-無印篇-
「ジープ大丈夫?」
「キュー」
「くぅーん」
元気のない返事を返すジープの小さな頭に双葉は冷たいタオルをそっと乗せた。
数日走り続けた疲れが出たのか、ジープが高熱を出してしまったのだ。
苦しそうな様子のジープを心配し見つめる悟空と双葉。そして先日、共に行動するようになったクロガネはジープと仲が良いため心配した面持ちで寄り添っている。
幸い、近くの街で宿屋も取ることが出来たので数日はこの街で過ごすことになっていた。
「それじゃあ早速。悟浄、お願いします♡」
「……何コレ」
「買い出しメモに決まってるじゃないですか。僕はジープについてなきゃならないんで」
「──おい猿。一緒に…」
「あ、悟空連れてっちゃダメですよ。2人してすぐ余計な物買ってきちゃうんですから」
「……私も行く。クロ、お留守番お願い」
「わん!」
一人で行かされそうな悟浄を見かねて立ちがる。
隣で新聞を見る三蔵を無言で見つめる悟浄。
それに気が付いた三蔵はカードを渡しながら一言。
「マルボロ赤。…ソフトでな」
「…このクソ坊主…」
「はいはい、行くよ」
今にも喧嘩しそうな雰囲気を察知し、悟浄の背中を押して買い出しに行くため街へと向かう。
買い出しメモの通りに買い物を済ませ二人で大量な紙袋を抱えていた。
「そんなに人多くはねぇけど大丈夫か?」
「うん。これぐらいなら、大丈夫」
「さすがに荷物多すぎて服掴めねぇからなぁ」
人混みが苦手な双葉。
そんな時は決まって八戒や悟浄の服を掴むことが多いがこれだけの荷物を抱えてはさすがにそれも出来ずにいた。
「これで大体揃ったか?」
「えっと…あっこれ忘れてた」
「あーさっきの店だな。仕方ねぇ、俺ちょっと行って来るわ」
「…一緒に行く」
「いや、あんまし遅くなるとヤニ切れしてキレられてもめんどくせぇからそれ生臭坊主に渡しといて」
そう言うと悟浄は足早に今来た道を引き返して行った。そんな後ろ姿を見送り宿屋へと一人歩みを進める。空はだんだんと太陽が傾いてきていた。
「ただいま」
「おかえりなさい。あれ、悟浄は?」
「買い忘れたもの買いに行ってくれた。三蔵、はい」
「ん」
悟浄の言いつけ通りマルボロを三蔵に渡した。
買ってきた荷物を紙袋から出していると部屋の扉からをノックする音が聞こえてくる。
八戒が扉を開け来客の対応に向かう。
それから何もかもが突然だった――
────────────────
──────────
────
「あ、れ…?どこここ」
目を開くと辺りは真っ暗な世界が広がる。
確か先程、八戒が来客の為扉を開けた先にいたのは小さな子どもと得体の知れないもの何かが現れて、そして――
「そうだ…3人は、どこに行ったの?」
見回しても視界に入るのは変わり映えもせず真っ暗なままだ。
『ここにいてはダメ』
「え?」
『戻ってください。――双葉』
「──なッ!!」
急に聞こえてきた声に振り返ろうとした瞬間、背中を押される感覚。それから先程までの真っ暗が嘘かのように暖かな光に包まれた。
「!」
勢いよく起き上がると泊まっていた宿屋のベッドで寝かされている状態だった。目を覚ました双葉に気が付いたジープとクロガネが飛んで来るのを抱きとめた。
隣のベッドに目をやると寝かされた悟空と八戒の姿。
辺りを見ても三蔵と悟浄の姿は見当たらない…
「どう言う状況なの…?」
ひとりこの状況についていけないでいるものの、それを聞こうにも誰も答える人はおらず。
どうしたものかと考えていると少しして突然、寝かされていた悟空と八戒が起き上がった。
「いっ…!あだだだだ!?」
「戻ったんですね、僕たち…」
「……起きた」
「あっ!双葉!!ってなんか身体が動きづらいんですけど!」
「あはは、これって死後硬直ですかねぇ」
「死後硬直ってどういう事?」
全く状況が掴めずにいる双葉に固まった体を動かしながら2人が知っている粗方の説明を受けることに。
襲ってきた子ども 金閣と二人がひょうたんの中で出会ったという金閣の双子の弟 銀閣。そしてカミサマという善悪もまだちゃんと判断が出来ない子どもに色々吹き込んだ人物の話。
「ってか双葉はひょうたんに吸い込まれなかったのなんでなんだ?」
「分かんない」
「僕の前に双葉が吸い込まれたと思うんですけどね…」
「何か真っ暗な所にいた様な気もするけど覚えてない」
「なんだそりゃ」
目覚める前、確かに真っ暗な所にいた様な気がするが思い出せずにいた。うーんと考えてみるも全く思い出せない。何か『声』が聞こえたような気もする。
思い出せないもの考えても仕方がないと考えることをやめた。
「とりあえず、行きましょうかね。不良園児たちをお迎えに」
――――――――――――――――――――――――
熱が下がって元気を取り戻したジープに乗り込み真っ暗な山道を登る。
だんだん進んでいくと三蔵と悟浄の姿を見つけた。
「見つけた」
「無事ですか、2人共!」
「そりゃこっちのセリフだっての」
2人と対峙し小さな体で得体の知れないものを庇っている金閣。そんな金閣へ八戒がひょうたんの中で出会ったという銀閣から聞いた真実を口にした。
ずっと助けたかったはずの唯一の肉親の弟はもうこの世にはいないことも。
「うそだぁああああああああ!」
絶叫が静かな森に木霊する。
小さな子どもにはあまりにも受け入れ難い残酷な現実。しかしそんな中、突如に何かが金閣のその小さな体を貫かれ口から血を流しながらゆっくりと崩れ落ちていく。
「──金閣!!!」
「んで……ど、して…神様」
崩れ落ちる金閣を受け止めた悟浄の腕の中で空へ伸ばした手は力なく事切れる。
「何でかって?いらなくなったからだよ」
しんとした静かな森に何処からともなく男の声が響く。木々の上から現れたその男は片目のまわりに火傷の跡、長い数珠。
そして経文こそないものの、額のチャクラと頭に金冠を乗せ法衣を身にまとった姿。
「三蔵、法師…?」
「あはは、惜しいね。あたりだけどはずれー。あ、そこの君も三蔵法師?でも、一緒にされたくないんだよな。ゴメンね?僕、君より強いからさ」
そう言ってふわっと木の上から降りた男は、三蔵の攻撃を一瞬の間に交わす。
「残念でした。ね。だって僕、神様だから?」
カミサマ。この男が先程聞いたやつだ。
悪びれもなく飄々と話すこの男が、金閣を利用するだけ利用し幼い双子を殺した張本人。
悟浄が金閣の瞼を閉じさせ、言い放つ。
その声は今までに聞いたことがないほどに低くやり場のない怒りを感じた。
「……何、笑ってやがる。てめぇ、コイツらに何がしたかったんだよ。何も判んねェバカ正直なガキつかまえて、何人殺しなんざさせてんだよ」
「ヒミツ」
そう答えた瞬間、悟浄の錫月杖がカミサマの首めがけて飛んでいく。…かと思えば、パラパラと真っ赤な数珠が無数に落ちていく。
「幻術…」
「ははッ、あはははは、はは!!──」
木々のざわめきと共に笑い声だけが響き渡る。
男はそのまま姿を消した。
なんともしれない気持ちだけが残る中、悟浄は地面を殴り金閣の遺体の傍から離れなかった。
その後、カミサマは見つからず金閣を埋葬して山を降りたのだった。
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「あってめぇッ!!それ俺のとっといたシーフードだろォが!?」
「うっせえな。そーゆーお前はさっき一人でパイナップルのヤツ全部食ったじゃねェかよ!!」
宿に戻ると、いつもの様に悟空と悟浄がピザを取り合い、喧嘩を始め三蔵の軽快なハリセンの音が鳴る。
何もかもいつも通り。いつもの日常が戻ってきた。
そういつものように振舞っている悟浄。
その違和感に気がついていたのは双葉だけではない。八戒もどこか心配そうに悟浄を見つめていた。
「……でもさ、あのムカツク奴…本当に何者だったんだろ」
「…さぁな。何が目的なのかも本物の三蔵なのかも判らん」
あのカミサマが何であれ、刺客でないならば相手にする必要はないといつもの調子で話す三蔵。
「俺達は正義の味方でも何でもねぇんだ。俺が行くと言ったら行くんだよ」
そう言われてしまえば、それ以上追求することなど出来ない。悟浄を見るもやはりそれを、何でもないような顔で見ているだけ。違和感は気が付けばどんどん大きくなる。
「何?おサルちゃん反抗期?」
「あれ、人の事言えるんですか悟浄ー?」
八戒の視線にも、気がつかないふり。
「──悪ィな」
ぼそりと呟かれたらしくもない謝罪の言葉。
悟浄が悟空を引っ張って部屋へと連れて行こうとしていたそんな姿に何とも知れないこの違和感という名の不安を拭いたくて悟浄の服をクイッと掴んだ。
「今日は悟浄達と同じ部屋に行く。」
「何、どったの?オニータマと離れたくないの?」
「うーん…うん。そんな感じ、かな…」
そう答えると一瞬驚いた表情をした後、いつもの笑みが返ってくれる。綺麗な真紅の瞳の奥にある真意は不思議なくらい何も見ることが出来ない。
──しかし不安も他所に……
「悟浄…」
翌朝目が覚めると、悟浄の姿は何処にもなかった。
何となくそんな気はしていた。
それでも………
(何も言わずに出ていくなんて…)
「…ばか。」
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揺れるジープはいつもより広くて、いつも騒がしいはずなのに凄く静かで……それを酷く寂しいと感じた。
寂しさを紛らわすように膝を抱えてジープに座る。
隣に座る悟空がいつものように「腹減った」と言い終わる前に「黙れ」と返されていた。
「何だよッ、まだ言い終わってねぇぞ!?」
「聞く耳もたんな」
「まあまあ悟空。もう少しで次の町に着くはずですから」
──昨夜、悟浄がカミサマを追いかけて出ていった。
あんな悟浄を見てはそうするだろうなとは予想はしていた。しかし何も言われなかった事も何も聞けなかった事も後悔しても、もうすでに遅い。
そんな状況に無情にも「昼には経つ」と言う三蔵に何を言ってもそれは変わることはなかった。
悟浄を置いて“四人”は次の街に着いた。
たこ焼き屋を見つけて駆け出そうとする悟空をいつもの倍の勢いでハリセンを振り下ろす。しかもそれは後頭部ではなく顔面へと直撃していた。
「〜〜おいッ、なんかいつもよりイテーぞ!?」
「気のせいだろ」
「うそだっ!!ぜってー倍くらい痛かったね!」
騒ぐ悟空をめんどくさく感じたのか飯屋に連れていくと行って三蔵と悟空は別行動。残された双葉と八戒は買い出しをすることに。
いつもより多い荷物を抱え直していると八戒が誰もいないはずの後ろを笑顔で振りかえる。
「じゃあちょっと双葉の荷物を持って下さい。ごじょ……」
「…八戒?」
「……なんちゃって」
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食事の時も「おい、ライター…」と呟いた三蔵だったが、三蔵以外にライターを持っている人物は悟浄だけ。悟空、八戒、双葉からまじまじと見られるも、舌打ちと同時にタバコをへし折ってしまう三蔵。
宿についてからも違和感は拭われる事はない。
三蔵と八戒が地図を見ながらルート確認をしている。
それを見ながら窓の近くに腰掛けてクロガネを撫でる。いつもと変わらない光景なはずなのに、悟空と悟浄の騒がしい声が聞こえてこない。
それだけでこんなに寂しいなんて思いもしなかった。
順調に行けば目的地までそう遠くはないと話す八戒。「余計な手間さえ取らなけりゃ問題ない」と三蔵が返していたその言葉にモノクルの奥の瞳が、すぅと細くなるのを見てしまった。
「問題ない…ですかね」
「何だ」
「いいえ別に?…それより、ちょっと吸いすぎじゃありません?真っ白ですよ、部屋の中」
「窓開けりゃいいだろうが」
「…」
「コーヒー」
いつもなら許される物言いも今回ばかりは八戒の怒りに触れたらしい。コーヒーポットをテーブルに叩きつけ「どうぞ」とブラックな笑顔を見せる。
「……おい、言いてぇ事があるなら……」
「いででででッ何しやがんだてめえ!!コラ!!」
「ピーッピーッ!!!」
三蔵が言いかけた瞬間被せるように悟空とジープの喧嘩する声に反応して近づく。
放せと言わんばかりにぷんぷん怒った顔のジープ。
「何やってるんですか、悟空」
「ジープの嫌がることしたらダメだよ」
「遊んでやったのに噛み付いたんだよ!!」
「寝てる処邪魔されたらジープだって怒りますよ」
「おいでジープ」
「キュー!キュー!」
「よしよし」
双葉の肩の上で何か文句を言っているジープの頭を落ち着かせるように撫でる。
足元では擦り寄ってくるクロガネを抱き上げる。
動物だからこそ、この何とも知れない空気を敏感に感じているのかも知れない。
「──何かヘンだよ」
悟空の凄く真っ直ぐな言葉が、静寂を打つ。
それまで無言で睨み合っていた三蔵と八戒だったが振り返り悟空を見る。
「……ジープは広くなったけど、何か窮屈だ」
「何語喋ってんだてめェは」
今度は悟空と三蔵が睨み合った。
こういうとき真っ先にぶつけるのは悟空。
でも何を言っても聞く耳を持とうとしない三蔵。
「だからさぁッ…!!」
「三蔵、言い方。悟空もムキになったらダメ。」
今度はこの二人が言い合いを初めそうな気配を察知し、速やかに宥める双葉。それに加勢するように八戒も二人を止める。
「悟空、落ち着いて。三蔵も悟空に八つ当たりするのはよして下さいよ」
「八つ当たりだと?」
「気付いてないんですか?煙草の本数に比例して いつもの三倍は眉間に皺が入ってるじゃないですか」
「煙、すごい…」
「八戒達だって変だと思うだろ!?」
「まぁ、変というか……現実問題これから先、天竺に近付くにつれ危険度も増してくる筈ですから、ここに来て戦闘要員を欠くというのは僕としてもどうかと思いますけど?」
「八つ当たってんのはてめぇの方だろうが、八戒。そんなに気になるならお前もさっさと抜けりゃいいだろう。それとも何か?判ってて行かせた自分に今さら腹立ててやがるのか」
いつものように冷静に、かつ的確に現実的な話を唱えたが今の三蔵に何を言ったって相手の地雷しか踏むことしか知らないらしい。
その言葉に珍しく八戒の頬に青筋が立ってしまった。
「……人が散々気をつかってるのに、よくそーゆー事が言えますね貴方は……」
「は…八戒?」
「八戒、ダメ。」
「頼んだ憶えはねぇな」
「三蔵。」
もはやこう来ては売り言葉に買い言葉である。
地雷を踏み抜かれた八戒まで加わってしまえば止める人がいなくなると思い、服を引っ張ってみたもののそんなことで止めることなど出来ず──
「じゃあ言わせてもらいますけどね。中立な立場である僕にどうしろと仰るんですか!?一人や二人でこの任務が遂行できない事ぐらい貴方にだって判るでしょう!!」
「だから頼んでねぇっつってんだろうが!!大体、勝手にいなくなった奴なんぞ知った事か!!」
「少しは素直に物を言ったらどうです!?『カミサマ』の事だって本当は気になってるんでしょうが!?」
「俺の事に口出すんじゃねぇよ!中学生日記の学級委員かてめえは!!」
怒涛な言い争いが始まってしまった……。
正論パンチをかます八戒も、図星を強い言葉で隠そうとする三蔵も止まらない。
何とか止めようとするも二人の耳に静止など入るわけもなく。
「ねぇ、やめなよ二人とも」
「キュー…」
「くぅーん…」
抱えているクロガネも肩に乗っているジープも見守ることしか出来ずその小さな体を双葉にくっつけている状態。
「あーもーやめろよ二人とも!!だから言ってんじゃん!悟浄を捜しに戻ればこんなんじゃなくなるだろーってば!!」
「…ねぇ」
「その名前を口に出すんじゃねぇ!このバカ猿!!!」
「ねぇってば……」
「~~~人のハナシ聞けよ!!!」
悟空が近くにあった枕を投げ付けそれがボブッと音を立てた。その枕の行先は…
「…あ…ワリ。」
見事、三蔵の顔にクリーンヒット。
流石の八戒も笑いをこらえるのに必死だ。
まずいと思い謝った悟空だったがそれ以上に凄いものはすぐ側にあった…
「ねぇ…いつまで、言い合いするつもり?」
「あ、」
「ッ!」
「ふ、双葉?」
ものすごい冷気に当てられ振り返ると今まで見た事もない絶対零度な無表情を向け、頭を傾けている双葉の姿。再三忠告をしていた双葉そっちのけで怒涛な言い合いをやっていたが、その姿があまりにも恐ろしくまずいと思ったのか流石に黙る三人。
「素直に迎えに行く理由を付けられないなら私が付けてあげる。皆がそんなに言い合う理由も元を返せば悟浄のせいでしょ?じゃあ殴りに行く。それでいいんじゃない。」
「双葉がキレた…」
元よりあまり話す方ではないが、この時ばかりはぺらぺらと話す勢いに押され黙るしかなかった。
いつも怒らない人が怒ると一番怖いとはこのことだ。
そんな中絶対零度な双葉に当てられていたが、突然ガシャンと窓ガラスが割れる音と共に…………
「見つけたぞ三蔵一行!!我々は玉面こッがは!!?」
言い終わるよりも前に素早い双葉のクナイの餌食に。
妖怪達を振り返る姿すら恐ろしく感じるほどである。
「まだ話してる最中。邪魔。」
「な、舐めやがって!ッ!!?」
ガウン!!ガウン!!
双葉の態度に襲いかかろうとした妖怪に向け銃声が鳴り響く。ビクリとする妖怪達に三人も向き直る──
「双葉の言う通りもとはと言えば、あのバカが勝手な行動しやがったのが原因じゃねえか」
「同感ですね」
「…なんかムッチャクチャ腹立ってきたんだけど、俺」
「そうだね」
まぁ何はともあれ皆の心はひとつになったわけで
「「「…あんのクソ河童!!!!」」」
イライラを晴らすが如く、邪魔な妖怪達を次々と暴れ倒して行く。
「ぎゃあああッ!!?」
「誰だよ!今なら一人足りないから楽勝だとか言った奴!!」
「知らねぇガフッ!!」
妖怪の言葉など気にせずに、三蔵が三人に向けて言い放つ。
「おいお前ら!さっさと片してこの間の町に戻るぞ!必ず見つけ出して ブッ殺す!!」
先程までの姿が嘘のように三蔵の声が響いた。
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「…ったく なんでわざわざ戻らなきゃなんねぇんだ」
ジープのスピードを飛ばしながら来た道を戻ることに。元の世界だったらきっとスピード違反で捕まるだろうなとか呑気なことを考えれるぐらいには調子が戻ってきている証拠だろう。
足りないのはそこに悟浄がいないこと。
「はははは、見つけたら思う存分弾丸を撃ち込んで下さいね」
「それだけで満足出来るのやら。」
「でもさ、もう死んでたらどーする?」
「あの世から引きずり戻してでもこの手で殺るな」
とてつもなく縁起でもない物騒な話が飛び交う。
物騒な仏僧とは悟浄が言っていたがまぁこればかりは仕方がない。だって悟浄が悪い。
聞かなかったことも聞けなかったことも全て悟浄が悪い事にすると決めた。
「死んでないですよ、きっと。多分今頃、一人で黄昏て空なんか見上げて『みんな心配してんだろォな』なんて自嘲の笑みなんか浮かべちゃってるんですよ」
穏やかに話すその姿は八戒も調子が戻ってきたようだ
「うっわー寒ーー!!!」
「やってそう」
「……殺すくらいじゃおさまらねェな」
「やっぱり…」
「…そうですねっ」
急に勢いよく車体が揺れる。
八戒がアクセルを踏み込んだのだ。
先程よりもまだスピードをあげるジープ。
「うわッ!!?」
「きゃっ!」
「トばしますから気をつけて下さいね!」
「トばしてから言うな!」
今までのように向かうはただ1つ。
『西』とは別の今回は逆方向『悟浄』へ向かう
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あの山まで戻ってきた。のはいいものの、明らかに数日前来た時よりも木々が沢山生い茂りもう山と言うよりもジャングルになっていた。
あの時はジープを走ることが出来るくらいまでの道はあったはずだがそれもどこへやら。
見るからに怪しいこの山へカミサマとやらの元へ向かっているのであれば悟浄は確実にこの中だろう。
足踏みしていると奥に入れば分かると悟空が山へと入っていったが何故か戻ってくる仕様に。
もう一度としてみてもまた元の場所に戻ってくる
「あっれぇーーー!!?」
「もういい」
そんな様子に八戒は何はなかったようで「…成程」と呟く。
「何か分かった?」
「えぇ。これはつまり結界という事ですね」
「結界〜〜~?何で!?」
「さぁ?…でも少なくとも以前はこんなモノ張られてませんでしたね」
そう話ならが見上げる山は以前よりも怪しさが増している。
「町で聞いた限り、ここ数日で悟浄らしき男は見かけてないらしい。この山に入っていった事は確かだろうな──となると、奴はこの結界の中で結界を張った主はおそらく」
「『神様』ですか」
「そうなるよね。」
三蔵の言葉にそう言って、悟空が『なぁ』と声を上げる。
「それってアイツヤバくない?永遠に出てこなかったりして」
「はぁー。どーでもいいんじゃねぇの。何か面倒臭くなってきた」
「三蔵~~~」
「…ここまで来たら行くしかないよ」
ため息とともにどうでも良さげに呟く三蔵。
こうまでされたら三蔵が言う事も多いに分かるが、ここまで来たなら仕方がない。八戒も三蔵を説得するように言った。
「そうですよ。ここまでUターンして無駄足踏まされたんですからね、僕達。手ブラで帰らされるのもシャクでしょう。『毒を喰らわば皿まで』ってヤツなんじゃないですか?」
「…チッ」
「皿はうまくないぞ」
「違うよ、悟空…」
「そーゆー意味じゃありません」
こんな時にも悟空は悟空である。
突っ込みを入れたのもつかの間、三蔵が銃を取り出す。嫌な予感がする…。
「…念で造った結界ならば、念を込めた物理的攻撃でも破れる筈だ。」
三蔵が呟いたとともに、ガウン!!ガウン!!ガウン!!と銃声が森に鳴り響く。
その数秒後に、山彦のように同じ数だけ銃弾が返ってきてしまった。
「うわ!!?やっぱり!!」
「~~~何やってんですか 三蔵ーーー!!!」
「うっせえな!やってみただけだ!!」
とりあえず飛んでくる弾丸をクナイで弾く。
弾丸を何とか弾き終わり地面に崩れ落ちる。
「し…死ぬかと思った…」
「な、なんとか、弾けた…」
「…とにかく、この結界は念ではなく『術系』だって事だな」
「…三蔵、誤魔化してます?」
「しつけぇぞ八戒」
そう言って先程の行動がなかったかのような仕草で三蔵は自然な流れで煙草に火を付けるも、流石にツッコまずには居られなかった
「破る方法はあるんですか?」
「…あるにはある…だが、これだけはできれば…やりたくはねぇがな」
「…三蔵?」
珍しく苦々しそうに言う三蔵に釣られるように皆訝しい顔をする。
「そっ…そんなに危険な術なのか?」
「悟空。お前ならばできるかもしれん」
「え…?」
三蔵は真剣に深刻な顔で、そう告げた。
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それから数十分後──
「フン、こんなモンか」
「三蔵ッ!!~~~なんだよコレ!!?」
「あははは、カッコイイですよ悟空」
下着姿に全身に何か文字を書かれ不服そうな悟空と真逆にどこか満足そうな三蔵。それを見て楽しそうな八戒。
「何で俺なんだよ!?」
「三蔵じゃなきゃ真言が書けませんし、僕だと身体が大きいんで書きにくいでしょう。それに双葉は女の子ですし…」
「私は別にいいけど…」
「良くないです。…それに僕、そういうの柄じゃないですし」
「くそーッ!!」
従って消却法で自分しか的確な人物がいない。
それが分かるやいなや、ヤケクソに悟空が山の中へと駆け出していく。「うぉりゃあああ!!」と派手な破壊音が響き渡った。
「あ、怒ってる怒ってる」
「怒ってるね…」
無事に媒体を壊せたのか大きな音とともに結界が消え去って行った。
「…第一関門突破ってか?」
「──おそらくね」
「チッふざけやがって」
「行こう」
その後すぐに戻ってきた悟空が近くの川で書かれた真言を落とすのを待つ間、小休憩を挟む事に。ぼーっと流れる川を眺める。その背では三蔵と八戒が何かを話している。ここまで走りっぱなしだったからこれぐらい許されるであろう。うん。
そんな時、悟空が何かを持って走ってくる。
「どうしました?」
「今そこの川べりに落ちてたんだけどさあッ」
手に持っているのは煙草の吸い殻。
「ハイライト…ですね」
「ってことは悟浄もここを通ったってことか…」
「でも、通ったって…」
そう。視線の先にあるのは激山道。
流石に全員が言葉を失くす。
これを今から登らなくてはならないらしい。
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「──三蔵…生きてますか?…」
「…ワケのわからん結界で足止めくらって、さんざ獣道登らされて挙句の果てに…何だこの階段は」
ひたすらにゴールが見えない道を進む。
歩くと言うよりも登るが正しいだろう。
流石に息が切れる。
もうこれはカミサマのイタズラと言うしかない。
延々と続く階段を進む。
愚痴りたくなる気持ちも分かる。
「おーい、皆おせーよ!!」
「っせえ!!てめェみてーな体力馬鹿じゃねぇんだ」
「三蔵、めっちゃ元気…」
「双葉も大丈夫ですか?」
「…………何とか」
「キツくなったら言ってくださいね?」
「うん。」
「…それにしてもちょっと変ですよ。この霧」
「何?」
疑問を返した三蔵に「自然発生した物とは思えませんしね」と返す。確かに視界がホワイトアウトするほどに真っ白な霧。
「…気を付けないと、この森に入った時から僕ら『カミサマ』の手の中でしょうから」
「──?あ……」
そんな事を話しているのもつかの間、先に進んでいた悟空が声を出して立ち止まった。
視線をその先に向けると……
「…お」
「──悟浄!!」
目の前にいたのは紛れもなく悟浄。
見た目は悟浄。しかし現れた悟浄に違和感が拭えずにいた。
「…お前ら何でこんな処にいるンだよ!?」
「何でじゃねーよ!!てめェこそ何やってんだよ!『カミサマ』って奴は!?」
素っ頓狂な質問をする悟浄に悟空がそう問うと、あっさりと返事を返した。
「ああ。アイツなら俺が倒してきたトコよ。ま、俺一人でも余裕だったな。さてと、行こーぜ?もうココには用がねぇや」
そう言いながら階段を降りて行くその後ろ姿に悟空が「悟浄」と呼びかける。
バギッ!!
「がは…ッ」
振り返った悟浄を問答無用で横っ面に拳を入る。
その反動で倒れた悟浄の手を
「な……い"ッ!?」
「よくもまぁ、平然と戻って来ましたねぇ。いい度胸です」
「は…八戒…?」
笑ってるけど笑ってない八戒が容赦なく足で踏みつける。
「……まさか『迎えに来てやった』とでも思ってんじゃねぇだろうな さんざ無駄足踏ませやがって」
三蔵は悟浄の正面から銃を構える。
そして……
「覚悟はできてんだろうな。クソ河童」
「え…?ちょっ…おわ!?」
悟浄の制止の声も聞かず発砲。
「大人しくてないと楽に死ねねぇぞ」
「……ねぇ皆、これ違う」
後ろでそれまでの光景を見ていた双葉が告げた直後。
悟浄の手に錫杖が現れて、空を切る。
「っぶねーな!!」
避けた悟空がそう悪態をついた瞬間、焦った様の悟浄が
「く……ッ 何故俺が偽者だと判った…?」
その言葉に双葉以外の全員が固まる。
『ニセモノだったのか…』と同じことを思った。
「やっぱり…」
「双葉、偽物ってよく分かったな」
「…うん。何となく、勘」
「…まぁいい。どのみち俺を倒さない事には先には進めねぇぜ!!」
偽物悟浄が錫月杖を大きく振り上げた。
「悟空!!“本物だと思って”おもいっきりやっちゃって下さい!」
「おぅッ!!」
「え?」
八戒からのゴーサインに待ってましたと言わんばかりに如意棒を手しに悟空が突っ込んでいく。
「てめえのせーでなァッ!三蔵はイライラするし、八戒超怖いし、双葉は見た事ないキレ方するしッ!!身体に経とか書かれたりしたんだぞ!!」
「がッ」
「まったく。 常日頃から自分勝手な行動は慎んで欲しいモンです…ね!」
「があぁぁぁ!?」
「…何も言わずに出て行ったのは許さない。」
「痛ッ」
「…一度やってみてぇと思ってたんだよ。そのバカ面に向けてブッ放すのを、な」
ガウンッ!
悟空を皮切りにそれぞれ思う存分偽物悟浄に攻撃(双葉に限ってはデコピン)し、最後に弾丸を額に打ち込めば真っ赤な数珠となって散らばり幾つかは階段を跳ねて転がっていく。
そんな光景に味気なさを覚えた。
「何かこぉ……手ごたえがなかったですねぇ。本物ならもーちょっと低坑してくれるんでしょうが」
「まぁ偽物だからね…」
「あーあ、無駄に腹減ったぁ」
「フン、予行演習は済んだな。次は本番だ」
三蔵の言葉に頷き、再び霧の中長い階段を駆け上がる。きっとあと少し……。
────────────────
──────────
────
ガウンッ!!!
1番上まで登り終わった先に広がっていたのは神殿で数珠で首を絞め上げられる悟浄の姿。
双葉がクナイを出すよりも先に三蔵が数珠を的確に撃ち抜いて床へと落ちる。
「──ザマぁねーな、クソ河童」
心配などそっちのけに最低な台詞で現れた四人組。
そんな四人に深紅の瞳を見開く。
「お前ら、何で……!?」
この一行に感動の再会のシーンなどある訳もなく、悟空を筆頭に三蔵、八戒は即座に悟浄を取り囲みそのまま容赦なくドガバキゴスと蹴りを喰らわせる。
流石にそんな展開について行けない悟浄は「何すんだよイキナリ!!」と抗議の声をあげる。
「さぁ?やっぱり空き缶を灰皿にした罰じゃないですか?」
「……。…ワリ」
一通り蹴り終わってスッキリした八戒がいつもの笑みを浮かべながら答える。
挨拶がわりの憎まれ口に口の端をあげて返す悟浄。
「えい。」
座り転けている悟浄の目線にしゃがみ込み彼の額を優しくペチンと叩く双葉。
「悟浄の ばか…」
「悪かったな……」
あの日、悟浄の違和感に気づいている双葉の事を分かっていた悟浄。それでも何も言わずに出て行った。
双葉の頭をくしゃくしゃと撫でる。
しかしこれにて終わりとは行かない。
双葉は立ち上がり悟浄を庇うように三人と一緒にカミサマに対立するように立ちはだかる。
「悪いがな。このバカを殺すのは俺達だ。手を引いてもらおうか」
「……おい」
険しい山道や地獄のような階段を登り詰めればはい終わりではない。三蔵の言葉に抗議するも誰からの異論も認めんと言うかのように言い捨てる。
「嫌だよ。僕の新しい玩具なんだから」
と不敵に微笑みとまるで人を物の用に言うカミサマ。
「誰も貴方にあげるなんて言ってないじゃないですか」
「そーだそーだ」
「悟浄を物みたいに言わないで」
「~~~あのなァッ!!俺的にこのニヤケ野郎をブッ殺さなきゃ気が済まねぇんだ ここまで来て『お邪魔しました』って帰れっかよ!!」
そんな文句を告げるも三蔵からいつもの如く鼻で笑われる。
「…フン、苦戦してんじゃねぇのかよ」
「ッ!!」
「だぁからさっ、サッサと片付けちまおーぜっ」
その言葉に一瞬で空気が変わるのを感じた。
「~~~なァーにカッコつけてんだよ。チビッコ猿が!!」
「っせえ!!ヒゲ河童、ヒゲゴキブリ、ヒゲ武者!!!」
「…ま、こんなカンジですねやっぱ」
「いつも通りがやっぱりいい…」
「馬鹿どもが」
戯れる悟空と悟浄に、のほほんと笑う八戒、苛立つ三蔵。そんないつもの光景がやはり何よりも落ち着くのだ。
──しかし五人の後ろから嘲笑うかのように笑い声が響いた。
「何がおかしい」
「…だってさあ、強そうな事言ってるけどお兄さん達なんかダメダメじゃん。お話になんないよ」
どこまでも人を小馬鹿にした笑い方をする『カミサマ』とやらがそう言って、目が三蔵を捕らえる。
「そこの金色のお兄さんは、三蔵法師だよね」
「…だから何だ」
「辞めときな?器じゃないよ」
綺麗に喧嘩を売られれば買わないわけがない。
銃声が響く。
撃ち込んだ弾丸を飄々と腹が立つほど交わされる。
交わすと言うよりもその弾道が見えているかのような動き。
「怒ったの?図星かなァ」
「チッ!」
「てめぇっ…!!」
ひらりと着地した『カミサマ』目掛けて悟空が如意棒を振り下ろす、が避けられて空振った如意棒は大きな音を立ててクレーターを作る。
「うわー 避けてよかったあ」
「っ!!?」
「悟空伏せて!!」
悟空の背後に移動していた『カミサマ』に八戒が気孔をぶつける……が悟空同様、壁に大きな穴を開くだけ。壊れた瓦礫を踏む音ととも無傷な『カミサマ』が現れる。
「あーあ、ちゃんと弁償してよね」
「貴方が避けなきゃいいだけ」
音もなく『カミサマ』の背後に回っていた双葉が至近距離でナックルナイフを振りかざす。
しかしその距離でさえ、避けられてしまう。
ここまで来れば流石の双葉でさえ舌打ちが出る。
「逃げてばっかで汚ぇっつったろが!!」
「4人がかりの君達には言われたくないなぁ」
体勢を立て直す悟浄。
皆『カミサマ』へと次の攻撃を繰り出そうと駆け出す。
「本気出しやがれってんだよ!!」
“いつも”の様に勝てると思っていた。
そしてまた、西へと向かうのだと。
変わらない明日が来ると思っていた……
「しょーがないなぁ、ちょっとだけだよ?」
そう言うとカミサマは四人を嘲笑う。
ドッ。
悟空が、八戒が、悟浄が、三蔵が。
声を出す隙も失く、皆一瞬にして血を吹き出し壁や床へと叩きつけられる。
一瞬、本当に一瞬の事だったのだ──
双葉も壁へと叩きつけられ全身を巡る激痛と共に大量の血を吐き出し血溜まりを作る。視界が赤に染まって行く。
「コレで満足した?」
楽しそうな声で問いかけてる……
遠くで悟空の呻き声が聞こえる。
動こうにも衝撃と激痛で動かない。
「ああ、身体に珠が残っちゃったんだね…可哀相に」
三蔵の悟空を呼ぶ声も悟空の悲痛な叫びも聞こえるのに、動けない。辺りは血の匂いが漂う。
「……五人揃えば勝てるとか思ってた?哀しーよね。強いつもりの人達ってさ。今までずっとそーやって生きてきたんでしょ。カッコ付けてつっぱねて?」
ゆるりとした動作で、今度は三蔵の元へと近づく。
三蔵もその姿に睨みつけるもその体を動かすこともできずにいる。そんな彼の傍にゆっくりとしゃがみ込む。
「──ねぇ、『無一物』って知ってる?」
その言葉に、三蔵が目を見開く。
『カミサマ』は本当の『神』の如く見下ろす。
「僕のセンセーの受け売りなんだけどね、『仏に逢えば仏を殺せ』『祖に逢えば祖を殺せ』。『ただあるがままに生きること』……わかる?捕らわれるなってゆー事なんだ。君らは執着し過ぎた。生きる事とか勝ち続ける事に……だからね。君には“三蔵”を名乗る資格はないんだよ」
『カミサマ』はゆっくりと手を伸ばしその先にある三蔵の肩に掛かっている経文を無慈悲に取り上げる。
「!!」
最後の力を振り絞り男に銃口を向けたが、蹴り倒されてしまう。
カミサマは取りあげた経文を、所有物かのように自分の肩へ掛けた。
「ねぇ?こんなトコで死ぬなんて思ってもみなかったでしょ…誰でもそうなんだ 覚悟決めて生きてるつもりでもいざとなったらやっぱり死を拒む」
(死を拒む…?命を玩具としか見てないやつが……死を知らないやつなんかに何が分かるの…)
「あれ、もう聞こえてない?……サヨナラ『三蔵法師』君」
動かないじゃない。こんな時だからこそ動かすんだ。
「…当、たれッ!!」
「……ンの、クソ野郎…ッ!!」
三蔵の頭を踏みつけようとしたカミサマに向かって力を振り絞りクナイを投げつける。そんなクナイを避けたものの悟浄の鎖が足へと絡みつく。
「驚いたぁ。虫ケラ共の生命力はあなどれないね…でもさ、起き上がるのもやっと……でしょ?」
『カミサマ』はそう言うと、鎖を掴むと何かを呟く。
「!?」
「!!」
鎖を引っ張り悟浄を双葉の方へと投げ飛ばし、そのまま避けることもできず二人して倒れ込む。
「だったら大人しく寝てればいいのにねぇ?」
「がは…ッ!」
「ッ!!げほッ!!」
「『悪いコにはお仕置きだ』」
その瞬間、ジープが守るようにカミサマの顔目掛けて攻撃しクロガネが双葉達の前に立ちはだかり威嚇していた。
「!!?うわ…ッ」
「!?」
「イタッ!!何だコイツ……!?」
「変身しろォジープ!!」
悟浄の叫びと共に車に変身したジープに悟浄と手分けして急いで他の三人を乗せ乗り込む。
「何するつもり!?」
「っせぇ!逃げるんだよ畜生!!!」
悟浄は叫んだとともに力いっぱいアクセルを踏み込む。そのままジープは扉を突っ切って、車体を走らせ、気を失っている皆が振り落とされないように必死にカバーする。しかしその後ろから
「ズルイだろッ」
「!?」
『カミサマ』が追いかけてくる。
クナイを投げようと構えたが……
ドンッとすごい音が横から鳴る。
「「八戒!!」」
「このまま走って!!」
音を出した正体は八戒の気功。
そんな攻撃さえも避け追いかけ続けるカミサマ。
こんな状態で何発も気功を放てない八戒。
悟浄は必死に運転してくれて、悟空も三蔵も気を失っている。しかも三蔵に至っては1番やばい。
加速するジープに向かって数珠が飛んでくる。
クナイで弾くも止まない攻撃とともに弱虫と叫び続けている。
何より追いつかれてしまうとそれこそ誰一人生き残れない。
──なら、やることはただ1つ。
「八戒、クロを。悟浄。後は、お願いね」
「ッ!?おまっ!!双葉!!!」
「だ、ダメです双葉ッ!!!」
「…大丈夫。ジープ全速力で行って!!」
抱いていたクロガネを八戒に渡し、緊迫した状況に落ち着た声で呟く双葉の姿にこれから何をしようとするのか分かった二人は必死に止めようとするも、本人の意志は固く伸ばした手よりも先にジープから飛び降りた。
そしてそのまま双葉を置いて一気に加速していく。
「──ッ!!悟浄!ジープ!!止まってくださいっ!!!双葉を「分かってるよッそんな事!!!でも今は……!!!」!!…」
必死に止めるように置いていかないように叫ぶ八戒だったがハンドルを持つ手に力が入るのが見えそれ以上は何も言えなかった。
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「あーあ。可哀想に置いて行かれたの?女の子を置いて行くなんて本当に弱虫だね」
「残念。置いて行かれたんじゃなくて自分から降りたの。それにあの人達は弱虫なんかじゃない」
「へぇ…面白いね。じゃあ僕と一緒に遊ぼっか」
「えぇ。遊んであげる」
そう言うと双葉は再びクナイを両手に持ち構え直す。
本当は全身が痛む。動く度に悲鳴を上げたくなる。
特にお腹からは血が流れ続け視界も霞む。
それでも彼等を弱虫の言われたままで負けたままでは終わらせたくない。
今出来る全ての力を使って食い止める。
駆け出し空間からクナイや千針をカミサマ目掛けて飛ばすも相変わらず飄々と避けられる。
それを分かっていたので避ける着地ポイントで踵を振り下ろす。
「わっ!女の子がスカート履いてそんな事したらダメなんだよ?」
「ご心配なく。短パン履いてるから見えないわ、よ!!」
体制を整え手に持っていたクナイを投げ飛ばすも指で止められる。
「もう効かないの分かってるんだからやめなよ」
「うる、さい!!」
飄々とした態度を崩さないカミサマに必死に食いつこうとするも全く攻撃が当たらない。
「はぁ。本当は女の子には優しくしなさいってセンセーに言われてるんだけど仕方がないか。だんだん飽きてきたし」
「あッ!」
カミサマ目掛けて走っていた双葉の右足を狙って数珠が撃ち抜かれそのまま倒れ込む。
「ッ…くっ」
それでも立ち上がろうと両手に力を込めて体を起き上がらせクナイを投げようとした瞬間、先程止めたクナイで手を刺されそのままもう片方の手を思いっきり踏みつけられ嫌な音が響く。
「ッ!」
「うーん。そろそろ僕飽きて来ちゃったし、終わりにしよっか」
そう言うと倒れる双葉の前にしゃがみ顎を持ち上げ見上げされる。
「君、僕の玩具にしてあげる」
そう告げたカミサマの顔に向かって口の中に溜まった血をぺっと吐きつける。
「ッ、誰が、なるかッ…く、そやろう…」
「……へぇ…躾直しが必要だね…」
双葉に向かって手が伸びそのまま…
ガッ!!!!
「キュー」
「くぅーん」
元気のない返事を返すジープの小さな頭に双葉は冷たいタオルをそっと乗せた。
数日走り続けた疲れが出たのか、ジープが高熱を出してしまったのだ。
苦しそうな様子のジープを心配し見つめる悟空と双葉。そして先日、共に行動するようになったクロガネはジープと仲が良いため心配した面持ちで寄り添っている。
幸い、近くの街で宿屋も取ることが出来たので数日はこの街で過ごすことになっていた。
「それじゃあ早速。悟浄、お願いします♡」
「……何コレ」
「買い出しメモに決まってるじゃないですか。僕はジープについてなきゃならないんで」
「──おい猿。一緒に…」
「あ、悟空連れてっちゃダメですよ。2人してすぐ余計な物買ってきちゃうんですから」
「……私も行く。クロ、お留守番お願い」
「わん!」
一人で行かされそうな悟浄を見かねて立ちがる。
隣で新聞を見る三蔵を無言で見つめる悟浄。
それに気が付いた三蔵はカードを渡しながら一言。
「マルボロ赤。…ソフトでな」
「…このクソ坊主…」
「はいはい、行くよ」
今にも喧嘩しそうな雰囲気を察知し、悟浄の背中を押して買い出しに行くため街へと向かう。
買い出しメモの通りに買い物を済ませ二人で大量な紙袋を抱えていた。
「そんなに人多くはねぇけど大丈夫か?」
「うん。これぐらいなら、大丈夫」
「さすがに荷物多すぎて服掴めねぇからなぁ」
人混みが苦手な双葉。
そんな時は決まって八戒や悟浄の服を掴むことが多いがこれだけの荷物を抱えてはさすがにそれも出来ずにいた。
「これで大体揃ったか?」
「えっと…あっこれ忘れてた」
「あーさっきの店だな。仕方ねぇ、俺ちょっと行って来るわ」
「…一緒に行く」
「いや、あんまし遅くなるとヤニ切れしてキレられてもめんどくせぇからそれ生臭坊主に渡しといて」
そう言うと悟浄は足早に今来た道を引き返して行った。そんな後ろ姿を見送り宿屋へと一人歩みを進める。空はだんだんと太陽が傾いてきていた。
「ただいま」
「おかえりなさい。あれ、悟浄は?」
「買い忘れたもの買いに行ってくれた。三蔵、はい」
「ん」
悟浄の言いつけ通りマルボロを三蔵に渡した。
買ってきた荷物を紙袋から出していると部屋の扉からをノックする音が聞こえてくる。
八戒が扉を開け来客の対応に向かう。
それから何もかもが突然だった――
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──────────
────
「あ、れ…?どこここ」
目を開くと辺りは真っ暗な世界が広がる。
確か先程、八戒が来客の為扉を開けた先にいたのは小さな子どもと得体の知れないもの何かが現れて、そして――
「そうだ…3人は、どこに行ったの?」
見回しても視界に入るのは変わり映えもせず真っ暗なままだ。
『ここにいてはダメ』
「え?」
『戻ってください。――双葉』
「──なッ!!」
急に聞こえてきた声に振り返ろうとした瞬間、背中を押される感覚。それから先程までの真っ暗が嘘かのように暖かな光に包まれた。
「!」
勢いよく起き上がると泊まっていた宿屋のベッドで寝かされている状態だった。目を覚ました双葉に気が付いたジープとクロガネが飛んで来るのを抱きとめた。
隣のベッドに目をやると寝かされた悟空と八戒の姿。
辺りを見ても三蔵と悟浄の姿は見当たらない…
「どう言う状況なの…?」
ひとりこの状況についていけないでいるものの、それを聞こうにも誰も答える人はおらず。
どうしたものかと考えていると少しして突然、寝かされていた悟空と八戒が起き上がった。
「いっ…!あだだだだ!?」
「戻ったんですね、僕たち…」
「……起きた」
「あっ!双葉!!ってなんか身体が動きづらいんですけど!」
「あはは、これって死後硬直ですかねぇ」
「死後硬直ってどういう事?」
全く状況が掴めずにいる双葉に固まった体を動かしながら2人が知っている粗方の説明を受けることに。
襲ってきた子ども 金閣と二人がひょうたんの中で出会ったという金閣の双子の弟 銀閣。そしてカミサマという善悪もまだちゃんと判断が出来ない子どもに色々吹き込んだ人物の話。
「ってか双葉はひょうたんに吸い込まれなかったのなんでなんだ?」
「分かんない」
「僕の前に双葉が吸い込まれたと思うんですけどね…」
「何か真っ暗な所にいた様な気もするけど覚えてない」
「なんだそりゃ」
目覚める前、確かに真っ暗な所にいた様な気がするが思い出せずにいた。うーんと考えてみるも全く思い出せない。何か『声』が聞こえたような気もする。
思い出せないもの考えても仕方がないと考えることをやめた。
「とりあえず、行きましょうかね。不良園児たちをお迎えに」
――――――――――――――――――――――――
熱が下がって元気を取り戻したジープに乗り込み真っ暗な山道を登る。
だんだん進んでいくと三蔵と悟浄の姿を見つけた。
「見つけた」
「無事ですか、2人共!」
「そりゃこっちのセリフだっての」
2人と対峙し小さな体で得体の知れないものを庇っている金閣。そんな金閣へ八戒がひょうたんの中で出会ったという銀閣から聞いた真実を口にした。
ずっと助けたかったはずの唯一の肉親の弟はもうこの世にはいないことも。
「うそだぁああああああああ!」
絶叫が静かな森に木霊する。
小さな子どもにはあまりにも受け入れ難い残酷な現実。しかしそんな中、突如に何かが金閣のその小さな体を貫かれ口から血を流しながらゆっくりと崩れ落ちていく。
「──金閣!!!」
「んで……ど、して…神様」
崩れ落ちる金閣を受け止めた悟浄の腕の中で空へ伸ばした手は力なく事切れる。
「何でかって?いらなくなったからだよ」
しんとした静かな森に何処からともなく男の声が響く。木々の上から現れたその男は片目のまわりに火傷の跡、長い数珠。
そして経文こそないものの、額のチャクラと頭に金冠を乗せ法衣を身にまとった姿。
「三蔵、法師…?」
「あはは、惜しいね。あたりだけどはずれー。あ、そこの君も三蔵法師?でも、一緒にされたくないんだよな。ゴメンね?僕、君より強いからさ」
そう言ってふわっと木の上から降りた男は、三蔵の攻撃を一瞬の間に交わす。
「残念でした。ね。だって僕、神様だから?」
カミサマ。この男が先程聞いたやつだ。
悪びれもなく飄々と話すこの男が、金閣を利用するだけ利用し幼い双子を殺した張本人。
悟浄が金閣の瞼を閉じさせ、言い放つ。
その声は今までに聞いたことがないほどに低くやり場のない怒りを感じた。
「……何、笑ってやがる。てめぇ、コイツらに何がしたかったんだよ。何も判んねェバカ正直なガキつかまえて、何人殺しなんざさせてんだよ」
「ヒミツ」
そう答えた瞬間、悟浄の錫月杖がカミサマの首めがけて飛んでいく。…かと思えば、パラパラと真っ赤な数珠が無数に落ちていく。
「幻術…」
「ははッ、あはははは、はは!!──」
木々のざわめきと共に笑い声だけが響き渡る。
男はそのまま姿を消した。
なんともしれない気持ちだけが残る中、悟浄は地面を殴り金閣の遺体の傍から離れなかった。
その後、カミサマは見つからず金閣を埋葬して山を降りたのだった。
────────────────────────
「あってめぇッ!!それ俺のとっといたシーフードだろォが!?」
「うっせえな。そーゆーお前はさっき一人でパイナップルのヤツ全部食ったじゃねェかよ!!」
宿に戻ると、いつもの様に悟空と悟浄がピザを取り合い、喧嘩を始め三蔵の軽快なハリセンの音が鳴る。
何もかもいつも通り。いつもの日常が戻ってきた。
そういつものように振舞っている悟浄。
その違和感に気がついていたのは双葉だけではない。八戒もどこか心配そうに悟浄を見つめていた。
「……でもさ、あのムカツク奴…本当に何者だったんだろ」
「…さぁな。何が目的なのかも本物の三蔵なのかも判らん」
あのカミサマが何であれ、刺客でないならば相手にする必要はないといつもの調子で話す三蔵。
「俺達は正義の味方でも何でもねぇんだ。俺が行くと言ったら行くんだよ」
そう言われてしまえば、それ以上追求することなど出来ない。悟浄を見るもやはりそれを、何でもないような顔で見ているだけ。違和感は気が付けばどんどん大きくなる。
「何?おサルちゃん反抗期?」
「あれ、人の事言えるんですか悟浄ー?」
八戒の視線にも、気がつかないふり。
「──悪ィな」
ぼそりと呟かれたらしくもない謝罪の言葉。
悟浄が悟空を引っ張って部屋へと連れて行こうとしていたそんな姿に何とも知れないこの違和感という名の不安を拭いたくて悟浄の服をクイッと掴んだ。
「今日は悟浄達と同じ部屋に行く。」
「何、どったの?オニータマと離れたくないの?」
「うーん…うん。そんな感じ、かな…」
そう答えると一瞬驚いた表情をした後、いつもの笑みが返ってくれる。綺麗な真紅の瞳の奥にある真意は不思議なくらい何も見ることが出来ない。
──しかし不安も他所に……
「悟浄…」
翌朝目が覚めると、悟浄の姿は何処にもなかった。
何となくそんな気はしていた。
それでも………
(何も言わずに出ていくなんて…)
「…ばか。」
─────────────────────
揺れるジープはいつもより広くて、いつも騒がしいはずなのに凄く静かで……それを酷く寂しいと感じた。
寂しさを紛らわすように膝を抱えてジープに座る。
隣に座る悟空がいつものように「腹減った」と言い終わる前に「黙れ」と返されていた。
「何だよッ、まだ言い終わってねぇぞ!?」
「聞く耳もたんな」
「まあまあ悟空。もう少しで次の町に着くはずですから」
──昨夜、悟浄がカミサマを追いかけて出ていった。
あんな悟浄を見てはそうするだろうなとは予想はしていた。しかし何も言われなかった事も何も聞けなかった事も後悔しても、もうすでに遅い。
そんな状況に無情にも「昼には経つ」と言う三蔵に何を言ってもそれは変わることはなかった。
悟浄を置いて“四人”は次の街に着いた。
たこ焼き屋を見つけて駆け出そうとする悟空をいつもの倍の勢いでハリセンを振り下ろす。しかもそれは後頭部ではなく顔面へと直撃していた。
「〜〜おいッ、なんかいつもよりイテーぞ!?」
「気のせいだろ」
「うそだっ!!ぜってー倍くらい痛かったね!」
騒ぐ悟空をめんどくさく感じたのか飯屋に連れていくと行って三蔵と悟空は別行動。残された双葉と八戒は買い出しをすることに。
いつもより多い荷物を抱え直していると八戒が誰もいないはずの後ろを笑顔で振りかえる。
「じゃあちょっと双葉の荷物を持って下さい。ごじょ……」
「…八戒?」
「……なんちゃって」
──────────────────────
食事の時も「おい、ライター…」と呟いた三蔵だったが、三蔵以外にライターを持っている人物は悟浄だけ。悟空、八戒、双葉からまじまじと見られるも、舌打ちと同時にタバコをへし折ってしまう三蔵。
宿についてからも違和感は拭われる事はない。
三蔵と八戒が地図を見ながらルート確認をしている。
それを見ながら窓の近くに腰掛けてクロガネを撫でる。いつもと変わらない光景なはずなのに、悟空と悟浄の騒がしい声が聞こえてこない。
それだけでこんなに寂しいなんて思いもしなかった。
順調に行けば目的地までそう遠くはないと話す八戒。「余計な手間さえ取らなけりゃ問題ない」と三蔵が返していたその言葉にモノクルの奥の瞳が、すぅと細くなるのを見てしまった。
「問題ない…ですかね」
「何だ」
「いいえ別に?…それより、ちょっと吸いすぎじゃありません?真っ白ですよ、部屋の中」
「窓開けりゃいいだろうが」
「…」
「コーヒー」
いつもなら許される物言いも今回ばかりは八戒の怒りに触れたらしい。コーヒーポットをテーブルに叩きつけ「どうぞ」とブラックな笑顔を見せる。
「……おい、言いてぇ事があるなら……」
「いででででッ何しやがんだてめえ!!コラ!!」
「ピーッピーッ!!!」
三蔵が言いかけた瞬間被せるように悟空とジープの喧嘩する声に反応して近づく。
放せと言わんばかりにぷんぷん怒った顔のジープ。
「何やってるんですか、悟空」
「ジープの嫌がることしたらダメだよ」
「遊んでやったのに噛み付いたんだよ!!」
「寝てる処邪魔されたらジープだって怒りますよ」
「おいでジープ」
「キュー!キュー!」
「よしよし」
双葉の肩の上で何か文句を言っているジープの頭を落ち着かせるように撫でる。
足元では擦り寄ってくるクロガネを抱き上げる。
動物だからこそ、この何とも知れない空気を敏感に感じているのかも知れない。
「──何かヘンだよ」
悟空の凄く真っ直ぐな言葉が、静寂を打つ。
それまで無言で睨み合っていた三蔵と八戒だったが振り返り悟空を見る。
「……ジープは広くなったけど、何か窮屈だ」
「何語喋ってんだてめェは」
今度は悟空と三蔵が睨み合った。
こういうとき真っ先にぶつけるのは悟空。
でも何を言っても聞く耳を持とうとしない三蔵。
「だからさぁッ…!!」
「三蔵、言い方。悟空もムキになったらダメ。」
今度はこの二人が言い合いを初めそうな気配を察知し、速やかに宥める双葉。それに加勢するように八戒も二人を止める。
「悟空、落ち着いて。三蔵も悟空に八つ当たりするのはよして下さいよ」
「八つ当たりだと?」
「気付いてないんですか?煙草の本数に比例して いつもの三倍は眉間に皺が入ってるじゃないですか」
「煙、すごい…」
「八戒達だって変だと思うだろ!?」
「まぁ、変というか……現実問題これから先、天竺に近付くにつれ危険度も増してくる筈ですから、ここに来て戦闘要員を欠くというのは僕としてもどうかと思いますけど?」
「八つ当たってんのはてめぇの方だろうが、八戒。そんなに気になるならお前もさっさと抜けりゃいいだろう。それとも何か?判ってて行かせた自分に今さら腹立ててやがるのか」
いつものように冷静に、かつ的確に現実的な話を唱えたが今の三蔵に何を言ったって相手の地雷しか踏むことしか知らないらしい。
その言葉に珍しく八戒の頬に青筋が立ってしまった。
「……人が散々気をつかってるのに、よくそーゆー事が言えますね貴方は……」
「は…八戒?」
「八戒、ダメ。」
「頼んだ憶えはねぇな」
「三蔵。」
もはやこう来ては売り言葉に買い言葉である。
地雷を踏み抜かれた八戒まで加わってしまえば止める人がいなくなると思い、服を引っ張ってみたもののそんなことで止めることなど出来ず──
「じゃあ言わせてもらいますけどね。中立な立場である僕にどうしろと仰るんですか!?一人や二人でこの任務が遂行できない事ぐらい貴方にだって判るでしょう!!」
「だから頼んでねぇっつってんだろうが!!大体、勝手にいなくなった奴なんぞ知った事か!!」
「少しは素直に物を言ったらどうです!?『カミサマ』の事だって本当は気になってるんでしょうが!?」
「俺の事に口出すんじゃねぇよ!中学生日記の学級委員かてめえは!!」
怒涛な言い争いが始まってしまった……。
正論パンチをかます八戒も、図星を強い言葉で隠そうとする三蔵も止まらない。
何とか止めようとするも二人の耳に静止など入るわけもなく。
「ねぇ、やめなよ二人とも」
「キュー…」
「くぅーん…」
抱えているクロガネも肩に乗っているジープも見守ることしか出来ずその小さな体を双葉にくっつけている状態。
「あーもーやめろよ二人とも!!だから言ってんじゃん!悟浄を捜しに戻ればこんなんじゃなくなるだろーってば!!」
「…ねぇ」
「その名前を口に出すんじゃねぇ!このバカ猿!!!」
「ねぇってば……」
「~~~人のハナシ聞けよ!!!」
悟空が近くにあった枕を投げ付けそれがボブッと音を立てた。その枕の行先は…
「…あ…ワリ。」
見事、三蔵の顔にクリーンヒット。
流石の八戒も笑いをこらえるのに必死だ。
まずいと思い謝った悟空だったがそれ以上に凄いものはすぐ側にあった…
「ねぇ…いつまで、言い合いするつもり?」
「あ、」
「ッ!」
「ふ、双葉?」
ものすごい冷気に当てられ振り返ると今まで見た事もない絶対零度な無表情を向け、頭を傾けている双葉の姿。再三忠告をしていた双葉そっちのけで怒涛な言い合いをやっていたが、その姿があまりにも恐ろしくまずいと思ったのか流石に黙る三人。
「素直に迎えに行く理由を付けられないなら私が付けてあげる。皆がそんなに言い合う理由も元を返せば悟浄のせいでしょ?じゃあ殴りに行く。それでいいんじゃない。」
「双葉がキレた…」
元よりあまり話す方ではないが、この時ばかりはぺらぺらと話す勢いに押され黙るしかなかった。
いつも怒らない人が怒ると一番怖いとはこのことだ。
そんな中絶対零度な双葉に当てられていたが、突然ガシャンと窓ガラスが割れる音と共に…………
「見つけたぞ三蔵一行!!我々は玉面こッがは!!?」
言い終わるよりも前に素早い双葉のクナイの餌食に。
妖怪達を振り返る姿すら恐ろしく感じるほどである。
「まだ話してる最中。邪魔。」
「な、舐めやがって!ッ!!?」
ガウン!!ガウン!!
双葉の態度に襲いかかろうとした妖怪に向け銃声が鳴り響く。ビクリとする妖怪達に三人も向き直る──
「双葉の言う通りもとはと言えば、あのバカが勝手な行動しやがったのが原因じゃねえか」
「同感ですね」
「…なんかムッチャクチャ腹立ってきたんだけど、俺」
「そうだね」
まぁ何はともあれ皆の心はひとつになったわけで
「「「…あんのクソ河童!!!!」」」
イライラを晴らすが如く、邪魔な妖怪達を次々と暴れ倒して行く。
「ぎゃあああッ!!?」
「誰だよ!今なら一人足りないから楽勝だとか言った奴!!」
「知らねぇガフッ!!」
妖怪の言葉など気にせずに、三蔵が三人に向けて言い放つ。
「おいお前ら!さっさと片してこの間の町に戻るぞ!必ず見つけ出して ブッ殺す!!」
先程までの姿が嘘のように三蔵の声が響いた。
────────────────────────
「…ったく なんでわざわざ戻らなきゃなんねぇんだ」
ジープのスピードを飛ばしながら来た道を戻ることに。元の世界だったらきっとスピード違反で捕まるだろうなとか呑気なことを考えれるぐらいには調子が戻ってきている証拠だろう。
足りないのはそこに悟浄がいないこと。
「はははは、見つけたら思う存分弾丸を撃ち込んで下さいね」
「それだけで満足出来るのやら。」
「でもさ、もう死んでたらどーする?」
「あの世から引きずり戻してでもこの手で殺るな」
とてつもなく縁起でもない物騒な話が飛び交う。
物騒な仏僧とは悟浄が言っていたがまぁこればかりは仕方がない。だって悟浄が悪い。
聞かなかったことも聞けなかったことも全て悟浄が悪い事にすると決めた。
「死んでないですよ、きっと。多分今頃、一人で黄昏て空なんか見上げて『みんな心配してんだろォな』なんて自嘲の笑みなんか浮かべちゃってるんですよ」
穏やかに話すその姿は八戒も調子が戻ってきたようだ
「うっわー寒ーー!!!」
「やってそう」
「……殺すくらいじゃおさまらねェな」
「やっぱり…」
「…そうですねっ」
急に勢いよく車体が揺れる。
八戒がアクセルを踏み込んだのだ。
先程よりもまだスピードをあげるジープ。
「うわッ!!?」
「きゃっ!」
「トばしますから気をつけて下さいね!」
「トばしてから言うな!」
今までのように向かうはただ1つ。
『西』とは別の今回は逆方向『悟浄』へ向かう
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あの山まで戻ってきた。のはいいものの、明らかに数日前来た時よりも木々が沢山生い茂りもう山と言うよりもジャングルになっていた。
あの時はジープを走ることが出来るくらいまでの道はあったはずだがそれもどこへやら。
見るからに怪しいこの山へカミサマとやらの元へ向かっているのであれば悟浄は確実にこの中だろう。
足踏みしていると奥に入れば分かると悟空が山へと入っていったが何故か戻ってくる仕様に。
もう一度としてみてもまた元の場所に戻ってくる
「あっれぇーーー!!?」
「もういい」
そんな様子に八戒は何はなかったようで「…成程」と呟く。
「何か分かった?」
「えぇ。これはつまり結界という事ですね」
「結界〜〜~?何で!?」
「さぁ?…でも少なくとも以前はこんなモノ張られてませんでしたね」
そう話ならが見上げる山は以前よりも怪しさが増している。
「町で聞いた限り、ここ数日で悟浄らしき男は見かけてないらしい。この山に入っていった事は確かだろうな──となると、奴はこの結界の中で結界を張った主はおそらく」
「『神様』ですか」
「そうなるよね。」
三蔵の言葉にそう言って、悟空が『なぁ』と声を上げる。
「それってアイツヤバくない?永遠に出てこなかったりして」
「はぁー。どーでもいいんじゃねぇの。何か面倒臭くなってきた」
「三蔵~~~」
「…ここまで来たら行くしかないよ」
ため息とともにどうでも良さげに呟く三蔵。
こうまでされたら三蔵が言う事も多いに分かるが、ここまで来たなら仕方がない。八戒も三蔵を説得するように言った。
「そうですよ。ここまでUターンして無駄足踏まされたんですからね、僕達。手ブラで帰らされるのもシャクでしょう。『毒を喰らわば皿まで』ってヤツなんじゃないですか?」
「…チッ」
「皿はうまくないぞ」
「違うよ、悟空…」
「そーゆー意味じゃありません」
こんな時にも悟空は悟空である。
突っ込みを入れたのもつかの間、三蔵が銃を取り出す。嫌な予感がする…。
「…念で造った結界ならば、念を込めた物理的攻撃でも破れる筈だ。」
三蔵が呟いたとともに、ガウン!!ガウン!!ガウン!!と銃声が森に鳴り響く。
その数秒後に、山彦のように同じ数だけ銃弾が返ってきてしまった。
「うわ!!?やっぱり!!」
「~~~何やってんですか 三蔵ーーー!!!」
「うっせえな!やってみただけだ!!」
とりあえず飛んでくる弾丸をクナイで弾く。
弾丸を何とか弾き終わり地面に崩れ落ちる。
「し…死ぬかと思った…」
「な、なんとか、弾けた…」
「…とにかく、この結界は念ではなく『術系』だって事だな」
「…三蔵、誤魔化してます?」
「しつけぇぞ八戒」
そう言って先程の行動がなかったかのような仕草で三蔵は自然な流れで煙草に火を付けるも、流石にツッコまずには居られなかった
「破る方法はあるんですか?」
「…あるにはある…だが、これだけはできれば…やりたくはねぇがな」
「…三蔵?」
珍しく苦々しそうに言う三蔵に釣られるように皆訝しい顔をする。
「そっ…そんなに危険な術なのか?」
「悟空。お前ならばできるかもしれん」
「え…?」
三蔵は真剣に深刻な顔で、そう告げた。
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それから数十分後──
「フン、こんなモンか」
「三蔵ッ!!~~~なんだよコレ!!?」
「あははは、カッコイイですよ悟空」
下着姿に全身に何か文字を書かれ不服そうな悟空と真逆にどこか満足そうな三蔵。それを見て楽しそうな八戒。
「何で俺なんだよ!?」
「三蔵じゃなきゃ真言が書けませんし、僕だと身体が大きいんで書きにくいでしょう。それに双葉は女の子ですし…」
「私は別にいいけど…」
「良くないです。…それに僕、そういうの柄じゃないですし」
「くそーッ!!」
従って消却法で自分しか的確な人物がいない。
それが分かるやいなや、ヤケクソに悟空が山の中へと駆け出していく。「うぉりゃあああ!!」と派手な破壊音が響き渡った。
「あ、怒ってる怒ってる」
「怒ってるね…」
無事に媒体を壊せたのか大きな音とともに結界が消え去って行った。
「…第一関門突破ってか?」
「──おそらくね」
「チッふざけやがって」
「行こう」
その後すぐに戻ってきた悟空が近くの川で書かれた真言を落とすのを待つ間、小休憩を挟む事に。ぼーっと流れる川を眺める。その背では三蔵と八戒が何かを話している。ここまで走りっぱなしだったからこれぐらい許されるであろう。うん。
そんな時、悟空が何かを持って走ってくる。
「どうしました?」
「今そこの川べりに落ちてたんだけどさあッ」
手に持っているのは煙草の吸い殻。
「ハイライト…ですね」
「ってことは悟浄もここを通ったってことか…」
「でも、通ったって…」
そう。視線の先にあるのは激山道。
流石に全員が言葉を失くす。
これを今から登らなくてはならないらしい。
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「──三蔵…生きてますか?…」
「…ワケのわからん結界で足止めくらって、さんざ獣道登らされて挙句の果てに…何だこの階段は」
ひたすらにゴールが見えない道を進む。
歩くと言うよりも登るが正しいだろう。
流石に息が切れる。
もうこれはカミサマのイタズラと言うしかない。
延々と続く階段を進む。
愚痴りたくなる気持ちも分かる。
「おーい、皆おせーよ!!」
「っせえ!!てめェみてーな体力馬鹿じゃねぇんだ」
「三蔵、めっちゃ元気…」
「双葉も大丈夫ですか?」
「…………何とか」
「キツくなったら言ってくださいね?」
「うん。」
「…それにしてもちょっと変ですよ。この霧」
「何?」
疑問を返した三蔵に「自然発生した物とは思えませんしね」と返す。確かに視界がホワイトアウトするほどに真っ白な霧。
「…気を付けないと、この森に入った時から僕ら『カミサマ』の手の中でしょうから」
「──?あ……」
そんな事を話しているのもつかの間、先に進んでいた悟空が声を出して立ち止まった。
視線をその先に向けると……
「…お」
「──悟浄!!」
目の前にいたのは紛れもなく悟浄。
見た目は悟浄。しかし現れた悟浄に違和感が拭えずにいた。
「…お前ら何でこんな処にいるンだよ!?」
「何でじゃねーよ!!てめェこそ何やってんだよ!『カミサマ』って奴は!?」
素っ頓狂な質問をする悟浄に悟空がそう問うと、あっさりと返事を返した。
「ああ。アイツなら俺が倒してきたトコよ。ま、俺一人でも余裕だったな。さてと、行こーぜ?もうココには用がねぇや」
そう言いながら階段を降りて行くその後ろ姿に悟空が「悟浄」と呼びかける。
バギッ!!
「がは…ッ」
振り返った悟浄を問答無用で横っ面に拳を入る。
その反動で倒れた悟浄の手を
「な……い"ッ!?」
「よくもまぁ、平然と戻って来ましたねぇ。いい度胸です」
「は…八戒…?」
笑ってるけど笑ってない八戒が容赦なく足で踏みつける。
「……まさか『迎えに来てやった』とでも思ってんじゃねぇだろうな さんざ無駄足踏ませやがって」
三蔵は悟浄の正面から銃を構える。
そして……
「覚悟はできてんだろうな。クソ河童」
「え…?ちょっ…おわ!?」
悟浄の制止の声も聞かず発砲。
「大人しくてないと楽に死ねねぇぞ」
「……ねぇ皆、これ違う」
後ろでそれまでの光景を見ていた双葉が告げた直後。
悟浄の手に錫杖が現れて、空を切る。
「っぶねーな!!」
避けた悟空がそう悪態をついた瞬間、焦った様の悟浄が
「く……ッ 何故俺が偽者だと判った…?」
その言葉に双葉以外の全員が固まる。
『ニセモノだったのか…』と同じことを思った。
「やっぱり…」
「双葉、偽物ってよく分かったな」
「…うん。何となく、勘」
「…まぁいい。どのみち俺を倒さない事には先には進めねぇぜ!!」
偽物悟浄が錫月杖を大きく振り上げた。
「悟空!!“本物だと思って”おもいっきりやっちゃって下さい!」
「おぅッ!!」
「え?」
八戒からのゴーサインに待ってましたと言わんばかりに如意棒を手しに悟空が突っ込んでいく。
「てめえのせーでなァッ!三蔵はイライラするし、八戒超怖いし、双葉は見た事ないキレ方するしッ!!身体に経とか書かれたりしたんだぞ!!」
「がッ」
「まったく。 常日頃から自分勝手な行動は慎んで欲しいモンです…ね!」
「があぁぁぁ!?」
「…何も言わずに出て行ったのは許さない。」
「痛ッ」
「…一度やってみてぇと思ってたんだよ。そのバカ面に向けてブッ放すのを、な」
ガウンッ!
悟空を皮切りにそれぞれ思う存分偽物悟浄に攻撃(双葉に限ってはデコピン)し、最後に弾丸を額に打ち込めば真っ赤な数珠となって散らばり幾つかは階段を跳ねて転がっていく。
そんな光景に味気なさを覚えた。
「何かこぉ……手ごたえがなかったですねぇ。本物ならもーちょっと低坑してくれるんでしょうが」
「まぁ偽物だからね…」
「あーあ、無駄に腹減ったぁ」
「フン、予行演習は済んだな。次は本番だ」
三蔵の言葉に頷き、再び霧の中長い階段を駆け上がる。きっとあと少し……。
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ガウンッ!!!
1番上まで登り終わった先に広がっていたのは神殿で数珠で首を絞め上げられる悟浄の姿。
双葉がクナイを出すよりも先に三蔵が数珠を的確に撃ち抜いて床へと落ちる。
「──ザマぁねーな、クソ河童」
心配などそっちのけに最低な台詞で現れた四人組。
そんな四人に深紅の瞳を見開く。
「お前ら、何で……!?」
この一行に感動の再会のシーンなどある訳もなく、悟空を筆頭に三蔵、八戒は即座に悟浄を取り囲みそのまま容赦なくドガバキゴスと蹴りを喰らわせる。
流石にそんな展開について行けない悟浄は「何すんだよイキナリ!!」と抗議の声をあげる。
「さぁ?やっぱり空き缶を灰皿にした罰じゃないですか?」
「……。…ワリ」
一通り蹴り終わってスッキリした八戒がいつもの笑みを浮かべながら答える。
挨拶がわりの憎まれ口に口の端をあげて返す悟浄。
「えい。」
座り転けている悟浄の目線にしゃがみ込み彼の額を優しくペチンと叩く双葉。
「悟浄の ばか…」
「悪かったな……」
あの日、悟浄の違和感に気づいている双葉の事を分かっていた悟浄。それでも何も言わずに出て行った。
双葉の頭をくしゃくしゃと撫でる。
しかしこれにて終わりとは行かない。
双葉は立ち上がり悟浄を庇うように三人と一緒にカミサマに対立するように立ちはだかる。
「悪いがな。このバカを殺すのは俺達だ。手を引いてもらおうか」
「……おい」
険しい山道や地獄のような階段を登り詰めればはい終わりではない。三蔵の言葉に抗議するも誰からの異論も認めんと言うかのように言い捨てる。
「嫌だよ。僕の新しい玩具なんだから」
と不敵に微笑みとまるで人を物の用に言うカミサマ。
「誰も貴方にあげるなんて言ってないじゃないですか」
「そーだそーだ」
「悟浄を物みたいに言わないで」
「~~~あのなァッ!!俺的にこのニヤケ野郎をブッ殺さなきゃ気が済まねぇんだ ここまで来て『お邪魔しました』って帰れっかよ!!」
そんな文句を告げるも三蔵からいつもの如く鼻で笑われる。
「…フン、苦戦してんじゃねぇのかよ」
「ッ!!」
「だぁからさっ、サッサと片付けちまおーぜっ」
その言葉に一瞬で空気が変わるのを感じた。
「~~~なァーにカッコつけてんだよ。チビッコ猿が!!」
「っせえ!!ヒゲ河童、ヒゲゴキブリ、ヒゲ武者!!!」
「…ま、こんなカンジですねやっぱ」
「いつも通りがやっぱりいい…」
「馬鹿どもが」
戯れる悟空と悟浄に、のほほんと笑う八戒、苛立つ三蔵。そんないつもの光景がやはり何よりも落ち着くのだ。
──しかし五人の後ろから嘲笑うかのように笑い声が響いた。
「何がおかしい」
「…だってさあ、強そうな事言ってるけどお兄さん達なんかダメダメじゃん。お話になんないよ」
どこまでも人を小馬鹿にした笑い方をする『カミサマ』とやらがそう言って、目が三蔵を捕らえる。
「そこの金色のお兄さんは、三蔵法師だよね」
「…だから何だ」
「辞めときな?器じゃないよ」
綺麗に喧嘩を売られれば買わないわけがない。
銃声が響く。
撃ち込んだ弾丸を飄々と腹が立つほど交わされる。
交わすと言うよりもその弾道が見えているかのような動き。
「怒ったの?図星かなァ」
「チッ!」
「てめぇっ…!!」
ひらりと着地した『カミサマ』目掛けて悟空が如意棒を振り下ろす、が避けられて空振った如意棒は大きな音を立ててクレーターを作る。
「うわー 避けてよかったあ」
「っ!!?」
「悟空伏せて!!」
悟空の背後に移動していた『カミサマ』に八戒が気孔をぶつける……が悟空同様、壁に大きな穴を開くだけ。壊れた瓦礫を踏む音ととも無傷な『カミサマ』が現れる。
「あーあ、ちゃんと弁償してよね」
「貴方が避けなきゃいいだけ」
音もなく『カミサマ』の背後に回っていた双葉が至近距離でナックルナイフを振りかざす。
しかしその距離でさえ、避けられてしまう。
ここまで来れば流石の双葉でさえ舌打ちが出る。
「逃げてばっかで汚ぇっつったろが!!」
「4人がかりの君達には言われたくないなぁ」
体勢を立て直す悟浄。
皆『カミサマ』へと次の攻撃を繰り出そうと駆け出す。
「本気出しやがれってんだよ!!」
“いつも”の様に勝てると思っていた。
そしてまた、西へと向かうのだと。
変わらない明日が来ると思っていた……
「しょーがないなぁ、ちょっとだけだよ?」
そう言うとカミサマは四人を嘲笑う。
ドッ。
悟空が、八戒が、悟浄が、三蔵が。
声を出す隙も失く、皆一瞬にして血を吹き出し壁や床へと叩きつけられる。
一瞬、本当に一瞬の事だったのだ──
双葉も壁へと叩きつけられ全身を巡る激痛と共に大量の血を吐き出し血溜まりを作る。視界が赤に染まって行く。
「コレで満足した?」
楽しそうな声で問いかけてる……
遠くで悟空の呻き声が聞こえる。
動こうにも衝撃と激痛で動かない。
「ああ、身体に珠が残っちゃったんだね…可哀相に」
三蔵の悟空を呼ぶ声も悟空の悲痛な叫びも聞こえるのに、動けない。辺りは血の匂いが漂う。
「……五人揃えば勝てるとか思ってた?哀しーよね。強いつもりの人達ってさ。今までずっとそーやって生きてきたんでしょ。カッコ付けてつっぱねて?」
ゆるりとした動作で、今度は三蔵の元へと近づく。
三蔵もその姿に睨みつけるもその体を動かすこともできずにいる。そんな彼の傍にゆっくりとしゃがみ込む。
「──ねぇ、『無一物』って知ってる?」
その言葉に、三蔵が目を見開く。
『カミサマ』は本当の『神』の如く見下ろす。
「僕のセンセーの受け売りなんだけどね、『仏に逢えば仏を殺せ』『祖に逢えば祖を殺せ』。『ただあるがままに生きること』……わかる?捕らわれるなってゆー事なんだ。君らは執着し過ぎた。生きる事とか勝ち続ける事に……だからね。君には“三蔵”を名乗る資格はないんだよ」
『カミサマ』はゆっくりと手を伸ばしその先にある三蔵の肩に掛かっている経文を無慈悲に取り上げる。
「!!」
最後の力を振り絞り男に銃口を向けたが、蹴り倒されてしまう。
カミサマは取りあげた経文を、所有物かのように自分の肩へ掛けた。
「ねぇ?こんなトコで死ぬなんて思ってもみなかったでしょ…誰でもそうなんだ 覚悟決めて生きてるつもりでもいざとなったらやっぱり死を拒む」
(死を拒む…?命を玩具としか見てないやつが……死を知らないやつなんかに何が分かるの…)
「あれ、もう聞こえてない?……サヨナラ『三蔵法師』君」
動かないじゃない。こんな時だからこそ動かすんだ。
「…当、たれッ!!」
「……ンの、クソ野郎…ッ!!」
三蔵の頭を踏みつけようとしたカミサマに向かって力を振り絞りクナイを投げつける。そんなクナイを避けたものの悟浄の鎖が足へと絡みつく。
「驚いたぁ。虫ケラ共の生命力はあなどれないね…でもさ、起き上がるのもやっと……でしょ?」
『カミサマ』はそう言うと、鎖を掴むと何かを呟く。
「!?」
「!!」
鎖を引っ張り悟浄を双葉の方へと投げ飛ばし、そのまま避けることもできず二人して倒れ込む。
「だったら大人しく寝てればいいのにねぇ?」
「がは…ッ!」
「ッ!!げほッ!!」
「『悪いコにはお仕置きだ』」
その瞬間、ジープが守るようにカミサマの顔目掛けて攻撃しクロガネが双葉達の前に立ちはだかり威嚇していた。
「!!?うわ…ッ」
「!?」
「イタッ!!何だコイツ……!?」
「変身しろォジープ!!」
悟浄の叫びと共に車に変身したジープに悟浄と手分けして急いで他の三人を乗せ乗り込む。
「何するつもり!?」
「っせぇ!逃げるんだよ畜生!!!」
悟浄は叫んだとともに力いっぱいアクセルを踏み込む。そのままジープは扉を突っ切って、車体を走らせ、気を失っている皆が振り落とされないように必死にカバーする。しかしその後ろから
「ズルイだろッ」
「!?」
『カミサマ』が追いかけてくる。
クナイを投げようと構えたが……
ドンッとすごい音が横から鳴る。
「「八戒!!」」
「このまま走って!!」
音を出した正体は八戒の気功。
そんな攻撃さえも避け追いかけ続けるカミサマ。
こんな状態で何発も気功を放てない八戒。
悟浄は必死に運転してくれて、悟空も三蔵も気を失っている。しかも三蔵に至っては1番やばい。
加速するジープに向かって数珠が飛んでくる。
クナイで弾くも止まない攻撃とともに弱虫と叫び続けている。
何より追いつかれてしまうとそれこそ誰一人生き残れない。
──なら、やることはただ1つ。
「八戒、クロを。悟浄。後は、お願いね」
「ッ!?おまっ!!双葉!!!」
「だ、ダメです双葉ッ!!!」
「…大丈夫。ジープ全速力で行って!!」
抱いていたクロガネを八戒に渡し、緊迫した状況に落ち着た声で呟く双葉の姿にこれから何をしようとするのか分かった二人は必死に止めようとするも、本人の意志は固く伸ばした手よりも先にジープから飛び降りた。
そしてそのまま双葉を置いて一気に加速していく。
「──ッ!!悟浄!ジープ!!止まってくださいっ!!!双葉を「分かってるよッそんな事!!!でも今は……!!!」!!…」
必死に止めるように置いていかないように叫ぶ八戒だったがハンドルを持つ手に力が入るのが見えそれ以上は何も言えなかった。
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「あーあ。可哀想に置いて行かれたの?女の子を置いて行くなんて本当に弱虫だね」
「残念。置いて行かれたんじゃなくて自分から降りたの。それにあの人達は弱虫なんかじゃない」
「へぇ…面白いね。じゃあ僕と一緒に遊ぼっか」
「えぇ。遊んであげる」
そう言うと双葉は再びクナイを両手に持ち構え直す。
本当は全身が痛む。動く度に悲鳴を上げたくなる。
特にお腹からは血が流れ続け視界も霞む。
それでも彼等を弱虫の言われたままで負けたままでは終わらせたくない。
今出来る全ての力を使って食い止める。
駆け出し空間からクナイや千針をカミサマ目掛けて飛ばすも相変わらず飄々と避けられる。
それを分かっていたので避ける着地ポイントで踵を振り下ろす。
「わっ!女の子がスカート履いてそんな事したらダメなんだよ?」
「ご心配なく。短パン履いてるから見えないわ、よ!!」
体制を整え手に持っていたクナイを投げ飛ばすも指で止められる。
「もう効かないの分かってるんだからやめなよ」
「うる、さい!!」
飄々とした態度を崩さないカミサマに必死に食いつこうとするも全く攻撃が当たらない。
「はぁ。本当は女の子には優しくしなさいってセンセーに言われてるんだけど仕方がないか。だんだん飽きてきたし」
「あッ!」
カミサマ目掛けて走っていた双葉の右足を狙って数珠が撃ち抜かれそのまま倒れ込む。
「ッ…くっ」
それでも立ち上がろうと両手に力を込めて体を起き上がらせクナイを投げようとした瞬間、先程止めたクナイで手を刺されそのままもう片方の手を思いっきり踏みつけられ嫌な音が響く。
「ッ!」
「うーん。そろそろ僕飽きて来ちゃったし、終わりにしよっか」
そう言うと倒れる双葉の前にしゃがみ顎を持ち上げ見上げされる。
「君、僕の玩具にしてあげる」
そう告げたカミサマの顔に向かって口の中に溜まった血をぺっと吐きつける。
「ッ、誰が、なるかッ…く、そやろう…」
「……へぇ…躾直しが必要だね…」
双葉に向かって手が伸びそのまま…
ガッ!!!!
