2月2日
夢小説設定
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「結界?」
「ああ。神殿でも作る気だな、こりゃ。」
「よく見せて」
学校には至る所に刻印が施されていた。
おなまーえは水晶越しにじっとそれを見つめる。
「……ダメ。見たことない字。ランサーは?」
「オレはルーンぐらいしかわからねぇ。だがこれ、なかなか非人道的なもんだぞ。」
「うん。他者の魔力を吸い取る…いや、それ以上――もはや搾取に近いものを感じる。」
この結界は、内部にいる人間から強制的に魔力を奪い取る吸精の呪だ。
本格的に発動すれば、内部にいる人間の肉体すら融解させる力を持つだろう。
「昨晩に仕掛けたのかな」
「おそらくな。オレらが横通ったときは何も感じなかったし。」
「…念のため今晩そこで見張っておいてくれない?きっと様子見しにくると思うの。」
「かまわねぇが、嬢ちゃんはどうすんだ?」
「私は言峰さんに報告してくる。一応一般人を巻き込んでるわけだし、何かしら動いてくれるかもしれないから。」
「なんかあったらすぐに呼べよ」
「なんでそんなに警戒してるの。大丈夫だよ。」
ランサーはなにかと言峰を煙たがる。
たしかに読めない謎の人物だが、おなまーえの話を親身に聞いてくれ、なおかつ力を貸してくれた唯一の存在だ。
彼が手配をしてくれなければ聖杯戦争にも参加できず、あの白いベットで一生を終えていただろう。
また異常があったら連絡するようにランサーに伝え、おなまーえはホテルを出る。
夕方の日差しが眩しい。
学校帰りの小学生の群れに逆らいながら、おなまーえは言峰教会に足を運んだ。
****
「この――か」
「それは――あず――」
誰かいるのだろうか。コツコツと廊下に足を音を響かせると、会話はピタリと収まった。
見た目よりずっと軽いドアを開ける。
彼は相変わらず薄暗い教会の中にいた。
誰かと話しているような気配がしたが、言峰の姿しか見えない。
「こんばんは、おなまーえ」
「こんばんは、言峰さん。誰か先客がいらっしゃいましたか?」
「いや、私1人だ」
「…そうですか」
腑に落ちなかったが、今日は報告があって来ている。
おなまーえはそれ以上詮索することなく、本題を切り出した。
「穂群原学園という学校はご存知ですか」
「ああ、よく知っている」
「そこで奇妙な呪刻を見つけました」
「ほぉ」
「一般人に被害が出る前に、聖堂教会の方から術者あるいはマスターに注意していただきたいと思い、こちらに参りました」
「なるほど、聖堂教会は一般人に対しての攻撃は見過ごせないと、そう思ったのだな」
「はい」
言峰は勿体ぶったように礼拝堂の中を歩き回る。
「今はまだ起動していませんが、あれが発動すれば何百人という人が死んでしまいます」
「なるほど、それはさぞ被害が大きくなるだろう」
ピタリと彼は足を止めた。
「――だがそれになんの不都合が生じる?」
「え?」
予想外言葉におなまーえは詰まった。
聞き間違いだろうか。
今言峰は一般人が死ぬことに対して、なんの不都合もないというように言った気がした。
「で、ですから、魔術の儀式に一般の方を巻き込むなど…」
「何も問題はないだろう。サーヴァントというものは魔力や霊力を蓄えとする。大勢の人から生命力という魔力を集めるのは、至極当然の手法だと思うが。」
「そんな…!」
あれが許されるというのか。
なんの罪もない一般人が巻き込まれても教会は見て見ぬ振りをするというのか。
おなまーえの中に許せないという気持ちがふつふつと湧き上がる。
それを見透かしたように、言峰は誘い文句を並べた。
「もちろんそんな手法をとるマスターとサーヴァントは、それ相応の人格を形成している。そんな奴が聖杯を手に入れたとして、ロクなことにはならないだろうな。」
「そんな奴でも、勝ち残れば聖杯を手に入れてしまうと?」
「それが聖杯戦争のルールだ」
「っ…」
「そんなマスターに勝って欲しくなければ、おなまーえ、君がこの聖杯戦争で勝てばいい」
ねっとりと、肌につくような言葉で言峰は誘ってくる。
彼の口車に乗るのは癪だが、実際にそんなマスターに勝たせたくはないし、おなまーえも聖杯にかける望みがある。
ランサーから連絡が来た。
赤い服の女が屋上の仕掛けを見に来たと。
愚かなマスターが、自分の仕掛けた呪刻を様子見しに来たのだろう。
「……じゃあ私がそのマスターを倒せばいいんですね」
おなまーえはランサーに命令を下す。
「そこのマスターを殺しなさい、ランサー!」
横を向いた言峰がニヤリと笑ったのは、おなまーえからは見えなかった。
おなまーえはすぐさま水晶玉を取り出して手をかざす。
「…遠見の魔術か。それも随分と時代遅れな。」
「黙っててください」
おなまーえの中の言峰の株はだだ下がりだ。
彼は興味深げに水晶玉を覗き込む。
特に断る理由も思いつかないので、2人はそのまま戦況を見ていた。