-無印篇-
沙悟浄にはここ数日、気になる事がある──
先日、合流した1人の少女。林崎 双葉
本人曰く異世界から来たというこの少女。
どうやら表情を動かす事が苦手らしく常日頃無表情なのだ。八戒や悟空は表情は無表情だが雰囲気が凄く分かりやすいとよく言っているが、自分や三蔵は未だ分からずじまいである。
女の扱いには慣れていると豪語している悟浄だが、珍しくこの少女に限っては距離を測りかねている…っとまぁそれが“目に入って気になる事”という訳ではない。
それとは別…
比較的人混みの多い街に来ると決まって八戒の服の裾を掴んで歩く双葉の姿。
八戒にそれとなく聞いたが返事は「あぁ。遠慮気味にちょこんって掴んでるんですよ。なんだか小さい子どもみたいで可愛いですよね。」っとこれまた求めた回答とは違ったものが帰ってきたものだ。
「では悟浄。僕はこれから三蔵とルート確認があるので双葉とおつかい、お願いしますね」
「へーへー分かりましたよ」
「…いってきます」
この日は双葉が来てから初めて2人きりでの買い出しに行かされた。
とか言え距離感をまだ測りかねている事や双葉自体あまり自分から会話をする方ではないせいで話すことはせず渡されたメモを見ながらもくもくと買い物をするだけ。昼頃なこともあり商店街の通りはだんだんと人が増えだしていた。双葉はと言うと先を行く悟浄をちょこちょこと追いかけて歩いている。
そんな中、目的の店に入ろうとした時後ろにクイッと引っ張られる感覚があった。
「…あ?……」
後ろを振り返るとその感覚の正体は自分の服を遠慮気味に掴んでいる双葉の姿。
双葉も急に止まった悟浄を見上げた後、自分のしている行動に気が付いたのか慌てて手を離した。
「っ!ご、ごめん、なさい……人混み、苦手で。いつも八戒の服を握ってたから…すみません癖で…」
別に怒った訳でもないのに叱られた子どものように怯えながら話す双葉に、なんだかこちらがいたたまれない気持ちに駆られる。
八戒はあぁ言っていたがきっとこの掴んでいる理由を知っていたのだ。
何せ、最初から何かと気にかけ1番自分たちの中で懐かれているのは八戒なのだから。
表情は変わらないにしろなんだかこのしゅんとした様子の双葉に、距離を測りかねていた事がアホらしく感じて来た。
「はぁ…ほい。」
「え?」
急に手を差し出してきた悟浄に驚きの様子を見せる双葉。それもそうだろう。
今まで2人だけで話と言う話をまともにしていなかった。ましてや双葉からしたらどこか素っ気なくも感じていたに違いない。
「苦手なんだろ?人混み。」
「そう、だけど…」
「まぁかわい子ちゃんと手が繋がけるなんてオニーチャン的には願ってもない事だし」
「!!!…あ、ありがとう…ございます」
「!」
そう言うと伸ばされた手を遠慮気味にそっと掴んだ。無表情なその姿はどこか嬉しそうで、言い表すならば周りに花が咲いているようなそんな風に見えた。
あぁ。そういう事か。
確かにこれは、すげぇ分かりやすいわ。
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「それでどうでしたか?」
「……やっぱりお前わざとかよ。」
清々しい笑顔を向けながらコーヒーを置く八戒。
いつもなら双葉を連れて買い出しに出かける八戒がルート確認などと理由を付けておつかいを頼んで来たあたり何となくは察しが着いていた。
「三蔵はあんな感じですから、まぁその内慣れて来るとは思ってますけどあなたまでそんな感じは珍しいなっと思いまして」
「そんな感じってどんな感じよ」
「距離感を測りかねているって感じですかね」
「…お前は本当に、よく見てるな」
そこまでお見通しとは、伊達に長い事一緒にいないってか。っと悪態を着きたくもなったがこれに関して図星なので反論はあえてやめた。
「なんか、あれだ。」
「あれ?」
「何考えてんのか分かんねぇってのもあっけどよ…言いたいこと言おうとしねぇことが気に食わなかったんだろうな…多分。」
自分でも何がそんなに測りかねていたのかは理解できなかったが今日の事を考えたら多分そういう事なのだろと考えついた。
「可愛かったでしょ?後ろをとことこ追いかけて来る姿」
「…あれに似てるよな」
「あぁ。分かります。」
「「猫の後追い」」
