法衣の裾を翻した刹那……人混みの中から星華が飛び出しその裾を掴んで引き止める。

「…ま…待って!!……ごめん、なさい。妖怪だって疑ったの怒ってるなら、謝るからッ…だからせめて、お姉ちゃんを助けてもらったお礼だけでもさせてよ……!!」

目尻に溜まった涙にを目にし、小さく鼻を鳴らしガタッと椅子を引いて席に着く。

「――ふん…別に怒っちゃいねぇよ」

四人もそれを見て席に着く。
見られながら食べるのも朝食のメニューでもない目の前の料理にとりあえずお茶に口をつける双葉。
それとは対象的一人で平らげる勢いの悟空を見て苦笑いが出る。

「てゆーか、妖怪には違いねぇしな」
「……俺は違う」

悟浄の呟きに三蔵が反応する。
悟空が嬉しそうに食事を平らげるのを眺めながら「三蔵様がいらしてくれれば怖い物なしだ」と話す町人たちの会話が耳に入ってくる。
 
「あの、この町は随分妖怪を警戒してらっしゃるようですが、以前から妖怪の被害によく遭っているんですか?」
「え…いや…そういうワケでは、最近の事件を妖怪の仕業だとてっきり…」

罰悪そうに話す町の住民達。
結局のところ他の町も襲われて自分たちもいつそうなるか分からないからと言うもの。
しょうもないなっと思っていたその時、物凄い気配を感じ一斉に席を立つ。

「邪魔したな。行くぞ」
「ええ!?」
「悪ィ!!全部食えなくて」

この気配にも気づかず呑気に困惑した様子の人達を置いて外へ出るが引き止められる。

「ちょっ……お待ち下さい!!何処に行かれるんですか!!」
「この町を出る」
「何故!?」
「あんたらも早いトコ避難しとけよ。けっこーな量の妖気が近付いて来てっからさ」
「な……!?」

悟浄からそう告げられて人々は口を揃えて「退治してくれ」の大合唱。本当にしょうもなくてアホらしい…

「うるせぇより妖怪妖怪と騒いじゃいるが、あんたらはただ脅迫観念にかられてただけじゃねぇか。第一その『三蔵』の噂がすでに的外れなんだよ」

明らかにどんどん近づいてくる団体さんらに両手にクナイを持ち構える。押し寄せて来るまであと数秒。

「いい事を教えてやる。俺達が妖怪を退治して回ってんじゃねえ。妖怪が俺達を狙って来るんだ」
 
みんなそれぞれ武器を手にした瞬間──
 
「玄奘三蔵だァ!!」
「おたずね者の三蔵一行だぁあ!!」
「殺セェ!!経文を奪え!!」
「コロセェエ!!」

まずは三蔵目掛けて真上から来た妖怪達を、悟浄の錫杖が切り刻むのを合図に、

「おいでなすった!」
「今日も今日とて団体さんだねぇ」
「~~~つまりっ俺達の行く所行く所にッこーやって妖怪が出てくるって事!!」

悟空が如意棒で敵を薙ぎ倒し

「ブチ殺せ!!三蔵一行は皆殺しだァア!!」
「でも、久しぶりですね。こんな団体さんのお相手……はッ!!」

八戒が気孔で消し飛ばし

「色んな暗器試せるからちょうどいい的だ、よっと!」

双葉はクナイと同時に千針を投げつけ、近づいてきた敵には体術でボコボコにしていく。

「ははッたまには運動しねーと体がナマって仕方ねーし……よ!!」

妖怪に蹴りを食らわせ悟浄が言う。

「なぁ『太郎兄さん』?」
「──フン。貴様は身体よりも頭の運動が必要だろうが」
「そーゆー三蔵様は下半身がナマってんじゃないの?」
「もお!次郎オニーチャン!」
「あははは命知らずですね。悟浄は」
「それを言うなら命知らずはッ、コイツらの方なんじゃねーの!?」
「ははッ違いねぇ!!」
「確かに悟空の言う通りだ…ねっ!!!」

背後にまわっていた敵目掛けて回し蹴りをかまし、手足を複数のクナイで釘刺しにしそいつらを見下ろす。

「誰の背後取ろうとしてんだよ…舐めんなよ?」
「……最近、双葉の言葉遣いが悪くなったと思うんですけど」
「そりゃどっかの生臭坊主のせいだろうよ」
「知らん。お前も大差ないだろ」
「よいしょ。それにしても随分集まったね」
「あれだけ三蔵三蔵と騒げば餌ばら撒いたようなモンだ」

辺りを見れば誰も居なくなった町。
妖怪だけでなくあれだけわーきゃー言っていた街の住民たちも一人も見当たらない。

「怖くなったんだろ。これだけ殺せば俺達の方が、コイツらよりも」

その時……誰もいないと思っていた町に悲鳴が上がる

「星華ぁ!!」
「お姉ちゃん!!」

叫び声に振り向くと昨日の二人の姉妹、聖羅と星華。

「ははは!!どうだ!これで手が出せまい三蔵一行!!」

星華を人質にとって二階建ての家屋の上で、高笑いしているアホそうな妖怪

「形成逆転だな。まずは経文を渡してもらおうか」
「いやあああお姉ちゃん!!」
「星華!!星華を放して!!」

勝ったとでも言う様子の妖怪に、呆れてと溜め息を零す。これで勝ち誇っている辺り、本当に油断している。

「いるんだよな~~あーゆー馬鹿」
「形勢逆転とか言ってんのも大分アホだね…それに子ども盾にしてクソダサ野郎じゃん」
「駄目ですよ悟浄、双葉。本当の事言っちゃあ」
「何ィ!?」

コケにされこめかみに青すじを浮かぶ妖怪が次に出る行動は

「貴様ひとりで俺達に何ができる?―――第一そんなガキの事なぞ知ったこっちゃねぇよ」
「三蔵言い方。」
「さ…サイテー!!何が三蔵一行だよ!!助けてもくれないクセに!!」
「当然だ。俺は誰かを助ける為に三蔵やってんじゃねぇからな」
「ま、ただし売られたケンカは高値買い取りよ?」
「しかも返品不可だからね」
「…くッ…クソ…こうなったら」

妖怪の背中からメリメリと言う音共に羽根がはえる。

「うげっ!羽根はえた!?」
「グロいグロい」
「ほー芸達者なヤツだな。」
「ははは!!さらばだ!!次は容赦せんぞ!!」
「きゃああああ!!?」

悲鳴をあげる星華を抱え飛び立っていく妖怪。

「って逃げるだけかよオイ!!」
「あいつ今のところ、ダサいことのオンパレードしかしてないじゃん」

逃げていく妖怪を見ながら、本当に呆れていると八戒がジープを呼ぶ

「町から出すと厄介ですね」
「教えてやろーぜ『売ったケンカは返品不可。』」

ジープは妖怪を追いかけ街中を走る。

「ガキ連れて逃げるたァ多少は頭回ってるじゃんアイツ」
「このまんまじゃ確かに手ェ出せねーな」

相手ははるか上空にいる妖怪。
しかもそいつだけならまだしも星華を抱えてとなれば少し厄介だ。

「三蔵?」
「スピード落とすな、八戒…どうせこの距離じゃ銃も当たらねぇしな」

そう言った三蔵が上空の人質となった少女に叫ぶ

「 ──?」
なに?
あの三蔵って人…何か言って………

「飛び降りろ!!」
「──っ!!」
……なぜかその時アタシは
 
妖怪の腕を思いっきり噛みつき腕から逃れるように飛び降りる。
 
「ぎゃあッ!!このガキ何を──!!バカな…!?」
「叩き落とせ 悟空」
「っしゃあ伸びろ如意棒!!」

なぜかちっとも

「まかしとけ」

怖くなかったんだ。

「下がりますよ!!」

八戒の一言でジープは道を勢いよく後退して行く。
 
「停めろ八戒!!」

双葉が肩を叩く。
 
「悟浄、私が行く。」

返事を待たず飛び上がる。
高く。
さらに高く。
紫の髪をなびかせながら空へ跳ぶ。

「え……」

星華が目を見開く。
次の瞬間。
ふわり、と。
身体が誰かの腕に包まれた。

「捕まえた」

双葉だった。
そのまま空中で体勢を整える。
そして。
ジープの上へ軽やかに着地した。
 
「ははッ!さすが双葉ちゃん!それにやるじゃねーかガキんちょ!!」
「大丈夫?」

双葉が顔を覗き込んだ。
紫色の髪。
エメラルドグリーンの瞳。
優しい声。

「……」

言葉が出ない。
ただひとつだけ分かった。
この人達は、本当に格好良かった。
 
背後ではドサァと言う音に目を向ければ悟空によって叩き落とされた妖怪が倒れていた。

「くッ…クソぉ…」
「なんだまだ生きてんじゃん」
「しぶといね」
「当然だ。そう簡単に死なれちゃあな」

ジープから降り倒れている妖怪を見下ろす。

「貴様ら…何故そこまで妖怪に盾突く!?半分とはいえ妖怪の血が流れる分際で──!!」
「俺は違う」
「それ本日二度目ですよ三蔵」
 
(別に妖怪だろうと人間だろうと私的にはどっちでもいいんだけどね)

「判っているはずだ。知能も生命力も…人間より妖怪の方がより優れた種族であるという事に!!」
「優れた種族?ああ成程。それは例えばその妖怪が小さな女の子を盾にして逃げ出すような腰抜けではなく あの高さからダイブできるほどの勇敢な方だったらという話ですよね?」
「さすが八戒。それなら納得だわ」
 
妖怪の言葉に八戒は納得したようにそう言うがやはり言葉の意味が分かっていないアホのようで、妖怪は何かを思いついたようにベラベラと話し出す。

「──そうだ。我々妖怪の仲間にならんか!!?貴様ら程の腕があれば我々の味方となって………」

悟空と悟浄は顔を見合せ、八戒は表情は変わらないが少し呆れたような雰囲気。
まぁ三人が言わんとすることは分かる。

「…なんか、前にも同じよーな事言ってきたヤツいなかったっけ?」
「いたいた。いつだっけかなけっこー前?」
「アホなやつはとことんアホなんだね…」
「……信じてきたさ」
「え?」

呟かれた言葉に妖怪は三蔵を見上げる。
その先には向けられた銃口──

「なにせ俺は生まれて死ぬまで俺だけの味方だからな。」

ガウン!!と一発の銃声が響いた。


────────────────
──────────
────
 

「お姉ちゃん!!」
「星華!!」

ジープから降りて姉へと駆け出す。
 
「よかった星華…!!ケガは?」
「うん…大丈夫あの人達が助けて……あ」

振り向く先には去っていく一行の姿

「ま…待って!!」

お礼を言おうしたときあんなに「三蔵様、三蔵様」と言っていた街の住民たちは「疫病神」「妖怪より恐ろしい」と手のひら返しでなんざんな事を言い出す。

「ちょっと…なんだよ皆!?あの人達はアタシ達の事守って……」

反論しようとするも聖羅の肩に手をぽんと置かれ

「お姉ちゃん……?」
「いいのこれで。何かに囚われたりしちゃいけない人達なんだわ。そういう強さもあるんじゃないかしら」

──やっぱり思った通りだった
アイツらガラが悪くて、怪しくて
………でも

「カッコいーじゃん。」

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「………なー、カッコつけて出てきたはいいけどよ。もー夕方じゃねーかよ、もしかして今夜も野宿?」
「てゆーか、地図によると次の町まであと三日はかかりますよ」

八戒の言葉に少し遅れて悟浄と悟空が反応する

「三日ァ!!?」
「ちょっと待てよ食い物は!?」
「買い出しくらいしてくればよかったですねぇ」
「てめぇの食い物なんざどーだっていいんだよ!!酒は!?煙草は!!?」
「どーでもいいとは何だッ!!俺が餓死したらどーしてくれんだよ!!」
「知るかっ勝手に死んでろ!!」
「………」
「大体てめぇが人の何倍も食うからすぐ食料が底つくんじゃねぇか。この大喰い猿!!」
「ンだとーー!?煙草だバクチだっつって金使い果たしてる奴に言われたくねーよ。このゴキブリ河童!!」
「…二人ともそろそろやめなよ」
「いい加減でやめた方が身の為ですよ~?」

双葉と八戒が制止を促すも時すでに遅く、

「うるせえ!!黙ってらんねぇなら今すぐ撃ち殺すぞ!!」

不機嫌全開な三蔵が二人に近くから銃口を向ける

「ぎゃーーッ当たる!!そのキョリは当たる!!」
「三蔵も危ないからちゃんと座りなよ」
 
いつも通りの三蔵一行は今日も夕暮れの荒野を走り続ける───

水鏡で看ていた観世音菩薩は笑みをこぼす
控えていた二郎神が声をかける。

「観世音菩薩。──ああ今日も看てらっしゃいますな あ奴ら、また何かしでかしましたか?」
「………いや、いつも通りさ」
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