2. 貴方が私にキスをするたびに私は子供のように震えました
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一度バルマ邸に戻り、パンドラの制服に着替えてからパンドラ本部に向かう。
すれ違う人は皆おなまーえに挨拶をしていく。
実は、彼女はちょっとしたことで有名なのだが、その話は今は省略させていただく。
所定の手続きを終え、とうとう首狩りに繋がる重要参考人にご対面だ。
確保する際に怪我を負わせてしまった非礼も詫びなければと考えながら、蟲を拘置している部屋に入った――はずだった。
「っ!?」
「な、なんだこれは!?」
「ひっ!」
手続きをしてくれた役人も狼狽え、挙句1人は腰を抜かしている始末。
いや、そんなことはどうでもいい。
一同の目の前に広がっていた光景はまさに血の海。
パンドラ構成員が皆一様に首を切られていた。
ざっと6人分はあるだろうか。
「早く上に連絡を!」
「はっ」
「残った者は現場の検証を…それから……あっ…待って」
辺りを見渡したおなまーえの顔面から血の気が失せた。
いるはずの人物が、ここにいない。
「ど、どうしましたか」
「ここ…蟲の部屋で間違いないんですよね」
「そう、ですね」
彼女の言わんとしていることがわかったのだろう、彼も顔から血の気が失せた。
転がっている死体は全てパンドラ構成員のもの。
「逃げられた…っ」
悔しげに彼女は拳を握った。
****
夕方。
レインズワース邸にて。
「ただいま帰りました、お嬢様〜」
テーブルを挟んでレイムとシャロンが話をしていたのだが、誰もいないはずのそのテーブルの下から男がひょっこりと出てきた。
「って、あららァ?レイムさんじゃありませんかー」
思わぬところから人が出て来たことに、堅物のレイムは動揺が隠せない。
「あ、相変わらずだな、君は。ザークシーズ=ブレイク。」
なんとか取り繕いいつものように話をする。
「普通にドアから入ってこれないのかね」
「あっハッハッ、おたくの妹君に見つかりたくはないのデ」
彼はレイムのケーキを奪う。
「で?わざわざ君がやってくるということは、パンドラで何あかりました?」
「…先日捉えた違法契約者について」
「あぁ、"蟲"でしょう?さっきおなまーえさんが行くって言ってましたね。私とお嬢様も明日様子を見に行く予定デスヨー」
もぐもぐと口を動かしながら話す。
心なしかいつもより声が弾んでいるのは、蟲の事情聴取に期待をしているからだ。
「なんたって首狩りに繋がる重要な手がかりですからねぇ〜。私も実は結構楽しみに…」
「逃げられた」
一瞬レイムが何を言っているのか分からず、ブレイクは皿をペロッと舐めて一考した。
「………は?」
「逃げられたんだよ…っ」
聞き返せばもう一度、今度は心底悔しそうな顔でレイムは答えた。
手に持っている紅茶がカタカタと鳴っている。
「本日午後二時、監視の者6名を殺害の後に逃走。全力で捜査に当たっているが、未だ蟲の消息を掴めてはいない。」
「おなまーえさんは何をしてたんです?」
「第一発見者だ。今はレベイユの方の捜査にまわってる。」
「………君たちって本当」
ブレイクは優しげな微笑みを浮かべた。
「「役立たず」」
そしてエミリーとの綺麗なハモリを見せた。
レイムは思わず立ち上がる。
「なんだとっ!!」
「だって相手は手負いでしょう〜?だから我々だって回復するのを待ってたのにー」
「うぐ、そりゃあこちらに油断があったことは認めますが…!」
「……レイムさん、そこの人はただの空気だと思ってくださって結構です」
シャロンが優雅に、それでいてピシャリとはっきり言った。
レイムもそこでようやくブレイクのペースに流されていたことを悟る。
「それよりも先ほどの続きをどうぞ?」
「はっ、失礼しました」
座り直し、こほんと一つ咳払いをした。
ブレイクはテーブルに転がり「くうきー、くうきー」と歌っている。
「現在パンドラ内を重点的に捜索しているんですが…」
「もうレベイユの街にいるんじゃないですかー?」
「おなまーえもそう考えてレベイユに向かったと先ほど連絡があった」
「……ほぅ」
ブレイクは少し考え込み、上体を起こしてシャロンに顔を近づける。
「くふっ、くふふふフフフ♡」
気味の悪い笑い声をあげながら、彼女の髪を一房とって口づけをした。
「ねぇねぇお嬢様ァ〜。なんだか面白くなりそうな予感がしますヨォ♡」
end