第1夜 黒の教団
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第1夜 黒の教団
「………朝か」
懐かしい夢を見ていた気がする。
朝が弱いおなまーえはぐっと背伸びをして、まだ覚醒しきっていない頭で顔を洗う。
本日は非番。
神田も確かまだ任務に出ているため鍛錬(という名の一方的な攻撃、おなまーえは避けるのみ)もできない。
「ご飯食べてから科学班のところでも行こうかな…」
黒のタンクトップにホットパンツという、非常にラフなスタイルで部屋を出る。
トレードマークの赤いリボンをしっかりつけて、もちろんイノセンスの弓も忘れてはいない。
食堂までの道すがら、色々な人に話しかけられる。
「おはよう、おなまーえ」
「今日も寝坊かー?」
「違う!今日は非番!」
「そうかそうか」
教団の人たちは暖かい。
この何気無い挨拶や世間話が、おなまーえは大好きだった。
食堂に着いても彼女は人気者だった。
誰にでも分け隔てなく接するおなまーえは、伊達にリナリーと2人で教団のアイドルを語ってはいないと、探索部隊も科学部隊も感嘆の声を上げる。
「おはよ、ジェリー」
「あら、おなまーえちゃ〜ん!今日は非番なの〜?」
「うん。いつものでお願い。」
「またソレ?あんた味覚ないの?私なんて、作ってるだけで目がしぱしぱしてくるのに。」
「ジェリーの腕がいいから平気だよ」
「そういう話じゃないんだけどねぇ〜」
いつもの"好物"を注文して、おなまーえはカウンターで出来上がりを待つ。
いつもの日常。
いつもの朝食。
いつかこんな穏やかな時間を過ごせなくなる時が来ることはわかっているが、食事というありふれた日常は団員の心の癒しの時だった。
「こいつアウトォォオオ!!!」
「!?」
だがそんな穏やかな時は、門番のけたたましい警報によって終止符を打たれた。
「敵襲…!?」
おなまーえは顔色を変えて走り出す。
アウトということはアクマか何かが乗り込もうとしてきたということだ。
騒つく食堂を背に、おなまーえは全速力で走る。
彼女の足音にもう一つ足音が加わった。
「オイ」
「あれ?先輩、任務じゃなかった?」
あっという間におなまーえに追いついた青年、神田の横顔を一瞥する。
もちろん2人とも足は止めない。
「今朝帰った」
「早いですね…」
さすが仕事のできる男は違う、とは言わなかった。
今はふざけている場合ではない。
2人の優先すべきは教団に襲撃してきたアクマの排除だ。
「オマエは下がってろ」
「じゃあ先輩にバフかけときますね」
教団に乗り込もうとしたということは相当の強者か、頭ナシかのどちらかだ。
後者ならば杞憂に終わるが、前者だった場合おなまーえは足手まといになる可能性がある。
「
弓を引っ張ると、何もないところから白い矢が現れる。
「
それを神田に向かって放つと、矢は彼の体に吸い込まれていった。
神田は表情一つ変えず、走るスピードを速める。
もうすぐ門だ。
「こいつバグだ!額のペンタクルに呪われてやがる!アウトだアウト!!」
門番――本名アレスティーナ=ドロエ=ギョナサン=P=ルーボーソン=ギア=アマデウス5号――の野太い声が響く。
「ペンタクルはアクマの印!!こいつ、奴等の…千年伯爵の仲間だー!!」
神田は門の上を飛び越え、外に飛び出した。
おなまーえも門の上によじ登り、外の様子を伺う。
(男の子…?)
白髪ゆえに年齢が分かりにくいが、やや小柄で細身の少年が門の前で狼狽えていた。
よく見ると左目の上に赤い星の文様が彫られている。
「一匹で来るとは、良い度胸じゃねぇか」
スラッと抜刀し、神田はアクマと思しき少年を睨みつけた。
滲み出る殺気。
どうやら神田は今絶賛不機嫌なようだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!何か誤解して…!
「六幻――抜刀」
必死に弁明しようとする少年に神田は容赦なく斬りかかる。
――ガキィン
少年は避けるばかりで神田を攻撃しようとはしていない。
彼の挙動におなまーえは疑問を抱いた。
(あの子、本当にアクマなのかな…)
神田が六幻を大きく振り、斬りつけた。
咄嗟に避けられない少年は、ほぼ反射的に左手で体を庇う。
「なっ…」
「痛っ!」
左腕が一回り大きくなり、服が破ける。
剥き出しになるはずの素肌は、獣のような白い腕だった。
神田の一撃を防いだせいで縦に大きく傷が入ってしまっている。
「…お前…その腕はなんだ?」
「対アクマ武器ですよ。僕はエクソシストです」
やっと伝えられたと言わんばかりの顔で少年は一息つく。
少年の発言の真偽はその腕を見れば明らかだった。
「「門番!!」」
おなまーえと神田が同時に叫ぶ。
「いあっ!で、でもよ、中身がわかんねェんじゃしょうがねェじゃん!アクマだったらどーすんの!?」
「僕は人間です!確かにチョット呪われてますけど立派な人間ですよ!!」
少年は門番にすがりつき、泣きながら訴える。
これは様子を見た方が良いのかもしれないが、生憎と神田はやる気満々だ。
「……まあいい。中身を見ればわかることだ。この六幻で切り裂いてやる。」
「先輩、まずはその子の話聞こってば!」
「下がってろって言ったろ」
門の外に出てきたおなまーえをギロッと睨みつける。
神田とはそれなりに親しくしている彼女でも、口で彼を言い負かすことはできない。
神田にバフをかけてイノセンスの力が封じられているため、実力行使で止めることもできない。
「待って、ホント待って!僕はほんとに敵じゃないですって!」
六幻を構える神田は、神経を研ぎ澄まして一気に斬りかかる。
少年は背後に壁があるため動けない。
「っ!クロス師匠から!紹介状が送られてるはずですっ!!」
「っ、せんぱ!!」
クロスという名前を聞き、おなまーえは思わず声を上げた。
フワッと風が舞い、離れて見ていた彼女の前髪を持ち上げる。
勢いよく刀を振り下ろした神田は、間一髪というところで腕の動きを止めていた。
刀を額に当てられた少年はへなへなと崩れる。
「元帥から?紹介状…?」
「そう、紹介状……コムイって人宛てに……」
「……嫌な予感がしますね、先輩」
おなまーえは辺りを飛んでいるゴーレムを見上げる。