裏切りの堕天使
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
おなまーえは助けてくれた少年のアドバイス通りタクシーを使って自宅近くまで来た。
「………なんでいるんですか?」
「遅かったですね」
マンション前に止まっている白のRX-7に寄りかかるのは我らの上司、安室透だった。彼女は目を伏せた。
「携帯、連絡つかなかったので」
慌ててスマホを確認するとバーボンからと降谷さんからの電話がそれぞれきていた。
「すみません、気づかなくて」
「ご無事だったならいいんです。……あなたは少し自身の魅力に気づいた方がいい。」
「あはは、お世辞でもありがとうございます。梓さんはもう送り届けたんですか?」
「梓さん、ですか?あぁ、あの人は…」
「いえ、いいです。聞かなくてもわかります。」
おなまーえはとぼとぼと自宅のマンションのエントランスに向かって歩いた。うまく笑えていただろうか。
パシッ
「待ってください、おなまーえさん」
腕を掴まれる。振り払えば解ける強さなのに彼女はその場で前を向いたまま固まった。
「勘違いしてるみたいなんですが……」
グッと拳を握った。
「あの梓さんはベルモットの変装です」
「え……?」
「ベルモットもどうやら勘違いしてたみたいで、僕と梓さんが恋人だと」
今日一日の梓の行動を思い返す。よく考えてみると彼女らしくない行動が度々見られた気がする。つまり梓と安室は付き合っているわけではない……?
「だからちゃんと伝えたので」
「なにを?」
「カルーアが恋人だって」
「えっと、あ、はい……」
設定のこととはいえ、安室に恋人だと紹介されるのは心がムズムズした。ましてや組織のメンバーに伝えるのは初めてだ。
「あ、もしかしておなまーえさん、そもそも恋人とか好きな人いました?」
「い、いえ、いませんが……」
(だって貴方のことが好きだし……)
心の声は言葉にはならなかった。掴まれていた手が緩む。安室の方に体を向けて表情を盗み見るがポーカーフェイスで読み取れなかった。
「そういう降谷さんはどうなんです?恋人」
「いませんよ。強いて言うなら、この国かな。」
つまり梓と安室が付き合っていると思ったのはおなまーえの勘違いで、1人で勝手に落ち込んでいただけということ……。
「はぁ……」
おなまーえは脱力する。全て杞憂だったのだ。
「てっきり梓さんとお付き合いしてるのかと思っちゃいましたよ。私邪魔かなーって。」
ホッとした表情でゆっくりと顔を上げる。次の瞬間、時が止まった。
「んむっ!?」
全てがスローモーションに見える。手を引っ張られ、唇に柔らかい感触が当たったのだ。驚きで見開かれた目には端正な顔がドアップで映る。
(……え?)
触れるだけの優しいキス。ゆっくりと離れる唇におなまーえはポカンと間抜けな顔をしてしまった。
「今度から"消毒"はこっちで。」
「え…」
顔が赤い。数秒経ってやっとなにが起きたか理解した。マンションのエントランスの逆光でうまく隠れればと思い、慌てて彼女は下を向いた。
(キスって、こんなに嬉しいものなの…?)
高鳴る心臓に彼女は混乱が抑えきれなかった。安室が伺うように顔を覗き込む。
「嫌、でしたか?」
「いえ、嫌じゃない、です」
「じゃあもう一回……」
「……はい」
顎が持ち上げられ、再び唇が重なった。
【おまけ】
「今日は一段とおしゃれしてますね」
「波土の『裏切りの堕天使』のMVに出てくる女の子の服です」
「あぁ……とても似合ってますよ。可愛いですね」
「!!……ありがとうございます!」
(やった……!)