ジャーファルと使用人のお話
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今日は絶好の航海日和。丁度おなまーえは休暇が与えられていたため、彼女もまたターゲットとなる船に乗り込んでいた。おなまーえ含め数名で忍び込み、船が沖合に出たら1人ずつ丁寧に暗殺していく。仲間がボートでこちらに迎えに来てくれるのでそれに乗り移って帰還する……手筈であった。
「…………へぇ」
先に行った仲間が帰ってこないため、不審に思って様子を見に行ったところ、おなまーえは首筋に刃物を当てられた。
「さすがですね。もう私のこと見抜いちゃったんですか、ジャーファル様。」
「正直信じたくないですよ……」
ぐいっと体をひねりジャーファルを蹴飛ばす。勢いよく甲板に飛び出して仲間の船を探すが見当たらない。
「お仲間ならこないぞ。ピスティが全部捕まえたからな。」
「………シンドバット……」
後方を見るとゆったりと歩いてくる彼がいた。ジャーファルは困惑した目でこちらを見ているが、シンドバットは険しい目つきだ。
「なるほど、嵌めたんですね。これはしてやられてしまいました。」
半分賭けだったのだろう。誰かが執務室で盗み見た資料をもとにテロを計画していると。
「一部の人間はお前がテログループに脅されていると信じていたようだが。……これはお前が首謀者だな。」
「ふふ、お見事。大正解です。全て私の仕業です。」
手を合わせ、にっこり笑って首を傾げた。おなまーえを取り囲んでいた近衛兵が槍を構える。彼女は顔の筋肉一つ動かさなかった。
「何故こんなことをする?」
「あなたが邪魔だったからです。」
「何のために?」
「ジュダル様の望みのために。」
その名を聞いた瞬間シンドバットの眉間にシワが寄った。
「なっ、ジュダル……!?」
ジャーファルも目を見開く。
「あのお方の導きは本当に素晴らしいものです。ジュダル様の前では、憐憫も侮蔑も嫉妬も憤怒も、全て等しく愛になります。」
恍惚とした表情でおなまーえは語り出した。彼女から黒いルフが溢れる。たいして魔力のないジャーファルにもそれは目視できた。
「それは導きでも何でもない。お前は騙されているぞ、おなまーえ。」
「いいえ。この導きは悩める人の元に私を向かわせるのです。それはつまり、人を救えというお記しですよね。だからこうして私は日々同志を集め、この国の転覆を目論んでいたのですよ。」
彼女は悪びれる様子もなくにっこりと笑った。完全にジュダルに洗脳されてしまっている。もう手の施しようがない。シンドバットは自身の金属器を構えた。だが彼より一歩前に立つ者がいた。
「ジャーファル……」
「…………私が、やります」
「お前は下がってていいぞ」
「いいえ。私にやらせてください……」
眷属器を構えた彼の目は憔悴していた。
「お前な、自分じゃわかんないと思うが、酷い顔してるぞ」
「いいんです。私は、大切な人が洗脳されていることにも気づかなかった愚か者です。自分の後始末は自分で行います。」
「ジャーファル……」
ブワッとおなまーえの体から黒いルフが溢れる。彼女の近くにいた近衛兵が槍を杖代わりにしてしゃがみこんだ。彼は苦しそうに呻いている。早くしないと、このまま近衛兵までもがおなまーえの催眠にかかってしまう。
「……
意を決したようにジャーファルは腕に巻きつけていた眷属器を投げつけた。おなまーえは普段からは考えられないスピードでそれを避けていく。おなまーえの瞳孔は完全に開き、まるで暗殺者のような目をしていた。
「なっ」
おなまーえは低い姿勢のまま、一気にジャーファルに詰め寄り、隠していたナイフを下から上に斬りつけた。
「っ!」
ジャーファルも油断していた。避けるのが一歩遅れて、彼の脚に縦線状の傷ができる。内側の足首から太腿にかけてタラタラと血が流れた。
「ジャーファル!」
シンドバットが叫ぶとおなまーえの標的がそちらに移った。彼女はぐるんと首を回すと、光のない目がシンドバットを捉えた。さっと体勢を整えると、彼に向かって走り出す。
「やめろ!!」
この時、ジャーファルは手加減をする余裕がなかった。加えて足を痛めたため咄嗟に動くことができない。故に、シンドバットに対する忠誠心が彼にこの行動をさせたのだ。