ジャーファルと使用人のお話
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「お前の国ってシンドリアだろ。届けてやるよ。」
「本当ですか!!」
「そら、もう見えてきた」
「え、どこですか!?」
「オイ、暴れんなっての!」
頭を彼の背中の方に回されているため進行方向が見えない。首をぐいっと後ろに回したがジュダルに怒られてしまった。
(あれ……?そう言えば私……なんで船に乗ったんだっけ……?)
おなまーえは思い出せず首を傾げた。
「あ、そうだ!あのですね、ジュダルさん!!この国結界が張って貼って、港からしか入れないようになってるんです!!」
「ほぉ、やけに詳しいじゃねぇか。お前城かなんかに仕えてんのか?」
「はい!僭越ながら王様のお部屋の清掃を担当させていただいております!」
「ククク、こりゃあ良い拾い物だ。」
「え?なんて??」
「なんでもねぇよ。真下見ろよ。」
「え……うわぁ!!」
彼に言われた通りに真下を見る。シンドリアは海と崖に囲まれた要塞都市。その中心部に構えられているのがシンドバット王のおわす城だ。こうして上からみるとちっぽけに見える。
「すごい………って、私港から入るように言いましたよね!?なんで上空に来てるんですか!!」
「キャンキャンうるせぇな。発情期かよ。」
「なっ!」
「こっちの方が派手だろ。黙って見てろ。」
ジュダルが赤い石のついた杖を一振りした。すると結界にぴしりとヒビが入る。そこからドロドロと結界が溶け出し、人一人入るほどの穴が出来上がった。
「じゃ、オレは届けたからな。あばよ。」
「え?」
ジュダルは体を傾けて、結界の穴めがけておなまーえを落とした。彼女は咄嗟に手を伸ばすが、その手は文字通り空を掴む。
「い――」
味わったことのない浮遊感。雲ってこんなに近かったっけなどと現実逃避する。
「いやぁぁあぁああぁああ――!!」
面白そうにこちらを見下ろすジュダルがどんどん小さくなっていった。背中から落ちているため、地上まであとどのくらいかすらもわからない。
(あ、ダメだ、走馬灯が見える……)
お父さん、お母さん、ジャーファル様、シンドバット王。今までありがとうございました。おなまーえ、ここで死にます。
彼女は手を合わせて目を瞑り、主の導きを待った。
「おなまーえ――!」
あぁ、天使の声が聞こえる。お迎えが来たんだ。痛みを感じる前でよかった。
「バカ!おなまーえ!手伸ばして!!」
「――え」
おなまーえは目をうっすら開けた。全速力でこちらに向かってくる、白い大きな鳥に乗った少女がこちらに手を伸ばしている。
「ピスティっ……!」
「捕まって!!」
言われるがまま腕を伸ばした。パシッと小さな手に掴まれる。ふわっと持ち上げられ、次の瞬間柔らかい羽毛に包まれた。
「このまま降りるから羽に掴まってて!毟らないでね!」
「うん!」
小さな背中がとても頼もしく見えた。アルテミュラの中でも1.2を争うほどの鳥獣使い。たなびく金髪が美しかった。
(……これをどんな色で穢したらもっと美しくなるのかな………)
「おなまーえ!!」
「――ッ」
彼女の後ろ姿に気を取られて手が緩んでいることに気づかなかった。突風が吹き、おなまーえの体がぐらっと揺れる。気づけば再び浮遊感に包まれていた。
「ぁ――……」
「アラ・ラドーン!!」
呪文が聞こえたと同時に、ふわっと重力が小さくなった。おなまーえはふわふわと降りていく。
「おなまーえ!」
「ヤムライハ!」
ヤムライハが風魔法を使ってくれたおかげで地面への直撃は免れた。彼女はクイっとしたを指差す。つられて真下を見れば、ジャーファルが両手を広げてこちらを迎え入れようとしていた。
「ジャーファル様……!」
「おなまーえ、心配しましたよ。」
抱きつけば彼は幼子をあやすように頭を撫でてくれた。
おなまーえはすぐに治療室に連れていかれた。外傷がないか検査するためだという。検査の合間にピスティとヤムライハが交代で様子を見に来てくれた。
おなまーえが城にいないことが判明したのが昨日の18時頃。それから町中を探して女性が船に飛び乗ったという目撃証言を得たのが22時頃。船と連絡が取れず、夜の海はまともに捜索ができないため、早朝5:30に日の出とともに捜索部隊が出動。南海生物らしきものに襲われた船が発見されたのが6時頃だという。
「ほんっとに心配したんだからね!」
腰に手を当ててヤムライハはぷんぷんと怒っている。
結界の異常を感じたのがついさっき。上空からおなまーえを探していたピスティが運良くいたから、彼女は助かったのだという。
「にしてもなんで空から落ちて来たの?」
「……あのね、怒らない?」
「え?……まぁ、事の次第によっては……?」
拍子抜けした顔でヤムライハはおなまーえの隣に座った。
「えっとね。私、素敵な方に助けてもらったの。」
ぽぉっと頬を染めるおなまーえを見て、ヤムライハはゲッと顔をしかめた。
「え、おなまーえ、もしかして…その人のこと好きになったりとか……」
「もう一度お会いしたいなぁ。あのね、素敵な御髪をされていたの。」
「あぁ、これもうダメだわ」
ヤムライハは心の中でジャーファルに向かって合掌した。