14. 光の喜び、星の影り
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なんてことを約束してしまったんだ、と今更後悔したところでもう遅い。
当日、おなまーえはオズ一行を引き入れ、彼らに制服を貸与した。
(あぁ、もうこんなのバレたらルーファス様になんて言われるか…)
こうなって仕舞えば、バレないように静かに過ごしてもらい、さっさと出て行ってもらわなければ。
静かに。
「おいオズ、お前はパンドラから大人しくしてろと厳重注意を受けている身なんだぞ!」
静かに…
「うっさいなぁ、しょーがないだろ。どうせバルマ公は知ってること全部教えてくれないんだから、こうでもして情報集めないと…!」
静かに……
静かに……
「2人共もっと静かにしてくれません!?」
「おい、そこで何してる?」
バルマ公に仕える使用人の声が廊下の奥から聞こえた。
(ああ、言わんこっちゃない!)
ギルをすぐさま扉の奥に押し込める。
いつものお仕事スマイルを貼り付けて、おなまーえは男に挨拶をした。
「ご機嫌よう。お騒がせしてすみません〜」
「おなまーえさん!こやつらは…」
「ルーファス様のお部屋がわからなくなってしまったみたいで案内をしていたんです」
「すみません」
顔を赤らめて恥じらうオズ。
彼はメイドの服を着ていて中性的な女の子に見えた。
その彼の隣には口を開かないツインテールのアリス。
うん、どこからどう見ても美少女が2人いる。
心なしか男の頬が赤いのも少し納得できる。
「なんだ、新入りですか」
「ええ。お勤めご苦労様です。私が案内しますから安心してください。」
「あぁ、おなまーえさんがいるなら安心ですね。もうお客様もお見えになっているので急いでくださいね。」
「はい」
始終顔を赤らめていた男はそそくさと立ち去った。
彼の姿が見えなくなった瞬間一同は笑顔を崩す。
「えぇぇ…」
「ありえねぇ……どう見ても男だろ。ツッコメよ。てか頬染めてんじゃねーよ!」
「大丈夫だオズ、とてもよく似合っている」
「うっさいギルバート」
「ごめんなさいね、オズ様に合うサイズの男性制服がちょうどなくて」
押し込んだ扉からギルが顔を出す。
彼は、先ほどの男と同じ使用人の服を着ていてとてもよく似合っていた。
予備のメガネなどもかけて知的な使用人に見えなくもない。
「アリス様もちゃんと静かにしてて偉いですね」
何か言いたげに頬を膨らませている彼女の頭を撫でれば満足げな表情を浮かべていた。
「てかなんでブレイクだけ変装してないのさ。1人だけずるいぞ。」
「いいんですヨ。私はここから別行動なので。」
「え、困ります!お願いですから私から離れないでくださいよ!」
「じゃあおなまーえさんは私と来てくだサイ」
「えぇ!?」
「いいですね、オズくん」
「うん、大丈夫だよ。これはオレ達の責任だから、これ以上はおなまーえさんのこと巻き込むわけにはいかないし。」
ブレイクはおなまーえの腕を掴み行かせないように抑えた。
「頼みましたよ、オズ君。私はダンスはあまり得意ではないのでネ。」
「…わかった。じゃあブレイク分までオレが上手に踊っておくよ。」
オズとアリスとギルは紅茶の台車を引いて客間の方に向かった。
残されたおなまーえは追いかけようとするがブレイクに腕を掴まれていてできない。
「ブレイク様!放してください!」
「さて、道案内を頼みます」
「どこにですか!」
「そうですネェ……例えば、あのアホ毛公爵の資料室とか」
「私が殺されます!!」
彼はおなまーえの案内なしにずかずかと屋敷を歩いて回る。
(こんなところ、誰かに見られでもしたら…!)
お客様が来ているとはいえ、普通の使用人はいつもと変わらず仕事をしている。
現に先ほども、使用人に遭遇したばかりだというのに。
「誰だ!?」
「!?」
腕を引きずられて、廊下の角を曲がろうとした瞬間、向かいから人が歩いてきた。
ブレイクが先頭を切って歩いていたので、幸いおなまーえの姿は見られていないが、これはピンチだ。
「ど、どうすれば…」
「……」
ブレイクは無言で引き返すとすぐ近くにあった扉の中に飛び込む。
「ちょ、その部屋は流石に怒られ…っ!」
おなまーえも続いて部屋に入った。
握られた腕が緩められる。
少し埃臭い、薄暗い室内は書庫である。
「誰だ!ここに誰かいるのはわかっているぞ!」
バターンと扉が開けられた。
ブレイクはすかさず開いた扉の裏側に隠れる。
「おなまーえさん…?」
「えっと、どうかされましたか?」
ブレイクがジェスチャーで自分の存在は言うなと伝えてきたので、動揺を悟られないように努めて冷静におなまーえは返す。
「いえ、その不審な人物を見かけまして」
「どんな方ですか?」
「白髪で、紫色の服を着ていました」
「白髪で、紫色……とても素敵な…あ、いえ、個性的な容姿ですね。でもわたし、残念ながら先ほどからずっとここにいたのでお見かけはしていないです。」
「そうでしたか……お勤め中、失礼しました!」
彼は敬礼をして部屋を去っていった。